遠隔地の顧客を獲得するチャンス。リモート完結型サービスの構築法

転勤や進学で遠方への引越しが決まった顧客が、画面の向こう側から物件について次々と質問を送ってくる。かつては「現地に足を運んでもらう」のが当たり前だった不動産仲介業ですが、今は状況が変わっています。インターネットで物件情報を探す多くの人々が、自宅にいながら問い合わせから契約まで完結できるサービスを求め始めています。この流れは加盟店にとって、新たな顧客層を開拓する絶好の機会。しかし同時に、対応できない加盟店との差はますます広がるでしょう。本記事では、リモート完結型サービスを自店舗に導入し、遠隔地からのお客様をしっかり獲得するための実践的な方法をお伝えします。
時代は確実に変わっている。データが示すリモート接客の急速な浸透
数字から目を背けることはできません。不動産情報サイト事業者連絡協議会が実施した最新アンケート調査によると、今後の住まい探しで「使ってみたい」と答えた人が最も多いリモートサービスは、賃貸において「IT重説」。そしてこの項目は、2022年の調査開始以来、年を追うごとに増加傾向を辿っています。
つまり、遠隔地にいる顧客たちの間では、オンラインで重要事項説明を受けたいというニーズが確実に高まっているということ。物件内覧から契約手続きまで、一度も対面せずに完結させたいという希望を持つ人材は、決して少数派ではないのです。
この変化を見逃すと、競合他社に顧客を奪われるリスクが生まれます。既に大手企業が対応を進める中で、FC加盟店こそが、きめ細かいサービスとテクノロジーの融合によって大きな強みを発揮できる立場にあります。
問い合わせから内見、契約まで。ステップごとの施策で顧客を逃さない
リモート完結型サービスを構築する際、多くの事業者が陥る罠があります。それは、「IT重説さえあれば大丈夫」と考えてしまうこと。実際には、顧客の接触ポイントは問い合わせ段階から始まっており、その後の各段階で工夫が必要です。
段階1:「今すぐ返信」が競争力。問い合わせ対応の高速化
大手不動産ポータルサイトを使用した部屋探しで不満だった経験をまとめたデータによると、「問い合わせをしたら返答が遅かった」という文句は毎年上位にランクイン。つまり、遠隔地の顧客は時間帯や地域に関係なく、素早い返信を期待しています。
対策としては、自動返信メールの導入はもちろんのこと、営業スタッフのシフト管理を見直し、問い合わせ対応の専任者を配置することが有効です。あるいは、オンラインチャットツールを導入して、営業時間中は常に誰かが対応できる体制を作る加盟店も増えています。「本日中に内見可能な物件をピックアップしてメール送付」といった、先回りしたサービスを提供することで、顧客の満足度は大きく変わります。
段階2:動画と写真の質が成約を左右する。情報の鮮度と詳細さ
物件情報を探す際に「必要だと思う情報」として最も多く挙げられるのは、今も昔も「リビングの写真」や「キッチンの写真」といった基本要素です。しかし注目すべき点は、売買検討者の間で「物件の室内の動画」への関心が2年連続で上昇し、現在では非常に高い優先度を占めるようになったということ。
遠隔地からの顧客にとって、静止画だけでは実際の間取りや採光、空間の広さがつかみ難いのです。そこで有効なのが、スマートフォンで撮影した短編動画。リアリティーを感じさせるカジュアルな動画の方が、プロが撮影した高級感あふれる映像より共感を呼ぶこともあります。時間帯を変えて撮影した採光の変化も含めると、顧客の「見たい欲求」をより満たすことができます。
加えて、物件情報サイトへの掲載内容を充実させることも重要です。「物件のウィークポイントも書かれている」という項目が、近年加盟店に求めるもの上位にランクインしているのは、顧客が「本当の情報を知りたい」という心理を持っているからこそ。隠蔽ではなく、誠実な情報開示がリモート時代の信頼構築につながるのです。
段階3:IT重説を活用したスムーズな契約フロー
IT重説は、もはや加盟店にとって「あったら便利」なツールではなく、「必須サービス」へと変わりつつあります。既にシステム導入している加盟店からは、「オンライン完結できることで、遠隔地の顧客獲得が2倍になった」という報告も。
重要事項説明書の事前送付、ビデオ通話による画面共有での説明、電子署名による契約書作成といった流れを整備することで、顧客は最後の一歩までリモートで進められます。しかし成功している加盟店の多くが指摘するのは、「システムの導入だけでなく、スタッフ教育が決定的に重要」という点。最初は時間がかかるかもしれませんが、流れを標準化することで、やがて大きなアドバンテージになります。
「遠隔地はチャンス」という意識転換が勝敗を分ける
転勤や進学で遠方からの問い合わせが入ると、「対応が大変」と考える加盟店は少なくありません。しかし視点を変えれば、これは大手不動産ポータルサイト経由で、自分たちの地域に興味を持つ新規顧客との出会いの場です。
問い合わせ対応を丁寧に行い、物件情報を充実させ、IT重説や動画視聴といった非対面サービスを整えた加盟店には、徐々に「この不動産会社なら遠隔地からでも安心」というレピュテーションがついてきます。その評判は、インターネット上の口コミとして他の遠隔地の顧客にも伝わり、良い循環が生まれるのです。
ハイブリッドモデルとは、単に対面と非対面を組み合わせるサービスではなく、「どんな顧客層にも対応できる柔軟性」を持つこと。結果として、加盟店はこれまで手の届かなかった顧客層を着実に開拓できるようになります。
まとめ:リモート対応で、加盟店の営業範囲は一気に拡がる
物件を契約した顧客が、検討時に問い合わせた不動産会社の数は年々減少しています。つまり、顧客は賢くなり、「この会社なら大丈夫」と判断した企業に絞って問い合わせる傾向が強まっているということです。そのような顧客の信頼を勝ち取るには、遠隔地からのアクセスであっても、対面と変わらない質の接客体験を提供することが不可欠です。
リモート完結型サービスの構築は、決して難しいプロセスではありません。問い合わせ対応の高速化、物件情報の充実、IT重説の導入という3つのステップを着実に進めることで、ハウスコムFC加盟店は確実に競争力を高められます。遠隔地の顧客を「面倒な対応」ではなく「新しいビジネスチャンス」と捉え直すことが、これからの不動産仲介業を運営するうえでの鍵となるでしょう。


