物件情報だけでは選ばれない時代に——顧客が「この会社なら安心」と感じるウェブサイトの作り方

なぜ今、あなたの会社は選ばれないのか?
「物件情報は充実しているのに、問い合わせが来ない」「大手不動産ポータルサイトに掲載しているのに反応が薄い」——そんな悩みを抱える不動産賃貸仲介業者は少なくない。
実は、消費者の行動が大きく変わっている。2024年10月に発表された不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の最新調査によれば、物件を契約した人が検討時に問い合わせた不動産会社数は平均2.4社と、直近10年で最少を記録した。つまり、消費者はあらかじめ絞り込んでから問い合わせているのだ。
では、何を基準に選別しているのか。同調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「写真の点数が多い」(72.1%)がトップ、次いで「地元で知名度のある会社である」(38.2%)が上位に入った。ここで注目すべきは、物件情報の充実度だけでなく、企業そのものの信頼性が評価対象になっているという事実だ。
本記事では、ウェブサイトを「デジタルショールーム」として機能させ、初めて訪れた人に「この会社、信頼できそう」と思わせるための具体的な方法を、実践的なデータとともに解説する。
第1章:消費者は「企業の顔」を見ている——ウェブサイトが果たす役割の変化
問い合わせ前の情報収集が加速している
かつて不動産探しといえば、とにかく多くの店舗を回り、多くの物件を見比べるのが当たり前だった。しかし現在、消費者の行動は劇的に効率化している。
前述のRSC調査によれば、2024年に物件を契約した人が問い合わせた物件数は平均5.3件と、これも直近10年で最少。訪問した不動産会社数も賃貸で平均1.4社、売買で平均2.7社にとどまる。つまり、問い合わせる前に徹底的に絞り込んでいるのだ。
この背景には、スマートフォンの普及とインターネット検索の高度化がある。消費者は物件情報だけでなく、企業のウェブサイト、口コミ、SNSなど複数の情報源を横断的にチェックし、「信頼できる会社かどうか」を事前に見極めようとしている。
ウェブサイトは「デジタルショールーム」である
実店舗に足を運ぶ前に、消費者はウェブサイトで企業を評価する。この時、ウェブサイトは単なる物件カタログではなく、**企業の信頼性や価値観を伝える「デジタルショールーム」**として機能しなければならない。
2024年度の調査で新たに追加された選択肢「不動産会社に対する口コミ情報」が注目を集めたことも、企業そのものへの関心の高まりを示している。物件の良し悪しだけでなく、「この会社は対応が丁寧か」「スタッフは信頼できるか」「企業理念に共感できるか」といった要素が、選択基準として重視されているのだ。
第2章:顧客が見ているのは「物件」より「人」——スタッフ紹介ページの戦略的活用
なぜスタッフ紹介が信頼につながるのか
不動産取引は人生における大きな決断の一つだ。だからこそ、消費者は「誰と取引するのか」を重視する。匿名性の高いウェブサイトよりも、「顔が見える」企業に安心感を覚えるのは当然だろう。
RSC調査で「丁寧・親切対応」が不動産会社に求めるもののトップに挙げられ、実際に満足したこととして「言葉遣いや対応が丁寧だった」が賃貸で47.9%、売買で42.1%に達したことは、対人コミュニケーションの質が評価されている証拠だ。
つまり、スタッフ紹介ページは単なる社員名簿ではなく、企業の「人間性」を伝える重要なツールなのである。
効果的なスタッフ紹介ページの5つの要素
優れたスタッフ紹介ページには、以下の要素が含まれている。
1. プロフェッショナルかつ親しみやすい写真
硬すぎるビジネスフォトよりも、自然な笑顔が写った写真のほうが親近感を持たれやすい。可能であれば、実際の業務風景や地域の名所で撮影した写真を使うと、地域密着型の企業イメージが伝わる。
2. 具体的な実績と専門性
「営業歴〇年」という情報だけでなく、「年間〇件の契約サポート実績」「〇〇エリアの物件に精通」といった具体的な数字や専門分野を明記する。これにより、「この人なら頼れる」という安心感が生まれる。
3. 人間味を感じさせるエピソード
趣味や休日の過ごし方、この仕事を選んだきっかけなど、ビジネス以外の一面を見せることで、親近感が高まる。「同じ子育て世代だから相談しやすそう」「地元出身だから地域情報に詳しそう」といった共感を生むことができる。
4. お客様の声やエピソード
「〇〇さんのおかげでスムーズに引っ越しできました」といった具体的な顧客の声を添えることで、第三者評価としての説得力が増す。ただし、プライバシーに配慮し、イニシャルや仮名を使うことが望ましい。
5. 動画コンテンツの活用
RSC調査では「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」が不動産会社選択のポイントとして32.6%に達し、2年連続で増加している。これは物件だけでなく、スタッフ紹介にも動画を活用すべきというメッセージだ。30秒〜1分程度の自己紹介動画を掲載することで、声のトーンや話し方から人柄が伝わり、信頼感が格段に高まる。
地域密着型企業ならではの強みを打ち出す
大手チェーンにはない強みが、地域密着型の不動産会社にはある。それは、地域への深い理解と長年培った人脈だ。
スタッフ紹介ページで「〇〇エリアで生まれ育ち、地域の小学校や商店街にも詳しい」「地域イベントに積極的に参加している」といった情報を発信することで、地元ならではの付加価値をアピールできる。これは、全国展開する大手企業が真似できない差別化要因となる。
第3章:「理念」が共感を生む——会社概要ページで伝えるべきこと
企業理念は「飾り」ではなく「選択基準」
多くの不動産会社のウェブサイトで、会社概要ページは「会社名、所在地、代表者名、設立年月日」といった事務的な情報の羅列になりがちだ。しかし、それだけでは消費者の心は動かない。
消費者が知りたいのは、「この会社は何を大切にしているのか」「どんな価値観で事業を行っているのか」という企業の本質だ。
特に近年、若年層を中心に「共感できる企業から購入したい」という傾向が強まっている。環境問題、社会貢献、働き方改革など、企業の姿勢が消費者の選択に影響を与える時代になっているのだ。
効果的な企業理念の伝え方
企業理念を効果的に伝えるには、抽象的な言葉の羅列ではなく、具体的なエピソードやストーリーで語ることが重要だ。
1. 創業ストーリーを語る
なぜこの事業を始めたのか、どんな想いがあったのか。創業者の個人的な体験や地域への愛着を語ることで、企業理念に血が通う。
例:「代表の私自身が、初めての一人暮らしで不安だった経験から、『誰もが安心して新生活を始められる場所を提供したい』という想いでこの会社を立ち上げました」
2. 地域貢献活動を明示する
地域清掃活動への参加、地元イベントのスポンサー、学生向けの住まい探しセミナー開催など、具体的な活動内容を写真付きで紹介する。これにより、「地域に根ざした信頼できる企業」というイメージが強化される。
3. お客様の成功事例を紹介する
「当社でお部屋を見つけたお客様が、その後地域で飲食店を開業し成功した」「ファミリー向け物件をご紹介したご家族が、地域コミュニティに溶け込み幸せに暮らしている」といったストーリーは、企業理念の実践例として説得力がある。
4. スタッフの声を盛り込む
「私たちが大切にしていること」として、スタッフそれぞれが日々の業務で心がけていることを短いコメントで紹介する。経営者だけでなく現場スタッフの声を載せることで、理念が組織全体に浸透していることが伝わる。
SDGsや社会課題への取り組みも差別化要因に
2024年4月に建築物の省エネ性能表示制度が始まったことを受けたRSC調査では、住まいを選ぶ上で省エネ性能が「重要」との回答が全体で77%に達した。光熱費の高騰や気候変動への関心の高まりが背景にある。
こうした社会的関心に対応し、「省エネ性能の高い物件を積極的に紹介している」「環境配慮型の物件を扱っている」といった姿勢を会社概要ページで明示することは、差別化要因になる。
また、高齢者向け住宅の紹介、外国人居住者のサポート、ペット可物件の充実など、社会課題の解決に貢献する取り組みをアピールすることで、企業の社会的価値が高まり、信頼性が向上する。
第4章:写真と動画が「第一印象」を決める——ビジュアルコンテンツの戦略
データが示す「写真の圧倒的重要性」
RSC調査で最も注目すべきデータの一つが、不動産会社選択のポイントとして「写真の点数が多い」が72.1%でトップ、特にポイントとなる点でも39.8%で1位を獲得したことだ。これは前年より高い割合となっており、ビジュアルコンテンツの重要性が年々高まっていることを示している。
物件写真が豊富であることは当然として、企業ウェブサイト全体のビジュアル戦略も見直す必要がある。
会社概要ページで使うべき写真とは
1. オフィス・店舗の外観と内観
清潔感があり、明るく開放的な店舗の写真は、来店への心理的ハードルを下げる。受付カウンター、商談スペース、キッズスペース(あれば)など、実際に訪問した際のイメージが湧く写真を複数掲載する。
2. スタッフの働く姿
実際に業務をしている自然な表情のスタッフ写真は、活気ある職場環境を伝える。顧客対応している様子、チームでミーティングしている様子など、「ここで働く人たちは信頼できそう」と感じさせるシーンを選ぶ。
3. 地域の風景
取り扱いエリアの特徴的な風景、季節ごとの表情、地元のイベント風景などを掲載することで、地域への深い理解と愛着を視覚的に伝えられる。
4. 社内イベントや地域貢献活動
社員旅行、懇親会、地域清掃活動などの写真は、企業文化や人間関係の良さを伝える。特に若手求職者にとっては、職場の雰囲気を知る手がかりにもなる。
動画コンテンツの効果的な活用法
前述の通り、「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」が不動産会社選択のポイントとして2年連続で増加し、32.6%に達している。この傾向は売買でさらに顕著で、「物件の室内の動画」「住環境の様子が分かる動画」への関心が高まっている。
物件動画だけでなく、企業紹介動画も効果的だ。以下のような内容が推奨される。
1. 代表挨拶動画(1〜2分)
企業理念、事業への想い、お客様へのメッセージを代表者自身が語る。文章よりも声と表情で伝わる情熱や誠実さは、信頼構築に大きく貢献する。
2. オフィスツアー動画(1〜2分)
店舗の入口から商談スペースまでを案内形式で紹介。「実際に訪問したらこんな感じなんだ」というイメージが持てることで、来店への不安が軽減される。
3. スタッフ紹介動画(各30秒〜1分)
自己紹介、専門分野、お客様へのメッセージを短くまとめる。複数のスタッフ動画を用意することで、「自分に合いそうな担当者」を見つけやすくなる。
4. サービス紹介動画(2〜3分)
物件探しの流れ、内見時のポイント、契約までのサポート内容など、サービスの特徴を分かりやすく解説。特に初めて不動産仲介を利用する人にとって、プロセスの透明性は安心材料になる。
写真・動画のクオリティが企業イメージを左右する
ただし、量だけでなく質も重要だ。暗い写真、ブレた写真、古い写真は逆効果となる。スマートフォンでも十分な画質が得られる時代だが、可能であればプロのカメラマンに依頼し、統一感のあるトーンで撮影することをお勧めする。
動画についても、手ぶれが激しいものや音質が悪いものは避けるべきだ。最近では、スマートフォン用の簡易スタビライザーやマイクも手頃な価格で入手できるため、初期投資としてそろえておく価値がある。
第5章:口コミと第三者評価——信頼性を「証明」する方法
口コミの力を侮ってはいけない
2024年度のRSC調査で新設された「不動産会社に対する口コミ情報」という選択肢が、不動産会社選択のポイントとして一定の支持を集めたことは注目に値する。
消費者は、企業が発信する情報だけでなく、第三者による客観的な評価を重視している。レストラン選びでも旅行先選びでも、口コミサイトやレビューを参考にするのが当たり前になった現代において、不動産会社選びも例外ではない。
ウェブサイトに顧客の声を掲載する
1. 具体的なエピソードを含む声
「対応が良かった」という抽象的な感想よりも、「内見当日に急な予定変更があったが、柔軟に対応してくれた」「希望条件が多く難航していたが、3日間で5件の候補物件を紹介してくれた」といった具体的なエピソードのほうが説得力がある。
2. 写真付きの声(可能であれば)
顧客本人の許可を得て、引き渡し時の記念写真などを掲載できれば理想的だ。ただし、プライバシーに十分配慮し、顔を隠す、イニシャルのみ表示するなどの対応が必要。
3. 属性別の声
「単身者」「ファミリー」「高齢者」「外国人」など、ターゲット層ごとの顧客の声を用意することで、自分と似た境遇の人の体験を参考にできる。
4. 改善事例も正直に
「最初は希望と違う物件を紹介されたが、しっかりヒアリングし直してくれて理想の物件が見つかった」といった、課題があったがそれを乗り越えたエピソードは、企業の誠実さと問題解決能力を示す。
外部の口コミサイトを活用する
Googleマイビジネスのレビュー、不動産専門の口コミサイトなど、外部プラットフォームでの評価も無視できない。これらのレビューには必ず丁寧に返信し、ポジティブなレビューには感謝を、ネガティブなレビューには誠実な対応を示すことが重要だ。
ネガティブなレビューへの対応は、むしろ企業の姿勢を示す絶好の機会だ。「ご不便をおかけし申し訳ございませんでした。今後の改善に活かします」といった真摯な姿勢は、他の閲覧者にも好印象を与える。
第三者認証・受賞歴の表示
業界団体からの認証、優良事業者認定、地域の表彰、メディア掲載実績などがあれば、会社概要ページに目立つように表示する。これらは客観的な信頼の証となる。
第6章:「見やすさ」と「分かりやすさ」——ウェブサイト設計の実践テクニック
3秒で「信頼できる」と思わせる第一印象
人間の第一印象は3秒で決まるという研究がある。ウェブサイトも同様で、トップページを開いた瞬間の印象が、その後の行動を大きく左右する。
第一印象を良くするポイント:
1. クリーンで統一感のあるデザイン
ごちゃごちゃした情報過多のページは、かえって信頼性を損なう。白を基調とした清潔感のあるデザイン、統一されたフォントと色使い、適切な余白が重要だ。
2. ファーストビューに核心を
スクロールせずに見える範囲(ファーストビュー)に、企業のキャッチコピー、強み、問い合わせボタンを配置する。「地域密着30年の実績」「年間〇〇件の成約実績」など、数字で示せる実績は効果的だ。
3. スマートフォン対応は必須
RSC調査によれば、不動産情報をスマートフォンで検索する人が圧倒的多数を占める。レスポンシブデザインで、スマートフォンでも快適に閲覧できるサイト設計が必須だ。
4. ページ読み込み速度の最適化
3秒以上読み込みに時間がかかると、半数以上のユーザーが離脱するというデータがある。画像の軽量化、不要なスクリプトの削除など、表示速度の最適化は信頼性以前の問題だ。
会社概要ページの理想的な構成
効果的な会社概要ページは、以下の順序で情報を配置する。
1. 企業理念・ビジョン(上部)
ページの最初に、企業が大切にしている価値観や目指す方向性を明示する。ビジュアルとともに印象的に提示することで、企業の「顔」となる。
2. 代表者メッセージ
代表者の顔写真とメッセージ(または動画)を配置。企業の人格を代表する重要なセクション。
3. 会社の強み・実績
「創業〇年」「年間成約件数〇件」「顧客満足度〇%」など、数字で示せる実績を箇条書きで分かりやすく表示。グラフやアイコンを使うと視認性が高まる。
4. スタッフ紹介
写真付きで各スタッフを紹介。名前、役職、専門分野、趣味、一言メッセージなどを掲載。
5. サービス内容
物件仲介だけでなく、引っ越しサポート、リフォーム相談、法律相談など、提供する付加価値サービスを明記。
6. 地域貢献活動
地域イベント参加、社会貢献活動など、企業の社会的責任に関する取り組みを紹介。
7. お客様の声
実際の利用者の声を複数掲載。可能な限り具体的なエピソードを含める。
8. 会社概要(基本情報)
会社名、所在地、設立年月日、資本金、代表者名、免許番号、所属団体など、法的に必要な情報を一覧で表示。
9. アクセス情報
地図、最寄り駅からの道順、駐車場の有無など、来店しやすさを伝える情報。
10. 問い合わせボタン
ページの各所に、目立つ色の問い合わせボタンを配置。「気軽にご相談ください」など、ハードルを下げる文言を添える。
アクセシビリティへの配慮
高齢者や障害を持つ人にも使いやすいウェブサイト設計は、企業の配慮を示すとともに、潜在顧客層の拡大にもつながる。
- 文字サイズを大きめに設定、または変更可能にする
- コントラストを高め、見やすい配色にする
- 音声読み上げソフトに対応する
- 動画には字幕をつける
こうした配慮は、「すべての人に優しい企業」というイメージを作り、信頼性を高める。
第7章:更新頻度が信頼を生む——継続的な情報発信の重要性
「生きているウェブサイト」と「死んでいるウェブサイト」
どんなに素晴らしいデザインのウェブサイトでも、情報が古いままでは信頼性を損なう。「最終更新日:2018年」などと表示されていれば、「この会社、本当に営業しているのか?」と不安になるのは当然だ。
逆に、定期的に更新されているウェブサイトは、企業の活動が活発であることの証明となる。
更新すべきコンテンツ
1. 新着物件情報(週1回以上)
これは言うまでもないが、トップページに「新着物件」「おすすめ物件」を常に更新表示することで、サイトが生きていることを示す。
2. スタッフブログ(週1〜2回)
地域情報、季節ごとの引っ越しアドバイス、物件選びのコツなど、読者にとって有益な情報を発信する。日常的な出来事や地域の話題なども交えることで、親近感が生まれる。
3. お知らせ・ニュース(随時)
新しいスタッフの入社、営業時間の変更、地域イベント参加、メディア掲載など、企業活動に関する情報をタイムリーに発信する。
4. お客様の声(月1回以上)
新しい顧客の声を定期的に追加することで、「最近も多くの人が利用している」という印象を与える。
5. 季節コンテンツ
「春の新生活応援キャンペーン」「夏の引っ越しピーク対策」「秋の物件探しのポイント」など、季節に応じたコンテンツを用意する。
SNSとの連動で情報発信力を強化
ウェブサイト単体だけでなく、InstagramやX(旧Twitter)、Facebookなどのソーシャルメディアと連動させることで、情報発信の幅が広がる。
特にInstagramは、写真や動画との相性が良く、物件紹介だけでなく、スタッフの日常、地域の魅力などを視覚的に発信できる。ハッシュタグを活用すれば、地域内での認知度向上にもつながる。
ウェブサイトにSNSのフィード(投稿一覧)を埋め込むことで、サイトが常に更新されている印象を与えられる。
第8章:問い合わせへの「スピード」と「丁寧さ」が分かれ道
データが示す「レスポンスの速さ」の重要性
RSC調査で、不動産会社の対応に満足したこととして「問い合わせに対するレスポンスが早かった」が賃貸69.5%、売買74.7%でトップを占めた。一方、不満だったこととして「問い合わせをしたら返答が遅かった」が賃貸17.4%、売買14.7%で上位に入っている。
つまり、レスポンスの速さが顧客満足度を大きく左右するのだ。
ウェブサイトでできる対策としては、以下が挙げられる。
1. 問い合わせフォームの最適化
- 入力項目は必要最小限に(名前、電話番号、メールアドレス、問い合わせ内容程度)
- スマートフォンでも入力しやすいデザイン
- 送信後の自動返信メールで「〇営業日以内に返信します」と明示
2. 複数の問い合わせ手段を用意
- 電話番号を目立つ位置に大きく表示
- LINEやチャットボットでの問い合わせ対応
- 営業時間外でも受付可能なメールフォーム
3. 「よくある質問(FAQ)」の充実
簡単な疑問は即座に解決できるよう、詳しいFAQページを用意する。これにより、問い合わせ件数も減り、対応の効率化にもつながる。
4. レスポンス目標時間の明示
「お問い合わせには24時間以内に必ず返信します」など、具体的な時間を明示することで、顧客の不安を軽減できる。
「丁寧さ」を伝えるウェブサイト上の工夫
RSC調査で「言葉遣いや対応が丁寧だった」が満足度の上位に入ったことは、接客の質が評価されている証拠だ。ウェブサイト上でも「丁寧さ」を感じさせる工夫ができる。
- 問い合わせフォームの送信ボタンに「お気軽にご相談ください」などの柔らかい表現を使う
- トップページに「初めての方へ」ガイドを用意し、物件探しの流れを丁寧に説明する
- 専門用語には注釈をつけ、分かりやすい言葉で説明する
- チャットボットの応答も、事務的ではなく親しみやすいトーンにする
第9章:成功事例から学ぶ——信頼されるウェブサイトの共通点
地域密着型A社:スタッフの顔が見える安心感
関東近郊で展開するある地域密着型不動産会社は、ウェブサイトのトップページに全スタッフの顔写真と一言メッセージを掲載している。さらに、各スタッフの詳細ページでは、地域への想い、得意エリア、過去の成約事例などを動画付きで紹介。
この会社の問い合わせ数は、ウェブサイトリニューアル後6ヶ月で30%増加したという。特に「〇〇さんに相談したい」と担当者指名での問い合わせが増えたことが特徴だ。
成功のポイント:
- スタッフ一人ひとりの「人となり」が分かる情報量
- 動画による親近感の醸成
- 地域への深い理解と愛着の表現
革新的B社:テクノロジーと人間味の融合
都市部で展開する別の仲介会社は、最新のバーチャルツアー技術を導入しつつ、「でも最後は人」というメッセージを前面に出している。
ウェブサイトでは、物件の360度バーチャルツアーと同時に、「担当スタッフによる物件紹介動画」を掲載。スタッフが実際に物件を案内しながら、周辺環境や注意点などを解説する形式だ。
また、オンライン相談の予約システムを導入し、画面上で空き時間を確認してその場で予約できる利便性を提供。一方で、「対面での相談も大歓迎」と明記し、選択肢を用意している。
成功のポイント:
- デジタルと対面のバランス
- テクノロジーを活用しつつ、人間的な要素を大切にする姿勢
- 顧客の選択肢を広げる柔軟性
伝統的C社:実績と信頼の可視化
創業50年を超える老舗不動産会社は、その歴史と実績を効果的に表現している。
ウェブサイトには、年代ごとの会社の歩みを写真とともに紹介する「ヒストリーページ」を設置。地域の発展とともに歩んできた企業の軌跡が、信頼感を生んでいる。
また、「累計成約件数〇〇件」「顧客リピート率〇〇%」「3世代にわたってご利用いただいているお客様多数」など、具体的な数字で実績を示している。
成功のポイント:
- 歴史を資産として活用
- 具体的な数字による裏付け
- 世代を超えた信頼の継承
第10章:今日から始められる10の実践ステップ
ここまで読んで「大規模な予算が必要なのでは?」と不安に思った方もいるかもしれない。しかし、信頼されるウェブサイト作りは、必ずしも大きな投資を必要としない。
以下、今日から始められる具体的なアクションステップを紹介する。
ステップ1:スタッフの写真と自己紹介を撮影する(所要時間:1日)
まずは手持ちのスマートフォンで構わない。各スタッフの笑顔の写真と、200〜300字程度の自己紹介文を用意する。趣味や休日の過ごし方、この仕事への想いなど、人間味が伝わる内容を心がける。
ステップ2:代表者メッセージを作成する(所要時間:2時間)
企業理念、創業の想い、お客様へのメッセージを500〜800字程度でまとめる。可能であれば1〜2分の動画を撮影する。
ステップ3:お客様の声を集める(継続的)
過去の顧客に連絡し、サービスの感想をヒアリングする。許可を得た上で、具体的なエピソードとともにウェブサイトに掲載する。最初は3〜5件から始め、徐々に増やしていく。
ステップ4:会社概要ページを見直す(所要時間:3時間)
現在の会社概要ページを上記の理想的な構成と比較し、不足している要素を追加する。特に企業理念、スタッフ紹介、地域貢献活動の情報を充実させる。
ステップ5:オフィス・店舗の写真を撮影する(所要時間:1時間)
外観、内観、商談スペースなど、清潔で明るい店舗の写真を複数撮影する。晴れた日の自然光が入る時間帯がおすすめ。
ステップ6:地域情報コンテンツを作成する(所要時間:2時間/週)
取り扱いエリアの魅力、おすすめスポット、季節のイベント情報などを、写真付きのブログ記事として発信する。週1回のペースで継続する。
ステップ7:FAQページを充実させる(所要時間:3時間)
よくある質問とその回答を20〜30項目用意する。初めて不動産仲介を利用する人の不安を解消する内容を心がける。
ステップ8:問い合わせフォームを最適化する(所要時間:1時間)
入力項目を見直し、必要最小限にする。スマートフォンでの入力しやすさをチェックする。自動返信メールの内容も親しみやすく丁寧なトーンに修正する。
ステップ9:SNSアカウントを開設・活用する(継続的)
InstagramまたはFacebookアカウントを開設し、物件情報だけでなく、スタッフの日常や地域の話題を投稿する。週2〜3回の更新を目標にする。
ステップ10:ウェブサイトの表示速度を最適化する(所要時間:2時間)
画像のサイズを圧縮し、不要なプラグインを削除する。GoogleのPageSpeed Insightsなどのツールでチェックしながら改善する。
第11章:継続的な改善のために——効果測定とPDCAサイクル
どの施策が効果的だったかを測定する
ウェブサイトの改善は一度行えば終わりではなく、継続的なプロセスだ。効果を測定し、改善を繰り返すPDCAサイクルを回すことが重要だ。
測定すべき指標:
1. アクセス数
- 月間訪問者数の推移
- ページビュー数
- 平均滞在時間
- 直帰率(最初のページだけ見て離脱する割合)
2. 問い合わせ数
- 月間問い合わせ件数
- 問い合わせ経路(電話、メール、フォーム、LINE等)
- 問い合わせから成約への転換率
3. ページ別の人気度
- どのページがよく見られているか
- スタッフ紹介ページの閲覧数
- ブログ記事の人気ランキング
4. 検索キーワード
- どんなキーワードでサイトに辿り着いているか
- 地域名+不動産の検索順位
これらの指標は、Googleアナリティクスなどの無料ツールで測定できる。
A/Bテストで最適解を見つける
例えば、問い合わせボタンの色を「青」と「オレンジ」で比較し、どちらがクリックされやすいかテストする。スタッフ写真の配置を変えて、どちらが問い合わせにつながるかを検証する。
こうした小さな改善の積み重ねが、大きな成果を生む。
顧客フィードバックを活かす
実際に来店した顧客に「ウェブサイトのどこを見て当社を選びましたか?」とヒアリングする。この生の声が、最も価値ある改善のヒントとなる。
第12章:ハウスコムFC加盟で得られる「ウェブ戦略の支援」
ここまで、自社でできるウェブサイト改善の方法を解説してきた。しかし、「人手が足りない」「専門知識がない」「投資余力が限られている」という課題を抱える事業者も多いだろう。
そこで注目したいのが、フランチャイズ加盟による支援体制だ。特に不動産業界では、大手ブランドのノウハウやシステムを活用できるフランチャイズモデルが、中小事業者の競争力強化に貢献している。
ブランド力と信頼性の獲得
大手フランチャイズに加盟することで、消費者が求める「地元で知名度のある会社」という条件を満たしやすくなる。ブランド名そのものが信頼の証となり、問い合わせへの心理的ハードルが下がる。
標準化されたウェブシステムの提供
多くのフランチャイズ本部は、加盟店向けに統一されたウェブサイトシステムを提供している。デザイン、機能、セキュリティなど、個人で構築するには負担が大きい要素を、本部のサポートで実現できる。
マーケティングノウハウの共有
本部が蓄積した成功事例やベストプラクティスを共有してもらえることは、大きなアドバンテージだ。どんなコンテンツが効果的か、どんな表現が顧客の心をつかむか、といった知見を活用できる。
継続的なアップデート
デジタル技術は日進月歩で進化する。個人でこの変化に追随するのは困難だが、フランチャイズ本部のサポートがあれば、常に最新の技術やトレンドを取り入れたウェブサイト運営が可能になる。
本業に集中できる環境
ウェブサイトの技術的な管理や更新作業を本部がサポートすることで、加盟店は本業である顧客対応や物件開拓に集中できる。これは経営効率の観点からも重要だ。
終章:「信頼」は一日にして成らず——継続が競争優位を生む
本記事では、不動産賃貸仲介業者が「この会社、信頼できそう」と思わせるウェブサイト・会社概要ページを作るための具体的な方法を、データに基づいて解説してきた。
重要なのは、ウェブサイトは単なる情報掲示板ではなく、企業の人格を表現するデジタルショールームであるという認識だ。
消費者は物件情報だけでなく、「この会社は信頼できるか」「この人たちと取引して大丈夫か」を、ウェブサイトを通じて判断している。だからこそ、スタッフの顔が見える情報、企業理念や価値観、地域への貢献、お客様の声といった、「人間性」を伝える要素が不可欠なのだ。
また、RSC調査が示すように、写真や動画などのビジュアルコンテンツの重要性は年々高まっている。言葉だけでなく、視覚的に「安心感」「信頼感」を伝える工夫が求められる。
そして何より、継続的な情報発信と改善が成功の鍵だ。一度作って終わりではなく、常に更新し、顧客の反応を見ながら改善を重ねる。この地道な努力が、大手にはない独自の強みとなり、地域での確固たる地位を築く。
消費者が問い合わせる不動産会社を事前に絞り込む時代において、ウェブサイトは「選ばれるか、選ばれないか」の最初の関門だ。この関門を突破するためには、物件情報の充実だけでなく、企業としての信頼性、スタッフの人間性、地域への貢献など、多面的な魅力を発信する必要がある。
今日から始められる小さな一歩が、半年後、1年後の大きな成果につながる。本記事で紹介した実践ステップを参考に、あなたの会社の「デジタルショールーム」を進化させ、顧客から選ばれる企業へと成長していただきたい。
不動産業界の未来は、テクノロジーと人間味の融合にある。そして、その最前線がウェブサイトなのだ。


