「その物件はもうない」が顧客を遠ざける──物件情報の更新頻度を劇的に改善する業務フローと顧客信頼獲得の全技術

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「問い合わせたら、すでに終了していた」──顧客の不満が示す業界の課題

不動産賃貸仲介の現場で、最も顧客の信頼を損なう瞬間をご存じだろうか。

2025年に公表された不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の調査によれば、不動産会社への不満として「問合せをしたら、『その物件はもうない』と言われた」が賃貸部門で**24.7%**と上位にランクインしている。つまり、およそ4人に1人の顧客が、この「空振り体験」を経験しているのだ。

一方で、同調査では顧客が不動産会社に求めるものとして「正確な物件情報の提供」が65.3%(全体)と高い数値を示し、特に重要なものとしても**19.0%と上位に位置している。さらに満足度調査では「問合せに対するレスポンスが早かった」が71.5%**とトップを記録。顧客は「正確で最新の情報」と「迅速な対応」を強く望んでいることが明らかになった。

本稿では、この業界共通の課題である「物件情報の鮮度管理」に焦点を当て、更新頻度を改善する具体的な業務フローと、リアルタイム情報提供によって顧客信頼を獲得する実践的な方法論を解説する。


顧客が求める「情報の正確性」──数字が語る現実

物件情報の鮮度が成約を左右する時代

前述のRSC調査データをさらに深掘りすると、不動産業界の構造的な課題が浮かび上がる。

不動産会社に求めるものとして、全体で上位に挙がった項目を見てみよう。

順位求めるもの全体(%)賃貸(%)売買(%)
1礼儀・丁寧な対応67.464.271.4
2正確な物件情報の提供65.363.068.3
3問合せに対する迅速な対応59.760.558.7
4物件に対する詳細な説明59.060.557.1
5購入後・入居後のサポート53.549.458.7

注目すべきは、「正確な物件情報の提供」が2位に位置し、「最新の物件情報の提供」も45.1%と高水準を維持している点だ。これらの数値は、顧客が「情報の質」と「情報の鮮度」の両方を重視していることを示している。

「特に重視するポイント」から見える本音

さらに興味深いのは、「特に重要なもの」として単一回答を求めた結果だ。賃貸では「正確な物件情報の提供」が**14.8%で2位となり、売買では19.0%**とトップに躍り出た。

この結果は何を意味するのか。顧客は複数の要素を総合的に求めつつも、最終的な判断において「情報が正確かどうか」を決定的な基準としているのである。


なぜ「その物件はもうない」が発生するのか──3つの構造的要因

物件情報の更新が遅れる背景には、業務フローにおける構造的な問題が存在する。

要因1:情報更新の「後回し」が常態化

多くの仲介会社では、物件情報の更新作業が「空いた時間にやる業務」として位置づけられがちだ。来店対応、内見案内、契約手続きといった「売上に直結する業務」が優先され、情報更新は後回しにされる傾向がある。

しかし、この発想には致命的な矛盾がある。RSC調査が示すように、「問合せに対するレスポンスの早さ」が満足度71.5%を記録している一方で、「その物件はもうない」という回答は不満の上位に位置している。つまり、素早く対応しても、情報が古ければ顧客満足には繋がらないのだ。

要因2:情報源の多様化による管理負荷の増大

現代の不動産仲介業務では、物件情報を掲載するチャネルが多岐にわたる。自社ホームページ、大手不動産ポータルサイト、各種SNS、さらにはチラシやDMなど、同じ物件情報を複数の媒体で管理する必要がある。

この「マルチチャネル管理」の負荷が、更新の遅延を生む温床となっている。ある媒体では情報を更新したものの、別の媒体では古い情報が残っている——こうした「情報の不整合」が、顧客の不信感を招く原因となっている。

要因3:属人的な業務フローの限界

物件情報の更新が特定のスタッフに依存している場合、その担当者が不在の際に更新が滞るリスクがある。また、各スタッフが独自のやり方で情報管理を行っていると、品質のばらつきや更新漏れが発生しやすくなる。

RSC調査では、売買部門において「問合せに対する迅速な対応」が前年比10pt以上増加している。これは、顧客の期待値が年々高まっていることを意味し、属人的な対応ではもはや追いつけない時代に突入していることを示唆している。


物件情報の更新頻度を劇的に改善する5つの業務フロー

フロー1:情報更新を「朝の必須業務」として定着させる

物件情報の鮮度管理を改善する最も効果的な方法は、更新作業を業務の最優先事項として位置づけることだ。

具体的には、毎朝の業務開始後30分を「情報更新タイム」として固定化する。この時間帯に、前日の成約物件の掲載終了処理、新規物件の登録、既存物件の情報修正を一括して行う。

重要なのは、この時間を「来店対応よりも優先する」と明確にルール化することだ。顧客からの問い合わせに「その物件はもうない」と答えるリスクを考えれば、30分の投資は十分にペイするはずである。

フロー2:「成約即更新」のルールを徹底する

物件が成約した瞬間に、全チャネルの情報を更新する「リアルタイム処理」を導入する。契約書への署名が完了したら、その場でスマートフォンやタブレットから掲載終了処理を行うワークフローを構築する。

このルールを徹底するためには、以下の3点が重要となる。

  • 責任の明確化:成約を担当したスタッフが更新責任を持つ
  • 完了確認の仕組み化:更新完了をチェックリストやシステムで管理する
  • タイムリミットの設定:成約から2時間以内に全媒体の更新を完了させる

フロー3:チャネル間の自動連携を構築する

物件情報の一元管理システムを導入し、1回の入力で全チャネルに情報が反映される仕組みを構築する。現在では、大手不動産テック企業が提供する基幹システムを活用することで、自社サイトから大手不動産ポータルサイトまで、自動的にデータ連携が可能となっている。

ハウスコムフランチャイズでは、こうした業務システムの提供を本部サポートの一環として行っており、コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セットをロイヤリティに含む形で提供している。システム投資の負担を軽減しながら、業務効率化を実現できる点は、フランチャイズ加盟の大きなメリットといえるだろう。

フロー4:週次の「情報棚卸し」を実施する

毎週決まった曜日に、全物件情報の「棚卸し」を行う。長期間掲載されている物件の状況確認、写真や間取り図の更新、価格改定の有無チェックなど、網羅的な点検を実施する。

この棚卸し作業では、以下の項目をチェックリスト化することを推奨する。

チェック項目確認ポイント
掲載期間30日以上掲載中の物件はオーナーに状況確認
写真の鮮度3ヶ月以上前の写真は再撮影を検討
価格・条件直近1週間で変更がないか確認
空室状況退去予定・入居予定の反映漏れがないか
競合物件周辺の類似物件との比較で適正か

フロー5:オーナーとの情報共有体制を強化する

物件情報の正確性を担保するためには、管理会社やオーナーとの緊密な情報連携が不可欠だ。空室発生時の迅速な情報入手、成約時の即時連絡といった「情報パイプライン」を構築することで、更新の遅延を最小化できる。

定期的な連絡体制として、週1回のメール報告や月次の訪問ミーティングを設定し、物件の最新状況をリアルタイムで把握できる関係性を築くことが重要である。


リアルタイム情報提供で顧客信頼を獲得する実践テクニック

テクニック1:問い合わせ前の「在庫確認」を標準化する

顧客からの問い合わせを受けた際、返答前に必ず物件の最新状況を確認するプロセスを導入する。わずか数分の確認作業で、「その物件はもうない」という失望を与えるリスクを回避できる。

RSC調査では、「問合せに対するレスポンスが早かった」が満足度71.5%を記録している。重要なのは「スピード」と「正確性」の両立であり、確認作業を含めても30分以内に返答できる体制を目指すべきだ。

テクニック2:代替物件の即時提案力を磨く

万が一、問い合わせ物件が成約済みだった場合でも、類似条件の代替物件を即座に提案できる準備を整えておく。この「代替提案力」が、顧客離れを防ぐ最後の砦となる。

具体的には、エリア・価格帯・間取りが近い物件を事前にグルーピングしておき、「こちらの物件は成約となりましたが、同条件でこちらの物件はいかがでしょうか」とスムーズに提案できる状態を作っておく。

テクニック3:情報の透明性を武器にする

物件情報の更新日時を明示的に表示することで、情報の鮮度を「見える化」する。「最終更新:2026年1月4日」といった表示は、顧客に安心感を与えるとともに、自社の情報管理への姿勢を示すメッセージとなる。

RSC調査によれば、物件情報の鮮度や正確性が信頼できる情報源として「不動産情報サイト」が全体で42.0%とトップとなっているが、「不動産会社の自社ホームページ」も12.8%と一定の支持を得ている。自社サイトの情報精度を高めることで、差別化の武器となり得るのだ。

テクニック4:顧客からのフィードバックを活用する

「掲載されていた物件がなかった」という報告を受けた場合、それを改善の機会として活用する。クレーム対応だけでなく、なぜ情報が更新されていなかったのかを分析し、業務フローの改善につなげる姿勢が重要だ。

こうした「顧客の声を業務改善に活かす」サイクルを回すことで、継続的に情報の精度を高めていくことができる。


フランチャイズ加盟がもたらす業務効率化のメリット

物件情報の更新頻度を改善するためには、システム投資と業務ノウハウの両面でのサポートが有効だ。

ハウスコムフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用しており、加盟店はコンバータ・顧客管理・契約管理の一体化されたシステムを活用できる。これらの利用料金がロイヤリティに含まれているため、個別にシステム投資を行う必要がなく、運営コストの最適化にも寄与する。

また、本部が主催するベンチマークセミナーでは、直営店のノウハウに加え、他の不動産業者の実態も共有される。物件情報管理のベストプラクティスを学び、自社の業務フロー改善に活かせる点は、フランチャイズならではの強みといえるだろう。

さらに、定期的な巡回サポートにより、各加盟店が抱える課題に対して本部が伴走支援を行う体制も整っている。業務効率化の相談から、具体的な改善提案まで、経営者だけでなく従業員も含めたサポートを受けられる環境がある。


業界全体で求められる「情報の正確性」への意識改革

RSC調査の経年データを見ると、顧客の期待値は年々高まっていることがわかる。問い合わせた不動産会社数は賃貸で平均3.3社と過去11年で最多を記録し、検討期間の長期化傾向も顕著だ。

これは何を意味するのか。顧客はより多くの会社を比較し、より慎重に判断するようになっているのだ。その中で選ばれる会社になるためには、「情報の正確性」という基本を徹底することが、これまで以上に重要になっている。

「その物件はもうない」——この一言が、潜在顧客を競合他社に流出させるきっかけとなりかねない。逆に言えば、物件情報の鮮度管理を徹底することで、競合との差別化を図れる余地が大きいということでもある。


まとめ:リアルタイム情報提供が競争力の源泉となる時代

本稿では、物件情報の更新頻度を改善する業務フローと、リアルタイム情報提供による顧客信頼獲得の方法論を解説してきた。

最後に、すぐに実践できるアクションリストを整理しておこう。

今日から始められる5つのアクション

  1. 朝の30分を「情報更新タイム」として固定化する
  2. 成約時の即時更新ルールを全スタッフに周知する
  3. 週1回の「物件情報棚卸し」をスケジュールに組み込む
  4. 問い合わせ対応前の在庫確認を標準プロセス化する
  5. 物件情報の最終更新日時を明示する運用を開始する

これらの取り組みは、特別な投資なしに始められるものばかりだ。しかし、継続的に実行することで、顧客満足度の向上と成約率の改善につながることは、調査データが示す通りである。

不動産賃貸仲介業における競争は、今後さらに激化することが予想される。その中で勝ち残るための鍵は、「情報の正確性」という基本の徹底にある。本稿で紹介した業務フロー改善策を参考に、自社の情報管理体制を見直す第一歩を踏み出していただければ幸いである。