「しつこい」と思われたら終わり──賃貸仲介における”嫌われない営業”と”選ばれるフォロー”の決定的な違い

顧客の約1割が「営業がしつこかった」と不満を抱えている事実。その一方で、「物件の提案や追加の連絡をしてくれた」ことに満足を感じる顧客も少なくない。この紙一重の差はどこにあるのか──。2025年最新のアンケート調査データをもとに、顧客が離れる営業と、信頼を勝ち取るフォローの境界線を明らかにする。


賃貸物件を探す顧客が問い合わせる不動産会社の数は、平均3.3社。2015年以降で最多を記録した(不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年調査)。検討期間の長期化と問い合わせ先の増加が同時に進行するなかで、顧客は複数の不動産会社を冷静に比較している。

この「比較される時代」において、営業のアプローチひとつが成約と失注を分ける。熱心すぎれば「しつこい」と嫌悪され、控えめすぎれば「フォローがなかった」と記憶から消える。賃貸仲介業者にとって、この匙加減の見極めは経営を左右する最重要課題と言っても過言ではない。

本記事では、最新の消費者調査データと現場の知見を掛け合わせながら、顧客が不満に感じる営業行為の実態を解剖し、「適切なフォロー」へと転換するための具体的な方法論を提示する。


Table of Contents

最新調査が示す「顧客が嫌がる営業」の実態

賃貸顧客が不満に感じた対応トップ10

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した利用者意識アンケートは、賃貸契約者が不動産会社に対して抱いた不満を赤裸々に映し出している。

賃貸契約者が「不満だったこと」として挙げた項目の上位には、次のような回答が並んだ。

  • 問い合わせをしたら「その物件はもうない」と言われた:24.7%
  • 契約の意思決定を急がされた:23.5%
  • 言葉遣いや対応が気に障った:22.2%
  • 問い合わせをしたら返答が遅かった:17.3%
  • 問い合わせへの回答が的を射ていなかった:14.8%
  • 情報に虚偽があり信頼性に欠けた:13.6%
  • 希望していない物件を必要以上にすすめられた:11.1%
  • 物件の提案や追加の連絡がなかった:9.9%
  • 問い合わせ後の営業がしつこかった:9.9%

注目すべきは、「営業がしつこかった」(9.9%)と「希望していない物件を必要以上にすすめられた」(11.1%)を合算すると、約2割の顧客が”押しの強さ”に起因する不満を感じているという事実だ。さらに、「契約の意思決定を急がされた」(23.5%)も広義には「顧客のペースを無視した営業」に含まれ、これらを総合すると、営業の”押し”に対する拒絶反応は想像以上に大きい。

「しつこい」と「フォローがない」は表裏一体

一方で、興味深いデータもある。同じ調査で「物件の提案や追加の連絡がなかった」ことを不満に挙げた賃貸契約者は9.9%に上る。つまり、「営業がしつこかった」と感じた顧客と、「フォローが足りなかった」と感じた顧客はほぼ同数存在するのだ。

この事実は、不動産営業の本質的なジレンマを浮き彫りにしている。顧客は「放置されたくない」が「追い回されたくもない」。この一見矛盾する感情の間に、成約への最短ルートが隠されている。


顧客が本当に求めているのは「丁寧さ」と「迅速さ」の両立

不動産会社に求めるもの第1位は「丁寧・親切な対応」

同調査のQ10「不動産会社に求めるもの」では、全体の約7割が「丁寧・親切な対応」をトップに挙げた。賃貸契約者に限定しても、この項目は求めるもの・特に重要なもののいずれでも首位を独走している。

続く上位項目は「正確な物件情報の提供」「問合せに対する迅速な対応」「物件に対する丁寧な説明」と並ぶ。ここに共通するのは、「情報の質」と「対応の速さ」という二軸であり、これらが交差する地点こそ、顧客が「この会社に任せたい」と感じるポイントだ。

満足度調査が教える”正解”のフォロー

Q11「不動産会社の対応で満足だったこと」の賃貸部門では、次のような項目が上位に入っている。

  • 問い合わせに対するレスポンスが早かった:67.9%
  • こちらの都合を配慮してくれた:49.4%
  • 言葉遣いや対応が丁寧だった:39.5%
  • 物件の提案や追加の連絡をしてくれた:38.3%
  • 内見をさせてくれた:38.3%

ここで着目したいのは、「物件の提案や追加の連絡をしてくれた」が満足項目の上位に食い込んでいる点だ。不満項目では「営業がしつこかった」と「フォローがなかった」が同率だったにもかかわらず、満足項目では「フォローしてくれた」が高い評価を得ている。

これが意味するのは明確だ。フォロー自体が問題なのではなく、フォローの”やり方”が問われているのである。


「しつこい営業」と「適切なフォロー」を分ける5つの境界線

では、具体的に何がその境界線を形成しているのか。現場での実践知と消費者心理の両面から、5つの判断基準を提示する。

境界線①:連絡の目的が「自社都合」か「顧客都合」か

しつこいと感じさせる営業には、共通するパターンがある。「いかがですか?」「ご検討状況はいかがですか?」といった、自社の進捗確認が目的の連絡だ。これは顧客にとって何の価値も提供しておらず、「早く決めてほしい」という催促に聞こえてしまう。

一方、「◯◯様のご希望条件に合う新着物件が出ましたのでご案内します」「先日ご覧いただいたエリアで家賃相場に動きがありました」といった、顧客にとって有益な情報提供を伴う連絡は、同じ頻度であっても歓迎されやすい。

実践のポイント: 連絡する前に「この連絡で顧客が得られるメリットは何か」を一文で言語化する。言語化できなければ、その連絡は控える。

境界線②:連絡の頻度とタイミングが「画一的」か「個別最適」か

業界では「初回問い合わせ後の1週間で2〜3回、その後は週1回程度」が追客の一般的な目安とされている。しかし、この画一的なスケジュールに従うだけでは、顧客ごとの温度感に合わせた対応はできない。

最新調査では、賃貸の検討期間が1ヶ月以上の割合が合計で約5割に達し、長期化傾向が顕著だ。引っ越し時期が半年先の顧客に対して毎週連絡を入れれば、それは確実に「しつこい」と判定される。

実践のポイント: 初回のヒアリングで「いつ頃までのお引っ越しをお考えですか?」と引っ越し時期を確認し、それに応じたフォロー頻度を顧客と合意する。「月に1回程度、新着情報をお送りしてもよろしいですか?」と事前に許可を取るだけで、同じ連絡が「しつこい営業」から「約束どおりのフォロー」に変わる。

境界線③:コミュニケーション手段が「一方通行」か「双方向」か

電話は即時性が高く説得力もあるが、顧客にとっては時間を拘束される手段でもある。特に日中仕事をしている顧客にとって、突然の電話は大きなストレスになりうる。

2025年の調査では、「こちらの都合を配慮してくれた」が賃貸の満足項目で2位(49.4%)に入っている。顧客は「自分のペースで検討できる環境」を強く望んでいるのだ。

実践のポイント: 初回の接点で「ご連絡はメール・LINE・お電話のどれがご都合よろしいですか?」と確認し、顧客が選んだ手段を優先する。電話で連絡する場合は、事前にメールやLINEで「◯日の◯時頃にお電話してもよろしいでしょうか」と一報入れるだけで、印象は劇的に変わる。

境界線④:提案内容が「在庫処分」か「顧客ファースト」か

調査で「希望していない物件を必要以上にすすめられた」を不満に挙げた顧客が11.1%いた事実は、一部の営業担当が「顧客のニーズ」ではなく「自社の在庫」を起点に提案していることを示唆している。

空室が長く続いている物件を埋めたい気持ちは理解できる。しかし、顧客が求めていない物件を繰り返し提案する行為は、信頼を失う最短ルートだ。

実践のポイント: 顧客が希望条件と異なる物件を提案する場合は、その理由を必ず添える。「ご希望の◯◯駅ではありませんが、一駅隣の△△駅ですと家賃が◯千円抑えられ、築年数も新しい物件がございます。エリアを少し広げることで選択肢が増えますので、ご参考にお送りしました」──こうした一言があるだけで、「押し売り」は「提案力」に変わる。

境界線⑤:意思決定のペースを「管理する」か「尊重する」か

「契約の意思決定を急がされた」が賃貸の不満項目で23.5%と高い割合を示した一方、「契約の意思決定をこちらのペースに合わせてくれた」は満足項目にランクインしている。

「人気物件なのですぐ決めないと埋まりますよ」──この言葉は事実であっても、言い方とタイミング次第で顧客の心を閉ざす。

実践のポイント: 情報提供と意思決定の催促を切り離す。「この物件は問い合わせが増えています」という事実を伝えたうえで、「もちろん◯◯様のタイミングでお決めいただければ結構です。もし万が一埋まってしまった場合は、同条件の物件をすぐにお探ししますので、ご安心ください」と添えることで、顧客はプレッシャーから解放され、かえって前向きな決断につながりやすくなる。


問い合わせ平均3.3社時代の「追客」を再設計する

なぜ今、フォローの質が問われるのか

2025年の調査では、賃貸契約者が問い合わせた不動産会社の数は平均3.3社と過去最多を記録した。「5社以上」に問い合わせた割合も21.0%に達しており、顧客が複数社を天秤にかけるのは当たり前の行動となっている。

さらに、問い合わせた物件数も平均5.8物件と増加し、「6物件以上」を比較した顧客は37.6%に上る。この「比較検討の激化」は、裏を返せば、最初の対応だけでなく、その後のフォローの質が選ばれる決定打になることを意味している。

フォローの「4段階モデル」

顧客の検討フェーズに応じて、フォローの内容と頻度を変化させる「4段階モデル」を紹介する。

第1段階:即時対応(問い合わせ当日〜翌日) 問い合わせへのレスポンスは24時間以内が鉄則だ。満足項目の1位が「レスポンスの早さ」(67.9%)であることからも、初動のスピードが第一印象を決定づける。この段階では物件の空室確認と、顧客の基本的な希望条件のヒアリングに集中する。

第2段階:価値提供(3日〜1週間後) 問い合わせ物件に関連する追加情報(周辺環境、相場データ、類似物件の比較情報など)を提供する。ここでのポイントは「売り込み」ではなく「情報提供」に徹すること。顧客が自ら判断するための材料を揃えることで、信頼の土台を築く。

第3段階:寄り添い(1週間〜1ヶ月後) 検討が長期化している顧客に対しては、新着物件の案内や市場動向の共有を月1〜2回のペースで継続する。このとき、毎回のメッセージに「ご不要であればお知らせください。配信を停止いたします」と一文を添えることで、顧客に主導権を渡す姿勢を示す。

第4段階:再活性化(1ヶ月以上) 長期間反応がない顧客に対しては、季節の変わり目や繁忙期のタイミングで「お部屋探しの状況はいかがでしょうか」と軽く確認する程度に留める。強引に追わず、顧客が動き出したときに「最初に思い出してもらえる存在」であり続けることを目指す。


「口コミ時代」に営業スタイルを変えるべき理由

不動産会社選びで口コミの影響力が拡大

2025年の調査では、不動産会社を選ぶポイントとして「不動産会社に対する口コミ情報」が、特に重視するポイントで2位にランクインした。さらに、住まい探しで利用した情報源として「インターネットの口コミ」が賃貸で25.1%に上り、SNS(YouTube、Instagram等)の活用も年々増加している。

この傾向が意味するのは、一人の顧客に対する営業の質が、その顧客だけでなく、口コミを通じて潜在顧客にまで影響を及ぼすということだ。「しつこい営業をされた」というネガティブな口コミは、その何倍もの見込み客を遠ざける破壊力を持つ。

「紹介したくなる営業」へのシフト

逆に、「丁寧に対応してもらえた」「自分のペースで検討させてもらえた」というポジティブな体験は、口コミを通じて自然な集客につながる。追客の目的を「この顧客を成約させる」から「この顧客に紹介してもらえる対応をする」にシフトすることで、中長期的な経営基盤が強化される。


明日から使える「嫌われないフォロー」7つの実践テクニック

ここまでの分析を踏まえ、日常業務にすぐ取り入れられる具体的なテクニックをまとめる。

① 初回ヒアリングで「連絡許可」を取る 「新着物件が出た際にご連絡してもよろしいですか?」「メールとLINE、どちらがご都合よろしいですか?」──この一言で、以降のすべての連絡が「許可された行為」になる。

② 連絡には必ず「情報的価値」を載せる 「いかがですか?」だけの連絡は絶対にしない。新着物件、エリアの相場変動、引っ越しシーズンの動向など、顧客にとって有益な情報を必ずセットにする。

③ 「お断り」を引き出しやすくする 「ご不要であればお気軽にお知らせください」「他社でお決めになった場合もご一報いただけますと幸いです」──この配慮が、逆に信頼を深める。顧客は「いつでもやめられる」安心感があるからこそ、関係を続けようと思える。

④ 提案には必ず「選んだ理由」を添える 「◯◯様が△△を重視されていたので、この物件をお選びしました」と、顧客のニーズと提案の接点を明示する。これにより、提案は「売り込み」ではなく「あなたのための提案」として受け止められる。

⑤ 電話の前にテキストで一報入れる 「本日◯時頃にお電話してもよろしいですか?新着物件のご案内がございます」──たった一行のメッセージが、不意打ちの電話を「約束された連絡」に変える。

⑥ フォロー頻度を顧客と合意する 「週に1回程度のご連絡でよろしいですか?それとも、良い物件が出たときだけがよろしいですか?」──頻度の主導権を顧客に渡すことで、どんな連絡も「合意の範囲内」となる。

⑦ 成約後にも一度だけフォローする 入居後1〜2週間で「お引っ越しは順調でしたか?何かお困りのことはございませんか?」と連絡する。この一手が、次の引っ越し時のリピートや知人紹介につながる。営業コストゼロの最強の集客施策だ。


フランチャイズの仕組みで「営業品質」を底上げする

個人の資質に頼らない仕組み化の重要性

ここまで述べてきた「適切なフォロー」を実践するには、個々の営業担当の資質に依存するのではなく、組織としての仕組みづくりが不可欠だ。顧客管理システム(CRM)を活用した追客の自動化、ヒアリングシートの標準化、ロールプレイ研修による接客スキルの均質化など、仕組みで底上げすることが成約率の安定につながる。

しかし、中小規模の不動産会社が独自にこれらの体制を構築するのは容易ではない。システムの導入コスト、研修プログラムの設計、最新の市場データの収集──いずれも経営資源が限られるなかでは大きな負担となる。

フランチャイズ加盟という選択肢

こうした課題に対するひとつの解決策が、実績のあるフランチャイズへの加盟だ。たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、賃貸仲介業に特化した25年以上のノウハウをもとに、加盟店への業務支援を多角的に展開している。

大手不動産テック企業の基幹システムを採用したコンバータ・顧客管理・契約管理の仕組みがロイヤリティに含まれており、追客業務の効率化と品質向上を同時に実現できる。また、本部主催のベンチマークセミナーを通じて、直営店・他加盟店の成功事例を定期的に共有することで、現場の営業力を継続的にアップデートする体制が整っている。

ブランド力を背景にした集客支援や反響送客の仕組みも活用でき、「適切なフォロー」に集中するための時間と環境を確保しやすい点は、独立店にはない大きなアドバンテージといえるだろう。


まとめ:「顧客の味方」になれた会社だけが選ばれる

2025年の調査データは、賃貸市場における競争の構図が大きく変わりつつあることを示している。問い合わせ先は平均3.3社、比較物件数は平均5.8物件。顧客はかつてないほど多くの選択肢を手にし、不動産会社を冷静に見比べている。

この環境下で選ばれるのは、「最も営業が上手い会社」ではなく、「最も顧客の立場に立てる会社」だ。しつこい営業と適切なフォローの境界線は、つまるところ「その行動は誰のためか」という一点に集約される。

自社の売上のための連絡か、顧客の住まい探しを支援するための連絡か。この問いに対する答えが、日々の一本のメール、一回の電話に現れる。そして顧客は、その違いを驚くほど正確に見抜いている。

「しつこい」と言われる会社から、「また相談したい」と言われる会社へ。その転換は、壮大な改革ではなく、明日の一通のメールから始まる。