リモート内見で集客力が変わる|遠方顧客・多忙層を逃さない導入・運用の完全ガイド

転勤シーズンに問い合わせが殺到するも、遠方からの顧客が来店できず商機を逃してしまう。多忙なビジネスパーソンとのスケジュール調整がうまくいかず、せっかくの反響が他社に流れてしまう——。こうした課題を抱える賃貸仲介会社は少なくない。
しかし、その解決策はすでに目の前にある。「リモート内見」だ。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査によれば、賃貸検討者のうち「オンライン内見を活用したい」と回答した割合は40.9%に達した。IT重説の活用意向は56.7%と調査開始以来最高を記録し、オンライン契約に至っては3年連続で増加して51.0%に到達している。
もはやリモート対応は「あれば便利」ではなく、顧客が当然のように期待するサービスへと変貌している。本記事では、賃貸仲介業者がリモート内見を導入・運用するための実践的なノウハウを、最新データと具体的事例を交えて徹底解説する。
賃貸仲介業界を取り巻く「非対面ニーズ」の急拡大
検討期間の長期化と問い合わせ社数の増加が意味するもの
RSCの2025年調査は、部屋探しの実態に興味深い変化が起きていることを示している。
賃貸物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は平均3.3社で、2015年以降で最多を記録した。特に「5社以上」に問い合わせた割合は21.0%と、顧客が複数の会社を比較検討する傾向が強まっている。
一方で、実際に訪問した不動産会社数は平均2.0社にとどまる。この数字が示すのは、顧客は「問い合わせはするが、来店までには至らない」という行動パターンが定着しているという事実だ。
検討期間も長期化傾向にある。契約まで1ヶ月以上かかった割合は48.3%で、前年比6.7ポイント増加。忙しい現代人は、限られた時間の中で効率的に物件を絞り込みたいと考えている。
「内見に行く時間がない」層の取りこぼしリスク
調査では、訪問した不動産会社数で「1社のみ」と回答した割合が45.6%と依然として高い。これは裏を返せば、「最初に訪問した会社で決める」か「そもそも訪問せずに決める」顧客が相当数存在することを意味する。
リモート内見を導入していない会社は、遠方顧客や多忙層という大きな市場を自ら手放していることになる。特に以下のような顧客層との接点を失っている可能性が高い。
- 転勤・転職で遠方から引っ越しを予定している層
- 就職・進学で地方から都市部へ上京する学生とその保護者
- 土日も仕事で休みが取れないビジネスパーソン
- 子育て中で長時間の外出が難しい共働き世帯
- 海外からの帰国者や外国籍の入居希望者
リモート内見導入がもたらす5つの競争優位性
1. 商圏の物理的制約を超えた集客力の獲得
リモート内見の最大の強みは、地理的な障壁を完全に取り払える点にある。
従来であれば、東京の物件を大阪在住の顧客に紹介する場合、顧客には往復の交通費と丸一日の時間的コストが発生していた。しかしリモート内見であれば、30分から1時間程度の空き時間さえあれば、自宅やオフィスから物件の詳細を確認できる。
ある調査では、リモート内見を問い合わせ段階で案内したところ、来店率が10%向上したという報告がある。「遠いから」「時間がないから」と諦めていた層が、リモート対応可能と知ることで行動を起こすようになるのだ。
2. 成約率向上につながる「下見」としての活用
リモート内見は、従来の対面内見を代替するだけのツールではない。両者を組み合わせることで、成約率を飛躍的に高められる。
具体的な活用法として効果が高いのは、以下の2パターンだ。
パターンA:リモートで候補を絞り込み → 本命のみ現地内見
顧客が気になる物件が5件あるとして、すべてを現地で見るには時間がかかる。リモート内見で3件に絞り込んでから現地案内すれば、顧客の時間を節約できるだけでなく、「厳選された物件」という印象を与えられる。
パターンB:リモートで即日申し込み → 後日確認の現地内見
人気物件は早い者勝ちの側面がある。「週末に見に行くまでに他の人に取られてしまうかも」という不安を持つ顧客に対し、リモート内見で物件を確認してもらい、先に申し込みを入れてもらう。その後、現地確認という流れで進められる。
ある調査によれば、オンライン内見を利用した顧客の87%が成約に至ったというデータもある。「見たいものを見たいときに見られる」という顧客体験の向上が、意思決定を後押ししている。
3. 営業効率の劇的改善
対面内見では、スタッフの移動時間が大きなボトルネックになる。物件と物件の間を車で移動し、顧客を案内し、また次の物件へ——という流れでは、1日に対応できる件数に限界がある。
リモート内見であれば、スタッフは店舗にいながら連続して複数の顧客に対応できる。移動時間ゼロで内見を実施できるため、繁忙期の生産性は大幅に向上する。
VR内見を積極活用しているある不動産会社では、1名あたりの営業稼働率が1.5倍になったという報告がある。空いた時間を追客や顧客フォローに充てられるため、全体の成約数増加にも寄与している。
4. 競合他社との差別化ポイントの確立
RSC調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「写真の点数が多い」がトップに立った。顧客は、来店前にできるだけ多くの情報を得たいと考えている。
この傾向を踏まえれば、リモート内見対応の有無は会社選びの重要な判断基準になりつつある。大手不動産ポータルサイトでも「オンライン内見可」で物件を絞り込む機能が一般化しており、対応していない会社は検索結果から除外されるリスクすら生じている。
「リモート内見対応」を積極的にアピールすることで、デジタルリテラシーの高い顧客層からの支持を得られる。特に20代〜30代の若年層や、IT業界で働くビジネスパーソンには強い訴求力を持つ。
5. 顧客満足度向上によるリピート・紹介の連鎖
便利なサービスを体験した顧客は、その体験を周囲に共有する傾向がある。
「忙しくても部屋探しができた」「地方からでも希望の物件が見つかった」といったポジティブな体験は、口コミやSNSでの拡散につながる。これは広告費をかけずに新規顧客を獲得できる最良のマーケティングだ。
成果を出すリモート内見の実践テクニック7選
テクニック1:事前ヒアリングで「見せるべきポイント」を明確化する
リモート内見では、顧客は画面越しでしか物件を見られない。限られた時間の中で満足度の高い体験を提供するには、事前準備が決定的に重要になる。
内見前日までに以下の情報をヒアリングしておくことで、当日のスムーズな進行が可能になる。
- 絶対に譲れない条件(日当たり、収納量、騒音レベルなど)
- 持ち込み予定の大型家具・家電のサイズ
- 現在の住まいで不満に感じている点
- 通勤・通学先と利用する交通手段
- ペットの有無、同居人の構成
特に「今の住まいへの不満」は重要だ。その不満が解消されることをリモート内見中に視覚的に示せれば、成約への大きな後押しになる。
テクニック2:採寸は「リアルタイム対応」が信頼を生む
遠方顧客にとって最大の不安は、「実際に住んだら家具が入らなかった」という事態だ。リモート内見では、スタッフがその場でメジャーを使って採寸し、顧客に伝えることで信頼を獲得できる。
採寸を依頼されやすい箇所は以下のとおりだ。事前に把握して、内見時にスムーズに対応できるよう準備しておきたい。
- 冷蔵庫置き場の幅・奥行き・高さ
- 洗濯機パンのサイズ
- クローゼット・押入れの内寸
- 玄関ドアの幅(大型家具搬入可否の確認)
- ベランダの奥行き
- カーテンレールの幅と高さ
「お客様のソファは何センチでしたか?リビングに置くとこのくらいの空間が残りますね」と具体的に伝えられれば、現地内見と遜色ない情報提供が可能になる。
テクニック3:「五感情報」を言語化して伝える
リモート内見では、においや騒音といった五感で得られる情報が伝わりにくい。ここをいかにカバーするかが、顧客満足度を左右する。
効果的な伝え方の例を挙げる。
騒音について 「今、窓を開けてみますね。外の音はこのくらいです。大通りから1本入っているので、日中でも比較的静かですね。夜は確認していませんが、この距離感なら問題ないと思います」
日当たりについて 「今日は曇りですが、南向きなのでこのくらいの明るさがあります。晴れた日の午前中は、この角度から直接日光が入ります。夏場は暑くなりすぎるかもしれませんが、遮光カーテンで調整できます」
においについて 「排水口からの異臭は特に感じません。前の入居者が退去してから清掃済みです。キッチンの換気扇も動作確認しますね」
主観的な情報であることを断りつつ、具体的な状況を伝えることで、顧客は自分なりの判断材料を得られる。
テクニック4:「共用部」と「周辺環境」も画面越しに案内する
物件探しにおいて、顧客が重視する情報は室内だけではない。RSC調査では、物件情報以外に必要な情報として「周辺情報」がトップに立っている。
リモート内見の際は、以下の情報も可能な範囲で提供したい。
- エントランスの雰囲気と管理状態
- 郵便受け・宅配ボックスの有無
- ゴミ置き場の位置と清潔さ
- 駐輪場・駐車場の空き状況
- 最寄り駅までの道のり(可能であれば実際に歩きながら撮影)
- 近隣のスーパー・コンビニ・病院などの位置関係
「ゴミ出しは毎日OKで、24時間出せます」「最寄りのコンビニはここから徒歩2分です」といった情報は、生活のイメージ形成に直結する。
テクニック5:マイナスポイントも正直に伝える
意外に思われるかもしれないが、物件のデメリットを正直に伝えることは成約率向上につながる。
RSC調査では、不動産会社の対応で満足だった点として「情報が正確で誠実な対応だった」が上位に入っている。一方、不満だった点には「情報に虚偽があり信頼性に欠けた」がランクインしている。
「北向きなので冬場は寒いかもしれません」「壁が薄いので、隣の生活音は多少聞こえます」といったマイナス情報を事前に伝えておけば、入居後のクレーム防止にもなる。
正直に伝えた上で「ただし、その分賃料はエリア相場より5,000円ほど低く設定されています」とフォローすれば、顧客は納得感を持って判断できる。
テクニック6:通信環境を万全に整える
リモート内見の最中に映像が途切れたり、音声が聞き取りにくくなったりすると、顧客の不満につながる。技術的なトラブルを最小限に抑える準備が必要だ。
推奨する通信環境と機材は以下のとおり。
- スマートフォン:最新機種でなくてもよいが、カメラ性能は重要
- 通信回線:4G/5G回線が安定している場所で実施。Wi-Fiが使える物件ならなお良い
- 予備バッテリー:長時間の内見に備えてモバイルバッテリーを携行
- イヤホンマイク:風の音や雑音を軽減し、クリアな音声を届ける
- ジンバル(手ブレ補正装置):歩きながらの撮影が滑らかになる
内見開始前には必ず「映像と音声は問題なく届いていますか?」と確認する。トラブルが発生した場合の連絡手段(電話番号など)も事前に共有しておくと安心だ。
テクニック7:内見後のフォローで成約を確実にする
リモート内見で好感触を得たとしても、その場で申し込みに至らないケースは多い。顧客は複数の物件を比較検討しているため、時間が経つと印象が薄れてしまう。
内見後24時間以内に以下のフォローを実施することで、成約率を高められる。
- 内見した物件の資料(間取り図、写真、採寸メモ)をメールで送付
- 内見中に答えられなかった質問への回答
- 類似物件の追加提案(「こちらも条件に合いそうです」)
- 申し込み手続きの流れと必要書類の案内
特に遠方顧客の場合、契約手続きもオンラインで完結できることを伝えると、心理的ハードルが下がる。IT重説やオンライン契約に対応している旨を早めに案内しておきたい。
リモート内見を支えるIT基盤の整備
ビデオ通話ツールの選定基準
リモート内見に使用するビデオ通話ツールは、顧客の利便性を最優先に選定すべきだ。
アプリのダウンロードが不要であること
顧客にアプリのインストールを求めると、それだけで離脱リスクが生じる。URLをクリックするだけでビデオ通話が開始できるタイプのツールが望ましい。
スマートフォン対応であること
顧客の多くはスマートフォンから参加する。PC向けに最適化されたツールは避け、モバイルでも快適に使えるものを選ぶ。
録画機能があること
顧客の許可を得た上で内見の様子を録画しておけば、後から見返してもらえる。複数物件を比較検討する際に重宝される。
VRコンテンツとの組み合わせで効果倍増
360度カメラで撮影したVRコンテンツを活用すれば、リモート内見の品質は格段に向上する。
顧客が自分のペースで室内を見回せるため、「ここをもっと見たい」という要望にリアルタイムで対応する必要がなくなる。スタッフの負担軽減にも直結する。
VR内見を積極活用している不動産会社の中には、全契約のうち77%がVR内覧のみで成約に至ったという事例もある。現地内見なしで契約が決まれば、営業効率は飛躍的に高まる。
VRコンテンツは一度撮影すれば繰り返し使えるため、長期的に見れば投資対効果は高い。特に人気物件や空き予定の物件は、早めにVR化しておくと機会損失を防げる。
フランチャイズ加盟で得られるIT・リモート対応支援
リモート内見を導入したいと考えていても、独力でシステムを構築し、運用ノウハウを蓄積するには時間とコストがかかる。特に中小規模の仲介会社にとっては、大きな負担となりかねない。
この課題を解決する選択肢の一つが、フランチャイズへの加盟だ。
ハウスコムフランチャイズでは、業務システムとして大手不動産テック企業の基幹システムを採用しており、コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セットを加盟店に提供している。システム利用料はロイヤリティに含まれるため、追加コストなしでIT環境を整備できる。
また、本部主催のベンチマークセミナーでは、直営店のノウハウだけでなく、他の不動産業者のリアルな実態が定期的に共有される。リモート内見の成功事例や失敗談を他社から学び、自社の運用に活かせる環境が整っている。
加盟店間のネットワークも強みだ。「リモート内見でこういう工夫をしたら成約率が上がった」といった現場発の知見が、加盟店同士で共有される。一人で試行錯誤するよりも、はるかに短期間でノウハウを蓄積できる。
今日から始めるリモート内見導入チェックリスト
最後に、リモート内見の導入を検討している方向けに、実践チェックリストをまとめる。
Step 1:社内体制の整備
- [ ] リモート内見担当者を決定する
- [ ] ビデオ通話ツールを選定し、スタッフ全員がテスト通話を実施する
- [ ] 内見時の標準トークスクリプトを作成する
- [ ] 採寸用メジャー、モバイルバッテリー、イヤホンマイクを人数分用意する
Step 2:物件情報の準備
- [ ] 主要物件の間取り図・写真を整理する
- [ ] 可能であれば360度VRコンテンツを撮影する
- [ ] 物件ごとのアピールポイントと注意点をリスト化する
Step 3:告知・集客
- [ ] 自社ホームページに「リモート内見対応」を明記する
- [ ] 大手不動産ポータルサイトの掲載情報を更新する
- [ ] 問い合わせ対応メールのテンプレートにリモート内見の案内を追加する
Step 4:運用開始後の改善
- [ ] 内見後のアンケートを実施し、改善点を収集する
- [ ] 成約に至ったケース・至らなかったケースを分析する
- [ ] 月次でリモート内見数と成約率を集計し、効果測定を行う
まとめ:リモート内見は「選ばれる会社」になるための必須投資
賃貸仲介業界は今、大きな転換点を迎えている。顧客のデジタル化は不可逆的に進み、非対面でのサービス提供は「付加価値」から「標準装備」へと変わりつつある。
RSC調査のデータが示すとおり、IT重説やオンライン契約への利用意向は年々高まっている。この流れに乗れない会社は、確実に競争力を失っていく。
リモート内見は、単なる感染症対策ではない。遠方顧客、多忙層、デジタルネイティブ世代——これまで取りこぼしていた顧客層にリーチし、成約につなげるための戦略的投資だ。
「対面でなければ伝わらない」という思い込みを捨て、顧客が本当に求めている体験を提供する。それができる会社だけが、これからの時代を生き残っていく。
今日から、リモート内見の導入を本気で検討してみてはいかがだろうか。
本記事で紹介した調査データは、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査結果(2025年)」に基づいています。


