物件仕入れの成否は「信頼」で決まる――賃貸オーナーとの良好な関係構築術7つの鉄則

「優良物件を安定的に仕入れたい」「オーナーからの紹介で新規物件を獲得したい」――賃貸仲介業に携わる経営者や営業担当者にとって、物件仕入れは事業の生命線である。しかし、競合他社がひしめく市場において、どうすれば継続的に物件を預けてもらえるのか。その答えは意外なほどシンプルだ。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によれば、消費者が不動産会社に最も求めるものは「丁寧・親切対応」で、全体の78.6%がこれを重視していた。一方で、「問合せをしたら『その物件はもう無い』と言われた」ことへの不満が賃貸契約者で24.7%にも達している。

これは何を意味するのか。顧客対応の質がそのまま会社の信頼性を映し出し、その信頼性はやがてオーナーの耳にも届くということだ。本稿では、物件仕入れを円滑に進めるためのオーナー対応の極意を、最新データと現場の知見をもとに解き明かす。


1. なぜ今、オーナーとの関係構築が重要なのか

賃貸市場を取り巻く環境変化

賃貸住宅市場は大きな転換期を迎えている。総務省の「住宅・土地統計調査」によれば、全国の賃貸住宅空室率は約21%前後で推移しており、地域によっては30%を超えるエリアも存在する。

こうした状況下でオーナーが最も関心を寄せるのは、「いかに空室期間を減らし、安定した家賃収入を得るか」という点に尽きる。つまり、仲介業者としての価値は「客付け力」と「信頼性」で測られる時代になったのだ。

消費者の比較検討行動が激化

RSCの調査によれば、賃貸契約者が物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は平均3.3社と、2015年以降で最多を記録した。問い合わせた物件数も平均5.8物件に達し、消費者はかつてないほど慎重に比較検討を行っている。

この傾向はオーナーにとっても無視できない。複数の不動産会社と付き合いがあるオーナーは、各社の対応品質を比較している。つまり、消費者への対応の良し悪しは、そのままオーナーからの評価に直結するのである。


2. オーナーが仲介業者に本当に求めているもの

「正確な情報提供」と「迅速な対応」の両立

RSCの調査で興味深いのは、不動産会社に求めるもののトップ3が「丁寧・親切対応(78.6%)」「正確な物件情報の提供(75.3%)」「問合せに対する迅速対応(70.3%)」という点だ。売買検討者に至っては、これらの項目がさらに重視される傾向にある。

オーナーも同様の視点で仲介業者を見ている。空室が出たときに迅速に動いてくれるか、物件の魅力を正しく伝えてくれるか、入居者トラブルが起きたときに適切に対処してくれるか――これらすべてが「信頼」の構成要素となる。

「提案力」が差別化の決め手

単に空室を埋めるだけでなく、物件の「強み」と「弱み」を分析し、適切なタイミングでリフォームや設備の見直しを提案できる仲介業者は、オーナーから高く評価される。

たとえば、築年数が経過した物件であっても、入居者のニーズを把握した設備投資(宅配ボックスの設置、インターネット無料化など)を提案できれば、家賃下落を防ぎながら入居率を維持することが可能だ。こうした「一歩先を行く提案」が、オーナーとの長期的な関係構築につながる。


3. 信頼を築く7つの鉄則

【鉄則1】レスポンスのスピードで誠意を示す

RSCの調査では、不動産会社の対応で満足だったことの第1位が「問合せに対するレスポンスが早かった(71.5%)」であった。これは消費者だけでなく、オーナー対応にも当てはまる。

空室報告を受けたら即座に募集活動を開始し、その進捗を定期的に報告する。この「スピード感」がオーナーの安心感につながり、信頼の土台を形成する。目安として、問い合わせには24時間以内、できれば当日中の返答を心がけたい。

【鉄則2】物件情報の「鮮度」を徹底管理する

消費者の不満で上位に挙がったのが「問合せをしたら『その物件はもう無い』と言われた」という項目だ。これは物件情報の更新が追いついていないことを示しており、仲介業者の信頼性を大きく損なう要因となる。

物件情報の鮮度管理は、オーナーへの誠実さの表れでもある。成約済みの物件を掲載し続けることは、オーナーの物件価値を間接的に毀損することにもつながりかねない。

【鉄則3】定期的な接点を意識的に設ける

オーナーとの関係構築において重要なのは、「用事がないときにも連絡を取る」という姿勢だ。空室が出たときだけ連絡するのではなく、市場動向のレポートを定期的に送付したり、近隣の成約事例を共有したりすることで、オーナーに「常に気にかけてくれている」という印象を与えられる。

具体的には、月1回程度のニュースレター配信や、四半期ごとの訪問・オンライン面談の設定が効果的だ。

【鉄則4】オーナーの悩みを「聞く力」を磨く

営業活動において陥りがちなのが、自社のサービスを一方的に説明してしまうことだ。しかし、オーナーが本当に求めているのは「自分の話を聞いてくれる相手」である。

相続で物件を引き継いだばかりで賃貸経営の知識が乏しいオーナー、空室が続いて不安を抱えるオーナー、将来の資産承継を見据えて相談したいオーナー――それぞれ悩みの質は異なる。まずは傾聴に徹し、オーナーの課題を正確に把握することが、適切な提案への第一歩となる。

【鉄則5】実績を「数字」で語る

RSCの調査によれば、不動産会社を選ぶ際に「不動産会社に対する口コミ情報」を特に重視する層が増加傾向にある。これは、第三者の客観的な評価が信頼形成に大きく寄与することを示している。

オーナーへの提案時にも、「当社管理物件の入居率は〇〇%」「平均空室期間は〇日」といった具体的な数字を示すことで、説得力が格段に増す。実績を可視化し、定量的に伝える習慣をつけることが重要だ。

【鉄則6】物件の「見せ方」で差をつける

同調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「写真の点数が多い」が最も重視されており、この傾向は直近3年で最も顕著になっている。

物件写真の質と量は、入居希望者へのアピール力に直結するだけでなく、オーナーに対して「御社の物件をこれだけ丁寧に扱っています」というメッセージにもなる。プロのカメラマンによる撮影や、360度パノラマ写真の導入なども検討に値する。

【鉄則7】トラブル対応で真価を発揮する

入居者からのクレーム対応は、賃貸経営において避けて通れない課題だ。しかし、トラブル発生時こそ信頼を深めるチャンスでもある。

迅速かつ適切な対応でトラブルを収束させた経験は、オーナーの記憶に強く残る。「困ったときに頼りになる」という評価は、他の何よりも強力な差別化要因となる。


4. 自主管理オーナーへのアプローチ戦略

自主管理オーナーが抱える課題

賃貸物件の中には、管理会社を介さずオーナー自身が管理する「自主管理物件」が一定数存在する。特に相続で物件を取得したケースでは、先代からの慣行で自主管理を続けているオーナーも少なくない。

自主管理オーナーの多くが直面するのは、入居者募集の難しさだ。大手不動産ポータルサイトへの掲載ルートが限られるため、情報が広く行き渡らず、空室期間が長期化するリスクがある。また、クレーム対応や家賃督促といった業務負担も重くのしかかる。

「課題解決のパートナー」としてのポジショニング

こうした自主管理オーナーに対しては、単なる「仲介業者」ではなく「賃貸経営のパートナー」としてアプローチすることが効果的だ。

まずはオーナーの現状や悩みを丁寧にヒアリングし、管理の一部だけを委託する「部分委託」の選択肢を提示するのも一つの手法である。たとえば、入居者募集と審査のみを委託し、日常的な管理はオーナー自身が行う、といった柔軟なプランを用意することで、導入のハードルを下げられる。


5. デジタルツール活用でオーナー満足度を高める

IT化への対応は「待ったなし」

RSCの調査では、住まい探しの際に使ってみたいサービスとして「IT重説」が賃貸で56.7%と調査開始以来最高値を記録した。「オンライン契約」の利用意向も3年連続で増加し、42.2%に達している。

消費者のデジタル化ニーズが高まる中、こうした対応ができる仲介業者は、オーナーからも「時代に即した会社」として評価される。IT重説やオンライン契約に対応していることは、オーナーへの営業時にも有効なアピールポイントとなる。

報告業務のデジタル化

オーナーへの月次報告書をデジタル化し、入居状況や収支をリアルタイムで確認できるポータルを提供する不動産会社も増えている。こうした透明性の高い情報共有は、オーナーの安心感と信頼感を醸成する強力な武器となる。


6. フランチャイズ加盟という選択肢

ブランド力を活かした物件仕入れ

中小規模の不動産仲介業者がオーナー営業で苦戦する理由の一つに、「知名度の壁」がある。地域密着で丁寧な対応をしていても、ブランド認知度の高い大手との競合では、第一印象で劣勢に立たされることも少なくない。

この課題を解決する一つの選択肢が、フランチャイズへの加盟である。たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、約200店舗の直営店を展開するブランド力を活かし、加盟店の物件仕入れや自主管理オーナーへの営業を支援している。

本部からの多角的サポート

フランチャイズ加盟のメリットは、ブランド力だけにとどまらない。業務システムの提供、反響送客による支援、定期的な勉強会や情報共有の場など、単独では実現が難しいサポートを受けられる点も大きい。

特に、オーナー営業においては「ノウハウの共有」が重要だ。成功事例や失敗事例を加盟店間で共有することで、各社の営業力底上げにつながる。ハウスコムフランチャイズでは、本部が主催するベンチマークセミナーを通じて、直営店のノウハウに加え、他の不動産業者のリアルな実態を共有する取り組みを行っている。


7. 実践チェックリスト:オーナー対応の質を高める10項目

日々のオーナー対応を振り返るためのチェックリストを用意した。定期的に確認し、改善点を洗い出す習慣をつけることで、着実に関係構築の精度を高められる。

  1. 即時対応:オーナーからの連絡には24時間以内に返答しているか
  2. 情報鮮度:物件情報の更新は成約・変更発生後すぐに行っているか
  3. 定期接点:用事がなくても月1回以上はオーナーと接点を持っているか
  4. 傾聴姿勢:オーナーの話を遮らず、最後まで聞く姿勢があるか
  5. 数値提示:実績や市場データを具体的な数字で説明しているか
  6. 写真品質:物件写真は十分な点数と品質を確保しているか
  7. 提案力:空室対策やリフォームの提案を適切なタイミングで行っているか
  8. トラブル対応:クレーム発生時に迅速かつ誠実に対応しているか
  9. デジタル対応:IT重説やオンライン契約に対応しているか
  10. 報告の透明性:収支や入居状況をわかりやすく報告しているか

まとめ:信頼は一朝一夕には築けない

オーナーとの良好な関係構築は、一夜にして成し遂げられるものではない。日々の誠実な対応の積み重ねが、やがて「この会社に任せたい」という信頼へと結実する。

本稿で紹介したRSCの調査データが示すように、消費者が不動産会社に求めるのは「丁寧・親切対応」「正確な情報提供」「迅速な対応」という、極めてオーソドックスな要素である。しかし、これらを高いレベルで実践し続けることこそが、最も困難であり、最も差別化につながる要因でもある。

物件仕入れの成功は、突き詰めれば「信頼の獲得」に帰結する。オーナーから「この人に任せれば安心だ」と思われる存在になること――それが、賃貸仲介業における持続的な成長の鍵である。


【関連情報】

賃貸仲介業の経営課題解決や、フランチャイズ加盟による事業拡大をお考えの方は、ハウスコムフランチャイズの詳細をぜひご確認ください。ブランド力を活かした集客支援や、本部による多角的なサポート体制について、詳しい資料をご用意しています。

ハウスコムフランチャイズ加盟店募集サイト


本記事で引用したデータは、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果に基づいています。