顧客の心を動かす「口コミのお願い」──押し付けにならない依頼術で評判を自然に増やす7つの実践テクニック

「お客様、よろしければ口コミを書いていただけませんか?」
この一言を伝えるタイミングや言い方に、多くの不動産営業担当者が悩んでいる。契約後の満足度は高いはずなのに、なぜか口コミは増えない。かといって、しつこく依頼すれば押し付けがましい印象を与えかねない。このジレンマは、賃貸仲介業界において長年の課題となっている。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によれば、「不動産会社に対する口コミ情報」は、顧客が問合せや訪問を行う際に特に重視するポイントとして2位にランクインした。しかも、この傾向は前年比で増加している。つまり、口コミの数と質が、そのまま店舗の集客力を左右する時代が本格的に到来しているのだ。
本記事では、顧客に不快感を与えることなく、自然な形で口コミ投稿を促すための具体的な方法を徹底解説する。明日からすぐに実践できるテクニックを、現場の声とデータに基づいてお届けしたい。
なぜ今、口コミ対策が不動産会社の生命線となっているのか
顧客の意思決定プロセスが変化している
かつて不動産会社を選ぶ際の重要な判断基準は「店舗の立地」だった。駅前の好立地に店舗を構えれば、自然と来店客が見込めた時代があった。しかし、RSCの調査データはその常識が覆りつつあることを示している。
「店舗がアクセスしやすい場所にある」という選択肢は、2年連続で重要度が低下している。一方で、「不動産会社に対する口コミ情報」の重要度は上昇を続けている。この傾向が意味するところは明確だ。顧客は実際に足を運ぶ前に、インターネット上で情報収集を済ませ、訪問する会社をすでに絞り込んでいるのである。
問合せ数の増加と「選ばれる戦い」の激化
同調査によれば、物件契約までに顧客が問合せる不動産会社数は平均3.5社で、前年から0.9社も増加した。特に賃貸においては平均3.3社と、2015年以降で最多を記録している。「5社以上」に問合せる顧客の割合は21.0%にのぼる。
この数字は何を物語っているのか。顧客は複数の会社を比較検討した上で、最終的に1社を選んでいるということだ。その比較検討の段階で大きな判断材料となるのが、まさに口コミなのである。
写真と口コミが「会社選び」の2大要素に
興味深いことに、不動産会社を選ぶポイントとして最も重視されているのは「写真の点数が多い」という項目だ。物件写真の充実度は、その会社の仕事の丁寧さを示す指標として顧客に認識されている。そして2位に位置するのが「口コミ情報」である。
写真は物件の魅力を伝え、口コミは会社の信頼性を伝える。この両輪が揃って初めて、顧客は安心して問合せのボタンをクリックするのだ。
口コミ依頼が難しい理由──営業担当者が抱える3つの心理的障壁
口コミの重要性は理解していても、実際に依頼するとなると躊躇してしまう営業担当者は少なくない。その背景には、いくつかの心理的な障壁が存在する。
障壁1:「お願いする」ことへの抵抗感
日本人特有の遠慮の文化が、口コミ依頼を難しくしている面がある。「契約していただいたのに、さらにお願いするのは図々しい」という感覚だ。しかし、視点を変えれば、口コミを書いてもらうことは顧客にとっても価値のある行為となりうる。自分の経験を他の人の役に立てたいと考える顧客は、実は多いのである。
障壁2:悪い口コミを書かれる恐怖
口コミを依頼すれば、必ずしも良い評価だけが返ってくるわけではない。この恐怖が依頼を躊躇させる原因になっている。ただし、この恐怖心は往々にして杞憂に終わる。そもそも対応に満足していない顧客に口コミを依頼しても、多くの場合は書いてもらえない。依頼に応じてくれる顧客は、サービスに一定の満足を感じているケースがほとんどなのだ。
障壁3:タイミングと言い方がわからない
「いつ、どのように伝えればよいのか」という具体的なノウハウの不足も大きな障壁となっている。契約直後なのか、入居後なのか、どんな言葉で伝えるべきなのか。この不確実性が、行動を先送りにさせてしまう。
次章では、これらの障壁を乗り越え、自然な形で口コミを依頼するための具体的なテクニックを紹介していく。
押し付けにならない口コミ依頼の7つの実践テクニック
テクニック1:感謝の文脈に口コミ依頼を組み込む
最も自然な口コミ依頼は、感謝の言葉とセットで伝えることだ。契約完了後、「本日は誠にありがとうございました。おかげさまで無事にお住まいが決まり、私どもも大変嬉しく思っております」と感謝を述べた後に、「もしお時間があれば、今回のお部屋探しの体験を口コミとして共有していただけると、同じようにお部屋を探されている方の参考になります」と続ける。
このアプローチのポイントは、口コミが「自分たちのため」ではなく「他の顧客のため」になるという価値を提示していることだ。人は「誰かの役に立てる」と感じたとき、行動を起こしやすくなる。
テクニック2:選択肢を与えて心理的ハードルを下げる
「口コミを書いてください」という直接的な依頼よりも、「お時間がございましたら」「もしよろしければ」という前置きを添えることで、顧客に選択の余地を与える。さらに効果的なのは、「Googleマップでも、大手不動産ポータルサイトでも、書きやすいところで構いません」と具体的なプラットフォームを提示しつつ選択肢を与えることだ。
どこに書くかを顧客自身が選べることで、「やらされている」という感覚が薄まり、自発的な行動につながりやすくなる。
テクニック3:入居後のフォロー連絡と組み合わせる
契約直後よりも効果的なタイミングがある。それは入居から2週間〜1ヶ月後のフォロー連絡だ。「新しいお住まいでの生活はいかがでしょうか?何かお困りのことはございませんか?」という確認の連絡は、顧客にとって好印象を与える。
この際、何か問題があれば対応し、問題がなければ「順調にお過ごしいただけているようで安心いたしました。もしお時間があれば、今回のお部屋探しの体験を口コミでお聞かせいただけると嬉しいです」と自然に依頼できる。
この方法には二重のメリットがある。まず、入居後の満足度が高い状態で依頼できること。そして、フォロー連絡自体が「丁寧な会社」という印象を強め、良い口コミにつながりやすくなることだ。
テクニック4:具体的な記載ポイントを示唆する
「口コミを書いてください」とだけ伝えても、顧客は何を書けばよいのか迷ってしまうことがある。そこで有効なのが、記載のヒントを与えることだ。
「たとえば、お部屋探しで不安だったことや、当社のスタッフの対応で印象に残ったこと、次にお部屋を探す方へのアドバイスなど、自由にお書きいただければ」と伝える。具体的なテーマを示すことで、顧客は「何を書けばよいか」が明確になり、行動のハードルが下がる。
テクニック5:QRコードやショートURLで導線を簡素化する
口コミを書こうと思っても、どこから書けばよいかわからず諦めてしまう顧客は少なくない。この「面倒くささ」を解消するために、口コミ投稿ページへの直接リンクをQRコード化したカードを用意しておくことをお勧めする。
「こちらのQRコードを読み取っていただければ、すぐに口コミ画面に移動できます」と、契約書類と一緒にカードを手渡す。このひと手間が、口コミ投稿率を大きく向上させる。カードには店舗名と「口コミのお願い」という簡潔なメッセージのみを記載し、押し付けがましさを排除することが重要だ。
テクニック6:スタッフ全員で統一したアプローチを取る
口コミ依頼を属人化させないことも重要なポイントだ。「このスタッフは依頼するが、あのスタッフはしない」という状態では、店舗全体の口コミ数は安定しない。
店舗ミーティングで口コミ依頼のタイミングと言い回しを統一し、チェックリスト化することをお勧めする。「契約完了時に口コミカードを手渡す」「入居2週間後にフォロー連絡を入れる」といった具体的なアクションを標準化することで、誰が担当しても一定の口コミが獲得できる仕組みが構築できる。
テクニック7:良い口コミをスタッフにフィードバックする
口コミが増えてきたら、その内容をスタッフ全員で共有する場を設けよう。「○○さんの丁寧な対応が素晴らしかった」という口コミがあれば、朝礼などで紹介する。これにより、スタッフのモチベーションが向上し、さらに良いサービスを提供しようという好循環が生まれる。
同時に、「次も口コミをいただけるような対応をしよう」という意識がチーム全体に浸透していく。口コミは結果であると同時に、サービス品質向上のドライバーでもあるのだ。
やってはいけないNG例──逆効果になる口コミ依頼パターン
自然な口コミ依頼を心がける一方で、絶対に避けるべきアプローチも存在する。以下のNG例は、顧客に不快感を与え、むしろ悪い口コミを誘発するリスクがある。
NG例1:見返りをちらつかせる
「口コミを書いていただければ、次回ご紹介時に○○円値引きします」といった金銭的インセンティブの提示は避けるべきだ。これはステルスマーケティング規制に抵触する可能性があるだけでなく、口コミの信頼性そのものを損なう。顧客の自発的な感想こそが、最も価値のある口コミなのである。
NG例2:契約前に依頼する
まだ契約が完了していない段階で口コミを依頼するのは、顧客にプレッシャーを与える行為だ。「良い口コミを書かないと、何か不利になるのでは」という不安を抱かせてしまう。口コミ依頼は、必ず契約完了後に行うべきだ。
NG例3:しつこく複数回依頼する
一度依頼して書いてもらえなかった場合、重ねて依頼することは控えよう。「書かない」という判断も顧客の権利であり、それを尊重することが大切だ。しつこい依頼は、それまでの良い印象を台無しにしてしまう。
NG例4:高評価を指定する
「星5つでお願いします」「良いコメントを書いてください」といった評価内容の指定は、最も避けるべきNG行為だ。顧客の正直な感想を求める姿勢こそが、長期的な信頼構築につながる。仮に星4つの評価でも、具体的で誠実なコメントは、星5つの簡素な評価よりも、読む人にとって参考になることが多い。
口コミを増やした先にある「選ばれる不動産会社」への道
RSCの調査によれば、問合せた不動産会社の対応で「満足だった」という回答のトップは「問合せに対するレスポンスが早かった」(71.5%)、2位は「こちらの都合を優先してくれた」(51.4%)だった。
これらの項目で高い評価を得ている会社は、自然と良い口コミが集まりやすい。つまり、口コミ対策の本質は「依頼の仕方」だけでなく、「依頼したくなるサービス品質」の実現にあるのだ。
口コミ数を増やすことは手段であり、目的ではない。真の目的は、口コミを通じて「選ばれる不動産会社」としてのポジションを確立し、持続的な集客力を獲得することにある。
まとめ:今日から始める口コミ獲得アクション
口コミ投稿を自然に促すためのポイントを改めて整理しよう。
まず、口コミの重要性を正しく認識することだ。「不動産会社に対する口コミ情報」は、顧客が会社を選ぶ際の重要な判断基準として、その位置づけを年々高めている。
次に、依頼のタイミングと言い方を工夫すること。感謝の文脈に組み込む、選択肢を与える、入居後のフォローと組み合わせるといったテクニックを活用すれば、押し付けがましさを感じさせずに依頼できる。
そして、導線の簡素化を忘れないこと。QRコード付きのカードを用意するなど、顧客が「書きたい」と思ったときにすぐ行動できる環境を整えることが、口コミ投稿率向上の鍵となる。
最後に、NGパターンを徹底的に避けること。見返りの提示、契約前の依頼、しつこい複数回の依頼、高評価の指定は、すべて逆効果となる。
口コミは、顧客と会社の信頼関係の結晶である。一朝一夕で増えるものではないが、正しいアプローチを継続することで、確実に成果は表れる。今日から一つでも実践し、「選ばれる不動産会社」への第一歩を踏み出してほしい。
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