【訪問は平均2.0社】来店したくなる不動産店舗環境づくり7つのポイント──”選ばれる店舗”が実践している空間設計の全技術

不動産賃貸仲介の世界で、ある構造的な変化が進行している。2025年の不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の調査によれば、賃貸物件を契約した人が実際に訪問した不動産会社数は平均2.0社。実に45.6%の顧客が「1社のみ」の訪問で契約を決めている。つまり、顧客が店舗に足を運ぶ機会は、多くても2回程度しかないということだ。

一方で、問い合わせた不動産会社数の平均は3.3社──過去11年で最多の水準に達している。顧客は「広く問い合わせ、厳選して訪問する」という行動パターンを強めているのだ。

この数字が示すのは明確なメッセージである。「来店してもらえなければ、勝負の土俵にすら立てない」

問い合わせから来店へ。このわずかな関門を突破できるかどうかが、賃貸仲介店舗の業績を大きく左右する時代に入った。本記事では、最新の消費者調査データをもとに、顧客が「ここに行きたい」と思える店舗環境づくりの具体的なポイントを徹底解説する。明日からすぐに取り組める実践的なヒントを、現場目線でお届けしたい。


訪問社数の減少が意味する「店舗環境」の重要性

「比較される前に選ばれる」時代の到来

賃貸市場における顧客行動の変化を、もう少し掘り下げてみよう。

RSCの同調査では、賃貸契約者の訪問社数について興味深い推移が見られる。2024年の調査では「1社のみ」の訪問が47.9%に達し、約半数が1社しか訪問しない状況だった。2025年はやや減少して45.6%となったが、依然として高水準だ。2社以上を訪問する層が増えたということは、競争環境がより厳しくなっていることを意味する。

一方、問い合わせた物件数は平均5.8物件(賃貸)と、過去最多を更新。「5物件」「6物件以上」の割合は合計で6割を超えた。顧客はオンライン上で多くの物件を比較検討したうえで、訪問先を2社程度に絞り込んでいるのだ。

この行動変化の背景には、大手不動産ポータルサイトの高機能化がある。写真や動画、VR内見といったオンラインコンテンツが充実し、来店前に相当程度の情報収集が可能になった。顧客にとって「わざわざ足を運ぶ」行為のハードルは年々上がっている。

店舗環境が「訪問先の選別基準」になっている

では、顧客は何を基準に訪問先を選んでいるのか。RSCの調査で注目すべきは、不動産会社を選ぶポイントとして**「不動産会社に対する口コミ情報」**が特に重視するポイントの2位にランクインしている点だ。

口コミで語られる内容は、物件情報だけではない。「店舗がきれいだった」「落ち着いて相談できた」「スタッフの対応が丁寧だった」──こうした店舗体験に関する評価が、次の顧客の訪問意思決定に直結している。Googleマップの口コミやSNSでの投稿が、事実上の「来店前審査」として機能し始めているのだ。

つまり、店舗環境の良し悪しは、来店時の顧客満足だけでなく、未来の来店数そのものを左右する先行指標になっている。ここに投資しない手はない。


来店したくなる店舗環境づくり「7つのポイント」

ポイント1:ファサード(外観)で「入りやすさ」を演出する

顧客が店舗を訪れるかどうかの判断は、実はオンラインの段階で半分以上決まっている。しかし、実際に店舗の前に立ったとき──あるいはGoogleストリートビューで外観を確認したとき──最終的な「入る・入らない」の判断が下される場面がある。

不動産店舗に対して「入りにくい」という印象を持つ消費者は少なくない。とりわけ初めての部屋探しをする若年層や女性にとって、壁一面に物件チラシが貼られた従来型の店舗は心理的ハードルが高い。

効果的なファサードづくりのポイントは3つある。

外から店内が見える開放的な設計。 大きな窓やガラスドアを採用し、店内の様子が外からわかるようにする。「入ったら何が起きるのか」がわからない空間は、不安を生む。逆に、明るく整った店内が見えれば、安心感につながる。

情報掲示の最適化。 窓面の物件情報掲示は、多すぎると雑然とした印象を与える。厳選した物件情報をデジタルサイネージで表示するなど、清潔感と情報提供を両立させる工夫が求められる。

エントランス周りの清潔感。 入口付近の掃除は毎日の基本動作だが、意外と見落とされがちなのが季節感の演出だ。小さな観葉植物やシーズンに合わせたディスプレイが、「この店は細部まで気を配っている」というメッセージを伝える。

ポイント2:ターゲット顧客に合わせた空間コンセプトを設計する

店舗環境づくりで陥りがちな失敗は、「おしゃれにすれば人が来る」という短絡的な発想だ。重要なのは、自店舗のメインターゲットに合わせた空間設計である。

学生・単身者が多いエリアであれば、カフェのようなカジュアルな雰囲気が効果的だ。木目調の内装にアクセントカラーのグリーンを配し、BGMにはリラックスできる音楽を。スマートフォンの充電ができるコンセントを各席に設置するだけでも、若年層の滞在満足度は大きく変わる。

ファミリー層がメインのエリアでは、子連れでも気兼ねなく過ごせる環境が不可欠だ。人工芝やクッションフロアのキッズスペースを設ける、絵本やおもちゃを用意する、ベビーカーでも入りやすい通路幅を確保する──こうした配慮が「この店なら安心して相談できる」という判断につながる。

ビジネスパーソンが多いエリアでは、効率性を感じさせるスマートな空間が好まれる。モニター付きの個別ブースを設置し、物件情報をスムーズに比較検討できる環境を整えたい。

ポイント3:プライバシーに配慮した相談スペースを確保する

RSCの調査では、不動産会社に求めるもののトップは「礼儀・丁寧な対応」であり、これに「正確な物件情報の提供」「問合せに対する迅速な対応」が続く。これらはいずれも「安心して相談できる環境」と密接に関わっている。

住まい探しには、家族構成、収入、職業、ライフスタイルの変化といった極めてプライベートな情報のやり取りが伴う。オープンフロアで隣の席の会話が丸聞こえの環境では、顧客は本音を話しにくい。

実践すべき施策として、以下が挙げられる。

パーティションや半個室ブースの導入で、視覚的・聴覚的なプライバシーを確保する。完全個室でなくても、座席の配置を工夫するだけで体感的なプライバシーは大きく改善する。席と席の間に適度な距離を設け、植栽やパーティションで区切ることで、顧客が落ち着いて話せる空間が生まれる。

加えて、相談ブースごとにモニターを設置し、顧客と一緒に物件情報を閲覧できる環境を整えれば、情報提供の質と顧客体験を同時に高められる。

ポイント4:「五感」に訴える空間演出で記憶に残る体験を提供する

訪問社数が平均2.0社という状況では、「他社との差別化」が来店後の成約にも直結する。ここで効果を発揮するのが、五感に訴えるアプローチだ。

視覚: 照明は最も費用対効果の高い投資の一つだ。蛍光灯のみのフラットな照明から、温白色のダウンライトと間接照明を組み合わせた空間に変えるだけで、店舗の印象は劇的に変わる。暖色系の照明は心理的な安心感を生み、相談時間の満足度を高める効果がある。壁面の色も重要で、白やベージュ、ライトグレーをベースにすることで、清潔感と落ち着きを両立できる。

嗅覚: 適度なアロマディフューザーの設置は、空間の印象を大きく左右する。柑橘系やウッド系の香りは、リラックス効果と清潔感を同時に演出する。ただし、香りは好みが分かれるため、控えめに使うのが鉄則だ。

聴覚: BGMの有無と音量は、空間の快適さに直結する。無音の空間は緊張感を生みやすく、逆に音が大きすぎると会話の妨げになる。ジャズやアコースティック系の穏やかな音楽を、会話の邪魔にならない音量で流すのが効果的だ。

触覚: 椅子の座り心地は、長時間の相談における顧客満足度を左右する見えない要素だ。物件紹介から条件のすり合わせまで、1回の来店で1〜2時間を過ごすことも珍しくない。硬いパイプ椅子ではなく、クッション性のあるチェアを導入する価値は十分にある。

味覚: 来店時のドリンクサービスは定番だが、ここにもひと工夫の余地がある。季節のハーブティーやフレーバーウォーターなど、「この店ならでは」の飲み物を用意することで、口コミに書きたくなる体験を提供できる。

ポイント5:デジタル環境を整備して「タイパ」を重視する顧客に対応する

賃貸仲介の現場では、分業化やAI活用による効率化が進んでいる。こうした業界トレンドの根底にあるのは、顧客側の「タイパ(タイムパフォーマンス)」意識の高まりだ。

RSCの調査では、IT重説の活用意向が賃貸で56.7%と過去最高を記録。オンライン契約の利用ニーズも3年連続で増加し、51.0%に達している。顧客は「便利で効率的な体験」を当然のものとして期待している。

店舗環境におけるデジタル化のポイントは以下の通りだ。

高速Wi-Fi環境の整備。 顧客がスマートフォンで物件情報を確認しながら相談できる環境は、もはや必須インフラだ。Wi-Fiのパスワードを来店時にスムーズに案内する仕組みも含めて整備したい。

大型モニター・タブレットの活用。 物件写真や周辺環境を大画面で確認できるモニターの設置は、情報提供の質を格段に高める。特に、Googleマップのストリートビューを使って周辺環境を案内する「バーチャル散策」は、顧客満足度の高い提案手法として注目されている。

電子契約・IT重説対応の環境整備。 オンラインでの重要事項説明や電子契約に対応できるスペースと機材を確保しておくことで、「この店なら最後までスムーズに手続きが進む」という安心感を提供できる。

ポイント6:物件情報以外の「付加価値情報」を提供する空間を設計する

RSCの調査で見逃せないデータがある。物件情報以外に必要だと思う情報として、賃貸検討者の回答上位は以下の通りだ。

  • 防災情報: 最多(直近3年で最高水準)
  • 治安の良さ(安全性): 上位常連
  • 交通の利便性: 安定して高い関心
  • 周辺の商業情報: 生活利便性への関心

注目すべきは、「防災情報」が全体でトップに立った点だ。近年の自然災害の増加を背景に、ハザードマップや地域の安全性に対する関心が急激に高まっている。

この消費者ニーズを店舗環境に反映させない手はない。具体的には、以下のような取り組みが考えられる。

「エリア情報コーナー」の設置。 店舗の一角に、取り扱いエリアの防災マップ、治安情報、生活利便施設のマップ、子育て支援情報などをまとめたコーナーを設ける。デジタルサイネージで表示すれば、情報の更新も容易だ。

地域密着型のコンテンツ展示。 地元のイベント情報、おすすめの飲食店マップ、公園や商業施設の案内など、「この街に住んだらどんな生活ができるのか」をイメージできる情報の提供は、物件提案の説得力を高める。

ハザードマップの常備と説明体制。 洪水・地震・土砂災害のハザードマップを店舗に常備し、物件提案の際に自然にリスク情報を説明できる体制を整えておく。こうした誠実な情報提供は、顧客からの信頼獲得に直結する。

ポイント7:口コミを意識した「来店体験のデザイン」を行う

冒頭で触れた通り、口コミ情報は不動産会社選びにおいて重要度を増している。特に重視するポイントの2位にランクインしたことは、口コミが「あれば参考にする」段階から、**「来店先を決定する際の判断材料」**へと進化していることを示唆している。

口コミで高評価を得るための店舗環境づくりで重要なのは、「期待を上回る瞬間」を意図的に設計することだ。

ウェルカム体験の設計。 来店時の第一声、ドリンクの提供タイミング、席への案内の動線──こうした一連の流れを標準化し、どのスタッフが対応しても一定水準以上の体験を提供できるようにする。

退店時の印象管理。 心理学の「ピーク・エンドの法則」が示す通り、人は体験の「最も感情が動いた瞬間」と「最後の瞬間」で全体の印象を決定する。物件資料を丁寧にまとめたオリジナルファイルを渡す、出口まで見送る、天候に合わせた声かけをする──退店時の小さな配慮が、口コミに書かれる「この店に行ってよかった」の一言につながる。

SNS映えする要素の配置。 店内に自然と写真を撮りたくなるスポットを設けることも一案だ。洗練されたロゴディスプレイや、季節のフラワーアレンジメント、地域の魅力を伝えるフォトウォールなど、さりげない工夫が口コミの拡散力を高める。


すぐに始められる「店舗環境チェックリスト」

大規模な改装が難しい場合でも、日常の運用で店舗環境を改善できるポイントは多い。以下のチェックリストを参考に、自店舗の現状を点検してほしい。

清潔感の維持

  • 入口周辺・ガラス面の清掃は毎朝実施しているか
  • トイレの清掃状態は常時チェックしているか
  • 書類や備品の整理整頓は徹底されているか
  • 季節ごとのディスプレイ更新を行っているか

快適性の確保

  • 室温は季節に応じて適切に管理されているか
  • 照明の明るさ・色味は空間の用途に合っているか
  • BGMの音量は会話を妨げていないか
  • 椅子の座り心地は長時間でも苦にならないか

情報環境の整備

  • Wi-Fi環境は安定しているか
  • モニターやタブレットで物件情報を提示できるか
  • エリアの防災情報・生活情報を提供できる体制があるか
  • 電子契約やIT重説に対応できるスペースがあるか

顧客動線の最適化

  • ベビーカーや車椅子でも入店しやすい通路幅があるか
  • 相談スペースのプライバシーは確保されているか
  • スタッフの動線と顧客の動線が交錯していないか
  • 来店から退店までの導線はスムーズか

フランチャイズ加盟で実現する「店舗環境の標準化」

ここまで紹介した施策を個社で一から構築するのは、決して容易ではない。特に中小規模の不動産仲介会社にとっては、日々の営業活動に加えて店舗環境の最適化にまで手が回らないというのが実情だろう。

こうした課題に対する一つの解が、フランチャイズへの加盟だ。たとえばハウスコムフランチャイズでは、設立から25年以上にわたり培ってきた賃貸仲介のノウハウを加盟店に提供している。約200店舗の直営店運営で蓄積された店舗設計や運営のベストプラクティスを活用できるのは、独立系店舗にはない大きなアドバンテージといえる。

具体的には、業務システムの提供(コンバータ・顧客管理・契約管理の一体提供でロイヤリティに利用料が含まれる)、本部による定期的な巡回サポート、加盟店同士のネットワークを活用した情報共有など、店舗運営の質を底上げする仕組みが整っている。

加えて、ハウスコムのブランド力は、顧客の「来店先選定」の段階で効力を発揮する。大手不動産ポータルサイト経由の反響送客支援や、認知度の高いブランドを看板に掲げることで、問い合わせから来店への転換率を高める効果が期待できる。

ベンチマークセミナーの開催や他の加盟店のリアルな運営事例の共有も、店舗環境の継続的な改善を後押しする貴重なリソースだ。


まとめ:「訪問されない店舗」に未来はない

賃貸仲介における顧客の訪問社数が平均2.0社という現実は、厳しくも明確なメッセージを発している。顧客は店舗を「厳選して」訪れる。 その限られた訪問先に選ばれるためには、オンライン上の第一印象から、来店時の空間体験、退店後の記憶に至るまで、すべてのタッチポイントにおける顧客体験の質を高める必要がある。

店舗環境への投資は、単なるコストではない。それは「来店数」「成約率」「口コミ評価」という三つの経営指標を同時に押し上げるレバレッジだ。

今日できることから始めてほしい。入口のガラスを磨くことでも、照明の色味を変えることでも、ドリンクメニューを見直すことでもいい。小さな改善の積み重ねが、「あの店にはまた行きたい」「友人にも紹介したい」という口コミを生み、次の来店へとつながっていく。

訪問社数が限られる時代だからこそ、選ばれる店舗環境をつくることが、これからの賃貸仲介業における最大の競争優位になる。