問い合わせ3.3社、検討期間は過去最長――変わる顧客行動を読み解く「データ駆動型営業」の実践法

不動産賃貸市場で顧客の意思決定プロセスが大きく変化している。2025年の調査で明らかになったのは、顧客が契約に至るまでに問い合わせる不動産会社数が過去11年で最多の平均3.3社に達し、検討期間も長期化の一途をたどっているという事実だ。この環境下で成約率を維持・向上させるには、勘や経験だけに頼る営業から脱却し、顧客データを戦略的に分析・活用する「データ駆動型営業」への転換が不可欠となっている。本稿では、実際のアンケートデータを基に、問い合わせから成約に至る顧客行動の変化を読み解き、明日から実践できる具体的なデータ分析手法を解説する。


Table of Contents

1. 顧客行動の構造的変化が示す営業戦略の転換点

比較検討の長期化・多様化が進む市場環境

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査結果は、賃貸仲介業界に従事する者にとって看過できない変化を示している。

契約までの検討期間を見ると、賃貸物件では1ヶ月以上かけて物件を探す顧客が全体の64.3%に達し、前年から6ポイント増加した。さらに注目すべきは、問い合わせる不動産会社数だ。賃貸では平均3.3社と、2015年以降で最も多い数値を記録している。特に「5社以上」に問い合わせる顧客の割合は21.0%に上り、複数の仲介会社を比較検討する行動が常態化している。

物件数においても同様の傾向が見られ、賃貸で平均5.6物件、売買で5.3物件と前年を上回った。「6物件以上」を比較検討する顧客は賃貸で37.7%を占め、情報収集の徹底ぶりがうかがえる。

この変化が意味するのは、顧客が以前よりも慎重に、より多くの選択肢を比較しながら意思決定を行うようになったということだ。大手不動産ポータルサイトの普及により、物件情報へのアクセスが容易になった結果、顧客の「情報武装」が進んでいる。

データ分析なくして生き残れない時代へ

こうした環境変化は、仲介業者に二つの課題を突きつけている。

第一に、複数社と比較される前提での差別化戦略が必要になったことだ。平均3社以上に問い合わせる顧客に選ばれるためには、単に物件を紹介するだけでは不十分である。顧客がなぜ自社に問い合わせたのか、何を重視しているのか、どのタイミングで意思決定するのか――こうした顧客行動の背景を理解し、適切なアプローチを取る必要がある。

第二に、長期化する検討期間の中で顧客との関係性を維持し、最終的な成約につなげる営業プロセスの設計が求められることだ。1ヶ月以上の検討期間中、顧客は複数の仲介会社や物件を比較し続ける。この間、いかに顧客の記憶に残り、信頼を獲得し、最終的に選ばれる存在となるかが勝負の分かれ目となる。

これらの課題に対応するための鍵が、顧客データの戦略的活用だ。問い合わせデータ、内見データ、成約データなど、日々の営業活動で蓄積される情報を体系的に分析することで、顧客行動のパターンを把握し、効果的な営業戦略を構築できる。


2. 問い合わせデータから顧客ニーズを可視化する分析手法

問い合わせ経路別の成約率分析

顧客データ活用の第一歩は、問い合わせ経路の分析である。調査によれば、顧客が不動産会社を選ぶ際に最も重視するポイントは「写真の点数が多い」(直近3年で最多)であり、次いで「不動産会社に対する口コミ情報」が重要視されている。

この知見を実務に落とし込むには、以下の分析を行うとよい。

分析項目:

  • 大手不動産ポータルサイト経由の問い合わせ
  • 自社ホームページ経由の問い合わせ
  • SNS(Instagram、YouTubeなど)経由の問い合わせ
  • 電話・来店による直接問い合わせ
  • 既存顧客からの紹介

各経路からの問い合わせについて、成約率、初回接触から成約までの平均日数、顧客単価などを算出する。これにより、どの経路が質の高いリードをもたらしているかが明確になる。

例えば、大手不動産ポータルサイト経由の問い合わせは数は多いものの成約率が低く、一方で口コミや紹介経由の問い合わせは数は少ないが成約率が高い、といった傾向が見えてくる可能性がある。この場合、口コミを増やす施策(顧客満足度向上、レビュー依頼の仕組み化など)に投資することで、効率的に成約数を伸ばせる。

問い合わせ内容のカテゴリー分析

問い合わせ時の顧客の質問内容や関心事項を分類し、分析することも重要だ。調査では、契約時に顧客が気にするポイントとして、「家賃・価格」がトップであるものの、「交通の利便性」「部屋数、間取り」「建物・設備の新しさ」など、様々な要素が重視されていることが分かっている。

顧客の問い合わせ内容を以下のようにカテゴリー化して記録する。

  • 価格・費用に関する質問
  • 立地・交通アクセスに関する質問
  • 設備・仕様に関する質問
  • 周辺環境(治安、災害リスクなど)に関する質問
  • 契約条件に関する質問

各カテゴリーの問い合わせ頻度を分析することで、顧客が重視している要素の傾向が見えてくる。例えば、災害情報や周辺の治安情報への問い合わせが多い場合(調査でもこれらが物件情報以外に必要な情報の上位にランクイン)、物件紹介時にハザードマップや地域の安全性に関する情報を積極的に提供することで、顧客の信頼獲得につながる。

さらに、成約に至った顧客と成約しなかった顧客の問い合わせ内容を比較分析することで、成約の予兆となるシグナルを発見できる可能性がある。

反応速度と成約率の相関分析

調査では、顧客が不動産会社の対応で満足したこととして「問合せに対するレスポンスが早かった」が71.5%でトップに挙げられている。逆に不満だったこととしては「問合せをしたら返答が遅かった」が上位に入る。

これを踏まえ、問い合わせへの初回返信時間と成約率の関係を分析する。

測定項目:

  • 30分以内に返信した場合の成約率
  • 1時間以内に返信した場合の成約率
  • 3時間以内に返信した場合の成約率
  • 当日中に返信した場合の成約率
  • 翌日以降に返信した場合の成約率

多くのケースで、返信が早いほど成約率が高いという相関が見られるはずだ。この分析結果を基に、問い合わせ対応の社内基準を設定できる。例えば「全ての問い合わせに1時間以内に初回返信する」といった目標を掲げ、業務フローを最適化することで、成約率の向上が期待できる。

また、時間帯別の問い合わせ数と対応体制の分析も有効だ。夜間や休日の問い合わせに迅速に対応できる体制を整えることで、競合他社との差別化につながる。


3. 内見・商談データから成約確度を予測する

内見実施率と成約率の関係性

調査によれば、顧客が訪問する不動産会社数は賃貸で平均2.0社、売買で3.0社となっている。問い合わせ数(賃貸3.3社)と比較すると、実際に訪問まで至るのは約6割程度だ。

この「問い合わせから内見への転換率」を高めることが、成約数増加の重要なポイントとなる。そのためには、どのような要因が内見実施率に影響するかを分析する必要がある。

分析すべき要素:

  • 物件紹介時の情報量(写真枚数、動画の有無、間取り図の詳細度など)
  • 初回対応時の提案内容(希望条件に合った物件数、類似物件の提案など)
  • 内見予約までのコミュニケーション回数
  • 内見提案のタイミング(初回問い合わせから何日後か)

調査では、不動産会社の対応で満足したこととして「内見をさせてくれた」「物件まで同行してくれた」が上位に挙げられている。内見の実施そのものが顧客満足度を高め、成約率向上に寄与することが分かる。

内見後のフォローアップと成約率

内見後の適切なフォローアップも成約率を左右する重要な要素だ。調査では「物件の提案や追加の連絡等をしてくれた」ことが満足要因として挙げられている一方、「物件の提案や追加の連絡等がなかった」ことが不満要因にも挙げられており、フォローアップの有無が顧客体験を大きく左右することが分かる。

内見後のフォローアップについて、以下のデータを記録・分析する。

  • 内見当日中にお礼・感想確認の連絡を入れた場合の成約率
  • 内見翌日に追加物件を提案した場合の成約率
  • 内見後3日以内に接触した場合の成約率
  • 内見後1週間接触がなかった場合の成約率

多くの場合、内見後24時間以内の接触が成約率を大きく高めることが分かるはずだ。顧客の記憶が鮮明なうちに、内見物件の良い点を改めて伝えたり、気になっていた点への補足説明を行ったりすることで、成約につなげやすくなる。

商談時の顧客反応スコアリング

内見時や商談時の顧客の反応を定量化し、成約確度を予測する手法も有効だ。

例えば、以下のような項目で顧客の関心度をスコア化する。

高関心シグナル(各+1点):

  • 内見時間が30分以上
  • 具体的な質問が5つ以上
  • 周辺環境の確認を行う
  • 家具配置や生活イメージの話をする
  • 契約条件(初期費用、入居時期など)について具体的に質問する
  • 次回内見の予約をその場で行う

低関心シグナル(各-1点):

  • 内見時間が10分未満
  • 質問がほとんどない
  • スマートフォンを頻繁に見る
  • 明確な否定的コメント(「イメージと違う」など)
  • 次の予定を理由に早々に退出

このスコアと実際の成約率の相関を分析することで、成約確度の高い顧客を見極め、優先的にフォローアップするなど、営業リソースの最適配分が可能になる。


4. 成約データから収益性と顧客満足度を最大化する

顧客セグメント別の収益性分析

成約データを顧客属性別に分析することで、どのセグメントが収益性が高いかを把握できる。

分析軸の例:

  • 年齢層(20代、30代、40代以上)
  • 世帯構成(単身、カップル、ファミリー)
  • 転居理由(就職、転勤、結婚、より良い住環境など)
  • 予算帯
  • 問い合わせ経路

各セグメントについて、顧客単価、成約までの日数、問い合わせから成約までの転換率などを算出する。

例えば、「30代ファミリー層で転勤による転居」というセグメントは、検討期間が短く、予算も比較的高めで、成約率も高い、といった傾向が見られるかもしれない。このセグメントを重点ターゲットと定め、マーケティング施策を集中させることで、効率的に収益を拡大できる。

成約物件の特徴分析

成約に至った物件の特徴を分析することで、仕入れ戦略や物件提案の精度を高められる。

調査によれば、契約時に重視されるポイントは「家賃・価格」がトップであるものの、「交通の利便性」(76.2%)、「部屋数、間取り」(54.0%)、「建物・設備の新しさ」(50.8%)なども高い割合で重視されている。

分析すべき物件属性:

  • 立地(最寄駅からの徒歩分数、駅の規模、路線など)
  • 築年数
  • 間取り
  • 賃料帯
  • 設備(オートロック、宅配ボックス、追い焚き機能など)
  • 周辺環境(スーパー、コンビニ、病院などへのアクセス)

成約物件の共通点を抽出し、「成約しやすい物件の条件」を明確化する。これにより、仕入れ時の判断基準として活用したり、顧客への物件提案時に優先順位をつけたりすることができる。

また、時期別の分析も重要だ。繁忙期と閑散期で成約物件の特徴が変わる可能性がある。季節ごとの傾向を把握することで、より効果的な営業戦略を立てられる。

顧客満足度と再来店・紹介率の相関

長期的な収益性を考える上で、顧客満足度の向上は不可欠だ。調査では、不動産会社に求めるものとして「丁寧・親切対応」が78.6%でトップに挙げられており、顧客体験の質が重視されていることが分かる。

成約後の顧客満足度調査を実施し、以下の項目について評価してもらう。

  • 問い合わせ対応の質
  • 物件提案の適切さ
  • 内見時の対応
  • 契約手続きのスムーズさ
  • 入居後のフォロー

これらのスコアと、その後の再来店率(更新時や次回転居時に再度利用してもらえる確率)、紹介率(知人を紹介してもらえる確率)との相関を分析する。

高満足度の顧客ほど再来店率や紹介率が高いという明確な相関が見られれば、顧客満足度向上への投資の正当性が証明される。逆に、どの項目の満足度が再来店・紹介に最も影響するかが分かれば、改善の優先順位をつけられる。

調査では、対応への不満として「言葉遣いや対応が気に障った」「問合せへの回答が的を射ていなかった」などが挙げられている。こうした基本的な接客品質の向上が、長期的な顧客価値(LTV:Life Time Value)を高める鍵となる。


5. データ分析を営業改善サイクルに組み込む実践ステップ

ステップ1:基盤となるデータ収集の仕組みづくり

データ分析の前提として、必要なデータを継続的に収集する仕組みが必要だ。

最低限収集すべきデータ項目:

【問い合わせ段階】

  • 問い合わせ日時
  • 問い合わせ経路
  • 問い合わせ内容(興味を持った物件、質問内容など)
  • 顧客属性(年齢、世帯構成、転居理由など)
  • 初回返信時間

【内見段階】

  • 内見実施日
  • 内見物件
  • 内見時の顧客反応
  • 内見後のフォローアップ日時と内容

【成約段階】

  • 成約日
  • 成約物件
  • 成約までの日数
  • 顧客満足度

これらのデータを、顧客管理システム(CRM)や表計算ソフトに記録する。重要なのは、継続的に正確なデータを入力する習慣をつくることだ。営業担当者の負担を最小化するため、入力項目は必要最小限に絞り、選択式の項目を増やすなど、入力しやすい仕組みを整える。

ステップ2:週次・月次での定期分析と振り返り

データを収集するだけでは意味がない。定期的に分析し、営業活動に反映させるサイクルを確立する。

週次分析(営業チーム単位):

  • 今週の問い合わせ数、内見数、成約数
  • 前週との比較
  • 問い合わせから内見、内見から成約への転換率
  • 対応スピード(平均初回返信時間)
  • 気になる傾向やイレギュラーな事象

週次ミーティングで数字を確認し、好調な営業担当者の成功事例を共有したり、課題がある場合は改善策を議論したりする。

月次分析(経営・マネジメント層):

  • 月間の主要KPI(問い合わせ数、成約数、成約率など)
  • 前月・前年同月との比較
  • 問い合わせ経路別の成約率
  • 顧客セグメント別の成約状況
  • 成約物件の傾向分析
  • 顧客満足度スコア

月次分析では、より深い洞察を得るために、データを多角的に見る。例えば、成約率が下がっている場合、問い合わせの質が変化したのか、営業対応に問題があるのか、市場環境が変化したのかなど、要因を特定する。

ステップ3:仮説検証型の施策実行

データ分析から得られた洞察を基に、具体的な改善施策を実行する。重要なのは、「仮説を立てて検証する」というアプローチだ。

実践例:

【仮説】問い合わせ後24時間以内に内見提案を行うと、内見実施率が向上するのではないか

【検証方法】

  • 今月は全ての問い合わせに対し、24時間以内に内見提案を行う
  • 先月までのデータと比較し、内見実施率の変化を測定

【結果の活用】

  • 内見実施率が有意に向上すれば、これを標準プロセスとして定着させる
  • 変化がなければ、別の仮説を立てて検証する

このように、データに基づいて仮説を立て、施策を実行し、結果を検証するサイクル(PDCA)を回すことで、継続的な改善が可能になる。

ステップ4:成功パターンの標準化と横展開

データ分析により特定した「成功パターン」を、組織全体に横展開することが重要だ。

例えば、ある営業担当者が一貫して高い成約率を維持している場合、その担当者の行動パターンをデータから分析する。

  • 問い合わせへの返信時間は平均何分か
  • 初回提案する物件数は何件か
  • 内見時の説明の順序や重点項目は何か
  • フォローアップの頻度やタイミングはどうか
  • 使用している営業トークや資料は何か

これらを明文化し、マニュアルやトレーニングプログラムに落とし込むことで、個人のスキルに依存しない、再現性の高い営業体制を構築できる。

特に、調査で明らかになった顧客の重視ポイント(レスポンスの速さ、丁寧な対応、正確な情報提供など)を確実に実践するための標準プロセスを整備することが、組織全体の成約率向上につながる。


6. データ分析基盤としてのフランチャイズ活用という選択肢

個店では限界があるデータ活用の規模と質

ここまで解説してきたデータ分析手法を実践するには、一定規模のデータ蓄積が必要となる。しかし、個人経営や小規模な仲介業者の場合、月間の問い合わせ数や成約数が限られているため、統計的に意味のある分析を行うには時間がかかる。

また、データ収集の仕組みづくりやCRMシステムの導入、分析スキルを持った人材の確保など、個店では投資が難しい場合もある。

こうした課題を解決する一つの選択肢が、フランチャイズ本部が持つデータ基盤とノウハウの活用だ。

ハウスコムFCが提供するデータ駆動型営業支援

全国規模で展開するフランチャイズ本部は、加盟店全体から集約される膨大な顧客データと成約データを保有している。個店では数十件の成約データでも、フランチャイズ全体では数千件、数万件規模のデータとなり、より精緻な分析が可能になる。

ハウスコムFCのような大手フランチャイズでは、こうしたビッグデータを分析し、成約率の高い営業手法や効果的な物件提案パターンを特定し、加盟店に共有する仕組みを持っている。個店では得られない市場全体のトレンドや、地域別の特性なども把握できる。

さらに、フランチャイズ本部は以下のような支援を提供することで、加盟店のデータ活用を促進する。

システム基盤の提供:

  • 顧客管理システム(CRM)の提供
  • 問い合わせから成約までのデータを自動収集する仕組み
  • 分析ダッシュボードによる可視化

分析ノウハウの共有:

  • 成約率向上につながるKPIの設定
  • データ分析の具体的手法
  • 好事例の横展開

営業プロセスの標準化:

  • データに基づいた営業マニュアル
  • 顧客対応のベストプラクティス
  • 問い合わせ対応のスクリプト

ブランド力と口コミがもたらす問い合わせ品質の向上

調査では、不動産会社を選ぶ際に「不動産会社に対する口コミ情報」が重視されることが明らかになっている。個店で口コミを蓄積するには時間がかかるが、全国展開するフランチャイズブランドであれば、既に一定の認知度と信頼性がある。

ハウスコムのような知名度の高いブランドを活用することで、初回問い合わせ時点での顧客の信頼度が高まり、内見や成約への転換率が向上する可能性がある。

また、フランチャイズ本部が実施する全国規模のマーケティング施策(大手不動産ポータルサイトへの広告出稿、SNSマーケティングなど)により、個店では獲得困難な質の高いリードを獲得できる。

非対面型サービス導入の先行優位性

調査では、IT重説(リモートでの重要事項説明)やオンライン契約への関心が高まっており、特に賃貸では3年連続でオンライン契約の利用意向が増加している(42.2%)。

こうした新しいサービスを個店で導入するには、システム投資や法的知識、オペレーションの整備など、多大なコストと労力が必要だ。しかし、フランチャイズ本部が統一的にシステムを整備し、加盟店に提供することで、個店でも最新のサービスを顧客に提供できる。

データ分析の観点からも、非対面型サービスの利用状況や成約率への影響を、フランチャイズ全体で分析・検証できるため、より効果的なサービス運用が可能になる。


7. 明日から始める3つの実践アクション

データ分析の重要性は理解できても、「何から始めればいいか分からない」という声も多い。ここでは、明日から実践できる3つの具体的アクションを提示する。

アクション1:問い合わせ対応速度の測定と改善

調査で最も満足度が高かった「問合せに対するレスポンスの早さ」を改善するため、まずは現状を把握する。

今日から始める測定方法:

  1. 問い合わせがあった時刻をメモする
  2. 初回返信を送った時刻をメモする
  3. 所要時間を計算して記録する

1週間続けるだけで、自社の平均返信時間が分かる。その上で、「全ての問い合わせに1時間以内に返信する」といった具体的な目標を設定し、実践する。

返信テンプレートを用意しておくことで、短時間でも丁寧な初回返信が可能になる。「お問い合わせありがとうございます。ご希望の条件に合う物件をお探しし、本日中に詳細をご連絡いたします」といったシンプルな内容でも、顧客は「対応が早い」と感じる。

アクション2:成約顧客5名へのヒアリング実施

過去3ヶ月以内に成約した顧客5名に連絡を取り、簡単なヒアリングを実施する。

質問項目例:

  • 当社を選んでいただいた理由は何ですか?
  • 問い合わせから成約まで、満足した点は何ですか?
  • 改善してほしい点はありましたか?
  • 最終的に物件を決めた理由は何ですか?
  • 他社とも比較しましたか?その中で当社を選んだ決め手は?

このヒアリングから、自社の強みと課題が明確になる。複数の顧客から同じ評価を得た点は、自社の差別化ポイントとして営業トークに組み込める。逆に、複数の顧客から指摘された改善点は、優先的に対処すべき課題となる。

アクション3:週次1時間のデータ振り返りミーティング

毎週決まった時間(例:月曜朝10時)に、営業チーム全員で前週の数字を振り返る1時間のミーティングを設定する。

アジェンダ例:

  1. 先週の問い合わせ数、内見数、成約数の確認(10分)
  2. 成約事例の共有(1件につき10分×2件=20分)
    • どのような顧客だったか
    • どのような営業プロセスだったか
    • 成約のポイントは何だったか
  3. 失注事例の分析(1件につき10分)
    • なぜ成約に至らなかったか
    • 次に活かせる学びは何か
  4. 今週の目標設定(10分)

このミーティングを習慣化することで、チーム全体でデータを見る文化が醸成され、個人の経験が組織の知見として蓄積される。

最初は完璧なデータ分析を目指す必要はない。まずは簡単にできることから始め、徐々に精度を上げていけばよい。重要なのは、データを見て、考え、行動に移すサイクルを回し続けることだ。


まとめ:データが導く、新時代の不動産営業

顧客の意思決定プロセスが複雑化し、比較検討が長期化する現在の賃貸仲介市場において、勘と経験だけに頼る営業手法には限界がある。問い合わせデータ、内見データ、成約データを体系的に分析し、顧客行動のパターンを把握することで、より効果的な営業戦略を構築できる。

本稿で紹介したデータ分析手法は、特別なスキルや高額なシステムがなくても、今日から始められるものだ。まずは小さく始め、継続的に改善していく姿勢が重要となる。

一方で、個店の規模やリソースには限界があることも事実だ。より高度なデータ活用や、最新の営業ノウハウを取り入れたい場合、フランチャイズ本部が持つデータ基盤とノウハウを活用するという選択肢も検討に値する。

ハウスコムFCのような実績あるフランチャイズに加盟することで、全国規模のデータに基づいた営業支援、最新のシステム基盤、ブランド力を活かした集客など、個店では実現困難な優位性を獲得できる可能性がある。

顧客行動が変化し続ける時代だからこそ、データに基づいた戦略的な営業へのシフトが、生き残りと成長の鍵となる。あなたの事業にとって最適なアプローチを見つけ、一歩を踏み出してほしい。