【2024年最新データ】不動産仲介の成約を左右する「顧客満足度向上マニュアル」──1,642人の声が示す「やるべき7つの行動」と「避けるべき10の落とし穴」

「物件の問い合わせは入るのに、なかなか成約に結びつかない」──多くの不動産賃貸仲介業者が直面するこの課題。その答えは、顧客が実際に何に満足し、何に不満を感じているかを正確に把握することにある。

2024年10月、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が発表した最新調査データは、業界関係者に衝撃を与えた。過去1年以内に物件を契約した1,642人を対象とした大規模調査により、顧客満足度を左右する決定的な要因が数値として明らかになったのだ。

本記事では、このデータを徹底分析し、日々の業務で今すぐ実践できる行動指針をチェックリスト形式でまとめた。あなたの店舗の接客対応を見直す羅針盤として、ぜひ活用していただきたい。

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データが示す衝撃の事実──顧客は「絞り込んで」問い合わせている

まず注目すべきは、顧客行動の変化だ。2024年のデータによると、物件を契約した人が検討時に問い合わせた不動産会社数は平均2.8社で、前年比0.4社減少。問い合わせた物件数も平均11.7物件と、前年比2.6物件減少し、いずれも直近10年で最少となった。

これが意味するのは何か。顧客は大手不動産ポータルサイト上で徹底的に情報を比較検討し、あらかじめ候補を絞り込んでから問い合わせているという事実だ。つまり、問い合わせの段階で既に「本気度の高い見込み客」である可能性が高い。

この貴重な機会を逃さないために、不動産仲介業者には何が求められているのか。データは明確な答えを示している。

顧客満足度調査が明らかにした「満足の要因」トップ10

2024年の調査(Q8)で、物件を契約した人が「満足だった」と回答した対応は以下の通りだ。

  1. 問い合わせに対するレスポンスが早かった(71.4%)
  2. 内見をさせてくれた(51.9%)
  3. こちらの都合を配慮してくれた(45.8%)
  4. 言葉遣いや対応が丁寧だった(42.4%)
  5. 物件の提案や追加の連絡などをしてくれた(37.8%)
  6. 物件まで同行してくれた(36.6%)
  7. 物件や不動産に詳しかった(27.5%)
  8. 契約の意思決定をこちらのペースに合わせてくれた(25.2%)
  9. 問い合わせへの回答が的を射ていた(22.9%)
  10. 問い合わせした物件よりいい物件を紹介してくれた(9.2%)

特筆すべきは、レスポンスの速さが7割超の顧客から評価されているという点だ。これは単なる「早ければいい」という話ではない。顧客が絞り込んだ候補の中から、迅速に対応した会社が選ばれているという市場の現実を示している。

顧客が「不満」に感じた対応ワースト10──これが成約を逃す原因だ

一方で、不満だった対応も明確になった。

  1. 問い合わせをしたら「その物件はもう無い」と言われた(19.1%)
  2. 問い合わせをしたら返答が遅かった(16.0%)
  3. 物件や不動産に詳しくなかった(13.7%)
  4. 契約の意思決定を急かされた(13.7%)
  5. 言葉遣いや対応が気に障った(12.6%)
  6. 問い合わせ後の営業がしつこかった(11.1%)
  7. 問い合わせへの回答が的を射ていなかった(10.3%)
  8. 問合せをしていない物件を必要以上にすすめられた(8.4%)
  9. 物件の提案や追加の連絡などがなかった(8.0%)
  10. 深夜の連絡など、こちらの都合を考えてくれなかった(1.9%)

最も多かった不満は「物件がもう無い」という回答。大手不動産ポータルサイトで見つけた物件に問い合わせたのに、既に契約済みだったというケースだ。これは物件情報の更新頻度に関わる問題であり、後述する「やるべきこと」で詳しく触れる。

注目すべきは、2位の「返答が遅かった(16.0%)」と、満足度1位の「レスポンスが早かった(71.4%)」が表裏一体の関係にある点だ。レスポンスの速さこそが、成約への最短距離なのである。

【実践編】今日から始める「やるべき7つの行動」チェックリスト

データに基づき、顧客満足度を高めるために不動産仲介業者が今すぐ実践すべき行動を7つのチェックリストにまとめた。

✓ 1. 問い合わせには「1時間以内」の初回レスポンスを徹底する

71.4%の顧客が評価する「レスポンスの速さ」。理想は30分以内、最低でも1時間以内の初回返信を目指したい。「お問い合わせありがとうございます。詳細を確認の上、○時までにご連絡いたします」という簡潔な第一報でも構わない。重要なのは、顧客を待たせないという姿勢を示すことだ。

営業時間外の問い合わせには、自動返信で翌営業日の対応時間を明示するなど、期待値のコントロールも有効である。

✓ 2. 物件情報の更新は「1日3回以上」を基本とする

「物件がもう無い」という不満を解消する最も確実な方法は、物件情報の鮮度を保つことだ。朝・昼・夕方の最低3回、大手不動産ポータルサイトの掲載情報と実際の空室状況を照合する体制を構築したい。

契約済み物件の削除漏れは、顧客の信頼を一瞬で失う致命的なミスとなる。システム化が難しい場合は、担当者を決めて確認作業をルーティン化することが重要だ。

✓ 3. 顧客の都合を最優先したスケジュール調整を行う

45.8%が評価した「都合への配慮」。内見の日時調整では、自社の都合ではなく顧客の希望を最優先する姿勢を明確に示したい。「こちらの都合で恐縮ですが」という前置きは避け、「ご都合の良い日時を複数お知らせください」と顧客主導で進める。

平日夜間や休日対応が難しい場合は、その旨を事前に説明し、可能な範囲で柔軟性を持たせる工夫が求められる。

✓ 4. 丁寧な言葉遣いと誠実な態度を全スタッフで徹底する

42.4%が満足した「丁寧な対応」。これは接客の基本だが、データが示す通り、顧客は確実に評価している。電話応対、メールの文面、対面での接客──あらゆる接点で一貫した丁寧さを保つことが信頼構築の土台となる。

特に賃貸では、初めて一人暮らしをする若年層や、不動産取引に不慣れな顧客も多い。専門用語を避け、分かりやすく説明する配慮も「丁寧さ」の一環だ。

✓ 5. プラスαの物件提案で「期待以上」の価値を提供する

37.8%が評価した「物件の提案や追加連絡」。顧客が問い合わせた物件だけで終わらず、条件に合う別の物件や、新着情報を積極的に提案することで、「自分のために動いてくれている」という印象を与えられる。

ただし、9.2%という少数ながら「問い合わせした物件より良い物件を紹介してくれた」が満足度項目に入っている点も見逃せない。顧客のニーズを正確に把握した上での提案が前提となる。

✓ 6. 物件知識・地域情報のアップデートを習慣化する

27.5%が満足した「物件や不動産に詳しかった」という項目。一方で、13.7%が「詳しくなかった」ことに不満を感じている。これは担当者の知識レベルが、顧客満足度を大きく左右する証拠だ。

取り扱い物件の特徴、周辺環境、交通アクセス、生活利便施設──これらの情報を常にアップデートし、内見時にスムーズに説明できる準備が必要である。管理会社との連携を強化し、物件の細かい情報まで把握する努力が求められる。

✓ 7. 契約のペースは顧客主導で進める──焦らせない姿勢を明確にする

25.2%が満足した「契約の意思決定をこちらのペースに合わせてくれた」という項目。反対に、13.7%が「契約の意思決定を急かされた」ことに不満を抱いている。

「この物件は人気なので早めの決断を」という営業トークは、時に逆効果となる。もちろん市場の状況を伝えることは重要だが、最終的な判断は顧客に委ねる姿勢を示すことで、信頼関係が深まる。特に売買では、人生最大の買い物であることを意識した慎重な対応が求められる。

【警告編】絶対に避けるべき「10の落とし穴」チェックリスト

次に、顧客が不満を感じた対応から導き出される「やってはいけないこと」を整理する。

✗ 1. 掲載中の物件情報を放置し、「もう無い」と答える

不満要因の第1位(19.1%)。これは単なる情報管理の問題ではなく、顧客の期待を裏切る行為だ。問い合わせがあった時点で既に成約済みの物件だった場合、謝罪と共に、類似物件を即座に提案できる準備が不可欠である。

✗ 2. 問い合わせ後、半日以上放置する

16.0%が不満を感じた「返答の遅さ」。顧客は複数の会社に問い合わせているため、返信が遅れるほど他社に流れるリスクが高まる。営業時間内であれば、遅くとも3時間以内の対応を目指したい。

✗ 3. 物件や地域について「分かりません」と答える

13.7%が不満を持った「知識不足」。顧客はプロとしての知見を求めている。即答できない質問があれば、「確認して折り返します」と明確な期限を示すことが重要だ。

✗ 4. 「今日中に決めないと」と契約を急かす

13.7%が不満を感じた行為。確かに賃貸市場は動きが速いが、顧客の判断を尊重しない姿勢は信頼を損なう。市場の実情を客観的に伝えた上で、判断は顧客に委ねるべきだ。

✗ 5. タメ口や不適切な言葉遣いで接する

12.6%が「言葉遣いや対応が気に障った」と回答。親しみやすさと馴れ馴れしさは紙一重だ。初対面の段階では、丁寧な敬語を基本とし、顧客との距離感を慎重に測る必要がある。

✗ 6. 断られた後もしつこく営業電話・メールを送る

11.1%が不満を持った「しつこい営業」。一度断られた場合、その後の連絡は慎重に行うべきだ。「また機会があればご連絡ください」と門戸を開いておく程度に留め、過度な追跡は逆効果となる。

✗ 7. 顧客の質問に的外れな回答をする

10.3%が不満を感じた「的を射ていない回答」。質問の意図を正確に理解せず、答えることは顧客の時間を無駄にする。分からない点は確認し、質問の真意を汲み取る努力が必要だ。

✗ 8. 希望していない物件をゴリ押しする

8.4%が不満を持った行為。顧客のニーズを無視した提案は、信頼を失う近道だ。手数料の高い物件や、自社で早く契約させたい物件を優先する姿勢は、顧客に見透かされている。

✗ 9. 内見後のフォローアップを怠る

8.0%が「物件の提案や追加の連絡がなかった」ことに不満を抱いている。内見後、24時間以内に感想を尋ねるメールや電話を入れることで、顧客の検討を後押しできる。放置は機会損失に直結する。

✗ 10. 深夜や早朝など、非常識な時間帯に連絡する

1.9%と割合は少ないが、「都合を考えてくれなかった」という不満。営業時間外の連絡は緊急時を除き避けるべきだ。特にメールやSNSは送信時刻が記録されるため、非常識な時間の連絡は会社全体の印象を損なう。

実践的ケーススタディ──データを活かした改善事例

ここで、データに基づく改善を実践した架空の事例を紹介する。

【事例】A不動産店の顧客満足度向上プロジェクト

都内で賃貸仲介を営むA不動産店は、問い合わせ数は多いものの成約率が低迷していた。そこで、RSC調査データを参考に、以下の3つの施策を実施した。

施策1:レスポンスタイムの短縮
問い合わせ受付から初回返信までの時間を計測し、30分以内の返信を目標に設定。スマートフォンでの問い合わせ通知システムを導入し、外出中でも迅速に対応できる体制を整えた。

施策2:物件情報の更新頻度向上
朝9時、昼12時、夕方17時の1日3回、掲載物件の空室状況を確認し、成約済み物件を即座に削除するルールを徹底。大手不動産ポータルサイトの管理画面を複数スタッフで共有し、更新漏れを防いだ。

施策3:顧客ペースでの契約進行
「急かさない営業」をスローガンに、内見後の感想を丁寧に聞き取り、契約を迷っている場合は判断材料を提供する姿勢に転換。「今すぐ決めなくても大丈夫です」という一言を添えることで、顧客の心理的負担を軽減した。

結果
3ヶ月後、問い合わせから成約に至る率が従来の18%から29%に向上。顧客アンケートでも「対応が早くて丁寧だった」「焦らされず、じっくり検討できた」という声が増加した。

この事例が示すのは、データに基づく改善が具体的な成果に繋がるという事実だ。

【発展編】顧客満足度向上を支える「仕組み化」のポイント

個人の努力だけでは限界がある。組織全体で顧客満足度を高めるには、以下の仕組み化が有効だ。

1. レスポンスタイムの可視化
問い合わせ受付から初回返信までの時間をログに記録し、週次で平均値を算出。目標値(例:30分以内)を設定し、達成度を共有する。

2. 物件情報更新の自動化・ルール化
手作業での更新に限界がある場合、システム連携による自動更新を検討する。予算的に難しければ、更新チェックリストを作成し、担当者を決めてルーティン化する。

3. 接客品質のチェックリスト作成
電話応対、メール文面、内見時の説明──各場面での「言うべきこと」「してはいけないこと」をチェックリスト化し、新人教育や定期研修で活用する。

4. 顧客フィードバックの収集と分析
成約後、簡単なアンケートを実施し、満足点・改善点を収集。RSC調査の項目を参考に、自社の強み・弱みを定期的に分析する。

5. 好事例の共有と表彰
顧客から高評価を得た対応事例を社内で共有し、優れた接客をしたスタッフを表彰する。成功体験の共有が、組織全体のレベルアップに繋がる。

変化する市場環境──2024年の新トレンドも押さえる

RSC調査では、顧客満足度以外にも注目すべきトレンドが明らかになっている。

写真・動画コンテンツの重要性
不動産会社を選ぶポイントとして、「写真の点数が多い(72.1%)」が1位、「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている(32.6%)」が5位にランクイン。特に売買では動画ニーズが2年連続で増加しており、ビジュアルコンテンツの充実が差別化要因となっている。

非対面型接客の需要増加
IT重説やオンライン接客について、「使ってみたい」と回答した割合が全項目で増加傾向。特に賃貸では「IT重説」、売買では「オンライン接客」のニーズが高い。遠方の顧客や、仕事で時間が取れない顧客への対応として、非対面型の選択肢を用意することも検討に値する。

省エネ性能への関心の高まり
住まいを選ぶ上で省エネ性能が「重要」との回答が全体で77%に達した。特に売買では83.5%と高く、光熱費高騰や気候変動への意識が背景にある。物件提案時に省エネ性能をアピールポイントとして説明できる知識も求められている。

顧客満足度向上が「経営」を変える

ここまで見てきたデータと実践方法は、単なる接客改善の話ではない。顧客満足度の向上は、リピート率の向上、口コミによる新規顧客獲得、スタッフのモチベーション向上という好循環を生み出す。

RSC調査が示す通り、顧客は問い合わせ前に徹底的に情報を比較している。その中で選ばれる会社になるには、大手不動産ポータルサイト上での物件情報の充実度だけでなく、実際の対応品質が決定的な差別化要因となる。

「レスポンスが早い」「丁寧に対応してくれた」「急かされなかった」──こうした評価は、オンライン上の口コミとして拡散し、新たな顧客を呼び込む。反対に、不満を抱いた顧客の声もまた、SNSや口コミサイトを通じて広がる時代だ。

ハウスコムFCだからできる──組織的な顧客満足度向上の実現

ここまで紹介した施策を個店で実践するには、相応のリソースとノウハウが必要だ。しかし、フランチャイズ本部のサポートを受けることで、これらの取り組みをより効率的に、組織的に推進できる。

全国展開するフランチャイズネットワークには、成功事例の蓄積がある。各加盟店が試行錯誤して得たノウハウを共有し、標準化されたオペレーションとして展開することで、顧客満足度の底上げが可能になる。また、物件情報の管理システム、研修プログラム、マーケティング支援など、本部のバックアップ体制が加盟店の成長を後押しする。

独立開業を目指す方、既存店舗の経営改善を図りたい方──データに基づく経営改善と、組織的なサポート体制を両立させる選択肢として、フランチャイズ加盟という道も検討する価値がある。

まとめ──データは行動を変え、行動は未来を変える

2024年のRSC調査が示したのは、顧客満足度を決定づける要因が驚くほど明確だという事実だ。

やるべきことは7つ。
レスポンスの速さ、物件情報の鮮度、顧客都合の優先、丁寧な対応、プラスαの提案、専門知識、顧客ペースの契約進行。

避けるべきことは10個。
情報の放置、返信の遅延、知識不足、契約の急かし、不適切な言葉遣い、しつこい営業、的外れな回答、ゴリ押し、フォロー不足、非常識な連絡時間。

これらは決して難しいことではない。しかし、日々の業務の中で徹底し続けるには、意識と仕組みの両方が必要だ。

1,642人の顧客の声は、不動産仲介業界に明確なメッセージを送っている。「早く、丁寧に、顧客のペースで」──この3つの原則を守る会社が、これからの市場で選ばれ続ける。

データを行動に変えるのは、今日から始められる。あなたの店舗の顧客満足度向上は、このチェックリストから始まる。


【本記事のデータ出典】
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2024年調査(2024年10月25日発表)
調査期間:2024年1月30日~5月15日 / 有効回答数:1,642人