【成約率が変わる】希望条件に合わない物件を提案する際の注意点と「納得される」伝え方

はじめに──なぜ「条件外提案」で顧客の心が離れるのか

「ご希望と少し違うのですが、こちらの物件もいかがでしょうか?」

賃貸仲介の現場では、顧客の希望条件にぴったり合う物件が見つからないケースは珍しくない。駅徒歩5分以内・家賃7万円以下・築10年以内──すべてを満たす物件は、人気エリアであればあるほど競争が激しく、タイミング次第では「存在しない」こともある。

そんなとき、営業担当者は条件を少し外した物件を提案せざるを得ない。しかし、その伝え方ひとつで顧客の反応は180度変わる。「この営業さん、私の話を聞いていない」と不信感を抱かれるか、「なるほど、そういう選択肢もあるのか」と前向きに検討してもらえるか──その分かれ道は、実はほんの些細な言葉選びと説明の順序にある。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によれば、不動産会社の対応で不満だったこととして「問合せをしていない(希望していない)物件を必要以上にすすめられた」という項目が上位に挙がっている。この数字は、条件外物件の提案が「やり方次第」で顧客離れにつながるリスクを如実に示している。

本記事では、条件外物件の提案を顧客に受け入れてもらうための具体的な話法と、信頼を損なわないためのポイントを徹底解説する。「提案力」を武器に変えたい不動産賃貸仲介業者の方は、ぜひ最後までお読みいただきたい。


1. 今、顧客は平均3.3社に問い合わせる時代──比較検討の厳しさを知る

1-1. 過去11年で最多の問い合わせ数という現実

前述のRSC調査によると、賃貸契約者が物件を決めるまでに問い合わせた不動産会社の数は平均3.3社。これは2015年以降の調査で最多の数字だ。さらに「5社以上」に問い合わせた割合は21.0%に達しており、顧客は複数の不動産会社を並行して比較検討するのが当たり前になっている。

この状況が意味することは明確だ。あなたの会社だけが唯一の選択肢ではない。顧客は他社の対応と常に比較しており、少しでも「この営業、わかっていないな」と感じれば、すぐに別の会社へ流れてしまう。

1-2. 検討期間の長期化──焦らせる営業は逆効果

同調査では、住まい探しを始めてから契約までに要した期間が「1ヶ月以上」だった割合が賃貸で約半数に達している。直近5年間で見ても長期化傾向が続いており、顧客はじっくり時間をかけて物件を選びたいと考えている。

この状況下で「この物件、今日決めないとなくなりますよ」といった煽り営業は逆効果だ。むしろ、顧客の検討プロセスに寄り添い、条件外物件であっても「なぜ提案するのか」を丁寧に説明できる営業担当者が選ばれる時代になっている。


2. 顧客が「不満」を感じる条件外提案の3つのパターン

条件外物件の提案が顧客の不満につながるケースには、明確なパターンがある。自社の営業スタイルを振り返る際の参考にしてほしい。

2-1. ヒアリング不足のまま提案する

顧客が「駅徒歩5分以内」を希望している理由を聞かずに、「徒歩10分でも良い物件がありますよ」と提案するケースだ。

通勤時間を短縮したいのか、夜道の安全性を重視しているのか、単に「近い方がいい」という漠然としたイメージなのか──理由によって、条件を緩められる余地は大きく異なる。ヒアリングなしの提案は「私の話を聞いていない」という印象を与え、信頼を失う最大の原因となる。

2-2. 条件外である理由を説明しない

「ご希望より少し駅から離れていますが…」と曖昧に切り出し、なぜその物件を提案するのかを説明しないパターンだ。

顧客は「どうせ紹介料が高い物件を押し付けたいんでしょう」と疑念を抱きやすい。条件外物件を提案するなら、「なぜこの物件なのか」という理由を先に伝える必要がある。

2-3. 必要以上に押し付ける

RSC調査で明確に数字として現れているのがこのパターンだ。「問合せをしていない物件を必要以上にすすめられた」という不満は、賃貸・売買を問わず上位に位置している。

一度断られた物件を何度も提案したり、「でも、こちらの方が絶対にいいですよ」と押し切ろうとする姿勢は、顧客の心を完全に閉ざしてしまう。


3. 条件外物件が「納得される」伝え方──7つの実践テクニック

では、条件外物件を提案する際に顧客の納得を得るためには、具体的にどうすればよいのか。現場で即実践できるテクニックを7つ紹介する。

3-1. 「条件外」を先に宣言する

NG例:「こちらの物件、駅徒歩12分なんですが…(条件を最後に伝える)」

OK例:「一点、ご希望の駅徒歩5分という条件からは外れるのですが、あえてご紹介したい物件があります」

条件外であることを最初に正直に伝えることで、顧客は「この営業さんは隠し事をしない」と感じる。逆に、条件外であることを隠して話を進めると、後から「騙された」という印象を与えてしまう。

3-2. 提案理由を「顧客のメリット」で語る

NG例:「駅から離れていますが、家賃が安いんです」

OK例:「先ほど『収納スペースを重視したい』とおっしゃっていましたよね。この物件は駅徒歩12分ですが、ウォークインクローゼット付きで、ご希望の収納力を十分に満たせます。しかも、駅近物件と比べて家賃が8,000円ほど抑えられるので、浮いた分を趣味や貯金に回すこともできます」

顧客が重視しているポイントと結びつけて提案することで、「自分のことを考えてくれている」という印象を与えられる。

3-3. 「比較軸」を提示して選択肢を見える化する

条件内物件と条件外物件を並べて、それぞれのメリット・デメリットを整理して提示する方法だ。

: 「今回、3つの物件をご用意しました。Aは駅徒歩4分でご希望通りですが、築20年で設備がやや古めです。Bは駅徒歩10分ですが、築5年でオートロック・浴室乾燥機付き。Cは駅徒歩15分ですが、家賃が最も安く、角部屋で日当たり抜群です。それぞれ一長一短ありますので、実際に見比べていただくのがおすすめです」

このように提示すれば、顧客は「押し付けられた」ではなく「選択肢を与えられた」と感じる。

3-4. 「数字」で説得力を持たせる

曖昧な表現ではなく、具体的な数字を使って説明する。

NG例:「駅から少し歩きますが、静かな環境ですよ」

OK例:「駅から徒歩10分ですが、実際に歩くと平坦な道で信号もないため、体感では7〜8分程度です。また、駅前の繁華街から離れているため、夜間の騒音レベルが駅近物件と比べて約30%低いというデータもあります」

数字は客観的な根拠として機能し、営業トークの説得力を大幅に高める。

3-5. 「実際に歩いてみませんか」と体験を促す

駅距離に関する条件外提案の場合、言葉で説明するより実際に歩いてもらう方が効果的なことが多い。

:「駅徒歩12分と聞くと遠く感じるかもしれませんが、実際に歩いてみると意外と近く感じる方が多いんです。内見の際に一緒に駅から歩いてみませんか?途中にコンビニやスーパーもありますし、生活導線も確認できます」

百聞は一見にしかず。体験してもらうことで、条件外のハードルを自然に下げることができる。

3-6. 「断っても大丈夫」という姿勢を見せる

:「もちろん、ご希望に合わなければ無理にお勧めするつもりはありません。ただ、せっかくの機会なので選択肢のひとつとして見ていただければと思いご紹介しました」

「断っても問題ない」という姿勢を見せることで、顧客は心理的なプレッシャーから解放され、フラットな気持ちで検討できるようになる。これがかえって成約率を高めることにつながる。

3-7. 提案後のフォローで誠意を示す

条件外物件を提案した後、顧客が悩んでいる様子であれば、無理に押し込まず「一度お持ち帰りいただいて、ゆっくりご検討ください」と伝える。

その後、「他に条件内で良い物件が出たらすぐにご連絡します」とフォローの姿勢を見せることで、顧客は「この会社は信頼できる」と感じるようになる。


4. 顧客が本当に求めている「物件提案力」とは何か

4-1. 調査データが示す「求められる対応」

RSC調査によれば、顧客が不動産会社に求めるものの上位には以下が並んでいる。

  • 1位:礼儀・丁寧な対応(約7割が重要視)
  • 2位:正確な物件情報の提供
  • 3位:問合せに対する迅速な対応
  • 4位:物件に対する詳細な説明

注目すべきは、「物件に対する詳細な説明」が上位に入っている点だ。これは単に物件スペックを伝えるだけでなく、「なぜこの物件を勧めるのか」「どんなメリット・デメリットがあるのか」を丁寧に説明する姿勢が求められていることを意味する。

4-2. 「写真の点数が多い」が選ばれる決め手に

同調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「写真の点数が多い」がトップに挙がっている。これは、顧客が「情報の透明性」を重視していることの表れだ。

条件外物件を提案する際も、この「透明性」の姿勢が重要になる。都合の悪い情報を隠さず、メリットもデメリットも正直に伝えることで、顧客からの信頼を獲得できる。


5. 物件提案力を高めるための社内体制づくり

個人のスキルだけでなく、組織として物件提案力を高めるための体制づくりも重要だ。

5-1. ヒアリングシートの充実

「なぜその条件を希望するのか」まで掘り下げるヒアリングシートを整備する。表面的な条件だけでなく、背景にあるニーズを把握することで、条件外物件でも提案の精度が上がる。

5-2. 物件データベースの整理

条件外でも提案価値のある物件を「隠れた優良物件」としてデータベース化しておく。駅距離はあるが静かな環境、築年数は古いがリノベーション済み──こうした物件をカテゴリ別に整理しておくことで、提案の引き出しが増える。

5-3. 成功事例の共有

条件外物件の提案で成約に至った事例を社内で共有する。「どんな言葉で提案したか」「顧客の反応はどうだったか」を具体的に記録し、ナレッジとして蓄積することで、組織全体の提案力が向上する。


6. フランチャイズ加盟という選択肢──提案力強化のサポート体制

物件提案力の向上には、日々の研鑽に加えて、業界のノウハウやトレンドを吸収できる環境も重要だ。

ハウスコムフランチャイズでは、25年以上にわたる賃貸仲介のノウハウを加盟店に提供している。本部主催のベンチマークセミナーでは、直営店で培われた接客・提案のノウハウに加え、他の不動産会社の成功事例も共有される。

また、定期的な加盟店会合を通じて、各店舗が抱える課題──たとえば「条件外物件の提案がうまくいかない」といった悩みにも、本部スタッフが寄り添いながら解決策を一緒に考えるサポート体制が整っている。

「提案力を武器にしたい」「顧客から選ばれる店舗になりたい」──そうした想いを持つ不動産会社にとって、フランチャイズ加盟は有力な選択肢のひとつと言えるだろう。


まとめ──条件外提案は「誠実さ」が試される場面

条件外物件の提案は、営業担当者の力量が最も試される場面のひとつだ。

押し付ければ顧客は離れ、丁寧に説明すれば信頼を獲得できる。その分かれ道は、結局のところ「顧客のことを本当に考えているか」という姿勢に集約される。

本記事で紹介した7つのテクニックを実践し、条件外提案を「信頼構築のチャンス」に変えていただければ幸いだ。

顧客が平均3.3社に問い合わせ、じっくり比較検討する時代。だからこそ、誠実な提案ができる営業担当者、そして誠実な対応ができる会社が選ばれる。


【この記事のポイント】

  • 条件外物件の提案で不満を感じる顧客は一定数存在する(RSC調査)
  • 顧客は平均3.3社に問い合わせており、対応の質で比較されている
  • 条件外を「先に宣言」し、「顧客のメリット」で語ることが重要
  • 「断っても大丈夫」という姿勢がかえって成約率を高める
  • 物件提案力の向上には、個人スキルと組織体制の両面からのアプローチが必要