【賃貸物件の写真で差がつく】同じ間取りでも”選ばれる物件”になる写真演出術──競合と差別化する7つの実践テクニック

「間取りも家賃も立地もほぼ同じなのに、なぜあの会社の物件ばかり問い合わせが入るのか」──こんな疑問を持ったことはないだろうか。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した最新の「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によると、物件を契約した消費者が「問い合わせや訪問をする不動産会社を選ぶポイント」として最も多く挙げたのは、「写真の点数が多い」だった。この項目は「特に重視するポイント」でもトップに立ち、しかも直近3年で最高の割合を記録している。
つまり、今の住まい探しにおいて写真は「あればいい」ものではなく、不動産会社そのものを選ぶ基準になっている。同じ物件を複数の仲介業者が掲載する大手不動産ポータルサイト上では、まさに「写真の質と量」が問い合わせ先を決める分水嶺となっているのだ。
本記事では、賃貸仲介業者の現場で今日から実践できる物件写真の差別化テクニックを、データと事例を交えて解説する。「同じ間取りでも選ばれる物件」をつくるための写真戦略を、ぜひ自社の武器にしてほしい。
写真が「営業マン」になる時代──データが示す消費者行動の変化
問い合わせ会社数は過去最多、比較される時代へ
まず押さえておきたいのが、消費者の住まい探し行動の変化だ。
2025年のRSC調査では、賃貸物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は平均3.3社と、2015年以降の11年間で最多を記録した。問い合わせた物件数も平均5.8物件と前年から大幅に増加し、「5物件以上」の割合が6割を超えた。
この数字が意味するのは明快だ。消費者はかつてないほど多くの不動産会社と物件を比較検討しており、そのふるいにかけられる最初の関門が「写真」なのである。
写真の点数が最大の選定基準に
同調査で「不動産会社を選ぶポイント」の上位項目を見ると、その傾向はさらに鮮明になる。
「写真の点数が多い」がトップに立ち、続いて「ほかにもたくさんの物件を掲載している」「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」が上位に入った。注目すべきは、「店舗がアクセスしやすい場所にある」が2年連続で割合を下げている点だ。消費者は、店舗の立地よりも物件情報の充実度を重視して不動産会社を選択する傾向が明確になっている。
また、「不動産会社に対する口コミ情報」が「特に重視するポイント」で2位にランクインした点も見逃せない。写真のクオリティが高い掲載は「この会社は丁寧だ」という信頼感にもつながり、口コミ評価と相乗効果を生む可能性がある。
「見せ方」で勝負が決まる構造
大手不動産ポータルサイトでは、同一物件を複数の仲介業者が掲載するケースが珍しくない。間取り、家賃、最寄り駅からの距離──条件面はすべて同じ。そこで差がつくのが、写真の点数・質・構成という「見せ方」の領域だ。
ある賃貸仲介会社では、掲載写真の点数を従来の倍に増やし、写真の撮影アングルと構成を見直しただけで、問い合わせ数が1.5倍に増加したケースも報告されている。写真は、オンライン上で24時間休みなく働く「営業マン」であり、その質を高めることは直接的な売上向上策なのだ。
競合物件と差別化する7つの写真演出テクニック
テクニック1:「入居後の生活」が見える1枚目を設計する
大手不動産ポータルサイトの物件一覧画面では、最初の1枚が物件の「顔」となる。ここで消費者の指を止めなければ、どれほど丁寧に内観写真を撮っても見てもらえない。
多くの業者は外観写真やリビング全景をトップに据えるが、差別化を狙うなら「生活シーンが想像できる1枚」を意識したい。たとえば、南向きの窓から自然光が差し込むリビングを、やや低いアングルから撮影する。それだけで「この部屋で朝食を食べたい」「ここでくつろぎたい」と想像させる力が生まれる。
物件の最大のセールスポイントを凝縮した1枚をトップに配置すること。これが、競合との差別化の第一歩だ。
テクニック2:光を「コントロール」して空間の印象を変える
プロの不動産カメラマンが最も重視するのが「光」の扱いだ。同じ部屋でも、撮影する時間帯によって印象はまったく異なる。
室内撮影のベストタイムは、一般的に午後2時から3時頃とされている。この時間帯は太陽の角度が程よく、室内に柔らかな自然光が入りやすい。午前中は影が強く出やすく、夕方以降は全体が暗くなる傾向がある。
撮影時の具体的なポイントは以下のとおりだ。
晴れた日に撮影することを大前提とし、曇天の場合はリスケジュールも検討する。曇り空の外観写真は物件全体に暗い印象を与えてしまうためだ。室内撮影では、たとえ日当たりの良い部屋であってもすべての照明を点灯する。実際に入居した際の雰囲気を伝えるとともに、影を軽減して明るく清潔感のある写真に仕上がる。
窓からの光が強すぎて室内が暗く写る場合は、HDR撮影(露出を変えた複数枚を合成する手法)が有効だ。最近のスマートフォンにはHDR機能が標準搭載されているものも多く、室内と窓の外の景色をバランスよく表現できる。ある不動産会社では、HDR撮影を導入したことで物件ページの閲覧滞在時間が平均30%延び、内見予約数も15%増加したと報告されている。
テクニック3:「水平・垂直」を守るだけで写真の信頼感が変わる
素人撮影とプロ撮影の最大の違いは、実は「水平・垂直が取れているかどうか」にある。床や天井に対して水平、壁や柱に対して垂直になっていない写真は、無意識のうちに見る人に不安定な印象を与える。
iPhoneであれば「設定」→「カメラ」から「グリッド」と「水平」をオンにするだけで、撮影時にガイドラインが表示される。Androidでもカメラアプリの設定からグリッド表示が可能だ。たったこれだけの設定で、写真全体の「きちんと感」が大きく向上する。
特に注意したいのがキッチンや浴室など狭い空間の撮影だ。体を傾けて撮影しがちなこれらのスペースこそ、水平・垂直を意識することで清潔感と広さの印象が劇的に変わる。
テクニック4:「奥行き」の演出で体感面積を広げる
同じ6畳の部屋でも、写真の撮り方次第で「広く見える部屋」と「狭く感じる部屋」に分かれる。その鍵を握るのが「奥行き」の演出だ。
具体的には、部屋の対角線上にカメラを構えることで、最大限の奥行きが表現できる。入口のドア付近から部屋の奥に向かって撮影するのが基本だが、可能であれば部屋の角から対角の角に向けて撮ると、面積以上の広がりが写真に生まれる。
カメラの高さも重要なポイントだ。立ったままの目線(約150cm〜160cm)ではなく、腰の高さ(約100cm〜120cm)にカメラを構えると、天井が高く見え、空間に余裕を感じさせる写真になる。
スマートフォンに装着できる広角レンズも有効なツールだ。浴室やトイレなど、被写体との距離が取りにくい空間では、広角レンズを使うことで全体を1枚に収められる。価格は数千円程度から購入でき、コストパフォーマンスの高い投資と言えるだろう。
テクニック5:「ストーリー構成」で物件をプレゼンテーションする
写真を「撮る」だけでなく「並べ方」で差がつく。優れた物件写真は、消費者に内見を疑似体験させる「ストーリー」を持っている。
推奨する写真の掲載順序は次のとおりだ。
- 外観(建物全体→エントランス):第一印象を決める
- 玄関:実際に入室する感覚で
- リビング・居室:メインの生活空間
- キッチン:設備の充実度を伝える
- 浴室・洗面・トイレ:水回りの清潔感
- 収納:実用面のアピール
- バルコニー・眺望:開放感を演出
- 周辺環境:最寄り駅、商業施設、公園など
この流れは、実際に物件を内見する際の動線に近い。消費者は写真をスクロールしながら「ここに住んだら……」と自然に想像を膨らませることができる。掲載写真の点数が多いほど問い合わせにつながることはRSCの調査データが裏付けており、上限枚数いっぱいまで写真を掲載することを目標にしたい。
テクニック6:バーチャルホームステージングで空室の弱点を強みに変える
空室物件の最大の弱点は、「生活感がなく、空間の使い方がイメージしにくい」ことだ。がらんとした部屋の写真は、広さは伝わっても「暮らし」は伝わらない。
この課題を解決する手段として注目されているのが、バーチャルホームステージングだ。物件写真にデジタルで家具やインテリアを合成する技術で、従来の実物ホームステージング(家具の設置・撤去に20万〜30万円程度のコストがかかる)と比較して、低コストかつ迅速に導入できる点が大きなメリットとなっている。
バーチャルホームステージングを導入した不動産会社では、内見希望者の約7割が「写真の雰囲気が気に入った」と回答し、成約率が前年同物件比で25%向上した事例も報告されている。
ターゲット層に合わせたインテリアの選定もポイントだ。単身者向け物件であればシンプルでモダンな家具を、ファミリー向けであれば温かみのあるダイニングセットや子ども用品を配置するなど、入居後の生活を具体的に想起させる演出が効果的である。
テクニック7:「マイナスポイント」も戦略的に見せる
意外に思われるかもしれないが、物件のマイナス面を適切に写真で伝えることも、実は反響率の向上につながる。
写真で伝えきれなかったマイナスポイントを内見時に初めて知ると、消費者の期待値とのギャップが生まれ、印象が実際以上に悪くなってしまう。逆に、日当たりや築年数のデメリットをあらかじめ写真で正直に伝えておけば、内見に来る消費者はそれを承知の上で訪れるため、成約に結びつきやすい。
たとえば北向きの部屋であれば、あえて照明を効果的に使った室内写真を掲載し、「日中の自然光は限られますが、照明環境を整えれば快適に過ごせます」というメッセージを写真で伝える。築年数が古い物件なら、リフォーム済みの水回りや設備のアップ写真を充実させることで、「古さ」を「味わい」に転換できる。
正直な情報提供は信頼感の醸成にもつながり、口コミ評価にも好影響を与える。結果として、「この会社は信頼できる」という評判が新たな反響を呼ぶ好循環が生まれるのだ。
明日から使える撮影チェックリスト
ここまで解説したテクニックを、現場で即座に活用できるチェックリストとして整理しておこう。
撮影前の準備として、まず撮影日は晴天の日を選び、理想的な撮影時間帯は午後2時〜3時。スマートフォンのグリッド表示と水平ガイドをオンにしておく。物件の清掃状態を確認し、不要な物が写り込まないよう整理する。ターゲット層(単身者向け・ファミリー向けなど)を意識してセールスポイントを事前に把握する。
撮影時のポイントとしては、カメラの高さを腰の位置(100cm〜120cm)に設定し、部屋は対角線方向から撮影して奥行きを最大化する。すべての照明を点灯し、狭い空間では広角レンズの活用も検討する。各部屋について複数アングルで撮影し、設備のアップ写真も忘れずに。外観は建物全体が収まるアングルで、余計な物の写り込みを避ける。
掲載時の仕上げとして、写真は「外観→玄関→居室→水回り→収納→バルコニー→周辺」のストーリー順に構成する。大手不動産ポータルサイトの上限枚数まで写真を掲載することを目標にする。過度な画像加工は避け、実物との乖離が生じない範囲で明るさ・コントラストを調整する。
動画・VR・SNS──写真の「次」を見据えた展開
物件写真の充実は差別化の基盤だが、先進的な仲介業者はすでに「その先」を見据えている。
RSCの2025年調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」が上位にランクインしている。また、住まい探しの際に不動産情報サイト以外で利用したメディアとして「YouTube」や「Instagram」を挙げる消費者の割合も増加傾向にあり、特に売買検討者で顕著だ。
360度パノラマ写真やバーチャルツアーを導入した仲介会社では、反響率が150%に向上し、来店率も110%にアップした事例がある。VRコンテンツは遠方からの住まい探しにも対応でき、商圏の拡大にも寄与する。
また、Instagram向けに設備写真を縦構図で撮影し、スマートフォン画面での視認性を最適化した結果、DM経由の問い合わせが前月比約2倍になったケースもある。物件写真は大手不動産ポータルサイトだけでなく、SNSでの二次活用も視野に入れた撮影が求められる時代になりつつある。
フランチャイズ本部の支援で写真戦略を加速させる
ここまで読んで、「理屈はわかるが、日々の業務の中で写真にそこまで手間をかけられない」と感じた方もいるだろう。確かに、物件写真の質を組織的に高め、維持し続けるには、ノウハウの蓄積と仕組みづくりが不可欠だ。
こうした課題に対して、フランチャイズの仕組みを活用するという選択肢がある。
たとえば、不動産賃貸仲介のフランチャイズ本部であるハウスコムでは、全国203店舗(直営店含む)のネットワークから蓄積された集客・営業ノウハウを加盟店に提供している。写真撮影や掲載に関するベストプラクティスの共有はもちろん、大手不動産テック企業の基幹システムを活用したコンバータ・顧客管理・契約管理の仕組みが整備されており、物件情報の入稿業務を効率化できる環境が用意されている。
加えて、定期的に開催されるベンチマークセミナーでは、ハウスコム直営店のノウハウに加え、他の不動産業者のリアルな成功事例が共有される。写真戦略で成果を上げている店舗の具体的な手法を学び、自店に取り入れることができるのは、フランチャイズならではのメリットだ。
本部からの反響送客による支援や、ハウスコムビジネスパックを活用した売上支援も行われており、「写真で反響を増やし、本部の支援で成約率を高める」という好循環を生み出す基盤が整っている。ブランド力による信頼感は、消費者が問い合わせ先を選ぶ際の後押しにもなる。
独自の経営資源だけでは実現しにくいビジュアル戦略の組織的な底上げを、フランチャイズの仕組みで実現する。これも、競合との差別化における有力な選択肢のひとつだ。
まとめ──「写真力」は、これからの賃貸仲介の競争力そのもの
不動産賃貸仲介業界において、物件写真の質と量は、もはや「付加価値」ではなく「標準装備」になりつつある。RSCの調査データが示すように、消費者は写真の充実度で不動産会社を選び、写真の第一印象で内見の可否を判断している。
同じ間取り、同じ家賃の競合物件に対して、写真の力で差別化するための要点を改めて整理しよう。生活が想像できる1枚目を設計すること。光をコントロールして空間の印象を変えること。水平・垂直の基本を徹底すること。奥行きの演出で体感面積を広げること。ストーリー構成で物件をプレゼンテーションすること。バーチャルホームステージングで空室の弱点を強みに変えること。そしてマイナスポイントも戦略的に見せること。
いずれも、高額な機材や専門知識がなくても、今日から始められるテクニックだ。大切なのは、「写真は営業ツールである」という意識を持ち、一枚一枚に戦略的な意図を込めることにある。
消費者の比較検討行動がますます活発化する中、「選ばれる物件」をつくれるかどうかは、仲介業者のビジュアル戦略にかかっている。本記事で紹介したテクニックを一つでも多く実践し、反響数と成約率の向上に役立ててほしい。
※本記事は、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2025年10月発表)等の公開資料を参照して作成しています。


