不動産追客のコツ|成約率を2倍にする”売り込まない”信頼構築術【賃貸仲介の現場から】

大手不動産ポータルサイトに物件を掲載し、反響は一定数ある。それでも成約につながらない――。賃貸仲介の現場で、そんなもどかしさを感じている方は少なくないはずだ。
反響からの成約率は業界平均で約10%といわれている。裏を返せば、問い合わせをしてきた顧客のうち9割がどこか別の不動産会社で契約しているか、あるいは物件探し自体を中断しているということだ。この「取りこぼし」の多くは、追客の質とタイミングに起因する。
近年、検討期間の長期化が顕著になっている。リクルートの調査によれば、物件購入を思い立ってから契約するまでの平均検討期間は約10.9カ月に達し、15カ月以上かける人も20%を超えた。賃貸においても、スマートフォンでの入念な情報収集が当たり前となり、顧客は「比較検討のプロ」ともいえる存在になりつつある。
この記事では、賃貸仲介業者が今日から実践できる追客のコツを、反響対応の初動から長期フォローまで体系的に解説する。セールス感を押さえながら信頼関係を構築し、「この人に任せたい」と思わせるコミュニケーション術を、データと現場の知見に基づいて掘り下げていく。
追客とは何か|不動産賃貸仲介で追客が重要な理由
追客(ついきゃく)とは、問い合わせや来店などの反響があった顧客に対して、継続的にアプローチをかける営業活動のことだ。不動産業界では古くから使われてきた言葉だが、近年その重要性がかつてないほど高まっている。
その背景にあるのは、顧客の行動変化だ。国土交通省の「令和5年度 住宅市場動向調査報告書」によると、賃貸物件の入居者の約60%がインターネットで物件を探している。顧客は複数の不動産会社に同時に問い合わせるのが当たり前であり、最初に的確な対応をした会社と話を進める傾向がある。
つまり、反響があった段階では「検討候補の一つ」にすぎない自社を、いかにして「第一候補」に引き上げるか。それが追客の本質的な役割だ。
追客が成約率に与えるインパクトは大きい。CRM(顧客管理システム)を導入しLINEでの追客を徹底した不動産会社では、導入前と比べて来店率が1.6倍、成約率は2倍以上に伸びた事例も報告されている。追客は「やるかやらないか」ではなく、「どのようにやるか」で差がつく時代に入っている。
反響対応の初動|最初の5分で勝負が決まる
「即レス」が来店率を左右する
追客の成否を最も大きく左右するのは、実は追客そのものではなく「初動のスピード」だ。
反響から5分以内の連絡を意識すべきという声は業界内で増えている。ある仲介会社の実績データでは、反響後10分以内に電話した場合、その後の面談率・来店率・案内率が明らかに高い傾向が見られたという。反響から1時間以内に対応するだけでも顧客からの返信が約3倍になったという報告もある。
賃貸物件を探している顧客の多くは、問い合わせた瞬間が最もモチベーションの高い状態にある。時間が経てば経つほど、他社への問い合わせも進み、興味は分散していく。特に最近はスマートフォンからの反響が6割を超えるケースもあり、移動中やすきま時間に問い合わせをする顧客が増えている。このタイミングを逃さない体制づくりが不可欠だ。
最初の返信で「安心感」を届ける
即レスが難しい場面もある。そんなとき有効なのが、まず短いメッセージで「受け取りました」という安心感を伝えることだ。「お問い合わせありがとうございます。担当の○○が改めてご連絡いたします」という一文でも、顧客の印象は大きく変わる。
初回の電話やメールでは、「物件の押し売り」ではなく、「お客様の要望を伺いたい」という姿勢で臨むことが重要だ。ここで意識すべきは「話す」ことではなく「聴く」こと。顧客が何を求めているかを引き出すことが、その後の追客の精度を決定づける。
顧客を3つの温度感で分類する|追客の基本戦略
ホット・ウォーム・コールドの見極め
追客を成功させるための第一歩は、顧客を「温度感」で分類することだ。すべての顧客に同じアプローチをかけるのは非効率であるだけでなく、顧客の離反を招く原因にもなる。
一般的に、以下の3つに整理できる。
「ホット客」は来店予約済み、または具体的な希望条件が明確な顧客だ。引っ越し時期が迫っているケースが多く、電話やLINEでのダイレクトなコミュニケーションが有効になる。レスポンスの速さと物件提案の精度が勝負を分ける。
「ウォーム客」は問い合わせはしたものの、まだ来店には至っていない顧客だ。条件が固まりきっていないことが多く、情報提供を通じて自社への信頼感を醸成する段階にあたる。メールやLINEで、問い合わせ物件に類似する新着情報やエリアの暮らし情報を定期的に届けるのが効果的だ。
「コールド客」は反響はあったが反応が途絶えている顧客だ。今すぐの引っ越しニーズがないか、他社で決まった可能性もある。しかし完全に切り捨てるのは早計で、定期的なメルマガやステップメールで緩やかに接点を保つことで、ニーズが再燃したときに想起される存在になれる。
追客の手段を温度感に合わせて使い分ける
ホット客には電話を軸に、即時性の高いコミュニケーション。ウォーム客にはLINEやメールを中心に、パーソナライズされた情報提供。コールド客にはステップメールや一斉配信で、手間をかけすぎずに接点を維持する。この使い分けが、限られたリソースで最大の効果を出す鍵となる。
セールス感を消す追客メール・LINE術|5つの実践テクニック
追客において最も多い悩みが「セールス感が出すぎて嫌がられる」というものだ。ここでは、顧客との信頼関係を築きながら成約に近づける具体的なテクニックを紹介する。
テクニック1:件名・最初の一文で「あなただけ感」を出す
メールの開封率を左右するのは件名だ。「新着物件のご案内」のような汎用的な件名は、大量に届くメールの中に埋もれてしまう。
効果的な件名の例としては、「○○駅徒歩5分・ご希望のペット可物件が出ました」のように、顧客の希望条件に合致する具体的な情報を盛り込んだものが挙げられる。顧客は「自分のことをちゃんと覚えてくれている」と感じると、開封率が大幅に上がる。
テクニック2:物件情報+αの「お役立ち情報」を添える
物件情報だけを送り続けると、それは「営業メール」でしかない。ここに「+α」の生活情報を加えるだけで、メールの価値は格段に上がる。
例えば、「○○エリアは今月から新しいスーパーがオープンしました」「このマンションの周辺は治安が良く、夜道も明るいです」といった現地を知る者ならではの情報だ。物件スペックだけではわからない「暮らしのリアル」を伝えることで、「この人は本当にこのエリアに詳しいんだな」という信頼につながる。
テクニック3:質問は「1メール1つ」に絞る
追客メールでありがちな失敗が、一度に多くの質問を投げかけることだ。「ご希望のエリアは?」「予算は?」「間取りは?」「入居時期は?」と矢継ぎ早に聞かれると、顧客は面倒に感じて返信をやめてしまう。
1回のメールで聞くのは1つの質問に絞り、やり取りを重ねる中で徐々に情報を引き出していくのがコツだ。特にLINEでのコミュニケーションでは、短いメッセージのテンポのいいやり取りが返信率向上に直結する。
テクニック4:「追客しない追客」のタイミングを知る
意外に重要なのが、「あえて連絡しない」判断だ。引っ越しの検討を始めたばかりの段階で毎日連絡が来たら、顧客はうんざりしてしまう。
追客メールは4回以上送ることで返信や来店につながりやすいというデータがある一方で、頻度が高すぎると逆効果になるリスクもある。目安として、ウォーム客には週1〜2回程度の情報提供、コールド客には月1〜2回のペースが適切だ。季節のあいさつや地域のイベント情報に絡めた連絡は、営業色を薄めつつ接点を保てる効果的な手法だ。
テクニック5:営業担当者の「人柄」を見せる
顧客が不動産会社を選ぶ決め手の一つは「担当者への信頼感」だ。追客メールの署名に簡単な自己紹介や顔写真を添えるだけでも、顧客の安心感は大きく変わる。
「入社5年目で、○○エリアは300件以上ご案内しています」「休日は近所のカフェ巡りが趣味です」といったパーソナルな情報は、「この人に会ってみたい」という心理を生む。特にオンラインでのやり取りが中心の現代では、「顔の見える追客」の重要性が増している。
電話追客で差をつけるヒアリングの極意
「聴く8割・話す2割」を徹底する
電話追客で成果を出す営業担当者に共通しているのは、自分が話すよりも相手の話を「聴く」ことに徹している点だ。
追客電話の目的は「物件を売り込む」ことではなく、「顧客の本当のニーズを引き出す」ことにある。引っ越しの動機、いま住んでいる部屋への不満、新居に求める絶対条件と妥協できるポイント――これらの情報が引き出せれば、的確な物件提案が可能になり、成約率は飛躍的に向上する。
答えやすい質問から入る
いきなり「ご予算はおいくらですか?」と聞くのは、初対面でいきなり年収を聞くようなものだ。まずは「今のお住まいで気になっている点はありますか?」「通勤時間は何分くらいが理想ですか?」といった、答えやすく日常的な質問からスタートする。
会話が温まってくると、顧客は自然とより深い情報を話してくれるようになる。「実は転職が決まって…」「子どもが生まれるので…」といった背景事情がわかれば、物件提案の精度は格段に上がる。
トークスクリプトを「台本」ではなく「地図」として使う
トークスクリプトは有用なツールだが、一字一句読み上げるものではない。顧客の年齢層やニーズに応じた複数のパターンを用意し、会話の流れに応じて柔軟に切り替えるのが理想だ。
スクリプトは「台本」ではなく「地図」。目的地(ヒアリングしたい情報)は決まっているが、そこに至るルートは相手に合わせて変えていく。その柔軟さが、テンプレート的な追客との差を生む。
CRM・DXで追客を仕組み化する|属人化からの脱却
なぜ「仕組み化」が不可欠なのか
追客の成否が個人の営業スキルだけに依存している状態は、組織として危うい。エース営業マンが退職すれば、そのノウハウも顧客との関係性も一緒に失われてしまう。
近年、不動産業界でもCRM(顧客管理システム)の導入が急速に進んでいる。CRMを活用すれば、顧客情報の一元管理、追客履歴の共有、反響元の分析、自動追客メールの配信など、これまで個人の頭の中にあった情報と判断基準を「仕組み」として組織に定着させることができる。
「自動追客」と「個別追客」の最適バランス
追客の仕組み化で重要なのは、「自動追客」と「個別追客」のバランスだ。
CRMによる自動追客は、新着物件の自動配信やステップメールなど、定型的なアプローチを効率よく実行できる。これにより、手が回らなかった顧客層にも定期的な接触が可能になる。
一方で、自動追客だけでは画一的なアプローチになりがちだ。成約に近い顧客や条件が複雑な顧客に対しては、営業担当者による「個別追客」が欠かせない。自動追客で広くカバーしつつ、反応のあった顧客に対して個別にアプローチを強化するという二段構えが、現時点での最適解といえるだろう。
LINE活用で追客の「届き方」が変わる
追客のチャネルとしてLINEの重要性が急速に高まっている。メールと比較してLINEは閲覧率が約4倍ともいわれ、顧客とのコミュニケーションスピードも格段に速い。
実際にLINEで顧客の約7割とやり取りしている不動産会社もあり、追客の主戦場がメールからLINEへと移行しつつある。来店時やWeb問い合わせ時にLINE登録を促す動線をつくるだけで、その後の追客効率は大きく改善する。
長期追客で成果を出す|「忘れられない存在」になる方法
長期追客の目的は「売ること」ではない
すぐに成約しない顧客への長期追客は、多くの不動産会社が苦手とする領域だ。しかし、ここにこそ大きな商機が眠っている。
長期追客の目的は「売ること」ではなく、「常に顧客のそばに寄り添う存在であり続けること」だ。いつか引っ越しを決断するその瞬間に、真っ先に思い出してもらえる関係を築くことが目標になる。
「情報提供者」としてのポジションを確立する
長期追客で効果的なのは、物件情報以外の有益なコンテンツを定期的に届けることだ。たとえば、担当エリアの家賃相場の推移、新しくオープンした商業施設の情報、引っ越し時に使える節約術、賃貸契約で見落としがちなチェックポイントなど。
こうした情報は「営業メール」ではなく「お役立ちメール」として受け取られ、配信停止されにくい。顧客にとって「不動産のことで困ったら、まずこの人に聞いてみよう」という存在になれれば、追客は成功だ。
追客の効果測定と改善サイクルを回す
追客は「やって終わり」ではなく、効果を測定して改善し続けることが重要だ。メールの開封率、クリック率、返信率、来店率、成約率。これらの指標を定期的に確認し、効果が出ていないアプローチは改善する。
たとえば、「火曜日の夕方に送ったメールの開封率が高い」「物件写真を3枚以上添付した方がクリック率が上がる」といった傾向が見えてくれば、それが自社独自の追客ノウハウとして蓄積されていく。
追客力を組織ごと底上げするには|フランチャイズ活用という選択肢
個人の努力だけでは限界がある
ここまで紹介してきた追客のコツは、いずれも現場で明日から実践できるものだ。しかし正直なところ、個人の努力や1店舗の工夫だけで追客の仕組みを構築・維持していくことには限界がある。
業務システムの導入にはコストがかかる。CRMの運用にはノウハウが必要だ。追客のベストプラクティスを学ぶ機会も、日々の業務に追われる中では確保しにくい。こうした課題を感じている不動産会社にとって、一つの有力な選択肢になるのがフランチャイズへの加盟だ。
ハウスコムFCが提供する追客支援の仕組み
たとえば、賃貸仲介業を主たる事業として200店舗超の直営店を展開するハウスコムのフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システム(コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セット)がロイヤリティに含まれる形で提供される。これにより、CRM導入のコスト負担を抑えながら、組織的な追客体制を構築することが可能だ。
さらに、本部が主体となった反響送客による支援や、定期的なベンチマークセミナーの開催を通じて、直営店で蓄積されたリアルな追客ノウハウや成功事例を加盟店と共有している。「追客がうまくいっている店舗は、具体的に何をしているのか」というリアルな情報にアクセスできることは、自社単独では得られない大きなアドバンテージだ。
ブランド力の面でも、三大都市圏で認知度の高いハウスコムの看板は、顧客からの第一印象で優位性を発揮する。反響を獲得する段階からすでに差がつくことは、追客の成功確率にも直結する。
加盟店には本部スタッフが定期的に巡回し、店舗ごとの課題に応じたサポートを提供しているという点も見逃せない。追客の仕組みづくりに悩んでいる方は、こうしたフランチャイズの支援体制を一つの選択肢として検討する価値があるだろう。
まとめ|追客は「技術」ではなく「姿勢」
不動産の追客で最も大切なのは、テクニックではなく「この人の住まい探しを成功させたい」という姿勢だ。その姿勢が、反響後の即レスにあらわれ、ヒアリングの丁寧さにあらわれ、パーソナライズされた情報提供にあらわれる。
今回紹介したポイントを改めて整理すると、反響後5〜10分以内の初動対応を徹底すること、顧客を温度感で分類し手段を使い分けること、メールやLINEでは「売り込み」ではなく「お役立ち情報の提供者」として振る舞うこと、電話では「聴く」ことを8割にすること、CRMを活用して追客を仕組み化すること、そして長期追客では「忘れられない存在」を目指すこと。これらを一つひとつ実行に移すことで、成約率は着実に向上していくはずだ。
追客の質を高めることは、単に売上を伸ばすだけでなく、顧客満足度の向上にもつながる。「あの営業さんに出会えてよかった」と言われる追客を、ぜひ今日から目指してほしい。

