売買顧客の40.3%が「3ヶ月以上検討」──長期検討期間を成約に導く不動産営業の7つの戦略

検討期間の長期化は「敵」ではなく「味方」になる

「もう3ヶ月も連絡を続けているのに、まだ決まらない」

不動産売買仲介の現場で、こうした声を漏らす営業担当者は少なくないだろう。しかし、最新の調査データが示す現実は、むしろ「長期検討こそが新たなスタンダード」であることを物語っている。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によると、売買顧客のうち**3ヶ月以上かけて物件を検討した人の割合は40.3%**に達した。この数字は前年から4.4ポイント上昇しており、検討期間の長期化傾向が鮮明になっている。

さらに注目すべきは、顧客が問い合わせる不動産会社の数だ。売買顧客が契約までに問い合わせた会社は平均3.8社、実際に訪問した会社は平均3.0社。いずれも前年を上回り、顧客はより慎重に、より多くの選択肢を比較検討するようになっている。

この変化を「面倒な顧客が増えた」と捉えるか、「信頼関係を築くチャンスが広がった」と捉えるか。その視点の違いが、成約率を大きく左右する時代に入っている。

本記事では、長期検討顧客との信頼関係を構築し、最終的に「この会社で決めたい」と選ばれる存在になるための実践的な営業戦略を解説する。


なぜ売買顧客の検討期間は長期化しているのか

情報過多時代がもたらした「比較検討の常態化」

かつての住宅購入は、地元の不動産会社を1〜2社訪問し、担当者に勧められるまま物件を見て回るスタイルが主流だった。しかし、大手不動産ポータルサイトの普及により、顧客は自宅にいながら数百件の物件情報にアクセスできるようになった。

この変化は、顧客の購買行動を根本から変えた。

RSCの調査では、売買顧客が契約までに問い合わせた物件数は平均5.3物件。6物件以上を検討した顧客は**37.7%**に上る。顧客は「とりあえず多くの物件を見てから決めたい」という姿勢を強めており、初回接客で即決するケースは稀になりつつある。

高額化・金利上昇が慎重姿勢を後押し

不動産価格の高騰と住宅ローン金利の上昇も、検討期間の長期化に拍車をかけている。数千万円単位の買い物において「焦って決めて後悔したくない」という心理は、ごく自然なものだ。

特に初めて住宅を購入するファーストバイヤー層にとって、不動産取引は人生で最大の買い物となることが多い。ハザードマップの確認、周辺環境のリサーチ、将来的な資産価値の検討など、決断に至るまでのプロセスは必然的に長くなる。

複数社比較が「当たり前」になった

興味深いデータがある。売買顧客が「特に重視するポイント」として挙げた項目のうち、「不動産会社に対する口コミ情報」が2位にランクインしている。顧客は物件だけでなく、不動産会社そのものも厳しく評価している。

つまり、長期検討期間とは、物件を吟味する時間であると同時に、「どの不動産会社に任せるか」を見極める時間でもあるのだ。


長期検討顧客を成約に導く7つの戦略

1. 初回対応で「記憶に残る存在」になる

問い合わせから最初の接点が勝負を決める

調査によると、顧客が不動産会社の対応で満足したポイントの1位は「問合せに対するレスポンスの早さ」(71.5%)だった。一方、不満だったポイントでは「問合せをしたら『その物件はもうない』と言われた」がトップに挙がっている。

長期検討顧客は複数社に問い合わせを行うため、最初のレスポンスが遅いだけで比較対象から外れるリスクがある。

実践Tips

  • 問い合わせには30分以内の一次返信を徹底する
  • 返信時には「当該物件の最新状況」と「類似物件2〜3件の提案」をセットで送る
  • 電話・メール・LINEなど、顧客が希望する連絡手段を確認し、記録する

2. 「追客」から「伴走」へ発想を転換する

売り込みではなく、情報提供者としての立ち位置を確立する

3ヶ月以上の検討期間において、毎週のように「ご検討状況はいかがですか?」と連絡するのは逆効果だ。顧客が求めているのは「押し売り」ではなく「判断材料の提供」である。

調査で「不満だったこと」として挙げられた項目に、「契約の意思決定を急かされた」「しつこい営業」が含まれていることは示唆的だ。

実践Tips

  • 月1回程度の定期連絡では、新着物件情報に加えて「市況レポート」「金利動向」「エリアの開発情報」など、購入判断に役立つ情報を提供する
  • 連絡の冒頭で「すぐのご決断を急かすつもりはありません」と明言し、心理的プレッシャーを取り除く
  • 顧客の検討フェーズに合わせて、情報の粒度を調整する(初期は広く浅く、後期は狭く深く)

3. 顧客の「検討ステージ」を可視化する

どの段階にいるかを把握し、適切な対応を選択する

長期検討顧客は一枚岩ではない。「まだ漠然と情報収集している段階」の顧客と、「2〜3件に絞り込んで最終判断を迷っている段階」の顧客では、必要な対応がまったく異なる。

顧客ステージの分類例

ステージ顧客の状態有効なアプローチ
情報収集期希望条件が曖昧、エリアも未確定ヒアリング重視、選択肢を広げる提案
比較検討期複数物件を内見済み、条件が具体化物件ごとのメリット・デメリット整理
絞り込み期2〜3件に候補を絞っている資金計画の詳細シミュレーション
決断期最終1件で迷っている背中を押す情報提供、不安要素の解消

実践Tips

  • 初回ヒアリング時に「いつ頃までにお引越しをお考えですか?」と聞き、タイムラインを把握する
  • CRMツールを活用し、顧客ごとのステージをチーム内で共有する
  • ステージが進んだ顧客には、担当者からの電話連絡頻度を上げる

4. 「正確な情報提供」で信頼の土台を築く

曖昧な情報は信頼を一瞬で崩壊させる

調査では、不動産会社に求めるものとして「正確な物件情報の提供」が上位に入っている。売買においては「正確な物件情報の提供」が「特に重要なもの」の1位にランクインした。

長期検討顧客は、数ヶ月にわたって複数社の情報を比較する。その過程で「あの会社の情報は正確だった」「この会社は曖昧なことを言っていた」という評価が蓄積されていく。

実践Tips

  • 物件情報は常に最新状態を維持し、成約済み物件を速やかに削除する
  • 「詳細は確認します」と答えた事項は、24時間以内に回答する
  • 物件のデメリット(日当たり、騒音、将来の建替え計画など)も正直に伝える

5. 「ハザード情報」と「資産性」を積極的に語る

顧客が知りたいことを先回りして提供する

調査によると、物件情報以外に必要だと思う情報として、売買顧客の**65.1%が「ハザード情報」**を挙げた。また、「住まいに資産性があるか」を気にするポイントに挙げた売買顧客は51.4%に達している。

これらは、顧客が自分から聞きにくいテーマでもある。営業担当者が先回りして情報提供することで、「この人は本当に私のことを考えてくれている」という信頼感が生まれる。

実践Tips

  • 内見時にハザードマップを持参し、物件所在地のリスクを説明する
  • 将来の売却を見据えた資産価値の見通し(再開発計画、人口動態など)を資料化する
  • 省エネ性能(断熱等級、ZEH対応など)についても積極的に情報提供する(調査では78.6%が「重要」と回答)

6. 「選ばれなかった理由」をヒアリングする

失注案件から学びを得る仕組みを作る

長期検討の末に他社で契約が決まったとき、多くの営業担当者は落胆して終わりにしてしまう。しかし、この瞬間こそ貴重なフィードバックを得るチャンスだ。

実践Tips

  • 他社で契約が決まった顧客に対し、「今後の参考にさせていただきたいのですが、当社に足りなかった点を教えていただけますか?」と丁寧に尋ねる
  • 得られたフィードバックは、チーム全体で共有し、改善策を検討する
  • 失注理由をカテゴリ別に集計し、傾向を分析する

7. 長期フォローを「仕組み化」する

属人的な対応から脱却し、組織で顧客を支える

3ヶ月以上にわたる顧客フォローを、個々の営業担当者の記憶と意欲だけで維持するのは困難だ。担当者の異動や退職があれば、それまで築いてきた関係が途切れてしまうリスクもある。

実践Tips

  • CRMツールに顧客との全てのやり取りを記録し、担当者が変わっても情報を引き継げる体制を整える
  • 長期検討顧客向けのメールマガジンを定期配信し、担当者個人の連絡がなくても接点を維持する
  • 「物件アラート機能」など、顧客が希望条件を登録しておけば自動で新着情報が届く仕組みを導入する

長期検討対応がもたらす「副次的効果」

口コミ・紹介の起点になる

丁寧なフォローを続けた顧客は、たとえ成約に至らなくても、その体験を周囲に話す可能性がある。「あの会社の担当者は、焦らせずに親身に対応してくれた」という評判は、新たな顧客獲得につながる。

調査でも「不動産会社に対する口コミ情報」を重視する顧客が増加傾向にあることが示されている。長期検討対応への投資は、短期的な成約だけでなく、中長期的なブランド価値向上にも寄与するのだ。

顧客単価の向上

長期にわたって信頼関係を構築した顧客は、売買仲介だけでなく、その後のリフォーム、保険、将来的な住み替えなど、継続的な取引に発展する可能性が高い。LTV(顧客生涯価値)の視点で見れば、長期検討顧客こそ最も価値のある存在といえる。


フランチャイズ加盟という選択肢

長期検討顧客への対応力を強化するには、個社の努力だけでは限界がある。CRMツールの導入、営業ノウハウの体系化、ブランド力による集客——これらを一から構築するには、相応の時間とコストがかかる。

不動産フランチャイズへの加盟は、こうした課題を解決する有力な選択肢となる。

例えば、全国200店舗以上を展開するハウスコムフランチャイズでは、加盟店に対して以下のような支援を提供している。

  • ブランド力を活用した集客支援:大手不動産ポータルサイト経由の反響を加盟店に送客
  • 業務システムの提供:顧客管理・契約管理システムをロイヤリティ内で利用可能
  • ノウハウ共有:直営店の成功事例やベンチマークセミナーを通じた営業力強化
  • 本部スタッフによる定期巡回:経営課題の相談窓口として伴走

長期検討顧客が増加し、競争が激化する市場環境において、「選ばれる不動産会社」であり続けるための基盤を整えることは、経営上の重要課題だ。フランチャイズ加盟は、その基盤を効率的に獲得する手段として検討に値するだろう。


まとめ:長期検討は「信頼構築の機会」と捉えよ

売買顧客の40.3%が3ヶ月以上かけて物件を検討する時代。この現実を前に、不動産仲介業者が取るべき姿勢は明確だ。

検討期間の長期化を「厄介な傾向」と嘆くのではなく、**「顧客との信頼関係を築く時間が与えられている」**と捉え直すこと。そして、その時間を活用して、顧客に寄り添い、正確な情報を提供し、最終的に「この人に任せたい」と選ばれる存在になること。

今日から実践できる7つの戦略を振り返ろう。

  1. 初回対応で「記憶に残る存在」になる ── レスポンスの早さと情報の質で差をつける
  2. 「追客」から「伴走」へ発想を転換する ── 売り込みではなく、情報提供者として位置づける
  3. 顧客の「検討ステージ」を可視化する ── 段階に応じた最適なアプローチを選択する
  4. 「正確な情報提供」で信頼の土台を築く ── 曖昧さを排除し、誠実さを示す
  5. 「ハザード情報」と「資産性」を積極的に語る ── 顧客が知りたいことを先回りして提供する
  6. 「選ばれなかった理由」をヒアリングする ── 失注案件から学び、改善につなげる
  7. 長期フォローを「仕組み化」する ── 属人的な対応から脱却し、組織で顧客を支える

不動産市場は変化を続けている。しかし、顧客が求める本質──「信頼できるパートナーに出会いたい」という願い──は変わらない。長期検討時代を勝ち抜く鍵は、まさにその本質に応えることにある。


参考データ出典 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月発表)