オンライン契約ニーズ3年連続増加が示す”選ばれる不動産会社”の条件|42.2%が利用希望、あなたの会社は対応できていますか?

「オンラインで契約まで完結させたい」——そう望む顧客が、もはや少数派ではなくなりつつある。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した最新の調査結果によると、賃貸物件の「オンライン契約」を利用したいと回答した人は全体の42.2%に達し、3年連続で増加した。2022年の調査開始時には35.8%だったこの数字は、わずか3年で6.4ポイントも上昇している。

この数字が意味するものは明確だ。顧客の約半数近くが「店舗に行かずに契約を完了させたい」と考えている時代に、デジタル対応ができていない不動産会社は、文字通り”選択肢から外される”リスクを抱えているということである。

本記事では、オンライン契約ニーズの拡大が不動産賃貸仲介業界にもたらす影響と、今すぐ取り組むべき対応策について、最新データをもとに解説する。


1. 数字が語る”顧客の本音”——オンライン契約ニーズ42.2%の衝撃

1-1. 3年連続増加の背景にあるもの

RSCの調査は、過去1年以内にインターネットで住まいを探した(または探している)一般消費者948人を対象に実施された。その結果、非対面型サービスの利用意向は以下のように推移している。

【オンライン契約の利用意向推移】

年度利用したい(合計)積極的に利用したい
2022年35.8%17.1%
2023年37.2%20.4%
2024年41.8%18.9%
2025年42.2%24.2%

注目すべきは、「積極的に利用したい」と回答した層が2025年には24.2%と、調査開始以来最高値を記録した点だ。単に「あれば使う」ではなく、「ぜひ使いたい」という能動的なニーズが急速に高まっている。

1-2. 賃貸と売買で異なる温度感

同調査では、賃貸検討者と売買検討者でオンライン契約への意向に明確な差があることも明らかになった。

  • 賃貸検討者:51.0%が利用希望(3年連続増加)
  • 売買検討者:30.9%が利用希望

賃貸市場では、実に過半数の顧客がオンライン契約を望んでいる。この数字は、賃貸仲介業者にとって看過できないシグナルである。若年層を中心とした賃貸顧客は、日常的にスマートフォンで買い物やサービス契約を完結させることに慣れている。住まい探しにおいても、同様の利便性を求めるのは自然な流れだろう。


2. IT重説は”当たり前”に——49.9%が利用希望

オンライン契約と並んで注目すべきは、「IT重説」(オンラインで重要事項説明を受けること)への利用意向だ。

2025年の調査では、IT重説を利用したいと回答した人は全体の49.9%に達し、こちらも調査開始以来の最高値を更新した。約半数の顧客が「重要事項説明はオンラインで受けたい」と考えている現実がある。

【IT重説の利用意向推移】

年度利用したい(合計)
2022年41.0%
2023年44.4%
2024年48.0%
2025年49.9%

2022年5月の宅建業法改正により、重要事項説明書の電子交付とオンラインでの説明が正式に認められた。法整備から約3年が経過し、顧客側の認知と受容が着実に進んでいることがこの数字から読み取れる。


3. 「店舗に行きたくない」のではなく「行く必要がなくなった」

3-1. 顧客行動の変化を示すもう一つのデータ

同調査では、物件を契約するまでに訪問した不動産会社数も調べている。

  • 賃貸:平均2.0社(前年比0.1社増加)
  • 売買:平均3.0社(前年比0.3社増加)

一見すると訪問社数は微増しているが、注目すべきは「1社のみ訪問」の割合だ。賃貸では45.6%、売買では24.1%の顧客が1社のみで契約を決めている。

つまり、顧客は複数社に問い合わせをしつつも、実際に店舗を訪問するのは「ここだ」と決めた1社だけ、というケースが増えている。オンラインでの情報収集段階で”ふるい落とし”が行われ、実際の来店時にはほぼ契約の意思が固まっている——そんな顧客行動の変化が見て取れる。

3-2. 問い合わせ社数は過去最多

一方で、物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は増加傾向にある。

  • 賃貸:平均3.3社(2015年以降で最多)
  • 売買:平均3.8社(前年比0.8社増加)

賃貸では「5社以上」に問い合わせた層が21.0%に達し、複数社を比較検討する傾向が強まっている。

この数字が示すのは、**「問い合わせはするが、訪問するかどうかは対応次第」**という顧客心理だ。メール返信のスピード、LINEでのやり取りへの対応、オンライン内見の可否——こうした”デジタル接点”での対応が、来店獲得の分岐点になっている。


4. 対応できない会社が直面する3つのリスク

リスク1:問い合わせ段階での機会損失

「オンライン契約に対応していますか?」——この質問に「いいえ」と答えた瞬間、顧客は別の会社を探し始める。42.2%がオンライン契約を希望している現状では、対応できないこと自体が競争上の不利となる。

リスク2:遠方顧客・転勤族の取りこぼし

転勤や進学で遠方から引っ越してくる顧客にとって、契約のためだけに現地を訪れるのは大きな負担だ。オンライン契約に対応している会社を優先的に選ぶのは当然の流れであり、この層を取りこぼすことは売上機会の損失に直結する。

リスク3:業務効率の格差拡大

電子契約を導入した会社では、契約業務にかかる時間が大幅に短縮されている。書類の印刷・郵送・保管にかかるコストと手間がなくなり、その分を顧客対応や物件紹介に充てられる。デジタル化を進めた会社と進めていない会社では、業務効率の差が年々開いていく。


5. 今すぐ始められるデジタル対応の第一歩

5-1. IT重説の導入から始める

オンライン契約の前段階として、まずはIT重説(オンライン重要事項説明)の導入を検討したい。必要なのはWeb会議ツールと、顧客への事前説明・同意取得の仕組みだけだ。

IT重説を導入することで得られるメリットは以下の通り。

  • 顧客の来店回数を減らせる(物件内見時と契約時の2回→内見時の1回)
  • 夜間や土日でも重要事項説明が可能に
  • 遠方の顧客にも対応できる

5-2. 電子契約システムの選定

2022年5月の宅建業法改正により、賃貸借契約書の電子交付が正式に認められた。現在、不動産業界に特化した電子契約システムが複数登場しており、導入のハードルは年々下がっている。

電子契約システム導入のポイントは3つある。

  1. 宅建業法への準拠:国土交通省のマニュアルに沿った運用ができるか
  2. 顧客側の使いやすさ:高齢者でも操作できるシンプルな設計か
  3. 既存システムとの連携:顧客管理システムや基幹システムと連携できるか

5-3. 社内体制の整備

システムを導入しても、使いこなせなければ意味がない。IT重説や電子契約を円滑に運用するためには、以下の社内体制整備が必要だ。

  • 宅地建物取引士へのオンライン対応研修
  • 顧客への説明マニュアルの整備
  • トラブル発生時の対応フローの確立

6. フランチャイズ加盟という選択肢——システム投資を抑えながらデジタル化を実現

「デジタル化の必要性はわかっている。しかし、システム導入のコストや運用ノウハウがない」——中小の不動産会社が抱える共通の悩みだ。

こうした課題を解決する選択肢の一つが、フランチャイズへの加盟である。

たとえば、賃貸仲介業をコア事業として約200店舗の直営店を展開するハウスコムは、フランチャイズ加盟店向けに業務システムの提供を行っている。大手不動産テック企業の基幹システムを採用したコンバータ・顧客管理・契約管理の3点セットが利用でき、利用料金はロイヤリティに含まれるため、個別にシステム投資を行う必要がない。

フランチャイズ加盟のメリットは、システム面だけではない。

  • ブランド力:関東・東海・近畿の三大都市圏で認知度の高いブランドを活用できる
  • 反響送客:本部からの問い合わせ紹介により、集客力を強化できる
  • ノウハウ共有:直営店で培われた接客・営業ノウハウを学べる
  • 定期的なサポート:本部スタッフによる巡回(リアル/オンライン)で課題解決を支援

デジタル化への対応は、単独で行うよりも、ノウハウとシステムを持つ本部と連携した方が圧倒的に効率的だ。


7. 「営業時間内の連絡」が顧客の負担に——見落とされがちなニーズ

RSCの調査では、顧客が不動産会社に求めるものとして「丁寧・親切な対応」「正確な物件情報の提供」が上位に挙がっている。しかし、別の調査結果も見逃せない。

アットホームが2024年に実施した調査によると、賃貸契約・更新・解約のすべてにおいて、顧客が「大変だった」「面倒だった」と感じたことの上位に**「営業時間内に不動産会社に連絡すること」**がランクインしている。

働きながら部屋を探す顧客にとって、平日の日中に不動産会社に電話をするのは簡単ではない。メールやLINEでの問い合わせに迅速に対応できる体制、夜間や休日でもIT重説を実施できる体制——こうした「顧客の都合に合わせた対応」が、選ばれる不動産会社の条件になりつつある。


8. まとめ——デジタル対応は「差別化」から「必須条件」へ

オンライン契約ニーズ42.2%、IT重説利用希望49.9%——これらの数字は、顧客の期待値がすでに変わっていることを示している。

かつては「オンライン対応ができる」ことが競合との差別化ポイントだった。しかし、約半数の顧客がそれを望んでいる現在、デジタル対応は**「あれば選ばれる」から「なければ選ばれない」**へとフェーズが移行している。

とはいえ、すべてを自社で整備する必要はない。業務システムの選定、運用ノウハウの習得、社内教育——これらを効率的に進める方法として、フランチャイズ加盟は有力な選択肢となる。

顧客ニーズの変化は待ってくれない。3年連続で増加しているこのトレンドは、2026年以降も続くと見られている。今、対応を始めるか、それとも先送りにするか——その判断が、3年後の経営に大きな差をもたらすことになるだろう。



参考資料
・不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月発表)
・アットホーム株式会社「書類のオンライン化・電子サインに関する実態調査 2024」