【2025年最新調査】不動産賃貸仲介で「駅前一等地」神話が崩壊?店舗立地より重視される時代の勝ち残り戦略

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なぜ今、優良物件を抱える駅前店舗でも集客に苦戦するのか

不動産賃貸仲介業界に、静かな地殻変動が起きている。これまで「成功の絶対条件」とされてきた駅前一等地の店舗展開。高額な賃料を投じて好立地を確保すれば、自然と顧客が集まる――そんな常識が、今、根底から揺らぎ始めている。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年1月から5月にかけて実施した最新調査によれば、物件契約者が不動産会社を選ぶ際、「店舗がアクセスしやすい場所にある」ことを重視する割合は2年連続で減少。一方で「写真の点数が多い」「不動産会社に対する口コミ情報」といった、情報の質や評判を重視する傾向が過去最高水準に達している。

この変化は一時的な現象ではない。デジタル化の加速、顧客の購買行動の変容、そして不動産テックの進化が重なり合い、業界の構造そのものを変えつつある。本記事では、948名の実際の契約者データから読み解く、立地神話崩壊の実態と、これからの時代に求められる店舗戦略を徹底分析する。


データが証明する「立地神話」の終焉

店舗アクセスの重要度、2年連続で低下

RSC調査の最も注目すべきデータは、P8「問合せや訪問を行う際に不動産会社を選ぶポイント」における変化だ。「店舗がアクセスしやすい場所にある」という項目は、不動産会社を選ぶポイントとして2年連続で割合が減少している。調査では明確に「店舗の立地より物件情報に重点を置いて不動産会社を選択する傾向が出ています」と指摘されている。

これは何を意味するのか。従来、賃貸仲介業界では「駅徒歩3分以内」「主要ターミナル駅前」といった店舗立地が、集客力を左右する決定的要因とされてきた。実際、多くの仲介業者が高額な賃料を支払い、好立地への出店競争を繰り広げてきた。

しかし、データは異なる現実を示している。顧客はもはや「店舗の場所」ではなく、「どんな情報を提供してくれるか」「どんなサービスを受けられるか」で不動産会社を選ぶ時代に突入しているのだ。

情報の質が選択基準のトップに

同調査によれば、不動産会社を選ぶポイントの第1位は「写真の点数が多い」(69.4%)となり、「特に重視するポイント」でも24.3%でトップを獲得した。これは直近3年間で最も高い割合だ。

さらに注目すべきは、「不動産会社に対する口コミ情報」が特に重視するポイントで18.1%と2位にランクインし、前年比でも増加傾向を示している点だ。顧客は店舗を訪れる前に、大手不動産ポータルサイトで物件の詳細写真を確認し、SNSや口コミサイトで不動産会社の評判をチェックする。この段階で既に、来店する会社を絞り込んでいるのである。

問合せ・訪問行動の変化が示すもの

顧客の行動パターンも大きく変化している。同調査によれば、物件契約までに問合せた不動産会社数は平均3.5社(前年比0.7社増)、特に賃貸では平均3.3社と2015年以降で最多となった。問合せた物件数も全体平均5.5物件(前年比1.1物件増)と増加傾向にある。

興味深いのは、問合せ数は増加する一方で、実際に訪問する不動産会社数は平均2.5社と、問合せ数ほど増えていない点だ。これは何を意味するか。顧客はオンラインで複数社に問い合わせ、レスポンスの速さ、提供される情報の質、対応の丁寧さなどを比較検討した上で、実際に訪問する会社を厳選しているのだ。

つまり、「とりあえず駅前の店舗に入ってみる」という時代は終わり、「事前に十分な情報を得て、納得した会社だけを訪問する」という、より合理的な行動パターンが主流になっているのである。


なぜ立地の重要性が低下したのか:5つの構造変化

1. 大手不動産ポータルサイトの浸透が物件探しを変えた

最大の要因は、大手不動産ポータルサイトの圧倒的な浸透だ。RSC調査では、不動産物件情報の鮮度や正確性が「最も信頼できる」情報源として、「不動産情報サイト」が42.8%でトップとなっている。

かつて物件情報は店頭でしか得られなかった。顧客は複数の店舗を巡り、それぞれで物件資料を受け取る必要があった。しかし今や、自宅やスマートフォンから、24時間いつでも数万件の物件を比較検討できる。この変化が、店舗立地の重要性を相対的に低下させている。

2. スマートフォン普及による「いつでも、どこでも」探索行動

スマートフォンの普及により、物件探しは場所と時間の制約から解放された。通勤電車の中、休憩時間、深夜のベッドの上――顧客は生活のあらゆる隙間時間に物件を検索し、気になる物件があればその場で問い合わせる。

この変化により、「駅前に店舗があるから立ち寄る」という偶発的な来店は激減した。代わりに、「この物件を扱っている会社だから問い合わせる」という、目的意識を持った接触が主流になっている。

3. 非対面型サービスの受容拡大

RSC調査によれば、IT重説(リモートでの重要事項説明)の活用意向は56.7%と調査開始以来最高を記録し、オンライン契約の活用意向も42.2%と3年連続で増加している。特に賃貸では、オンライン契約の活用意向が49.0%と約半数に達した。

コロナ禍を経て、非対面型サービスへの抵抗感は大幅に低下した。「契約のために店舗に何度も足を運ぶ必要がある」という従来の常識が崩れつつある今、店舗の物理的なアクセスの良さは、かつてほどの価値を持たなくなっている。

4. 口コミ・SNSによる事前評判チェックの常態化

SNSや口コミサイトの影響力も無視できない。RSC調査では、住まい探しの際に不動産情報サイト以外に利用しているものとして、「インターネットの口コミ」が賃貸で25.1%、売買で43.2%に上る。

特に注目すべきは、SNSの内訳だ。活用している人の中で最も多いのはYouTube(45.0%)、次いでInstagram(43.4%)となっている。顧客は物件の写真や動画、不動産会社の対応に関する生の声を事前にチェックし、評判の良い会社を選んで問い合わせる。店舗がどこにあるかより、「この会社は信頼できるか」が判断基準になっているのだ。

5. 検討期間の長期化と情報収集の高度化

住まい探しから契約までの期間も長期化している。賃貸では1ヶ月以上の割合が合計64.3%(前年比9.6pt増)、売買では3ヶ月以上が合計67.5%(前年比14.4pt増)と、顧客はより慎重に、より多くの情報を集めて判断している。

この長期化の中で、顧客が重視するのは「いつでも質の高い情報を提供してくれるか」「問い合わせに迅速に対応してくれるか」といった、継続的なサービス品質だ。一時的な店舗訪問の利便性より、契約までの長い期間を通じた信頼関係が重要になっている。


顧客が真に求めるもの:サービス品質こそが差別化要因

不動産会社に求められる3つの要素

では、立地以外で顧客は何を重視しているのか。RSC調査の「不動産会社に求めるもの」(P13)が、明確な答えを示している。

第1位:丁寧・親切な対応(全体76.4%) トップに挙げられたのは、接客の質だ。「特に重要なもの」でも19.4%と最多となっている。物件の良し悪し以前に、「この担当者は信頼できるか」「親身になって相談に乗ってくれるか」が、顧客の最大の関心事なのだ。

第2位:正確な物件情報の提供(全体69.4%) 情報の正確性も極めて重要だ。特に重視する割合も16.0%と高い。「問い合わせたら既に成約済みだった」「写真と実物が全く違う」といった経験は、顧客の信頼を一瞬で失わせる。常に最新の、正確な物件情報を提供できるかが問われている。

第3位:問合せに対する迅速な対応(全体67.4%) 問い合わせへのレスポンスの速さも重要だ。実際、「問合せた不動産会社の対応について満足だったこと」の第1位は「問合せに対するレスポンスが早かった」(71.5%)となっている。顧客は複数社に同時に問い合わせており、レスポンスが遅い会社は選択肢から外される。

サービス品質で差がつく具体的ポイント

同調査の「満足だったこと・不満だったこと」(P14)は、さらに具体的な示唆を与えてくれる。

満足ポイントTOP5:

  1. 問合せに対するレスポンスが早かった(71.5%)
  2. こちらの都合を配慮してくれた(51.4%)
  3. 言葉遣いや対応が丁寧だった(44.4%)
  4. 内見をさせてくれた(43.8%)
  5. 物件の提案や追加の連絡等をしてくれた(41.0%)

不満ポイントTOP3:

  1. 問合せをしたら、「その物件はもう無い」と言われた(18.8%)
  2. 言葉遣いや対応が気に障った(17.0%)
  3. 問合せへの回答が的を射ていなかった(11.6%)

これらのデータから見えてくるのは、「基本的な接客品質の徹底」と「情報管理の正確性」が、顧客満足を大きく左右するという事実だ。特に、物件情報の鮮度管理は致命的に重要で、「もう無い」と言われた経験は顧客の不満第1位となっている。


立地より重要な「選ばれる仕組み」の構築

オンライン上での存在感が第一の接点

店舗立地の重要性が低下した今、最初の接点は大手不動産ポータルサイトだ。RSC調査によれば、物件契約者の実に68.8%が、住まい探しの際に不動産情報サイト以外でも「不動産会社の自社ホームページ」を活用している。

つまり、顧客は大手不動産ポータルサイトで物件を見つけた後、その会社のホームページをチェックしているのだ。ここで「写真が豊富」「最新の物件情報が掲載されている」「会社の特徴やサービスが明確」といった要素が揃っていなければ、問い合わせには至らない。

物理的な店舗の立地より、デジタル上での「見つけやすさ」「魅力の伝わりやすさ」が、集客の入口になっている。

写真・動画コンテンツの質が勝負を分ける

「写真の点数が多い」が顧客の最重視ポイント第1位となった背景には、ビジュアル情報への強いニーズがある。特にInstagramやYouTubeといった視覚重視のSNSが情報源として使われている今、単なる間取り図だけでは不十分だ。

室内の雰囲気が伝わる複数アングルの写真、周辺環境を映した動画、日当たりや眺望を確認できるビジュアル――こうした充実したコンテンツが、「この会社は信頼できそう」という第一印象を形成する。

口コミ評価への戦略的対応

口コミ情報の重要性が高まる中、GoogleマイビジネスやSNSでの評価管理は必須となっている。特に注意すべきは、「対応が気に障った」といったネガティブな口コミが拡散すると、どれだけ好立地に店舗があっても問い合わせが来なくなるという現実だ。

逆に、「レスポンスが早い」「丁寧な対応」といったポジティブな口コミが蓄積されれば、多少アクセスが不便な場所でも顧客は訪れる。口コミは新たな「立地」とも言える存在になっている。


FC加盟という選択肢:システムとブランドで勝負する時代

個人店が直面する限界

ここまで見てきた変化は、個人経営の不動産会社にとって厳しい現実を突きつけている。

  • 大手不動産ポータルサイトへの掲載費用の高騰
  • 魅力的なホームページ制作・運用のコスト
  • SNS運用やデジタルマーケティングのノウハウ不足
  • 最新の物件情報管理システムへの投資
  • IT重説やオンライン契約対応の環境整備

これらすべてを自社単独で対応するには、相当な資金とノウハウが必要だ。特に、顧客が最も重視する「写真の豊富さ」「情報の正確性」「迅速なレスポンス」を実現するには、優れたシステム基盤が不可欠となる。

FC加盟がもたらす競争力

こうした状況で、フランチャイズ加盟という選択肢が注目されている。特にハウスコムのようなFC本部は、加盟店に対して以下のような基盤を提供する。

1. 統一された物件情報管理システム 最新の物件情報をリアルタイムで共有・管理できるシステムにより、「もう無い」という顧客不満の第1位を防げる。複数店舗の在庫を相互活用することで、提案力も向上する。

2. 充実した写真・コンテンツ基盤 プロカメラマンの手配、写真撮影のノウハウ、動画コンテンツ制作支援など、顧客が最も重視する「ビジュアル情報の充実」を実現できる仕組みがある。

3. ブランド力による信頼獲得 知名度のあるブランドに加盟することで、初期の信頼獲得が容易になる。口コミがまだ蓄積されていない新規開業時でも、ブランドの信用が補完してくれる。

4. 研修・ノウハウ共有による接客品質向上 顧客対応の研修、成功事例の共有、クレーム対応のマニュアルなど、「丁寧・親切な対応」を実現するためのノウハウが体系化されている。

5. デジタルマーケティング支援 大手不動産ポータルサイトへの効果的な掲載、SNS運用のノウハウ、SEO対策など、オンラインでの集客力を高める支援を受けられる。

立地に依存しない事業モデルの構築

FC加盟の最大のメリットは、「高額な駅前物件を借りなくても勝負できる」事業モデルを実現できる点だ。

駅から徒歩5分と徒歩10分では、賃料に大きな差がある。しかし、顧客が重視するのは「物理的なアクセス」ではなく「情報の質」「サービスの質」「レスポンスの速さ」だ。

FC本部が提供するシステムとブランド力を活用すれば、多少駅から離れた賃料の安い物件でも、充実したオンライン対応と高品質なサービスで十分に競争できる。浮いた賃料コストを、スタッフの教育や顧客対応の質向上に投資することで、より高い顧客満足を実現できるのだ。


物件探しの「省エネ性能」にも注目が集まる時代

もう一つ、見逃せないトレンドがある。RSC調査によれば、住まいを選ぶ上で省エネ性能を重要視する人が全体の78.6%に達している。特に売買では83.6%と非常に高い。

2024年に「建築物の省エネ性能表示制度」が開始され、2025年4月には新築住宅の省エネ基準適合が義務化された。これらの法改正を受けて、顧客の省エネ意識は急速に高まっている。

この変化は、不動産会社に新たな専門性を要求する。省エネ性能の説明、長期的な光熱費のシミュレーション、補助金制度の案内など、単なる物件紹介を超えた付加価値提供が求められている。

FC加盟店であれば、本部が用意した省エネ関連の資料やツール、研修プログラムを活用することで、こうした新しいニーズにも迅速に対応できる。個人店が独自に情報収集・資料作成するより、はるかに効率的だ。


実践すべき5つの戦略:立地に頼らない集客と満足度向上

戦略1:大手不動産ポータルサイトでの「見せ方」を徹底的に磨く

顧客との最初の接点である大手不動産ポータルサイトでの掲載内容を、徹底的に充実させる。

  • 物件写真は最低15枚以上、理想は20枚超
  • 室内だけでなく、共用部、周辺環境、眺望も撮影
  • 動画コンテンツも積極的に活用
  • 物件説明文は具体的に(「日当たり良好」ではなく「南向きバルコニーで午後3時まで直射日光が入ります」)
  • 更新頻度を上げて鮮度を保つ

戦略2:問い合わせ対応の「速さと質」で差別化

顧客満足の第1位「レスポンスの早さ」を実現する仕組みを作る。

  • 問い合わせ通知をスマートフォンで即受信
  • 1時間以内の初回返信を目標化
  • テンプレートではなく、個別の状況に応じた丁寧な返信
  • 「その物件はもう無い」を避けるための在庫管理の徹底
  • 問い合わせた物件以外の提案も添える

戦略3:非対面サービスを積極活用して利便性を高める

IT重説やオンライン契約の環境を整備し、顧客の利便性を向上させる。

  • IT重説の環境整備(安定したネット回線、専用機材)
  • オンライン契約のフロー確立
  • 遠隔地の顧客や多忙な顧客への対応強化
  • 「来店不要で契約可能」を明確にアピール

戦略4:口コミ・SNS対策を戦略的に実施

デジタル上での評判管理を積極的に行う。

  • Googleマイビジネスの登録と情報充実
  • 良い対応をした際に口コミ投稿を促す仕組み
  • SNS(Instagram、YouTube)での情報発信
  • ネガティブな口コミへの誠実な対応
  • 顧客の声を社内で共有し、サービス改善に活用

戦略5:接客品質の標準化と継続的向上

「丁寧・親切な対応」を組織的に実現する。

  • 接客マニュアルの整備と定期的な見直し
  • ロールプレイング研修の実施
  • 顧客満足度アンケートの実施と分析
  • 優れた対応事例の社内共有
  • クレーム対応の振り返りと改善

まとめ:立地神話の終焉が示す新時代の成功法則

不動産賃貸仲介業界は、歴史的な転換点を迎えている。駅前一等地に店舗を構えれば成功できる時代は終わり、「何を提供できるか」が問われる時代が始まった。

RSC調査が示すデータは明確だ。顧客は店舗の場所ではなく、情報の質、対応の速さ、サービスの丁寧さで不動産会社を選ぶ。問い合わせ数は増加し、検討期間は長期化し、非対面サービスへの期待は高まっている。

この変化は、見方を変えれば大きなチャンスでもある。高額な駅前賃料に苦しむ必要はなく、デジタル基盤とサービス品質で勝負できる時代になったのだ。

特に、FC加盟という選択肢は、この新時代において有力な戦略となる。システム基盤、ブランド力、ノウハウ――個人店が単独で構築するには莫大なコストと時間がかかるこれらの資産を、加盟によって即座に獲得できる。

立地に依存しない事業モデル、サービス品質で差別化する経営――これこそが、2025年以降の不動産賃貸仲介業界で勝ち残るための成功法則だ。

あなたの店舗は、この変化に対応できているだろうか。高い賃料を払い続ける駅前店舗か、効率的なコスト構造でサービスに投資する郊外型店舗か。選択の時が来ている。


【出典】

  • 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年調査結果
  • 調査期間:2025年1月28日~5月30日
  • 有効回答数:948人(過去1年以内にインターネットで不動産物件情報を調べた人)