なぜ今、不動産業界で「丁寧な対応」が成約の決定打となるのか――データが示す顧客の本音と実践法

顧客の7割が重視する「丁寧・親身な対応」、しかし満たされていない現実

賃貸住宅を探す際、あなたの会社はどのような点で顧客から選ばれているだろうか。物件の数か、立地の良さか、それとも仲介手数料の安さか。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査によると、物件契約者が不動産会社に求める要素として最も多かったのは「丁寧・親身な対応」で、実に70.1%が重要視していることが明らかになった。これは「正確な物件情報の提供」(67.4%)や「問合せに対する迅速な対応」(63.9%)を上回る結果だ。

さらに注目すべきは、「特に重要なもの」として丁寧な対応を挙げた回答者が17.4%と、こちらでもトップに立っている点である。物件情報の充実度や対応スピードも重要だが、最終的に顧客が契約を決断する際の決め手となるのは、担当者の「人としての対応」なのだ。

しかし、現実はどうか。同調査で「不満だったこと」のトップには「言葉遣いや対応が気に障った」(18.8%)が挙げられ、賃貸契約者に限れば22.2%にも達している。つまり、顧客が最も求めているものが、最も不満の原因にもなっているという皮肉な状況が浮き彫りになったのである。


丁寧な対応が成約率を左右する3つの理由

1. 検討期間の長期化と情報過多の時代

調査データによれば、物件契約までの期間は賃貸・売買ともに長期化傾向にある。賃貸では1か月以上の検討期間を要した人が69.3%と、前年より8.0ポイント増加した。さらに、問合せた不動産会社数は平均3.5社、物件数に至っては平均5.5物件と、顧客は複数の選択肢を慎重に比較検討している。

この状況下で、顧客は単なる情報提供者ではなく、膨大な情報を整理し、自分に最適な選択肢を一緒に考えてくれる「信頼できるパートナー」を求めている。大手不動産ポータルサイトで容易に物件情報が入手できる今、不動産会社の差別化要因は「人的対応の質」に集約されつつあるのだ。

2. 不満の多くは「態度」に起因する

調査における「不満だったこと」の上位項目を見ると、興味深い傾向が見えてくる。

  • 「言葉遣いや対応が気に障った」(18.8%)
  • 「問合せをしたら、その物件はもう無いと言われた」(17.0%)
  • 「問合せへの回答が的を射ていなかった」(11.8%)
  • 「問合せをしたら返答が遅かった」(14.6%)

これらの不満の根底にあるのは、「自分が大切に扱われていない」という感覚である。物件が既に成約済みであることは仕方がない。しかし、その伝え方、代替案の提示の仕方、顧客の希望を理解しようとする姿勢によって、印象は180度変わる。

逆に「満足だったこと」の上位には、「問合せに対するレスポンスが早かった」(71.5%)、「こちらの都合を配慮してくれた」(51.4%)、「言葉遣いや対応が丁寧だった」(44.4%)が並ぶ。顧客が評価するのは、担当者が自分の立場に立って考え、行動してくれたと感じられるかどうかなのだ。

3. 口コミ・評判の影響力拡大

不動産会社を選ぶポイントとして、「不動産会社に対する口コミ情報」を重視する回答者は年々増加している。特に「特に重視するポイント」では前年比で増加傾向を示し、SNSやインターネット上の評判が、顧客の意思決定に直接的な影響を与えている。

丁寧な対応は、目の前の顧客1人を満足させるだけではない。その顧客がSNSやレビューサイトに書き込む評価を通じて、将来の顧客獲得にも繋がる投資なのである。逆に、たった一度の不適切な対応が、オンライン上で拡散され、長期的な信頼損失を招くリスクもある。


「丁寧な対応」の具体的定義と7つの実践法

抽象的な「丁寧さ」を、現場で実践可能な行動に落とし込むことが重要だ。以下、顧客データと業界のベストプラクティスから導き出した具体的手法を紹介する。

実践法1:レスポンスタイムを戦略的に短縮する

調査で満足度トップの「問合せに対するレスポンスの早さ」。これは単にメールや電話を早く返すだけではない。

具体的行動:

  • 問合せから30分以内の初回返信を徹底(たとえ詳細回答が後日でも、受付確認の連絡を入れる)
  • 営業時間外の問合せには、自動返信で「翌営業日○時までに返信します」と明示
  • 物件が成約済みの場合も、代替物件を2〜3件添えて返信する

NG行動:

  • 「物件はもう無いです」だけの返信
  • 2〜3日放置してからの返信
  • 定型文のみで個別の要望に触れない返信

実践法2:顧客の都合を最優先する柔軟性

「こちらの都合を配慮してくれた」という満足要因は、顧客が「自分のための接客」を受けていると実感できるポイントだ。

具体的行動:

  • 内見日時は最低3つの選択肢を提示し、「他にご都合の良い時間帯があれば教えてください」と付け加える
  • 「平日は仕事で難しい」という顧客には、土日や夜間の対応を積極的に提案
  • オンライン内見やIT重説など、非対面型サービスの選択肢を提示(調査では49.0%が関心)

NG行動:

  • 「この日時しか空いていません」と一方的に指定
  • 顧客の生活リズムを考慮しない時間帯への電話
  • 契約を急かす発言(「今決めないと他の人に取られますよ」など)

実践法3:言葉遣いと態度の「見える化」チェック

「言葉遣いや対応が気に障った」という不満が18.8%に達する事実は、多くの現場で無自覚なコミュニケーションミスが起きていることを示唆する。

具体的行動:

  • 問合せ対応のロールプレイングを週1回実施し、相互フィードバック
  • 「〜させていただく」の過剰使用を避け、「〜いたします」で簡潔に
  • クッション言葉(恐れ入りますが、お手数ですが)を適切に使用
  • 顧客の名前を会話に自然に織り込む(「田中様のご希望ですと」など)

NG行動:

  • タメ口や過度なフレンドリーさ(信頼関係構築前)
  • 専門用語の連発(「告知事項」「IT重説」など、説明なく使用)
  • 否定から入る言葉(「それは無理です」「できません」)

実践法4:的確な回答のための傾聴力強化

「問合せへの回答が的を射ていなかった」という不満は、表面的な質問に答えるだけで、顧客の本当のニーズを掴めていないことが原因だ。

具体的行動:

  • 質問に答える前に、「なぜそれが気になるか」の背景を確認する質問を入れる 例:「駅徒歩5分以内とのことですが、通勤時間を短縮されたいということでしょうか?」
  • 顧客の優先順位を明確にする(予算、立地、広さ、設備などの順位)
  • 物件紹介時は「この物件をお勧めする理由」を顧客の希望と紐付けて説明

NG行動:

  • 聞かれたことだけに機械的に答える
  • 顧客の要望を最後まで聞かず、遮って提案を始める
  • 自社の都合(手数料が高い物件など)を優先した提案

実践法5:物件知識の徹底的な強化

「物件や不動産に詳しかった」は満足要因の上位に入るが、これは単なる専門知識の披露ではない。顧客の不安を解消し、安心して決断できる情報を提供することだ。

具体的行動:

  • 物件の周辺環境を実際に自分で歩いて確認(スーパー、病院、学校など)
  • ハザードマップ情報を事前に調べ、自主的に提供(調査では災害リスク情報への関心が高い)
  • 過去の入居者の退去理由や平均居住期間など、独自情報を提供
  • 「この物件のデメリットは○○ですが、△△という利点があります」と両面提示

NG行動:

  • 物件資料に書いてある情報しか答えられない
  • 「わかりません、調べておきます」を連発
  • デメリットを隠す、または質問されるまで言わない

実践法6:プロセスの透明性確保

契約プロセスが見えないことへの不安は、不信感に繋がりやすい。

具体的行動:

  • 初回接客時に、「物件探し→内見→申込→契約」までの全体フローと所要期間を書面で説明
  • 各ステップで「次に何が起きるか」を事前に伝える
  • 審査状況などを週1回は能動的に報告(連絡がない=進んでいない、と顧客は不安になる)

NG行動:

  • 「審査中です」とだけ伝え、いつ結果が出るか不明
  • 顧客から催促されるまで連絡しない
  • 追加書類が必要になった際、理由を説明しない

実践法7:アフターフォローの徹底

契約がゴールではない。入居後の満足度が、紹介や口コミに直結する。

具体的行動:

  • 入居1週間後、1か月後に状況確認の連絡(不具合はないか、困っていることはないか)
  • 更新時期の3か月前に連絡し、継続か引っ越しかの意向を確認
  • 退去後も、次の住まい探しで連絡を取りやすい関係性を維持

NG行動:

  • 契約後は何の連絡もない
  • 更新の案内が突然届く(選択の余地を感じさせない)
  • 退去時にトラブルが起きてから初めて連絡を取る

ハウスコムFCが提供する「丁寧な対応」を支える仕組み

こうした丁寧な対応を個人の努力だけで実現し続けるのは困難だ。ハウスコムFC加盟店では、以下のような組織的サポートにより、全スタッフが高水準の接客を提供できる環境が整っている。

体系化された接客研修プログラム

ハウスコムFCでは、新人からベテランまで、段階的な接客スキル向上プログラムを提供している。ロールプレイング、優良事例の共有、クレーム対応のシミュレーションなど、実践的なトレーニングにより、「丁寧な対応」を属人化させない仕組みを構築している。

顧客満足度を可視化する仕組み

定期的な顧客アンケートとNPS(ネット・プロモーター・スコア)の測定により、各店舗・各スタッフの接客品質を数値で把握。改善ポイントを明確にし、PDCAサイクルを回すことで、継続的な品質向上を実現している。

大手不動産ポータルサイトとの連携強化

物件情報の鮮度管理は、顧客満足度に直結する重要要素だ。「問合せをしたら、その物件はもう無いと言われた」という不満(17.0%)を防ぐため、ハウスコムFCでは大手不動産ポータルサイトとのリアルタイム連携により、情報の正確性を保っている。

DX推進による業務効率化と顧客対応力向上

IT重説やオンライン契約などの非対面型サービスの導入支援により、顧客の利便性を高めると同時に、スタッフの時間的余裕を創出。結果として、一人ひとりの顧客に向き合う時間を確保できる体制を実現している。

調査データによれば、IT重説の活用意向は49.9%、オンライン契約は42.2%と高い関心を示しており、これらのサービス提供能力は今後の競争力の源泉となる。

情報共有プラットフォームの活用

FC加盟店間での成功事例・失敗事例の共有により、個店では得られない知見を蓄積。「この対応で顧客が喜んだ」「この言い回しでトラブルになった」といった具体的ノウハウを組織全体で共有し、全加盟店の底上げを図っている。


丁寧な対応は「コスト」ではなく「投資」である

「丁寧に対応する時間がない」「効率が悪い」という声を現場で耳にすることがある。しかし、データが示すのは真逆の現実だ。

調査によれば、顧客が問合せる不動産会社数は平均3.5社、訪問する会社数は平均2.5社。つまり、最初に問合せた会社が全員契約するわけではなく、複数社を比較した結果、「この会社なら信頼できる」と思われた会社が選ばれる。その判断基準が、まさに「丁寧・親身な対応」なのだ。

短期的には、一人の顧客に時間をかけることは非効率に見えるかもしれない。しかし、中長期的には以下のメリットがある:

1. 成約率の向上 丁寧な対応により、問合せから成約までのコンバージョン率が向上。結果として、同じ広告費・集客数でも売上が増加する。

2. 紹介・リピーターの増加 満足した顧客は、友人・家族に紹介してくれる。賃貸の場合、2年後の更新時や次の引っ越し時に再度利用してくれる可能性も高い。

3. クレーム・トラブルの減少 契約前に丁寧にコミュニケーションを取ることで、契約後の「聞いていない」「話が違う」というトラブルを未然に防げる。結果として、クレーム対応に費やす時間とコストが削減できる。

4. スタッフのモチベーション向上 顧客から感謝される機会が増えることで、スタッフの仕事へのやりがいが高まる。離職率の低下にも繋がり、採用・教育コストの削減にもなる。

5. オンライン評判の向上 良い口コミが増えることで、自然検索や口コミサイト経由での集客が増加。広告費を抑えながら顧客獲得ができる良循環が生まれる。


業界全体で「丁寧な対応」を標準にする

不動産賃貸仲介業界は、長年「契約を取ること」に注力してきた。しかし、顧客の情報リテラシーが向上し、選択肢が増えた現在、業界の在り方自体が問われている。

調査データが示すのは、顧客が求めているのは「物件を紹介してくれる人」ではなく、「人生の重要な決断を一緒に考えてくれるパートナー」だということだ。賃貸住宅は単なる「箱」ではなく、その人の生活の質、幸福度を左右する重要な選択である。

その重みを理解し、一人ひとりの顧客に真摯に向き合う姿勢こそが、「丁寧・親身な対応」の本質だ。そしてそれは、業界の信頼性向上にも繋がる。

ハウスコムFCは、こうした「顧客第一主義」の価値観を共有し、実践できる加盟店のネットワークを拡大している。単なるビジネスの拡大ではなく、業界全体のサービス品質を底上げし、「不動産会社は信頼できる」という社会的評価を確立することを目指している。


まとめ:差別化の鍵は「当たり前」を「確実に」実行すること

「丁寧な対応」と聞いて、特別なことだと感じる人もいるかもしれない。しかし、調査データが示すのは、顧客が求めているのは決して高度なテクニックではないということだ。

  • 迅速に返信すること
  • 顧客の都合を優先すること
  • 丁寧な言葉遣いをすること
  • 的確な情報を提供すること
  • プロセスを透明にすること

これらは全て、ビジネスの基本中の基本である。しかし、だからこそ難しい。忙しい時、疲れている時、成果が出ない時に、この「当たり前」を継続できるかどうかが、プロフェッショナルとアマチュアの分かれ目だ。

不動産賃貸仲介業界において、「丁寧な対応」はもはや差別化要因ではなく、生き残るための必須条件になりつつある。顧客の70%が求め、不満の第1位にもなるこの要素を、組織として実現できるかどうかが、今後の競争力を決める。

ハウスコムFC加盟店募集では、こうした価値観を共有し、共に業界の未来を創っていける仲間を求めている。個人の努力に頼るのではなく、組織的なサポート体制の中で、持続可能な高品質サービスを提供したいと考える事業者の方は、ぜひ一度、話を聞いてみてはいかがだろうか。

顧客が求める「丁寧な対応」を実現することは、単なる理想論ではない。データに裏打ちされた、確実にビジネス成果に繋がる戦略なのである。


【参考資料】 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年)