【2024年最新調査】お客様の約4分の1が重視する「口コミ」。不動産賃貸仲介業者が知るべき評判管理の新常識

静かに、しかし確実に変わる顧客の選択基準
「この不動産会社、評判はどうなんだろう」——物件探しを始めた顧客が、問い合わせボタンをクリックする前に、必ずと言っていいほど確認する情報がある。それが「口コミ」だ。
2024年10月に発表された不動産情報サイト事業者連絡協議会の最新調査によれば、不動産会社を選ぶ際に「口コミ情報」を気にすると回答した人は、全体の24.1%に達した。これは、今年新たに調査項目に加わった選択肢であり、初年度からこの数字は決して軽視できるものではない。
賃貸では23.7%、売買では口コミを「特にポイントとなる点」として挙げた人が5.6%。デジタル時代において、口コミは単なる参考情報ではなく、顧客が不動産会社を選択する際の重要な判断材料となっている。
では、不動産賃貸仲介業者は、この「見えない評価」にどう向き合い、ビジネスチャンスに変えていくべきなのか。
なぜ今、口コミが重視されるのか——データが示す顧客行動の変化
情報収集の効率化が進む住まい探し
同調査で明らかになったのは、顧客の行動パターンが大きく変化しているという事実だ。物件契約者が検討時に問い合わせた不動産会社数は平均2.5社で、前年比0.2社減少。問い合わせた物件数も平均10.2物件で、前年比1.5物件減と、いずれも直近10年で最少を記録した。
顧客は問い合わせる前に、徹底的に絞り込んでいる。
この背景にあるのは、大手不動産ポータルサイトの充実と、情報の透明性向上だ。写真、動画、詳細な物件情報が豊富に提供される中、顧客は自宅にいながら物件の比較検討を完結させられるようになった。
そして最後の判断材料として重視されるのが、「この会社は信頼できるのか」という点。ここで力を発揮するのが口コミ情報なのである。
デジタルネイティブ世代の台頭
20代から30代の若年層は、飲食店選びから日用品購入まで、あらゆる消費行動において口コミやレビューを参照することが習慣化している。不動産という高額な契約においては、なおさらその傾向が強まる。
「実際に利用した人の声」は、どんな広告よりも説得力を持つ。
口コミの現実——ポジティブとネガティブの両面を理解する
顧客が評価するポイント
調査によれば、不動産会社の対応で「満足だったこと」の上位は以下の通りだ。
賃貸
- 問い合わせに対するレスポンスが早かった(69.5%)
- 内見をさせてくれた(53.9%)
- 言葉遣いや対応が丁寧だった(47.9%)
売買
- 問い合わせに対するレスポンスが早かった(74.7%)
- 内見をさせてくれた(48.4%)
- 物件の提案や追加の連絡などをしてくれた(44.2%)
共通しているのは、レスポンスの速さと丁寧な対応。これらは口コミで高評価を得る基本要素だ。
ネガティブ口コミの主な原因
一方、「不満だったこと」の上位には以下が挙げられる。
賃貸
- その物件はもう空いていないと言われた(22.2%)
- 問い合わせをしたら返答が遅かった(17.4%)
- 問い合わせへの回答が的を射ていなかった(14.4%)
売買
- 契約の意思決定を急かされた(15.8%)
- 問い合わせをしたら返答が遅かった(14.7%)
- その物件はもう空いていないと言われた(13.7%)
情報の鮮度とレスポンス速度は、満足度と不満足度の両方に直結する要素であることが分かる。
実践!ポジティブな口コミを増やす5つの戦略
戦略1:「最新かつ正確な物件情報」の徹底管理
調査では、「正確な物件情報の提供」を不動産会社に求める声が3年連続で増加している。さらに「最新の物件情報の更新」も賃貸・売買ともに10ポイント超の大幅増加を記録した。
実践のポイント
- 物件情報の日次更新体制を構築する
- 成約済み物件の即時削除を徹底する
- 空室状況のリアルタイム確認システムを導入する
顧客が問い合わせた時点で「その物件はもう空いていない」という対応は、最もネガティブな口コミを生む原因の一つ。これを防ぐことが、評判管理の第一歩となる。
戦略2:レスポンス速度の圧倒的優位性を確立する
問い合わせへの迅速な対応は、満足度調査で賃貸69.5%、売買74.7%がポジティブに評価する最重要項目だ。
実践のポイント
- 問い合わせ受付後30分以内の初回応答を目標に設定する
- 営業時間外の自動応答システムを導入し、翌営業日の対応時間を明示する
- CRM(顧客管理システム)で問い合わせ対応の進捗を可視化する
「返答が遅かった」という不満は、賃貸17.4%、売買14.7%と高い水準にある。レスポンス速度を競争優位性に変えることで、口コミでの高評価獲得につながる。
戦略3:「的を射た提案」で専門性をアピール
問い合わせへの回答が的を射ていないという不満は、賃貸で14.4%、売買で11.6%を記録している。
実践のポイント
- 顧客のニーズヒアリングシートを活用し、要望を正確に把握する
- 予算、立地、間取りだけでなく、ライフスタイルまで踏み込んだ提案を行う
- 代替案を複数用意し、選択肢の幅を持たせる
顧客が求めているのは、単なる物件紹介ではなく、プロとしての的確なアドバイス。専門性の高い対応は、口コミで「この担当者は信頼できる」という評価に直結する。
戦略4:「丁寧な接客」を組織文化に
言葉遣いや対応の丁寧さは、賃貸で47.9%、売買で42.1%が満足ポイントとして評価する一方、言葉遣いや対応が気に障ったという不満も賃貸13.2%、売買13.7%存在する。
実践のポイント
- 接客マニュアルを整備し、全スタッフで共有する
- ロールプレイング研修で実践的なスキルを磨く
- 顧客対応後の振り返りミーティングを定期開催する
丁寧な接客は、口コミで必ず言及される項目。組織全体で高水準の接客を維持することが、ブランド評判の向上につながる。
戦略5:「口コミ投稿」を促す仕組みづくり
満足度の高かった顧客に対して、自然な形で口コミ投稿を促すことも重要だ。
実践のポイント
- 契約後のフォローメールで、率直な感想を依頼する
- 大手不動産ポータルサイトやGoogleマイビジネスへの投稿方法を分かりやすく案内する
- 投稿してくれた顧客には、次回利用時の特典を提供する
ポジティブな体験をした顧客の多くは、依頼されれば口コミを投稿してくれる。待つのではなく、こちらから働きかける姿勢が大切だ。
ネガティブな口コミへの向き合い方——危機を機会に変える対応術
すべての口コミに真摯に対応する
ネガティブな口コミが投稿されることは避けられない。重要なのは、その後の対応だ。
対応の基本原則
- 迅速に反応する:投稿から24時間以内に返信することを目標とする
- 感謝の意を示す:貴重なフィードバックとして受け止める姿勢を示す
- 事実確認と説明:誤解があれば丁寧に説明し、非があれば率直に認める
- 改善策を提示:具体的にどう改善するかを明示する
- オフライン対応へ誘導:必要に応じて、個別に詳細を話し合う場を設ける
ネガティブ口コミは「改善の宝庫」
ネガティブな口コミは、業務プロセスの問題点を可視化してくれる貴重な情報源だ。
活用のポイント
- 月次で口コミ分析ミーティングを実施し、共通課題を抽出する
- 改善施策を立案し、PDCAサイクルを回す
- 改善結果を口コミ返信や自社サイトで発信し、透明性を示す
顧客は完璧な会社を求めているわけではない。誠実に改善に取り組む姿勢を評価するのだ。
返信内容は全ての人が見ている
口コミへの返信は、投稿者だけでなく、それを読む全ての潜在顧客に向けたメッセージでもある。
効果的な返信の型
この度は貴重なご意見をいただき、誠にありがとうございます。
[具体的な指摘内容について]の件につきまして、
ご不快な思いをおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。
[事実関係の説明や改善策]
今後はこのようなことがないよう、
[具体的な改善アクション]を実施してまいります。
引き続き、お客様にご満足いただけるサービスを提供できるよう
スタッフ一同努めてまいります。
誠実で具体的な返信は、他の顧客に「この会社は信頼できる」という印象を与える効果がある。
デジタルショールームとしての口コミ活用——オンライン時代の信頼構築
口コミは「24時間営業の営業マン」
物理的な店舗が閉まっている時間帯でも、口コミはオンライン上で常に顧客にあなたの会社を紹介し続けている。
調査によれば、非対面型の接客への関心が年々高まっており、IT重説やオンライン接客を「使ってみたい」という回答は全項目で3年連続増加している。デジタルファーストの顧客接点が当たり前になる中、口コミはまさに「デジタルショールーム」の役割を果たす。
口コミを自社サイトやSNSで活用する
実践例
- 高評価の口コミを自社ホームページに掲載する(許可を得た上で)
- SNSで「お客様の声」として定期的に紹介する
- 成約事例としてビフォーアフターストーリーを発信する
顧客の生の声は、どんな広告コピーよりも説得力がある。口コミを二次活用することで、マーケティング資産として最大化できる。
動画と口コミの相乗効果
調査では「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」ことを重視する人が増加傾向にある。売買では3年連続で増加し、前々年比で13.3ポイント増となった。
戦略的アプローチ
- 物件紹介動画に、過去の顧客の声(テキストまたは音声)を組み込む
- 内見の様子を動画で撮影し、担当者の丁寧な対応をアピールする
- スタッフ紹介動画を制作し、人柄や専門性を可視化する
視覚情報と顧客の声を組み合わせることで、信頼性と親近感を同時に醸成できる。
口コミ戦略の先にあるもの——持続可能な成長基盤の構築
口コミは「蓄積される資産」
広告は費用をかけ続けなければ効果が途絶えるが、口コミは時間とともに蓄積され、長期的な集客力となる。
特に大手不動産ポータルサイト上の口コミは、検索結果に表示され続けるため、新規顧客との最初の接点として機能する。投資対効果の観点からも、口コミ管理は最優先で取り組むべき施策だ。
ブランド力の源泉は「顧客の声」
地域密着型の不動産会社にとって、最大の差別化要素は何か。それは、実際に利用した顧客からの信頼である。
全国展開する大手チェーンに対抗するには、「この地域で最も信頼される不動産会社」というポジションを確立することが不可欠。その証明となるのが、地元顧客からの高評価の口コミなのだ。
システム化による効率的な運用
口コミ管理を属人的な業務にせず、組織的に取り組む仕組みを構築することが重要だ。
推奨される体制
- 口コミ監視・返信の担当者を明確化する
- 顧客管理システムで満足度調査を自動化する
- 定期的な社内共有会で成功事例と改善点を共有する
- 外部の評判管理ツールを活用し、複数プラットフォームを一元管理する
効率化によって、スタッフは本来の営業活動に集中でき、同時に口コミ対応の質も向上する。
まとめ:口コミ時代に選ばれる不動産会社になるために
2024年の調査が示すように、顧客は問い合わせ前に徹底的に情報を収集し、厳選した上で不動産会社にコンタクトする時代になった。その判断材料として、約4分の1の顧客が口コミ情報を重視している。
ポジティブな口コミを増やす5つの戦略
- 最新かつ正確な物件情報の徹底管理
- レスポンス速度の圧倒的優位性確立
- 的を射た提案で専門性をアピール
- 丁寧な接客を組織文化に
- 口コミ投稿を促す仕組みづくり
ネガティブな口コミへの対応原則
- 迅速かつ誠実に反応する
- 改善の宝庫として活用する
- 返信は全ての潜在顧客へのメッセージと認識する
口コミは単なる評価ではなく、あなたの会社のデジタルショールームであり、24時間働き続ける営業資産だ。この資産を戦略的に管理・活用することで、持続可能な成長基盤を構築できる。
デジタル時代の不動産賃貸仲介業において、口コミへの真摯な向き合い方が、顧客から選ばれ続ける会社への分かれ道となる。今日から始められる小さな改善の積み重ねが、明日の大きな信頼へとつながっていく。
「見られている」という現実を、最大のチャンスに変える——それが、これからの不動産会社に求められる戦略なのである。


