「問い合わせ平均3.3社」時代──賃貸仲介で”最後の1社”に選ばれる7つの差別化戦略

「あと2社に問い合わせてから決めます」

賃貸仲介の現場で、この言葉を聞く機会が増えていないだろうか。2025年10月、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が発表した最新調査によれば、賃貸物件を契約するまでに顧客が問い合わせる不動産会社数は平均3.3社。2015年以降の11年間で最多となった。

顧客は「比較する時代」から「厳選する時代」へ移行している。問い合わせ5社のうち、実際に訪問されるのは平均2社。つまり、3社は来店すらしてもらえない計算だ。この熾烈な競争を勝ち抜き、「最後の1社」として選ばれるには何が必要なのか。

本記事では、最新の消費者調査データを徹底分析し、賃貸仲介業者が今すぐ実践できる具体的な差別化戦略を解説する。


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データが示す現実──なぜ「3.3社」に問い合わせるのか

11年間で最多の問い合わせ社数

RSCの調査データを時系列で見ると、賃貸における問い合わせ会社数の変遷は興味深い。

調査年平均問い合わせ社数前年比
2015年3.0社
2020年3.0社±0
2024年2.4社▲0.6
2025年3.3社+0.9

2024年から2025年にかけて、わずか1年で0.9社も増加している。特筆すべきは「5社以上」に問い合わせる層が全体の**21.0%**を占めていること。5人に1人以上が、5社以上を比較検討しているのだ。

検討期間も長期化の傾向

問い合わせ社数の増加と連動するように、住まい探しから契約までの期間も長期化している。調査によれば、賃貸で1ヶ月以上かけて検討する人の割合は**49.3%**に達し、前年より6ポイント以上増加した。

この数字が意味するのは、顧客が「じっくり比較検討する」傾向を強めているということ。言い換えれば、初回の問い合わせ対応で好印象を与えなければ、長い検討期間の中で競合他社に奪われるリスクが高まっている。

「問い合わせ」と「訪問」の間にある深い溝

さらに注目すべきデータがある。問い合わせ平均3.3社に対し、実際に訪問する会社数は平均2.0社。つまり、問い合わせを受けた3社のうち1社以上は、来店に至らないまま選考から脱落している計算だ。

この「問い合わせから訪問」への転換率こそ、賃貸仲介業者にとっての最重要KPIと言える。次章からは、この転換率を高め、「選ばれる会社」になるための具体的な戦略を解説する。


差別化戦略①:写真の「点数」と「質」で第一印象を制する

「写真の点数が多い」が選定基準のトップに

顧客が不動産会社を選ぶポイントとして、2025年調査で**最も多かった回答は「写真の点数が多い」**だった。これは直近3年間で最高の数値であり、特に重視するポイントとしても1位にランクインしている。

大手不動産ポータルサイトで検索する際、同じ物件であっても掲載する写真の数と質によって問い合わせ率は大きく変わる。顧客の立場で考えれば当然のこと。限られた時間の中で、視覚的な情報量が多い会社を優先的に選ぶのは合理的な行動だ。

写真枚数の目安と撮影ポイント

競合他社との差別化を図るための写真戦略として、以下を実践すべきだ。

推奨される写真構成(1物件あたり)

  • 外観:正面・サイド・エントランス(3枚以上)
  • 室内:リビング・各居室を複数アングルで(10枚以上)
  • 水回り:キッチン・浴室・トイレ・洗面台(4枚以上)
  • 収納:クローゼット・靴箱・パントリー(3枚以上)
  • 周辺環境:最寄り駅・スーパー・コンビニ(3枚以上)
  • 合計:20枚以上が目安

スマートフォンでもできるプロ級撮影テクニック

高価な機材がなくても、撮影技術で差をつけることは可能だ。

  1. 自然光を味方に:晴天の午前10時〜午後2時がゴールデンタイム
  2. 広角レンズの活用:室内を広く見せるためにスマホの広角モードを使用
  3. 水平・垂直を意識:傾いた写真は素人感が出るため、グリッド線を表示して撮影
  4. 生活感の演出:観葉植物や小物を配置し、「住んでいる姿」をイメージさせる
  5. 暗い部屋は照明ON:すべての照明を点灯し、明るく清潔な印象を与える

差別化戦略②:問い合わせへの「即応」が勝負を分ける

満足度1位は「レスポンスの早さ」

調査において、顧客が不動産会社の対応で満足した点の1位は「問い合わせに対するレスポンスが早かった」(賃貸で67.9%)。一方で、不満点の上位には「問い合わせをしたら返答が遅かった」がランクインしている。

この結果が示すのは明確だ。初回レスポンスのスピードが、顧客満足度と来店率を決定的に左右するということ。

「30分ルール」の導入

業界内で成果を上げている事業者の多くが実践しているのが、「30分以内の初回レスポンス」というルールだ。

問い合わせから30分以内に何らかの返答(メール・電話・LINE)ができれば、競合他社より先に顧客との接点を持つことができる。特に、平日夜や休日の問い合わせに対して迅速に対応できる体制を整えているかどうかで、大きな差が生まれる。

営業時間外対応の仕組み化

営業時間外の問い合わせは、翌営業日まで放置されがちだ。しかし、以下のような仕組みを導入することで、機会損失を防ぐことができる。

  • 自動返信メールの最適化:「お問い合わせありがとうございます」だけでなく、「〇時間以内にご連絡いたします」と具体的な時間を明記
  • 営業時間外対応の明示:問い合わせフォームやポータルサイトに「夜間・休日も対応可」と記載
  • 翌朝一番のフォロー体制:朝9時に前日の夜間問い合わせを一斉に対応するルーティンの確立

差別化戦略③:口コミ評価を「資産」に変える

特に重視するポイント2位「口コミ情報」

2025年調査では、不動産会社を選ぶ際に特に重視するポイントとして「不動産会社に対する口コミ情報」が2位にランクイン。前年比でも増加傾向にある。

これは、大手不動産ポータルサイト上の口コミ機能や、Googleビジネスプロフィールのレビューが、顧客の意思決定に大きな影響を与えていることを示している。

良い口コミを増やす3つの施策

  1. 成約時のお願い:契約完了時に「よろしければ口コミをお書きいただけると励みになります」と直接依頼
  2. QRコードの活用:来店カードやサンキューレターにGoogle口コミへのQRコードを印刷
  3. 特典の提示(注意点あり):「口コミ投稿でQUOカード500円プレゼント」などの施策は、各プラットフォームのガイドラインを確認の上、慎重に実施

悪い口コミへの対処法

ネガティブな口コミは避けられない。しかし、その対応次第で「誠実な会社」という印象を与えることも可能だ。

  • 迅速な返信:放置せず、24時間以内に対応
  • 謝罪と改善策の提示:「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません。〇〇の点については社内で改善を進めております」
  • 個人攻撃への反論は避ける:感情的な返信は逆効果。常に冷静で丁寧なトーンを維持

差別化戦略④:「その物件、もうありません」を撲滅する

不満点トップ「その物件はもうない」

賃貸における顧客の不満点として、最も多かったのが**「問い合わせをしたら『その物件はもうない』と言われた」(24.7%)**。4人に1人が経験している計算だ。

この「おとり物件」問題は、業界全体の信頼性を損なう深刻な課題である。しかし、言い換えれば、ここを徹底的に改善するだけで競合との差別化が可能になる。

物件情報鮮度管理の具体策

  1. 日次での空室確認:管理会社への確認を毎日のルーティンに組み込む
  2. 掲載期限の設定:大手不動産ポータルサイトへの掲載は「申込があり次第即日削除」をルール化
  3. 在庫管理システムの導入:複数のポータルサイトを一元管理できるコンバータを活用し、情報の同期を自動化
  4. 「済」表示の徹底:成約物件には即座に「成約済」「申込あり」を表示

「ない」ときの代替提案力

万が一、問い合わせ物件が成約済みだった場合でも、適切な対応で信頼を獲得できる。

悪い例 「申し訳ありませんが、その物件は決まってしまいました」(以上)

良い例 「大変申し訳ございません。〇〇の物件はつい先日お申し込みが入りました。ただ、同じエリア・同価格帯で、設備がさらに充実した物件がございます。よろしければ、こちらの物件情報をお送りしてもよろしいでしょうか?」


差別化戦略⑤:「的を射た回答」ができる提案力を磨く

不満点上位「問い合わせへの回答が的を射ていなかった」

賃貸における不満点の上位には、「問い合わせへの回答が的を射ていなかった」がランクインしている。顧客が求めている情報と、営業担当が提供する情報にズレが生じているのだ。

顧客が本当に知りたい情報を理解する

調査によれば、物件情報以外に顧客が求めている情報は以下の通り。

順位求められている情報賃貸での割合
1位周辺環境情報70.4%
2位治安の良さ情報65.4%
3位地盤の強さ(災害リスク)50.0%
4位騒音の有無40.7%
5位災害情報34.6%

これらの情報をヒアリング時に自発的に提供できるかどうかで、「この営業担当は信頼できる」という印象を与えられるかが決まる。

深掘りヒアリングの技術

顧客の表面的な希望条件(駅徒歩〇分、家賃〇万円以内)だけでなく、その背景にある「本当のニーズ」を引き出すことが重要だ。

質問例

  • 「お仕事は何時頃にお帰りになることが多いですか?」→ 帰宅時間に合わせた周辺施設の提案
  • 「休日はどのようにお過ごしですか?」→ 趣味に適したエリアの提案
  • 「今のお住まいで不便に感じていることはありますか?」→ 現状の不満を解消する物件の提案

差別化戦略⑥:オンライン契約ニーズへの対応

「オンライン契約」利用希望が3年連続増加

非対面型サービスへの関心は年々高まっている。2025年調査では、賃貸における「オンライン契約」の利用希望(積極的に活用したい+どちらかというと活用したい)が**51.0%**に達し、3年連続で増加している。

また、「IT重説」への利用希望も**56.7%**と過半数を超えた。

オンライン対応が「当たり前」になる時代

これらの数字は、オンライン対応が「付加価値」から「標準機能」に変わりつつあることを示している。特に、遠方からの引っ越しや、仕事で忙しい顧客にとって、オンライン対応の有無は不動産会社選びの重要な判断基準となる。

導入すべきオンラインサービス(優先度順)

  1. IT重説(オンライン重説):宅建業法改正により可能に。導入コストが低く、効果が高い
  2. オンライン内見:ビデオ通話で物件を案内。遠方顧客の取りこぼしを防ぐ
  3. 電子契約:契約書の郵送・押印が不要に。顧客・事業者双方の負担軽減
  4. オンライン接客:初回ヒアリングをZoom等で実施。来店前の関係構築に有効

差別化戦略⑦:ブランド力を「武器」にする

「店舗の立地」より「物件情報」を重視する時代

興味深い変化として、調査では「店舗がアクセスしやすい場所にある」ことを重視する割合が2年連続で減少している。顧客は、店舗の立地よりも、物件情報の質や企業の信頼性を重視するようになっているのだ。

この傾向は、オンライン化の進展により「どこにある会社か」よりも「どんな会社か」が重要になっていることを示している。

ブランド力がもたらす3つのメリット

  1. 集客力:知名度のある企業には自然と問い合わせが集まる
  2. 物件仕入れ力:管理会社やオーナーからの信頼が厚く、良質な物件情報が入りやすい
  3. 顧客の安心感:「名前を知っている会社」という理由だけで、来店のハードルが下がる

中小事業者がブランド力を獲得する方法

自社単独でブランドを構築するには、多大な時間とコストがかかる。そこで選択肢となるのが、確立されたブランドを持つフランチャイズへの加盟だ。

フランチャイズに加盟することで、以下のようなメリットを短期間で得ることができる。

  • 全国規模の認知度を活用した集客
  • 本部からの反響送客による安定した見込み客の獲得
  • 業務システム・顧客管理ツールの提供によるオペレーション効率化
  • 定期的な勉強会・セミナーによるノウハウの共有

競争を「勝ち抜く」から「勝ち残る」へ──経営判断のヒント

「3.3社」時代を生き残るために

本記事で紹介した7つの差別化戦略をまとめると、以下のようになる。

戦略具体的なアクション期待効果
①写真の点数と質1物件20枚以上、プロ品質の撮影問い合わせ率向上
②即応体制30分ルールの導入、営業時間外対応来店率向上
③口コミ活用投稿依頼の仕組み化、返信対応信頼性向上
④物件鮮度管理日次確認、コンバータ活用不満解消、信頼獲得
⑤提案力強化深掘りヒアリング、周辺情報提供成約率向上
⑥オンライン対応IT重説・電子契約の導入顧客層拡大
⑦ブランド力活用FC加盟検討、本部支援の活用集客力・物件仕入れ力向上

個社の努力には限界がある

これらの施策を単独で実行することは可能だ。しかし、すべてを高いレベルで維持し続けるには、人材・システム・ノウハウの面で相当なリソースが必要になる。

特に、物件情報の鮮度管理を支えるシステム、営業時間外対応の体制、そしてブランド力の構築は、中小規模の事業者にとって大きな負担となりうる。

フランチャイズという「経営判断」

賃貸仲介のフランチャイズに加盟することは、単なる「看板の借り換え」ではない。それは、「3.3社」の競争を勝ち抜くためのインフラを、一括で手に入れる経営判断だ。

例えば、全国200店舗以上を展開する賃貸仲介専門のフランチャイズ本部では、以下のような支援が提供されている。

  • 反響送客:本部に入った問い合わせを加盟店に送客
  • 業務システム:コンバータ・顧客管理・契約管理を一括提供(ロイヤリティに含まれる場合も)
  • ノウハウ共有:直営店で培った接客・営業手法を加盟店に展開
  • 士業支援:法務・会計・労務の専門家ネットワークを活用可能

これらの支援を個別に調達しようとすれば、それだけで経営資源が分散してしまう。本業である「顧客への価値提供」に集中するためにも、フランチャイズ加盟は合理的な選択肢となりうる。


まとめ:選ばれる会社は「仕組み」で差をつける

賃貸市場における問い合わせ社数が「3.3社」に達した今、顧客に選ばれるための競争は一段と厳しくなっている。しかし、この数字は「脅威」であると同時に「機会」でもある。

競合他社が従来の営業スタイルを続ける中、本記事で紹介した7つの戦略を実践すれば、確実に差別化を図ることができる。

重要なのは、「頑張る」ことではなく「仕組み化する」ことだ。写真の枚数、レスポンスの速度、口コミへの対応、物件鮮度の管理──これらすべてを属人的な努力ではなく、組織として継続できる仕組みに落とし込むこと。

その仕組みを自社で一から構築するか、フランチャイズ加盟によって獲得するかは、各事業者の経営判断に委ねられる。いずれにせよ、「選ばれる会社」になるための投資を惜しまない事業者だけが、「3.3社」時代を生き残ることができるだろう。


<出典> 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年10月調査