【売買成約率を左右する】地盤の強さ情報を正確に伝える方法|顧客の62.9%が求める説明技術を徹底解説

「この土地、地盤は大丈夫ですか?」

2024年1月の能登半島地震以降、不動産売買の現場でこの質問を受ける機会が格段に増えた。液状化による建物の傾斜、地盤沈下による街区の崩壊——あの衝撃的な映像は、多くの住宅購入検討者の記憶に深く刻まれている。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査によると、売買検討者の62.9%が「地盤の強さ(硬さ)」を物件情報以外に必要な情報として挙げた。これは「災害情報」と並んでトップの数字だ。賃貸でも52.1%が同様の関心を示しており、地盤情報への需要は業界全体で急速に高まっている。

しかし、多くの不動産仲介業者にとって、地盤情報の収集と説明は依然として「苦手分野」のままではないだろうか。本記事では、顧客の信頼を勝ち取り、成約率を高めるための地盤情報の収集方法と説明技術を、実務に即した形で徹底解説する。


なぜ今、地盤情報が売買の決め手になるのか

能登半島地震が変えた顧客心理

2024年1月1日に発生した能登半島地震(M7.6)は、地盤災害の恐ろしさを日本中に知らしめた。石川県内灘町では砂丘を削った地盤で甚大な液状化被害が発生し、新潟県江南区では信濃川の旧河道に砂を盛土した地盤が「砂+浅い地下水位」という液状化の発生条件を満たし、広範囲で被害が拡大した。

注目すべきは、被害を免れた住宅の存在だ。現地調査によると、2000年以降に建築され、適切な地盤改良を施した住宅では大きな被害が見られなかった。輪島市の「輪島港マリンタウン」の木造住宅群も、周辺で地盤の隆起や液状化が見られる中、損傷がほとんどなかったという報告がある。

この事実は、「地盤を事前に調べ、適切な対策を講じれば被害は防げる」という教訓を社会に与えた。結果として、住宅購入検討者の地盤に対する関心は過去最高レベルに達している。

検討期間の長期化と比較社数の増加

RSCの調査では、売買契約までに3ヶ月以上かけた顧客の割合が前年より4.4ポイント増加。問い合わせた不動産会社数も平均3.8社と、2015年以降で最多を記録した。

顧客は以前より多くの情報を収集し、複数の会社を比較検討している。この状況で「地盤情報をしっかり説明できる会社」と「曖昧な説明しかできない会社」では、信頼度に大きな差が生まれる。地盤情報の提供力は、選ばれる仲介会社になるための重要な差別化要因となっている。


地盤情報の基礎知識|まず押さえるべき5つの指標

地盤情報を顧客に説明する前に、営業担当者自身が基礎知識を身につけておく必要がある。以下の5つの指標を理解しておくことで、説明に説得力が生まれる。

1. 地耐力(地盤の強さ)

地耐力とは、地盤が建物の重さに耐えられる力のこと。一般的な木造2階建て住宅を支えるには、20kN/㎡以上の地耐力が必要とされる。地耐力が不足している場合は地盤改良工事が必要となり、その費用は工法によって数十万円から数百万円まで幅がある。

顧客への説明ポイント:「この土地は○○という評価で、一般的な戸建住宅を建てる場合は地盤改良の必要がない(または必要がある可能性が高い)と推測されます」

2. 液状化の可能性

液状化とは、地震の揺れで地盤が液体のようになり、建物が沈んだり傾いたりする現象。砂質の地盤で地下水位が高い場所で発生しやすい。2024年の能登半島地震では、この液状化被害が広範囲で発生した。

顧客への説明ポイント:「液状化は地震時に発生するリスクで、地形や地質によって可能性が異なります。この土地の液状化リスクは5段階評価で○です」

3. 地形分類

地形は地盤の強さと密接に関係している。一般的に、丘陵地や台地は地盤が強く、低地や埋立地、旧河道は弱い傾向がある。

地形特徴地盤の傾向
山地・丘陵長い年月をかけて形成強い
台地・段丘古くからの平坦地比較的強い
自然堤防河川沿いの微高地やや強い
低地・谷底平野河川の堆積作用で形成弱い傾向
埋立地・干拓地人工的に造成要注意
旧河道・旧池沼かつて水域だった場所特に注意

4. 揺れやすさ

同じ震度でも、地盤の性質によって建物が受ける揺れの大きさは異なる。「表層地盤増幅率」という指標で表され、数値が大きいほど揺れが増幅されやすい。

5. 過去の土地利用履歴

かつて水田、池、川だった場所を埋め立てて宅地にした場合、地盤が軟弱である可能性が高い。古地図や航空写真で過去の土地利用を確認することで、現在の地図からは分からないリスクを把握できる。


無料で使える地盤情報収集ツール5選

地盤情報の収集は、以前は専門業者に依頼するしかなかった。しかし現在は、無料で使える優れたツールが複数公開されている。これらを活用することで、物件案内前の下調べや顧客への資料提供が格段に効率化できる。

1. 地盤サポートマップ(ジャパンホームシールド)

戸建住宅の地盤調査実績240万棟以上を誇るジャパンホームシールドが提供する無料サービス。住所を入力するだけで、地耐力、地質、地形、液状化の可能性など13項目の地盤情報を地図上で確認できる。

活用ポイント

  • PDFレポートを無料で作成・ダウンロード可能
  • 顧客への説明資料として活用できる
  • スマートフォンアプリ版もあり、現地案内時に即座に確認可能
  • 2025年のアップデートで液状化評価が5段階に詳細化

2. 地盤安心マップ(地盤ネット)

地盤改良工事の要否を「●」(不要)と「▲」(必要)で視覚的に表示。複数の地盤情報を重ね合わせて表示できる機能があり、総合的なリスク判断に役立つ。旧版地形図との比較機能で、埋立地かどうかも確認できる。

3. 重ねるハザードマップ(国土地理院)

国土地理院が提供する公的な災害リスク情報サイト。洪水、土砂災害、津波などのハザード情報を地図上に重ねて表示できる。地盤に特化したツールではないが、総合的な災害リスク説明には必須。

4. 地理院地図(国土地理院)

標高、傾斜、地形分類など多様な地理情報を閲覧可能。「土地条件図」を表示すれば、土地の成り立ちや地形分類を詳細に確認できる。

5. 各自治体の液状化マップ

多くの自治体が液状化マップを公開している。地域によって精度や詳細度は異なるが、公的な情報として顧客への説明時に説得力がある。ただし、能登半島地震では液状化マップの危険度が中程度だった地域で甚大な被害が発生した事例もあり、過信は禁物。


顧客の心を掴む地盤情報の説明技術

地盤情報を収集できても、それを顧客に分かりやすく伝えなければ意味がない。ここでは、実際の接客場面で使える説明技術を紹介する。

段階的説明法|専門用語を使わない伝え方

地盤情報には専門用語が多い。いきなり「N値」「地耐力」「表層地盤増幅率」と言っても、一般の顧客には伝わらない。

ステップ1:結論から伝える 「この土地の地盤は、一般的な戸建住宅を建てるには問題ないレベルと推測されます」

ステップ2:根拠を示す 「こちらの地盤情報レポートをご覧ください。地耐力は『強い地盤』と評価されており、液状化リスクも5段階で2と低めです」

ステップ3:比較で理解を促す 「同じエリアでも、○○通り沿いは旧河道のため地盤がやや弱い傾向がありますが、この物件は台地上にあるため、相対的に安定しています」

ビジュアル説明法|資料の見せ方で差をつける

地盤サポートマップのPDFレポートや自治体のハザードマップを印刷して持参する。タブレットで現地の地盤情報をその場で表示するのも効果的だ。

「言葉だけ」より「視覚情報を伴う説明」の方が、顧客の理解度も信頼度も格段に高まる。

準備すべき資料

  • 地盤サポートマップのPDFレポート(物件所在地)
  • 自治体のハザードマップ(該当エリア)
  • 古地図(可能であれば)
  • 過去の航空写真(地盤サポートマップで確認可能)

不安を安心に変える説明フレーム

地盤情報を伝える際、「リスクがある」という事実だけを伝えると顧客は不安になる。重要なのは、リスクを認識した上でどう対処できるかを示すことだ。

悪い例 「この土地は液状化リスクがやや高いです」(不安だけが残る)

良い例 「この土地は液状化リスクがやや高いと評価されていますが、建築時に地盤調査を行い、必要に応じて地盤改良を施すことでリスクを軽減できます。地盤改良の費用は工法によりますが、一般的な戸建住宅では○○万円程度が目安です。また、瑕疵担保保険の加入条件として地盤調査が義務付けられているため、建築会社は必ず地盤を調べた上で適切な基礎設計を行います」(対処法を示して安心に変える)


重要事項説明における地盤情報の位置づけ

法的義務と実務上の注意点

宅地建物取引業法第35条では、重要事項説明書に記載すべき事項が規定されている。地盤に関しては、2020年7月の施行規則改正により、水防法に基づくハザードマップの添付と当該物件の概ねの位置を示すことが義務化された。

ただし、これはあくまで「水害」に関する説明義務であり、地盤の強さ(地耐力)や液状化リスクに関する具体的な説明方法は法令で明確に定められていない。

判例が示す説明責任

しかし、判例では地盤に関する説明義務が認められたケースが複数存在する。ある裁判では、仲介業者が軟弱地盤であることを認識していたにもかかわらず説明しなかった場合、「買主が売買契約を締結するかどうかを決定付けるような重要な事項」として説明義務違反が認定された。

重要なのは、宅建業法35条1項の事項が「少なくとも」の例示列挙であるという解釈だ。つまり、法定事項以外でも、買主の判断に重大な影響を与える事項は説明すべきとされている。

実務での対応ポイント

法的なグレーゾーンを踏まえ、以下の対応を推奨する。

  1. 知り得た情報は必ず開示する 売主から地盤に関する情報(過去の地盤調査結果、地盤改良の有無など)を入手した場合は、必ず買主に伝える。
  2. 公開情報を活用して補足説明 無料ツールで得られる地盤情報を重要事項説明書に添付し、補足説明を行う。
  3. 専門家への橋渡し 詳細な地盤調査が必要と判断される場合は、地盤調査会社への依頼を助言する。
  4. 記録を残す 地盤情報の説明内容は書面に残し、買主から確認の署名をもらう。

地盤情報で差別化する営業戦略

物件情報への付加価値

大手不動産ポータルサイトに掲載される物件情報は、基本的にどの仲介会社も同じ内容になりがちだ。しかし、地盤情報を付加価値として提供することで、差別化が可能になる。

差別化の具体策

  1. 自社サイトの物件詳細に地盤情報を追加 「地盤評価:強い地盤」「液状化リスク:低」など、分かりやすい表記で地盤情報を掲載。
  2. 物件案内資料に地盤レポートを同封 顧客への提案時に、地盤サポートマップのPDFレポートを添付。
  3. 比較検討時の判断材料として提示 「A物件とB物件は価格が同等ですが、地盤の強さではA物件が優位です」

仕入れ段階での活用

地盤情報は、物件の仕入れ段階でも活用できる。

  • 売主への査定時に地盤情報を提示し、適正価格の根拠とする
  • 地盤に課題がある物件は、その分を価格に反映させる
  • 地盤が良好な物件は、プラス要素としてアピール

顧客の質問を先回りする

「地盤は大丈夫ですか?」という質問を受けてから説明するのではなく、こちらから先に説明することで、プロフェッショナルとしての信頼を勝ち取れる。

「この物件の災害リスクについてご説明させていただきます。まず地盤についてですが…」と切り出すことで、顧客は「この会社はしっかりしている」と感じる。


フランチャイズのサポートを活用する

地盤情報の収集・説明を個社で完璧に行うには、相当な知識とノウハウが必要だ。特に中小規模の仲介会社にとって、独自にこれらの体制を構築することは負担が大きい。

不動産フランチャイズに加盟することで、本部が提供する研修プログラムやナレッジベース、業務支援ツールを活用できる。例えばハウスコムフランチャイズでは、加盟店が抱える様々な課題に対して「多くの引き出し」を持った本部スタッフが定期的に巡回し、経営者から従業員まで寄り添いながら解決を目指す体制を整えている。

地盤情報の説明技術も含め、不動産仲介業務の幅広いノウハウを組織的に習得できる環境は、競争力強化に直結する。


まとめ|地盤情報で選ばれる仲介会社になる

住宅購入検討者の62.9%が「地盤の強さ」を必要な情報として挙げている現在、地盤情報の提供力は不動産仲介会社の競争力を左右する重要なファクターとなっている。

本記事のポイントを振り返ろう。

地盤情報が重要な理由

  • 能登半島地震以降、顧客の地盤に対する関心は過去最高レベル
  • 検討期間の長期化・比較社数の増加により、情報提供力が差別化要因に

押さえるべき基礎知識

  • 地耐力、液状化リスク、地形分類、揺れやすさ、土地履歴の5指標
  • 地形と地盤強度の関係を理解する

情報収集ツールの活用

  • 地盤サポートマップ、地盤安心マップなど無料ツールを駆使
  • PDFレポートを顧客説明資料として活用

説明技術の向上

  • 専門用語を使わない段階的説明法
  • ビジュアル資料を活用した説明
  • 不安を安心に変えるフレーム

法的・実務的対応

  • 知り得た情報は必ず開示
  • 公開情報を重要事項説明書に添付
  • 説明内容を記録として残す

地盤情報を正確に伝える力を身につけることで、顧客からの信頼を獲得し、成約率の向上につなげてほしい。