成約率が変わる!図面だけでは伝わらない「五感情報」の説明術──周辺環境・日当たり・騒音を言語化するプロの技術

「この物件、写真は良かったのに実際に見たら違った」

顧客からこう言われた経験はないだろうか。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した調査によると、契約者が不動産会社に求めるもののトップ3は「丁寧・親切な対応」「正確な物件情報の提供」「物件に対する詳細説明」であり、いずれも7割前後の回答者が重視している。さらに注目すべきは、「物件に対する詳細説明」を「特に重要」と回答した割合が前年より大幅に増加している点だ。

間取り図や設備スペックだけでは伝わらない情報──周辺環境の雰囲気、実際の日当たり、生活音の有無──これら「五感で感じる情報」を的確に言語化できる営業担当者と、そうでない担当者では成約率に明確な差が生じている。本稿では、図面に載らない情報を顧客に伝え、「この担当者なら信頼できる」と思わせる説明術を徹底解説する。


顧客が本当に知りたい「図面に載らない」情報とは

データが示す顧客ニーズの実態

RSCの最新調査では、物件情報以外に必要だと思う情報について興味深い結果が出ている。契約者が「必要」と回答した上位項目を見ると、その多くが図面や物件概要には記載されない情報であることがわかる。

全体で見ると「周辺施設情報」が68.8%でトップに立ち、「治安の情報」が55.3%、「地盤の強さ」が55.6%と続く。特筆すべきは「日当たりの良さ」が41.0%、「騒音情報」が36.1%という数字だ。これらはまさに「五感情報」であり、図面や写真だけでは絶対に伝わらない要素である。

賃貸契約者に絞ると傾向はさらに顕著になる。「日当たりの良さ」は40.7%、「騒音情報」は34.6%が必要と回答しており、約3人に1人が音環境に関する情報提供を求めている計算だ。

なぜ「五感情報」の重要性が高まっているのか

背景には、住まい探しの行動変化がある。同調査によると、物件契約までに問い合わせた不動産会社数は賃貸で平均3.3社と過去11年で最多を記録した。検討期間も長期化傾向にあり、賃貸では1カ月以上かけて検討する層が約5割に達している。

つまり、顧客は複数の不動産会社を比較し、より詳しい情報を提供してくれる会社を選んでいる。大手不動産ポータルサイトの物件情報が均一化する中、現地を知る仲介会社だからこそ提供できる「五感情報」が差別化要因になっているのだ。


周辺環境の説明術──「便利です」で終わらせない具体化テクニック

「徒歩○分」の先にある情報を伝える

「駅から徒歩5分で便利です」という説明は、顧客がすでに把握している情報の繰り返しに過ぎない。プロの説明術は、その先にある。

実践フレーズ例:

  • 「駅までの道のりですが、大通り沿いを歩くルートと、商店街を抜けるルートがあります。商店街ルートは少し遠回りになりますが、帰りにお買い物もできますし、夜でも人通りがあって明るいです」
  • 「この物件から駅までは緩やかな上り坂になっています。自転車をお使いになる場合は電動タイプをおすすめします。逆に帰りは楽ですね」
  • 「雨の日は駅ビルの地下通路を使うと、ほとんど濡れずに帰宅できます。傘を持たずに出かけても大丈夫なことが多いです」

生活シーンに合わせた周辺施設の紹介

調査では「周辺施設情報」へのニーズが最も高い。ただし、単に「スーパーが近いです」と伝えるだけでは不十分だ。

顧客属性別の説明ポイント:

単身者向け物件の場合:

  • 「24時間営業のコンビニが徒歩2分にあります。この店舗はATMも設置されていて、荷物の受け取りもできます」
  • 「帰りが遅くなっても大丈夫です。この通りには23時まで営業している定食屋さんと、深夜1時までの牛丼チェーンがあります」
  • 「クリーニング店は駅前にありますが、朝7時から受付している店舗ですので、出勤前に出せます」

ファミリー向け物件の場合:

  • 「小学校までは徒歩8分ですが、途中に信号のない横断歩道があります。ただ、朝は交通指導員の方が立っていらっしゃいます」
  • 「小児科は駅の反対側になりますが、この地域では評判の良い先生がいらっしゃいます。予約システムがあるので、待ち時間も少ないと聞いています」
  • 「公園は徒歩3分の○○公園が一番近いですが、遊具が充実しているのは徒歩10分の△△公園です。週末はそちらに行かれる方が多いようです」

治安情報の伝え方──センシティブな情報を適切に

「治安の情報」は55.3%の契約者が必要と回答している重要項目だが、伝え方には配慮が必要だ。

適切な伝え方の例:

  • 「このエリアは住宅街で、夜も比較的静かです。駅から物件までの道沿いには街灯が整備されていて、夜9時頃に歩いてみましたが、十分な明るさがありました」
  • 「近くに交番がありまして、定期的にパトロールされているのを見かけます」
  • 「マンションのエントランスはオートロックですが、宅配ボックスも1階にあるので、不在時の荷物受け取りも安心です」

避けるべき表現:

  • 「このあたりは犯罪が少ないです」(根拠のない断定)
  • 「女性の一人暮らしでも安全です」(保証できない内容)

代わりに、客観的な事実を伝えることが信頼につながる。


日当たり・採光の伝え方──時間軸で立体的に説明する

「南向き」だけでは伝わらない現実

間取り図に「南向き」と書かれていても、実際の日当たりは周辺の建物や季節、時間帯によって大きく異なる。調査で4割超の顧客が「日当たりの良さ」を必要な情報と回答している背景には、この乖離がある。

時間帯別の説明テクニック:

  • 「この物件は南向きですが、午前中は向かいのマンションの影になります。日差しが入り始めるのは午前11時頃からで、午後は夕方までしっかり日が当たります」
  • 「リビングは西向きですので、午前中は間接光です。ただ、夏場の午後は西日が強くなります。カーテンを工夫されるか、遮熱フィルムを検討されても良いかもしれません」
  • 「この部屋は北向きですが、前が公園で建物がないため、意外と明るいです。直射日光は入りませんが、夏は涼しく、家具が日焼けしにくいというメリットもあります」

季節による変化を先読みして伝える

内見時期と入居時期が異なる場合、季節の変化を予測して伝えることが重要だ。

季節を考慮した説明例:

  • 「今は冬なので日差しが低く、奥まで光が入っていますが、夏になると太陽の位置が高くなるので、ベランダの軒下まで光が入る程度になります」
  • 「今日は曇りなので暗く感じますが、晴れた日に見ると印象がだいぶ変わります。よろしければ、晴れた日の写真をお送りしましょうか」
  • 「この物件の前には桜の木がありまして、春は見事ですが、葉が茂る夏場は少し暗くなります。秋から冬は葉が落ちて明るくなります」

採光を数値化して伝える工夫

専門的になりすぎない範囲で、客観的な情報を加えることも効果的だ。

  • 「各部屋に窓がありますので、昼間は電気をつけなくても過ごせます。内見中、照明を消した状態でも本が読める明るさでしたね」
  • 「角部屋ですので、2方向から光が入ります。風通しも良いです」
  • 「窓の高さが天井近くまであるタイプですので、一般的な窓より採光量が多くなっています」

騒音・音環境の言語化テクニック──「静かです」を具体的に

騒音情報へのニーズは想像以上に高い

「騒音情報」を必要とする回答は全体で36.1%、賃貸に限ると34.6%に上る。3人に1人が音に関する情報を求めているにもかかわらず、この項目を詳しく説明できる営業担当者は少ない。

音は主観的な要素が強いからこそ、具体的に言語化できる担当者は顧客の信頼を勝ち取れる。

音の種類別・伝え方ガイド

交通音について:

  • 「幹線道路が近いので、昼間は車の走行音が聞こえます。ただ、窓を閉めると会話に支障がない程度です。夜10時以降は交通量が減って、だいぶ静かになります」
  • 「線路が近いですが、高架になっていて壁があるため、電車の音は意外と気になりません。ホームのアナウンス音が微かに聞こえる程度です」
  • 「このマンションは二重サッシになっています。私が今の声量で話していて、外にはほとんど聞こえていない状態です」

生活音について:

  • 「上の階は同じタイプの間取りで、リビングの位置が同じです。足音については、コンクリートの厚みが200mm以上ありますので、一般的なマンションより遮音性は高いです」
  • 「隣との壁は、叩いてみるとわかりますが、かなり厚みがあります。テレビの音が漏れてくることはほぼないと思います」
  • 「こちらのアパートは木造ですので、鉄筋コンクリート造と比べると音は通りやすいです。深夜に洗濯機を回すのは控えられた方が良いかもしれません」

周辺施設の音について:

  • 「近くに小学校がありますので、日中はチャイムの音や、休み時間の子どもたちの声が聞こえます。授業中や放課後は静かです」
  • 「飲食店が入っているビルが隣にありますが、このお部屋からは反対側になりますので、換気扇の音などは聞こえません」
  • 「この物件は幼稚園の送迎バスのルートになっていまして、朝8時半頃と午後2時頃にバスが停まります。その時間帯だけ少し賑やかになります」

内見時に実践する「音の確認」

内見時に音環境を実際に確認する姿勢を見せることで、顧客の安心感は大きく変わる。

内見時のチェックポイント:

  • 窓を開けた状態と閉めた状態での音の違いを、顧客と一緒に確認する
  • 「今、外を救急車が通りましたね。窓を閉めるとこのくらいになります」と実演する
  • 壁を軽くノックして、構造の説明につなげる
  • エレベーターホールや廊下で話し声を出し、室内への聞こえ方を確認する

臭い・空気感の表現方法──言いにくいことを上手に伝える

臭いは最もデリケートな五感情報

臭いに関する情報は、日当たりや騒音以上に伝えにくい。しかし、入居後のトラブルを防ぐためには、正直に伝えることが重要だ。

臭いを伝える際のフレーズ例:

飲食店の近くの物件:

  • 「1階に焼肉店がありますので、夕方以降は少し匂いが気になることがあります。洗濯物は室内干しか、浴室乾燥を使われる方が多いようです」
  • 「パン屋さんが近いので、朝は焼きたてパンの良い香りがすることがあります」

築年数のある物件:

  • 「築年数が経っていますので、クローゼットを開けたときに少し古い建物特有の匂いがあるかもしれません。しばらく換気すれば気にならなくなると思います」

ペット可物件:

  • 「ペット可のマンションですので、エントランスや廊下で動物の匂いを感じることがあるかもしれません。この住戸は前の入居者様がペットを飼っていなかったので、室内は大丈夫です」

空気感・湿気の伝え方

湿気について:

  • 「このエリアは川が近いので、梅雨時期は湿気が多くなります。除湿機があると安心です」
  • 「1階で半地下のような構造ですので、湿気対策は必要です。その分、夏は涼しく過ごせます」
  • 「24時間換気システムがついていますので、常に空気が入れ替わっています。結露しにくい構造です」

実践で使える「五感説明」テンプレート集

物件紹介の冒頭で使えるフレーズ

「図面でご覧いただいた内容に加えて、実際の暮らしをイメージしていただけるよう、私が現地で感じたことも含めてご説明させてください」

内見中に使えるフレーズ

リビングにて: 「この時間帯でこのくらいの明るさです。午後になるともう少し日差しが入ってきます」

窓際にて: 「窓を開けてみましょう。外の音がこのくらい入ってきます。閉めるとこうなります」

キッチンにて: 「換気扇を回すと、料理の匂いはこちらの通気口から外に出ていきます」

玄関にて: 「ここから最寄り駅まで、私も歩いてみましたが、信号待ちを含めて7分くらいでした」

顧客の不安を先回りするフレーズ

「何か気になる点がありましたら、遠慮なくおっしゃってください。音や匂いなど、内見だけではわかりにくいこともありますので、私が知っている情報はすべてお伝えします」

「大手不動産ポータルサイトには載っていない、この物件ならではの情報をお伝えしますね」


「五感情報」を伝える営業体制の構築

物件情報シートへの記載ルール化

個人の記憶に頼るのではなく、組織として五感情報を蓄積する仕組みが重要だ。

記録すべき項目例:

  • 内見時の天気、時間帯、日当たり状況
  • 窓を開けた際の音の印象(具体的に何が聞こえたか)
  • 周辺で気になった臭い
  • 駅からの実測時間(信号待ち込み)
  • 商店街・スーパーの営業時間
  • 近隣施設の利用者層(平日/休日の違い)

チーム内での情報共有

物件担当者だけが情報を持っているのではなく、チーム全体で共有することで、どの担当者が対応しても質の高い説明が可能になる。

朝礼やミーティングで「この物件の五感情報」を共有する時間を設けている不動産会社は、顧客満足度が高い傾向にある。


まとめ──五感情報で選ばれる仲介会社になる

顧客が不動産会社に求めるものは、「正確な物件情報の提供」と「物件に対する詳細説明」。この2つを高いレベルで実現するために、図面には載らない五感情報の説明力を磨くことは極めて効果的だ。

調査データが示すように、検討期間の長期化と問い合わせ社数の増加により、顧客はより詳しい情報を提供してくれる会社を選ぶ時代になっている。大手不動産ポータルサイトで得られる情報が均一化する中、「この担当者だから聞ける情報」「この会社だから知っている情報」を提供できるかどうかが、成約率を左右する。

周辺環境、日当たり、騒音、臭い──これらの五感情報を適切に言語化し、顧客に伝えるスキルは、一朝一夕には身につかない。しかし、本稿で紹介したフレーズやテクニックを日々の営業活動で実践し続けることで、確実に説明力は向上する。

顧客に「この物件、写真通りでした」「思っていた以上に住みやすそうです」と言われる営業担当者を、あなたの会社で増やしていこう。


出典:不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月発表)