「周辺施設」情報のNG例。単なるリストアップで終わらせないための工夫

誰も読まない「周辺施設リスト」が、成約を遠ざけている
「徒歩3分・コンビニ、徒歩5分・スーパー、徒歩10分・駅」──。
不動産情報サイトを開けば、こうした周辺施設情報が機械的に並んでいる物件ページを、誰もが一度は目にしたことがあるだろう。しかし、こうした「ただのリスト」が、実は顧客の意思決定をどれほど後押ししているだろうか。答えはおそらく、ほとんどゼロに近い。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2024年に実施した調査によれば、物件を契約した人が検討時に問合せた物件数は平均7物件で、前年比2物件減少。この数字は直近10年で最少となり、消費者が「あらかじめ絞り込んでから問合せる」傾向が一層強まっていることを示している。
つまり、数ある物件の中から選ばれるためには、ファーストインプレッションで「この物件は特別だ」と感じてもらう必要がある。そこで鍵を握るのが、周辺施設情報の「見せ方」なのだ。
なぜ「距離だけの情報」では価値がないのか
賃貸物件を探す顧客の多くは、単に「近くにスーパーがある」という事実を知りたいわけではない。彼らが本当に知りたいのは、「そのスーパーで快適に買い物ができるか」「朝の通勤時に立ち寄りやすいか」「深夜まで営業しているか」といった、生活に直結する具体的な情報だ。
同調査では、「物件の周辺・立地・環境に関する周辺情報」が、賃貸検討者において前年は圏外だったものが2024年には10位にランクイン。売買でも前年8位から6位へと順位を上げており、周辺情報へのニーズが確実に高まっている。
しかし実態はどうか。多くの物件情報では、施設名と距離が淡々と列挙されているだけ。これでは、顧客の心を動かすことはできない。
成約に繋がる「生きた周辺施設情報」の作り方
1. 「雰囲気」を言葉で伝える
例えば、近隣のスーパーを紹介する際、こう書いてみてはどうだろう。
NG例:
「徒歩3分・〇〇スーパー」
OK例:
「徒歩3分の〇〇スーパーは、地元密着型で新鮮な野菜が人気。レジの方の感じも良く、仕事帰りにふらっと立ち寄りやすい雰囲気です。23時まで営業しているため、残業後の買い物にも便利」
後者は、顧客が実際にそこで買い物をしているイメージを具体的に描ける。これが「生きた情報」だ。
2. ターゲット層に合わせた切り口を持つ
ファミリー向けなら「〇〇公園は遊具が充実しており、週末は子連れで賑わいます。トイレも清潔で、小さなお子様連れでも安心」と記載する。
単身者向けなら「駅前の〇〇は深夜1時まで営業。仕事で遅くなった日も食事に困りません」といった具合だ。
誰に向けた情報かを明確にすることで、ターゲット層の心に刺さる。
3. 「担当者のおすすめポイント」を加える
物件周辺を実際に歩いた担当者だからこそ知っている情報を盛り込むことが、差別化の最大の武器になる。
「この物件から駅までの道のりは、街灯が多く人通りもあるため、女性の一人暮らしでも安心です」「〇〇商店街は昔ながらの雰囲気で、個人経営のパン屋さんが絶品。地元の方との交流も楽しめます」
こうした情報は、大手不動産ポータルサイトの自動データでは絶対に提供できない、独自の価値だ。
4. 写真や動画を活用する
文章だけでなく、周辺施設の写真や動画を掲載することで、情報の信頼性と訴求力が飛躍的に高まる。
RSC調査では、「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」という項目が不動産会社選びのポイントとして上昇傾向にあり、動画コンテンツへの関心の高まりが裏付けられている。
周辺施設についても同様で、「駅までの道のり動画」「スーパーの店内写真」などがあれば、顧客の安心感は格段に増す。
単なる業務ではなく「価値提供」と捉える
周辺施設情報の充実化は、手間がかかる作業だ。しかし、それは単なる「作業」ではなく、顧客に対する「価値提供」そのものである。
物件を契約した人が問合せた不動産会社数は平均2.3社と、これも直近10年で最少。つまり、顧客は最初に接触した数社で意思決定をしてしまう。その限られた機会で選ばれるためには、他社と明確に差別化された情報提供が不可欠だ。
「写真の点数が多い」「丁寧な物件情報の記載」といった項目が、不動産会社を選ぶポイントとして上位にランクインしている事実も見逃せない。これらは全て、情報の「量」と「質」に対する顧客の期待値の高まりを示している。
ハウスコムFC加盟による支援体制
こうした情報提供の高度化を、個店で全て実現するのは容易ではない。時間的な制約、ノウハウの不足、人材不足──課題は山積みだ。
だからこそ、フランチャイズという選択肢が意味を持つ。ハウスコムFC加盟店は、本部からの物件情報システム、研修プログラム、マーケティングサポートなどを活用することで、こうした「生きた情報提供」を効率的に実現できる体制を手に入れることができる。
特に、物件情報の見せ方に関するノウハウの共有や、成功事例の横展開は、加盟店にとって大きなアドバンテージとなる。
まとめ:「リスト」ではなく「ストーリー」を語れ
周辺施設情報は、もはや「あれば良い」というレベルの情報ではない。それは、顧客の意思決定を左右する重要な差別化要素だ。
ただ施設名を並べるだけの時代は終わった。これからは、距離だけでなく、雰囲気、おすすめポイント、ターゲットに合わせた切り口を盛り込んだ「生きた情報」を提供できる不動産会社が、顧客に選ばれる。
あなたの物件紹介ページは、顧客の心を動かす「ストーリー」を語っているだろうか。今一度、見直してみる価値がある。
【調査データ出典】
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2024年調査結果より