「その物件情報、本当に正確ですか?」──成約率を左右する物件詳細の情報収集術

「問い合わせをしたら、実際の物件と情報が違っていた」──。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した利用者意識アンケートによれば、消費者が不動産会社に最も求めるものは「正確な物件情報の提供」であり、賃貸分野では実に約9割近い回答者がこの項目を選択している。次いで「物件に対する詳細な説明」が7割超と続き、情報の”質”に対する消費者の目は年々厳しさを増している。

裏を返せば、物件情報の正確性こそが、仲介会社の信頼と成約率を決定づける最大の武器だということだ。では、オーナーや管理会社から”正確な情報”を引き出し、それを顧客に過不足なく届けるために、現場の実務者は何をすればよいのか。本稿では、賃貸仲介の最前線で活用できる具体的な情報収集術を、データと現場事例を交えながら徹底解説する。


なぜ今、物件情報の正確性がこれほど重要なのか

消費者の比較行動が激化している

RSCの2025年調査では、賃貸物件を契約するまでに消費者が問い合わせた不動産会社数は平均3.3社と、2015年以降で最多を記録した。問い合わせた物件数も平均5件を超え、「5物件以上」を比較した消費者が全体の6割に達している。

この数字が物語るのは、消費者が”複数の会社を天秤にかけている”という現実だ。かつてのように「来店してもらえれば決まる」時代は終わり、比較検討の中で「この会社の情報は正確で信頼できる」と感じてもらえなければ、選ばれない時代に突入している。

不満の第1位は「情報の不一致」

同調査で不動産会社の対応に不満だったことを聞くと、賃貸では「その物件はもうないと言われた」がトップに挙がっている。成約済み物件の掲載放置はもちろん、設備情報や費用条件の記載漏れ、交通アクセスの誤表記など、”情報のズレ”は消費者の信頼を一瞬で失わせる。

首都圏不動産公正取引協議会が公表する違反事例を見ても、「鉄筋コンクリート造と記載されていたが実際は鉄骨造だった」「洗面ボウル2つと表示されていたが1つしかなかった」「駅徒歩5分以内と記載されていたが実際にはそうではなかった」といった具体的な誤表記が後を絶たない。これらの多くは、仲介会社がオーナーや管理会社から受け取った情報をそのまま転載し、現地確認を怠ったことに起因している。


オーナー・管理会社から正確な情報を引き出す5つの技術

1. 「ヒアリングシート」の標準化で抜け漏れをゼロにする

物件情報の誤りが発生する最大の原因は、情報取得のプロセスが属人化していることにある。ベテラン営業は経験則で必要項目を押さえられるが、経験の浅いスタッフでは確認漏れが生じやすい。

この課題を解消するのが、物件ヒアリングシートの標準化だ。以下の項目を網羅したテンプレートを作成し、オーナーや管理会社への初回ヒアリング時に必ず使用するルールを設ける。

基本情報チェック項目の例: 所在地の正式表記と号室、建物構造(RC・SRC・S造・木造の正確な区分)、築年月(竣工年月と増改築年月の区別)、専有面積(壁芯か内法かの確認)、間取りとDK/LDKの正確な区分、バルコニー面積、階数と所在階、方位。

設備情報チェック項目の例: キッチン設備(ガスコンロ・IH・口数)、給湯方式、追い焚き機能の有無、浴室乾燥機の有無、エアコン(台数・設置箇所)、インターネット環境(完備・対応・未対応の区別)、宅配ボックスの有無と個数、防犯カメラの有無と設置箇所、オートロックの有無、TVモニター付きインターフォンの有無。

費用情報チェック項目の例: 賃料、管理費・共益費、敷金・礼金、更新料、保証会社利用の要否と保証料(初回・継続)、鍵交換費用、ルームクリーニング費用、退去時の敷引・償却条件、駐輪場・バイク置き場の利用料、ペット飼育時の追加条件。

ポイントは、このシートを「聞き漏らした項目を後追いで確認する」ためのチェックリストとしても活用することだ。一度のヒアリングで全項目を埋められなくても、空欄が残っていれば追加確認すべき項目が一目でわかる。

2. 「裏取り三原則」を徹底する

オーナーや管理会社から得た情報を鵜呑みにしてそのまま広告に反映するのは、リスクの高い行為だ。特に個人オーナーの場合、リフォーム後の設備変更を正確に把握していなかったり、築年数を曖昧に記憶していたりするケースは珍しくない。

現場で実践すべき「裏取り三原則」は次の通りだ。

第一原則:登記情報・図面との突合 建物構造、築年月、専有面積といった基本情報は、登記事項証明書や竣工図面と照合する。特に増改築を経た物件では、登記上の面積と実測値に乖離がある場合があるため注意が必要だ。

第二原則:現地での実地確認 設備の有無や状態は、写真撮影を含めた現地確認で裏付けを取る。「エアコン付き」と聞いていても、実際には前入居者の残置物で保証対象外だったというケースは多い。防犯カメラやダブルロックの有無も、現地で目視確認する習慣をつけたい。

第三原則:交通アクセスの実測 駅からの徒歩分数は、不動産公正競争規約に基づき道路距離80mにつき1分で算出する。ただし、これはあくまで基準値であり、実際に歩いてみると信号や坂道で体感時間が大きく異なることがある。広告上の表記は規約通りに算出しつつ、顧客への口頭説明では「実際に歩くと信号待ちで2分ほど余分にかかります」と補足できる営業担当者は、確実に信頼を勝ち取る。

3. 管理会社との「情報連携フロー」を構築する

仲介会社にとって最も頭が痛いのは、「掲載している物件が、知らないうちに成約済みや条件変更になっていた」という事態だろう。先述のRSC調査で消費者不満のトップに「その物件はもうないと言われた」が挙がっていることからも、この問題の深刻さがわかる。

解決策は、管理会社との間に定期的な情報更新フローを敷くことだ。

具体的には、空室状況の更新頻度を取り決め(理想は毎日、最低でも週2回)、変更があった際の連絡手段とタイミングを明文化する。「成約が決まったら即時メールで連絡」「賃料変更は変更日の3営業日前までに通知」といったルールを管理会社と合意し、書面で残しておくと効果的だ。

また、管理会社側の担当者が複数いる場合は、情報伝達の窓口を一本化してもらうよう依頼する。担当者Aが成約処理をしたのに担当者Bに連絡が行かず、仲介会社が気づかないまま広告を掲載し続ける──という事態を防ぐためだ。

4. 写真・動画は「情報の証拠」として戦略的に撮影する

大手不動産ポータルサイトにおいて、不動産会社を選ぶ際のポイントとして「写真の点数が多い」が毎年トップに立ち続けている。2025年の調査でも同様の傾向が確認されており、写真は単なる”見栄え”のためのものではなく、物件情報の正確性を裏付ける証拠としての役割を果たしている。

効果的な撮影のポイントは、以下の通りだ。

**室内撮影:**部屋の広さが伝わる広角写真に加え、コンセント位置、収納内部、水回り設備のアップ写真を必ず撮る。「追い焚き機能付き」と記載するなら、浴室リモコンの写真が最も説得力のある証拠になる。

**共用部撮影:**エントランス、宅配ボックス、駐輪場、ゴミ置き場は必須。特にゴミ置き場の清掃状態は、物件の管理品質を雄弁に語る情報だ。

**周辺環境撮影:**最寄り駅からの道のりを撮影する仲介会社は増えているが、夜間の街灯状況まで撮影している会社は少ない。女性の単身入居者が多いエリアでは、夜道の安全性を写真で示せることが大きな差別化要因になる。

撮影した写真は、日付と撮影者名を記録し、物件データベースと紐づけて管理する。リフォーム前後の写真を混在させてしまうミスは、適切な管理体制で防げる。

5. 「更新日」の明示で情報鮮度を担保する

RSCの調査では「最新の物件情報の提供」を求める声が年々増加しており、情報の鮮度は正確性と並ぶ重要な評価軸になっている。

自社サイトや大手不動産ポータルサイトに掲載する物件情報には、「最終確認日」を明示するルールを設けたい。「2025年○月○日現在の情報です」と一文を添えるだけで、消費者に対して「この会社は情報を定期的にチェックしている」という安心感を与えられる。

社内的には、掲載物件の「情報鮮度チェック」を月次業務として制度化する。掲載から一定期間(目安は2週間~1か月)が経過した物件について、賃料・空室状況・設備情報に変更がないかをオーナーまたは管理会社に再確認する。繁忙期には確認頻度を上げるなど、季節に応じた運用を心がけたい。


情報の正確性を「仕組み」で守る──業務フロー改善の実践

物件登録時のダブルチェック体制

物件情報をシステムに入力する際、入力者と確認者を分けるダブルチェック体制を導入する。特に費用関連の項目(保証料、鍵交換費用、クリーニング費用など)は記載漏れが違反事例として多く報告されているため、確認者は費用項目を重点的にチェックする運用が効果的だ。

首都圏不動産公正取引協議会の2025年の違反事例では、ルームクリーニング費用やエアコンクリーニング費用、次回以降の家賃保証料の不記載が複数指摘されている。これらは「うっかり」で済まされない問題であり、消費者トラブルに直結する。

成約時の即時反映ルール

自社で成約が決まった瞬間に、掲載中のすべてのサイトから該当物件を削除する──。当たり前のようでいて、繁忙期の現場では後回しにされがちな作業だ。おとり広告に関する調査では、賃貸検索を利用した消費者の約半数が「募集終了物件に遭遇した経験がある」と回答しており、業界全体の信頼を揺るがす問題になっている。

対策として、成約処理と広告削除を一体化したワークフローを構築する。「契約書を作成したら、その場で掲載サイトの削除処理も完了させる」というルールを徹底し、削除完了を上長が確認するステップを加えれば、漏れは大幅に減少する。

定期的な情報棚卸し

四半期に一度、掲載中の全物件について「情報棚卸し」を実施する。オーナーや管理会社に対して設備の変更、賃料の改定、契約条件の変更がないかを一斉に確認する機会を設けることで、情報の鮮度と正確性を組織的に担保できる。


フランチャイズ本部の支援が「正確性の底上げ」を実現する

物件情報の正確性を個々の店舗や営業担当者の努力だけに頼るのは、限界がある。仕組みとしての支援、つまりフランチャイズ本部が提供するシステム基盤や業務支援パッケージの活用が、正確性を組織的に底上げするカギとなる。

たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用し、コンバータ(物件情報の変換・一括管理)、顧客管理、契約管理の3点セットを加盟店に提供している。こうしたシステムを活用すれば、物件情報の入力・更新・削除といった一連のプロセスを一元管理でき、複数の大手不動産ポータルサイトへの情報反映も効率化できる。利用料がロイヤリティに含まれるため、中小規模の仲介会社が個別にシステム投資を行う負担も軽減される。

さらに、加盟店同士のネットワークを通じた情報共有も見逃せないメリットだ。定期的な会合やベンチマークセミナーで「他店舗はどのように物件情報を管理しているか」「どんなチェック体制が有効か」といったノウハウを共有することで、各店舗の業務品質が底上げされる。25年以上にわたり賃貸仲介業をコア事業として約200店舗の直営店を展開してきた実績から蓄積されたナレッジは、加盟店にとって大きな資産となるだろう。

物件情報の正確性という”当たり前のこと”を徹底するには、個人の意識だけでなく、それを支えるシステムと組織の力が不可欠だ。フランチャイズというビジネスモデルは、まさにその両方を提供できる仕組みといえる。


明日から実践できる「物件情報チェック」10のTips

最後に、日々の業務にすぐ取り入れられる実践的なTipsをまとめておく。

  1. ヒアリングシートは紙ではなくデジタルで管理する。 クラウド上のテンプレートにすれば、入力漏れのアラートも設定でき、過去の履歴も追跡できる。
  2. オーナーへの確認は「はい/いいえ」で答えられる質問にする。 「設備に変更はありますか?」ではなく「エアコンは現在も使用可能ですか?」と具体的に聞くことで、正確な回答を引き出せる。
  3. 現地確認では必ずメジャーを持参する。 間取り図に記載された寸法と実測値のズレは、入居後のクレームに直結する。特にキッチンスペースや洗濯機置き場の寸法は要注意だ。
  4. 写真撮影は「情報の証拠」という意識で行う。 映える写真だけでなく、コンセントの位置、天井の高さ、窓からの眺望など、入居判断に影響する情報を網羅的に記録する。
  5. 周辺環境情報は自分の足で取材する。 最寄りのスーパーの営業時間、病院やクリニックの所在、保育施設の空き状況など、入居者の生活に直結する情報を独自に調べ、物件紹介時に提供できれば強力な差別化になる。
  6. 掲載情報と図面の突合を月1回の定例作業にする。 特に築年数が古い物件は、リフォームによって間取りや設備が変わっている場合があるため入念に確認する。
  7. 保証会社の条件は「初回」と「継続」の両方を必ず記載する。 継続保証料の不記載は、公正取引協議会の違反事例でも頻繁に指摘されている項目だ。
  8. 退去時費用の条件は、契約前に書面で説明できる状態にしておく。 敷引・償却の条件、原状回復の範囲など、トラブルになりやすい項目こそ事前の正確な情報提供が重要だ。
  9. 社内共有の際は「変更点」を明示する。 物件情報に変更があった場合、変更前後の情報を並べて共有することで、営業スタッフ全員が最新情報を把握できる。
  10. 「わからないことはわからないと伝える」勇気を持つ。 顧客からの質問に対して曖昧な回答をするよりも、「確認してから正確にお伝えします」と答えるほうが、長期的な信頼関係を築ける。

まとめ

物件情報の正確性は、不動産賃貸仲介業における”基本中の基本”だ。しかし、消費者調査が繰り返し示しているように、この基本を徹底できている会社と、そうでない会社との間には、成約率にも顧客満足度にも大きな差が生じている。

オーナーや管理会社から正確な情報を引き出すヒアリング力、それを裏付ける現地確認の徹底、情報の鮮度を維持する更新フロー、そしてこれらを仕組みとして支えるシステム基盤──。これらすべてが揃ってはじめて、「この会社なら安心して任せられる」という消費者の信頼を獲得できる。

消費者の比較行動がかつてないほど活発化している今、物件情報の正確性に真正面から向き合う仲介会社だけが、選ばれ続ける存在になれるのだ。