【成約率が2倍変わる】賃貸仲介のプロが実践する「周辺相場説明術」──顧客に家賃の妥当性を納得させる7つのデータ活用テクニック

「この物件、家賃高くないですか?」
この質問に、あなたはどう答えているだろうか。
言葉を濁してしまったり、「人気エリアですから」と曖昧に返してしまったり──そんな経験を持つ不動産営業担当者は少なくない。しかし、この「家賃への疑問」に対する対応力こそが、成約率を大きく左右する分岐点となっている事実をご存じだろうか。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した最新調査によれば、物件を契約する際に顧客が最も重視するポイントは「家賃・価格」で、賃貸・売買を問わずトップに君臨している。つまり、価格に対する納得感の提供こそが、現代の賃貸仲介ビジネスにおける最重要課題なのである。
本稿では、データを武器に顧客の信頼を勝ち取り、成約率を飛躍的に向上させる「周辺相場説明術」の全技法を公開する。明日からの営業に即活かせる実践的ノウハウを、ぜひ最後まで読み進めていただきたい。
「家賃・価格」は顧客の最大関心事──最新データが示す厳然たる事実
契約決定要因の第1位は「家賃・価格」
RSCの2025年度調査で明らかになった顧客行動の実態は、不動産仲介業者にとって示唆に富んでいる。
「購入や賃貸借契約する際に気にするポイント」を尋ねた設問では、「家賃・価格」が全体トップ(67.4%)に立った。「特に重視するポイント」でも同項目が首位(28.5%)を維持しており、価格に対する顧客の関心の高さが数字で裏付けられている。
この傾向は賃貸契約者に限定しても同様で、「家賃・価格」は71.6%の顧客が気にするポイントとして挙げ、特に重視する項目としても22.2%で1位となっている。
比較検討の激化──過去11年で最多の問い合わせ社数
さらに注目すべきは、顧客の比較検討行動の激化である。
同調査によると、物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は平均3.5社で、前年より0.5社増加。とりわけ賃貸では平均3.3社と、2015年以降で最多を記録した。「5社以上」に問い合わせた顧客は全体の21.0%に達しており、従来以上に厳しい競争環境にあることが見て取れる。
問い合わせた物件数も平均5.5物件(前年比1.1物件増加)。賃貸では5.6物件と過去最高を更新し、「6物件以上」を比較した層が37.6%を占めた。
この数字が意味するところは明確だ。顧客は複数の不動産会社を訪問し、多数の物件を比較検討したうえで、最終的な契約先を選んでいる。価格に対する説明力で他社に劣れば、その瞬間に選ばれる候補から脱落するリスクを負うことになる。
周辺相場データの収集法──説得力ある説明の土台を作る
価格の妥当性を説明するには、まず「根拠となるデータ」を手元に揃えることが不可欠である。ここでは、実務で即活用できるデータ収集の具体的手法を解説する。
1. 大手不動産ポータルサイトの活用
最も手軽かつ効果的な方法が、大手不動産ポータルサイトでの相場調査である。
同一エリア・同一間取り・類似築年数の物件をリストアップし、家賃帯の分布を把握する。この際、以下の項目を軸に比較対象を絞り込むことで、より精度の高い相場観を得ることができる。
比較軸として押さえるべき7要素
- 最寄り駅からの徒歩分数
- 築年数(5年刻みで分類)
- 建物構造(RC造・鉄骨造・木造)
- 間取り・専有面積
- 階数・向き
- 設備グレード(オートロック、宅配ボックス、追い焚き機能など)
- 周辺環境(商業施設、学校、病院へのアクセス)
これらの要素を横並びで比較できるよう、Excelなどで一覧表を作成しておくと、顧客への説明時に威力を発揮する。
2. 成約事例データベースの構築
募集中物件の掲載価格だけでなく、「実際にいくらで成約したか」という実績データは説得力が段違いである。
自社で成約した物件の情報を蓄積し、「このエリアの1LDKは、過去1年間で平均◯万円で成約しています」と具体的な数字を示せれば、顧客の納得度は飛躍的に高まる。
業界団体や大手フランチャイズ本部が提供する成約事例データベースを活用するのも一手である。ハウスコムフランチャイズでは、本部が業務提携を通じて各種支援サービスを展開しており、こうした情報基盤の共有が加盟店の営業力強化に寄与している。
3. 地域特性に関する独自情報の収集
数字だけでは伝わりにくい「地域の価値」を言語化する作業も重要である。
例えば、「この地域は今年◯◯駅の新規開業が予定されており、利便性が向上する見込みです」「近隣に◯◯大学があるため、学生需要が安定しています」といった情報は、家賃水準を支える背景要因として顧客に伝えることができる。
地元の開発計画、商業施設の出店動向、人口動態の推移など、地域に根差した情報を日頃から収集しておくことで、他社との差別化につながる。
顧客を納得させる「データ提示」7つのテクニック
データを揃えても、提示の仕方次第で顧客の反応は大きく異なる。ここからは、実際の接客シーンで効果を発揮する説明テクニックを7つ紹介する。
テクニック1:比較物件を「見える化」する
「このエリアの相場は◯万円です」と口頭で伝えるだけでは、顧客は納得しにくい。
比較対象となる3~5物件を一覧表にまとめ、提案物件と並べて見せることで、価格の位置づけが直感的に伝わる。
【提示シート例】
| 物件名 | 家賃 | 管理費 | 間取り | 築年 | 駅徒歩 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A物件 | 8.5万円 | 5,000円 | 1LDK | 2018年 | 5分 | オートロック |
| B物件 | 8.0万円 | 6,000円 | 1LDK | 2020年 | 8分 | 宅配ボックス |
| ご提案物件 | 8.3万円 | 5,000円 | 1LDK | 2019年 | 4分 | オートロック・宅配ボックス両備 |
| C物件 | 8.8万円 | 4,000円 | 1LDK | 2021年 | 6分 | ペット可 |
このように視覚化することで、「なぜこの価格なのか」が一目瞭然となる。
テクニック2:「坪単価」「㎡単価」で比較する
間取りや面積が異なる物件を比較する際は、家賃の絶対額ではなく「㎡あたりの単価」で説明すると公平性が伝わる。
「この物件は25㎡で8万円、つまり1㎡あたり3,200円です。周辺相場の㎡単価は3,000円~3,500円ですので、中央値に位置しています」
このような説明により、顧客は自分の予算感と照らし合わせながら判断しやすくなる。
テクニック3:「価格の内訳」を分解して説明する
家賃の総額だけでなく、その構成要素を分解して説明するアプローチも有効である。
「この8.5万円の家賃は、立地条件で約7万円、築浅のプレミアムで約8,000円、オートロック・宅配ボックスなどの設備で約7,000円という内訳で算出されています」
このように価格の根拠を因数分解することで、「高い」という漠然とした印象を「妥当な理由がある」という納得感に転換できる。
テクニック4:「過去の相場推移」をグラフで示す
価格の妥当性を時間軸で説明するのも効果的である。
「このエリアの家賃相場は、3年前に比べて約5%上昇しています。新駅開業と再開発の影響で、今後も上昇傾向が続くと予測されています」
過去5年程度の相場推移をグラフ化し、提案物件の価格がトレンドの中でどこに位置するかを視覚的に示すことで、将来を見据えた判断材料を提供できる。
テクニック5:「同一物件の過去家賃」と比較する
新着物件や空室期間が長い物件の場合、以前の入居者がいくらで借りていたかという情報は強力な説得材料となる。
「前入居者の方は8.8万円でお住まいでしたが、オーナー様のご意向で今回は8.3万円に見直されています。周辺相場と比較しても、お得な設定になっています」
このアプローチは、値下げ物件の「お買い得感」を伝える際に特に有効だ。
テクニック6:「トータルコスト」で比較する
家賃だけでなく、初期費用・更新料・退去時費用まで含めた「トータルコスト」で比較提案する姿勢は、顧客の信頼獲得につながる。
「A物件は家賃7.8万円ですが、礼金2ヶ月・更新料1ヶ月がかかります。ご提案物件は家賃8.3万円ですが、礼金なし・更新料なしです。2年間のトータルコストで比較すると、ご提案物件の方が約15万円お得になります」
顧客の立場に立った提案は、「この営業担当者は信頼できる」という印象形成にも寄与する。
テクニック7:「価格以上の価値」を具体化する
最終的に顧客が求めているのは、「払う金額に見合う価値があるかどうか」の確信である。
RSCの調査では、契約時に重視するポイントとして「家賃・価格」に次いで「路線の利便性」(44.4%)、「部屋数・間取り」(38.0%)、「建物・部屋の綺麗さ」(38.0%)が上位に並んだ。これらの要素と価格のバランスを丁寧に説明することで、「この家賃は納得できる」という結論に導くことができる。
「駅徒歩4分という立地は、このエリアでは希少です。徒歩10分の物件と比較して月額5,000円の差がありますが、1日10分×60日で600分、つまり年間10時間の時間価値を得られると考えれば、十分にペイする投資と言えるのではないでしょうか」
このような「価値の言語化」ができる営業担当者は、顧客から選ばれる存在となる。
不動産会社に求められる「情報の正確性」と「迅速な対応」
RSCの調査では、顧客が不動産会社に求めるものとして「礼儀正しい・丁寧な対応」(71.5%)がトップに立ち、「正確な物件情報の提供」(51.4%)、「問合せに対する迅速な対応」(44.4%)が続いた。
ここから読み取れるのは、顧客が求めているのは「誠実で信頼できるパートナー」であるということだ。周辺相場データを活用した価格説明は、この「信頼の証明」として機能する。
「なぜこの家賃なのか」を根拠をもって説明できる不動産会社は、顧客の目に「プロフェッショナル」と映る。データに基づく説明力は、単なる営業スキルを超えた「競争優位の源泉」なのである。
成約率向上を支える「組織的な情報基盤」の重要性
個々の営業担当者のスキル向上はもちろん重要だが、組織として情報基盤を整備することで、店舗全体の営業力を底上げすることができる。
成約事例データベースの共有、相場情報の定期更新、説明ツールの標準化──これらの取り組みは、属人的なノウハウを組織知に転換し、人材の入れ替わりがあっても一定水準の接客品質を維持することを可能にする。
フランチャイズに加盟している不動産会社であれば、本部が提供するシステムやノウハウを活用することで、こうした情報基盤を効率的に構築できる。ハウスコムフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用し、コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セットを加盟店に提供している。利用料金はロイヤリティに含まれるため、業務支援と運営費用改善の両面でメリットを享受できる。
また、定期的に開催される加盟店会合では、各店舗の成功事例やノウハウが共有され、効果的な店舗運営のヒントを得ることができる。本部主催のベンチマークセミナーでは、直営店のノウハウに加え、他の不動産業者のリアルな実態も共有されており、継続的な成長を支援する体制が整っている。
まとめ──データを武器に「選ばれる不動産会社」へ
顧客が複数の不動産会社を比較検討することが当たり前となった今日、「家賃の妥当性」を説得力をもって説明できる能力は、成約率を左右する決定的な要因となっている。
本稿で紹介したテクニックを実践に移すことで、「この営業担当者の説明なら納得できる」「この会社に任せたい」という顧客の信頼を勝ち取ることができる。
本稿のポイント
- 顧客の最重要関心事は「家賃・価格」。納得感の提供が成約率向上の鍵
- 周辺相場データは「比較表の見える化」「坪単価での比較」など、提示方法を工夫することで説得力が増す
- 価格の内訳分解、過去の相場推移、トータルコスト比較など、多角的なアプローチで顧客の疑問に応える
- 組織的な情報基盤の整備が、店舗全体の営業力を底上げする
顧客から選ばれる不動産会社になるために、データを武器にした「周辺相場説明術」を、ぜひ明日からの営業に取り入れていただきたい。
本記事は、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果を参照しています。


