【検討期間3ヶ月超が約5割】長期化時代の賃貸仲介で”選ばれ続ける”定期連絡の技術──競合に顧客を奪われない7つのフォロー戦略

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した調査によると、賃貸物件を契約するまでに1ヶ月以上かける顧客は全体の約5割に達し、前年から6ポイントも増加した。売買においても3ヶ月以上検討する層が約5割を占め、いずれも長期化の傾向が顕著だ。さらに、問い合わせる不動産会社の数は平均3.5社と過去最多水準を記録している。
つまり、今や顧客は「じっくり比較検討する」のが当たり前であり、最初に問い合わせた1社だけで契約を決めることは稀になりつつある。この状況下で成約率を維持・向上させるためには、検討期間中の継続的なコミュニケーション——いわゆる「追客」の質が決定的な差を生む。
本記事では、長期化する顧客を競合他社に奪われないための「定期連絡の技術」を、データに基づく根拠と現場で即実践できる7つの戦略として解説する。読み終えたその日から使える具体的なTipsを多数盛り込んでいるので、ぜひ最後までご覧いただきたい。
検討期間の長期化が不動産仲介業に突きつける課題
賃貸・売買ともに「即決」は過去のもの
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の「不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2025年)によれば、賃貸物件の契約までに1ヶ月以上を要した顧客の割合は49.3%に達した。これは前年比で6ポイントの増加であり、直近5年では2021年に次ぐ高水準である。
売買においても同様の傾向が見られる。3ヶ月以上の検討期間を経て契約に至った顧客は49.6%と、前年から4.4ポイント上昇した。かつては「物件を見たらその場で決める」顧客も珍しくなかったが、今やそうした即決層は少数派となっている。
問い合わせ会社数は過去11年で最多
検討期間の長期化と連動して、顧客が問い合わせる不動産会社の数も増加している。2025年調査では、契約までに問い合わせた会社数は平均3.5社で、前年から0.6社増加した。特に賃貸では平均3.3社と2015年以降で最多を記録。「5社以上」に問い合わせた顧客の割合も21.0%に達している。
この数字が示すのは、顧客があなたの会社だけでなく、複数の競合会社とも同時並行でやり取りしているという現実だ。最初の問い合わせで好印象を与えたとしても、その後のフォローが疎かになれば、簡単に他社に流れてしまう。
なぜ「定期連絡」が競合との差別化になるのか
顧客満足度調査が明かす”選ばれる会社”の条件
同じRSC調査の「不動産会社の対応で満足だったこと」の項目を見ると、興味深い傾向が浮かび上がる。
1位は「問い合わせに対するレスポンスの早さ」で71.5%。2位は「こちらの都合を優先してくれた」で51.4%。これらはいずれも「顧客の時間軸に寄り添う姿勢」と言い換えられる。
一方、不満だったこととして「問い合わせをしたら『その物件はもうない』と言われた」が上位に挙がっている。これは物件情報の鮮度管理の問題だが、見方を変えれば、顧客が長期間検討している間に適切な情報更新や代替提案がなされなかったことへの不満とも解釈できる。
「待ち」の姿勢では顧客は離れる
検討期間が長期化するほど、顧客の関心は移ろいやすくなる。最初に問い合わせたときは「この物件がいい」と思っていても、1週間、2週間と経つうちに「他にもっと良い物件があるのでは」という気持ちが芽生えてくる。
そのとき、他社から魅力的な物件提案や丁寧なフォローがあれば、顧客の心は簡単に動く。逆に、最初に問い合わせた会社が「連絡がない=興味がなくなった」と判断して放置すれば、せっかくの見込み客を競合に譲り渡すことになる。
定期連絡とは、この「顧客の心変わり」が起きるタイミングで、自社の存在を思い出させ、信頼関係を維持・強化するための戦略的アプローチなのだ。
検討期間中の定期連絡で差をつける7つの実践戦略
戦略1:初回接触から3日以内に「セカンドコンタクト」を取る
最初の問い合わせ対応で終わりではない。初回接触から3日以内に、改めて連絡を入れることが重要だ。
このセカンドコンタクトの目的は、物件の詳細説明ではなく「顧客の状況確認」にある。「その後、ご検討はいかがですか?」「何かご不明な点はありませんでしたか?」といったシンプルな問いかけで十分だ。
RSC調査では「問い合わせに対するレスポンスの早さ」が顧客満足度の最上位に挙がっている。最初の返信が早いだけでなく、その後の追跡連絡も迅速であることで、「この会社は対応が丁寧だ」という印象を強化できる。
【実践Tips】
- 初回問い合わせ当日:即日返信(目標30分以内)
- 3日目:状況確認の連絡(電話またはメール)
- 内容は短く、相手の負担にならないトーンで
戦略2:「新着物件」ではなく「あなた向けの物件」を提案する
定期連絡で最もやってはいけないのが、自社の新着物件を一方的に送りつけることだ。「とりあえず送っておこう」という姿勢は、顧客に「自分のことを理解していない」という印象を与える。
RSC調査によれば、不動産会社に求めるものの上位には「物件に対する詳しい説明」「正確な物件情報の提供」が挙がっている。つまり顧客は「量」より「質」を求めているのだ。
初回のヒアリングで把握した条件(予算、エリア、間取り、こだわりポイントなど)をもとに、「○○様の条件に合う物件が新たに出ました」と、パーソナライズされた提案をすることで、「この担当者は自分のことを覚えてくれている」という信頼感を生むことができる。
【実践Tips】
- 顧客ごとの希望条件をCRMや顧客管理シートに記録
- 新着物件が出たら、該当顧客を自動で抽出できる仕組みを構築
- 提案メールの件名に顧客の希望条件を入れる(例:「○○駅徒歩5分以内・2LDKの新着物件」)
戦略3:物件情報以外の「お役立ち情報」を提供する
検討期間が長くなると、顧客も物件情報ばかりでは疲れてくる。そこで効果的なのが、物件以外の情報提供だ。
RSC調査の「物件情報以外に必要だと思う情報」では、「周辺環境情報」が67.3%でトップ。続いて「治安の良し悪し情報」が55.3%、「地盤の強さ(災害リスク)」が55.9%と続く。
これらの情報を定期連絡に織り交ぜることで、「物件を売り込む営業」ではなく「住まい探しのパートナー」としてのポジションを確立できる。
【実践Tips】
- 希望エリアの周辺施設マップを作成して送付
- 「○○エリアの治安情報」「ハザードマップの見方」などのミニコラムを配信
- 季節に応じた情報(引っ越しの繁忙期対策、初期費用の相場変動など)を提供
戦略4:連絡頻度は「顧客の検討フェーズ」に合わせる
定期連絡の適切な頻度は、顧客の検討段階によって異なる。一律に「週1回」と決めてしまうと、急いでいる顧客には少なすぎ、ゆっくり検討したい顧客には多すぎる。
顧客を以下の3フェーズに分類し、それぞれに適した連絡頻度を設定するとよい。
フェーズA:情報収集段階(検討開始〜2週間)
- 連絡頻度:3〜4日に1回
- 内容:希望条件の確認、候補物件の提案
フェーズB:比較検討段階(2週間〜1ヶ月)
- 連絡頻度:週1回
- 内容:内見の提案、周辺情報の提供、他の顧客動向の共有
フェーズC:長期検討段階(1ヶ月以上)
- 連絡頻度:2週間に1回
- 内容:新着物件の提案、市場動向の共有、状況確認
【実践Tips】
- 初回ヒアリング時に「いつ頃までにお引っ越しをお考えですか?」と時期を確認
- CRMに検討フェーズを記録し、フェーズに応じたテンプレートを用意
- フェーズの移行タイミングを見極めるため、顧客の反応を細かく観察
戦略5:電話・メール・LINEを「使い分ける」
連絡手段の選択も、定期連絡の成否を左右する重要な要素だ。RSC調査では、顧客満足度の高い項目に「こちらの都合を優先してくれた」が挙がっている。これは連絡手段の選択にも当てはまる。
- 電話:緊急性の高い情報(人気物件の空き状況など)、複雑な説明が必要な場合
- メール:詳細な物件情報、書面として残したい内容
- LINE・SMS:気軽な状況確認、リマインド
初回ヒアリング時に「ご連絡はどの方法がご都合よろしいですか?」と確認しておくことで、顧客ごとの最適な連絡手段を把握できる。
【実践Tips】
- 顧客ごとに「連絡希望手段」「連絡希望時間帯」を記録
- 平日日中が難しい顧客には、夜間・休日のメール連絡を活用
- LINEを活用する場合は、会社の公式アカウントを用意し、プライベートと切り分け
戦略6:「沈黙している顧客」へのアプローチを諦めない
返信がない顧客に対して、「興味がなくなったのだろう」と諦めてしまう営業担当は多い。しかし、検討期間が長期化している現状では、「返信がない=興味がない」とは限らない。
仕事が忙しい、他の物件と比較中、家族と相談中——さまざまな理由で返信が遅れることはある。重要なのは、しつこくならない範囲で接点を維持し続けることだ。
【実践Tips】
- 3回連絡して返信がなくても、2週間後に「その後いかがですか?」と1回だけフォロー
- 返信がない顧客には、売り込み要素を排除した情報提供型のメールを送る
- 最終連絡から1ヶ月経過したら「長期検討リスト」に移動し、月1回の一斉配信で接点を維持
戦略7:内見後の「振り返りフォロー」を徹底する
内見まで進んだ顧客は、成約に最も近い存在だ。しかし、内見後のフォローが不十分だと、せっかくの見込み客を逃すことになる。
RSC調査では、不動産会社への不満として「契約の意思決定を急かされた」が上位に挙がっている。内見後すぐに「いかがでしたか?決めましょう!」と迫るのは逆効果だ。
内見後のフォローでは、まず顧客の感想を丁寧に聞き取ることから始める。良かった点、気になった点を整理し、気になる点については解決策を提案する。そのうえで、「ご検討の結果をお聞かせください。焦らずゆっくりお考えください」と伝えることで、顧客に安心感を与えられる。
【実践Tips】
- 内見当日中に「本日はありがとうございました」のお礼連絡
- 翌日〜3日以内に「ご感想はいかがでしたか?」のフォロー連絡
- 気になる点があれば、解決策(例:騒音が気になる→防音カーテンの提案)を添えて返信
よくある失敗パターンと改善策
失敗1:一方的な物件紹介の連発
問題点:顧客の条件を無視した物件を大量に送りつけ、「しつこい営業」と思われる
改善策:顧客の希望条件を正確に把握し、条件に合致した物件のみを厳選して提案。量より質を重視する。
失敗2:レスポンスの遅さ
問題点:問い合わせから返信まで数日かかり、その間に競合に流れる
改善策:問い合わせ対応の目標時間を設定(例:30分以内)。営業時間外の問い合わせには自動返信で「翌営業日にご連絡します」と伝える。
失敗3:「その物件はもうありません」で終わる
問題点:問い合わせ物件が成約済みの場合、それだけ伝えて終了してしまう
改善策:類似条件の代替物件を必ず2〜3件提案する。「こちらの物件は成約となりましたが、同様の条件でこちらの物件はいかがでしょうか」と提案につなげる。
失敗4:フォロー記録を残さない
問題点:誰がいつ何を連絡したか把握できず、同じ内容を何度も送ってしまう
改善策:CRMや顧客管理シートに連絡履歴を必ず記録。チーム内で情報を共有し、担当者不在時もスムーズに対応できる体制を構築する。
定期連絡を仕組み化するためのツール活用
長期検討顧客への定期連絡を個人の努力だけで続けるのは困難だ。仕組み化のためには、以下のようなツール・システムの活用が効果的である。
顧客管理システム(CRM)の活用
顧客ごとの希望条件、連絡履歴、検討フェーズを一元管理することで、「いつ誰に何を連絡すべきか」が明確になる。担当者が変わっても、過去のやり取りを引き継げるため、顧客に同じことを何度も聞く必要がなくなる。
物件情報の自動マッチング
顧客の希望条件と新着物件を自動でマッチングするシステムを導入すれば、条件に合う物件が出た際に即座に連絡できる。手作業で物件を探す時間を削減し、より多くの顧客に質の高い提案ができるようになる。
テンプレートの活用
定期連絡の内容を一から考えるのは時間がかかる。フェーズごと、シチュエーションごとのテンプレートを用意しておけば、効率的に連絡を送れるようになる。ただし、テンプレートをそのまま使うのではなく、顧客ごとにカスタマイズすることを忘れずに。
フランチャイズ加盟という選択肢
ここまで解説してきた定期連絡の仕組み化を、自社単独で実現するのは容易ではない。CRMの導入・運用、業務フローの構築、スタッフの教育——いずれも時間とコストがかかる。
こうした課題に対して、フランチャイズへの加盟という選択肢がある。
たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、加盟店向けに大手不動産テック企業の基幹システムを提供しており、コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セットをロイヤリティに含む形で利用できる。また、本部スタッフが定期的に巡回し、加盟店の課題解決をサポートする体制も整っている。
さらに、本部主催のベンチマークセミナーでは、直営店や他の加盟店のノウハウを共有する機会があり、効果的な追客手法を学ぶことができる。
「自社の強みを活かしながら、業務効率化と収益向上を両立したい」と考える不動産会社にとって、こうしたフランチャイズの支援体制は大きな武器となるだろう。
まとめ:長期検討時代に”選ばれ続ける”会社になるために
不動産賃貸仲介業を取り巻く環境は、大きく変化している。顧客の検討期間は長期化し、問い合わせる会社数は増加している。この状況下では、「最初の問い合わせ対応だけ良ければいい」という考えは通用しない。
検討期間を通じて継続的なコミュニケーションを取り、顧客との信頼関係を築き続けること——それが、競合に顧客を奪われず、成約率を維持・向上させるための鍵となる。
本記事で紹介した7つの戦略を参考に、ぜひ自社の追客プロセスを見直していただきたい。
- 初回接触から3日以内に「セカンドコンタクト」を取る
- 「新着物件」ではなく「あなた向けの物件」を提案する
- 物件情報以外の「お役立ち情報」を提供する
- 連絡頻度は「顧客の検討フェーズ」に合わせる
- 電話・メール・LINEを「使い分ける」
- 「沈黙している顧客」へのアプローチを諦めない
- 内見後の「振り返りフォロー」を徹底する
これらを一つひとつ実践していくことで、検討期間が長期化した顧客からも「この会社なら信頼できる」と思われる存在になれるはずだ。
参考資料
- 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月発表)


