売買顧客の約15%が注目する「住まいの資産性」——選ばれる仲介会社になるための提案術7つのポイント

「この物件、将来売却するときに価値は下がりませんか?」
近年、住まい探しの現場でこうした質問を投げかける顧客が増えている。住宅を「消費財」ではなく「資産」として捉える意識が、確実に広がっているのだ。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した調査によると、売買契約者が物件を決める際に気にするポイントとして「住まいに資産性がある」が4位にランクイン。特に重視するポイントでも同率3位に入り、15.3%の顧客が資産性を重要視しているという結果が出た。
この数字は、単なるトレンドにとどまらない。人生100年時代を見据え、住まいを「住む場所」から「将来の選択肢を広げる資産」へと再定義する動きは、今後さらに加速していくと考えられる。
本稿では、資産性を重視する顧客に対して、不動産仲介業者としてどのような提案ができるのか、その具体的な手法と実践的なポイントを解説する。
なぜ今、「住まいの資産性」が注目されているのか
住宅に対する価値観の変化
従来、日本では「持ち家は一生もの」という考え方が主流だった。しかし、ライフスタイルの多様化や働き方の変化により、住み替えを前提とした住宅選びが増えている。
国土交通省の調査によれば、住宅の平均居住年数は年々短縮傾向にあり、特に都市部では10〜15年程度で住み替えるケースも珍しくない。こうした背景から、「売却時にいくらで売れるか」「資産価値が維持されるか」といった視点が、物件選びの重要な判断基準となっている。
投資としての住宅購入
低金利時代が続く中、住宅ローンを活用した不動産購入は、資産形成の一環として捉えられるようになった。特に若年層を中心に、「賃貸に家賃を払い続けるより、資産になる物件を購入したい」という意識が高まっている。
RSCの調査でも、売買検討者の検討期間は長期化傾向にあり、3ヶ月以上検討する層が40.3%に達している。これは、単に「住む場所」を探しているのではなく、将来の資産価値まで含めて慎重に判断していることの表れといえる。
「資産性」を構成する5つの要素
顧客に資産性を説明する際には、抽象的な話に終始せず、具体的な要素に分解して伝えることが重要だ。資産性を構成する主な要素は以下の5つである。
1. 立地(ロケーション)
不動産の価値を決める最大の要因は立地である。具体的には以下のポイントが資産性に直結する。
- 交通利便性:最寄り駅からの距離、複数路線へのアクセス、ターミナル駅への所要時間
- 生活利便施設:スーパー、病院、学校、公園などの充実度
- 将来性:再開発計画、新駅設置、大型商業施設の進出予定
RSCの調査では、売買契約者の57.1%が「交通の利便性」を気にするポイントとして挙げており、立地の重要性は数字でも裏付けられている。
2. 建物のコンディションと築年数
建物の状態は、資産価値の維持に大きく影響する。
- 構造:鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)は、木造に比べて資産価値が下がりにくい
- 管理状態:定期的なメンテナンス、大規模修繕の実施状況
- 設備の更新:水回り、給湯設備、エレベーターなどの更新履歴
特にマンションの場合、管理組合の運営状況や修繕積立金の残高も重要な判断材料となる。
3. 省エネ性能
2024年に「建築物の省エネ性能表示制度」が開始され、2025年4月には新築住宅の省エネ基準適合が義務化された。RSCの調査では、78.6%の顧客が省エネ性能を「重要」と回答しており、今後の資産価値を左右する要因として注目度が急上昇している。
省エネ性能が高い住宅は、光熱費の削減というランニングコストのメリットに加え、売却時の訴求ポイントにもなる。
4. 災害リスク
売買検討者の30.2%が「災害のリスクが少ない地域である」ことを気にするポイントとして挙げている。近年の自然災害の頻発を受け、ハザードマップの確認は物件選びの必須項目となった。
- 洪水・浸水リスク
- 地震による液状化リスク
- 土砂災害警戒区域への該当有無
これらのリスクが低い立地の物件は、将来的な資産価値の維持が期待できる。
5. 需要の安定性
資産性を考える上で見落としがちなのが、将来的な「買い手」の存在である。
- 人口動態:人口減少が進む地域か、流入が続く地域か
- 賃貸需要:将来的に賃貸に出した場合の需要があるか
- 市場流動性:同エリアでの取引件数、売却にかかる平均期間
いくら良い物件でも、買い手がいなければ資産として成立しない。この視点を顧客に伝えることで、説得力のある提案が可能になる。
資産性を重視する顧客への7つの提案術
【提案術1】数字で語る——データを活用した説明
資産性の説明において、感覚的な表現は避け、できる限りデータを用いて説明することが重要だ。
活用できるデータ例:
- 過去10年間のエリア別地価推移
- 同エリア・同築年数の成約事例
- 人口推計データ(国立社会保障・人口問題研究所)
- 再開発情報(自治体の都市計画情報)
「このエリアは過去5年で地価が8%上昇しています」「同じマンションの別住戸が昨年、築10年で購入価格の95%で成約しています」といった具体的な数字を示すことで、顧客の納得感は大きく高まる。
【提案術2】比較提案——複数物件の資産性を可視化する
顧客が複数の物件で迷っている場合、資産性の観点から比較表を作成して提示する方法が効果的だ。
| 比較項目 | 物件A | 物件B | 物件C |
|---|---|---|---|
| 駅徒歩 | 5分 | 10分 | 3分 |
| 築年数 | 8年 | 15年 | 新築 |
| 管理状況 | 優良 | 普通 | — |
| 省エネ等級 | 4 | 3 | 5 |
| ハザードリスク | 低 | 中 | 低 |
| エリア人口推移 | 増加 | 横ばい | 増加 |
このように可視化することで、価格だけでなく「将来価値」を含めた総合的な判断を促すことができる。
【提案術3】シミュレーション提案——10年後を見据えた試算
住宅購入は長期的な視点が必要だ。10年後、15年後の想定売却価格をシミュレーションして提示することで、資産性への理解を深めてもらえる。
シミュレーション例:
【購入価格】4,500万円
【10年後の想定売却価格】3,800万円〜4,200万円
【実質住居費(購入価格−売却価格)】300万円〜700万円
【月換算】2.5万円〜5.8万円
※同条件の賃貸物件の月額家賃:15万円
※10年間の家賃総額:1,800万円
このような比較を行うことで、「購入して住んで売る」という選択肢の経済的メリットを具体的に伝えられる。
【提案術4】エリア分析——地域の将来性を深掘りする
顧客が検討しているエリアについて、将来性を含めた詳細な分析を提供する。
分析すべきポイント:
- 自治体の人口ビジョン・総合戦略
- 再開発・区画整理事業の計画
- 新線・新駅の建設予定
- 大型商業施設・企業誘致の動向
- 学区の評判と学校の新設予定
これらの情報を整理して提供することで、「この営業担当は本当に調べてくれている」という信頼感を醸成できる。
【提案術5】リスク説明——マイナス情報も誠実に伝える
資産性を語る際、プラス面だけでなくリスクも正直に伝えることが重要だ。RSCの調査でも、不動産会社の対応で「情報が正確で誠実な対応だった」ことへの満足度は高く、誠実さが信頼につながることが示されている。
伝えるべきリスク例:
- 大規模修繕の予定と修繕積立金の状況
- 近隣の開発計画による環境変化の可能性
- 人口減少エリアにおける将来的な需要リスク
- 旧耐震基準物件の資産価値への影響
リスクを伝えた上で、それでも購入するメリットがあるのか、あるいは別の物件を検討すべきなのかを一緒に考える姿勢が、顧客からの信頼を勝ち取る。
【提案術6】出口戦略の提示——売却・賃貸の選択肢を示す
資産性を重視する顧客は、将来の「出口」を気にしている。購入時点で、将来の選択肢を具体的に示すことが有効だ。
出口戦略の提案例:
- 売却:同エリアの流通事例、想定売却期間、仲介手数料の目安
- 賃貸:想定賃料、空室リスク、管理費用の目安
- 相続:評価額の目安、相続税への影響
「10年後に売却する場合はこのくらい、賃貸に出す場合は月額このくらいの収入が見込めます」と具体的に示すことで、購入の意思決定を後押しできる。
【提案術7】専門家連携——信頼できるネットワークの活用
資産性の説明には、時として専門家の知見が必要になる。税理士、ファイナンシャルプランナー、建築士などとの連携体制を構築しておくことで、より深い提案が可能になる。
連携すべき専門家:
- 税理士:住宅ローン控除、売却時の税金、相続税対策
- FP:ライフプラン全体の中での住宅購入位置づけ
- 建築士:建物の劣化状況、リフォーム費用の見積もり
- 司法書士:登記関連、権利関係の確認
専門家との連携は、自社の提案力を高めるだけでなく、顧客に「この会社に任せれば安心」という印象を与える効果もある。
賃貸仲介から売買相談へ——クロスセルの可能性
ここで注目したいのが、賃貸仲介業者における売買対応の重要性だ。
RSCの調査によると、賃貸検討者の中にも「住まいに資産性がある」ことを気にする層が一定数存在する。賃貸で物件を探している顧客が、営業担当との会話の中で「購入も検討したい」と考えるケースは少なくない。
このとき、資産性に関する知識を持ち、適切な提案ができれば、賃貸仲介から売買仲介へとビジネスを広げる機会が生まれる。逆に、売買の知識がなければ、その顧客は他社に流れてしまう。
賃貸をメインとする不動産会社にとっても、資産性を軸にした提案スキルは、今後の競争力を左右する重要な武器となるだろう。
フランチャイズ加盟という選択肢
資産性に関する提案力を高めるには、日々のスキルアップに加え、最新の市場情報やノウハウを効率的に収集する仕組みが必要だ。
この点において、フランチャイズへの加盟は有効な選択肢の一つとなる。フランチャイズ本部が提供する研修プログラムや情報共有ネットワークを活用することで、個社では得られない知見を効率的に吸収できる。
また、ブランド力を活かした集客支援、業務システムの提供、加盟店同士の情報交換など、経営基盤の強化につながるメリットも大きい。特に中小規模の不動産会社にとって、単独では難しい施策を本部のサポートを受けながら実現できる点は、大きなアドバンテージといえる。
まとめ——資産性提案は「選ばれる会社」への第一歩
住まいの資産性を重視する顧客への対応は、もはや付加価値ではなく、不動産仲介業者としての基本スキルになりつつある。
本稿で紹介した7つの提案術を実践することで、顧客からの信頼を獲得し、成約率の向上につなげることができる。
- 数字で語る——データを活用した説明
- 比較提案——複数物件の資産性を可視化する
- シミュレーション提案——10年後を見据えた試算
- エリア分析——地域の将来性を深掘りする
- リスク説明——マイナス情報も誠実に伝える
- 出口戦略の提示——売却・賃貸の選択肢を示す
- 専門家連携——信頼できるネットワークの活用
RSCの調査が示すように、顧客の比較社数は過去最多を更新し、検討期間も長期化している。この「選ばれる時代」において、資産性という切り口で付加価値を提供できるかどうかが、今後の不動産仲介業者の明暗を分けることになるだろう。
顧客の未来を見据えた提案ができる会社こそが、長期的な信頼関係を築き、持続的な成長を実現できる。その第一歩として、資産性に関する知識と提案スキルを磨いていただきたい。
参考資料
- 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月発表)


