【賃貸仲介】問い合わせ平均3.3社──初回対応で他社と差をつける7つの方法

「比較される前提」の時代、最初の接触がすべてを決める

あなたの会社に問い合わせてきた顧客は、同時に何社の不動産会社にコンタクトを取っているかご存知だろうか。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によると、賃貸物件を契約した人が問い合わせた不動産会社数は平均3.3社。この数字は2015年以降で最多となった。さらに注目すべきは、5社以上に問い合わせる層が**全体の21.0%**を占めている点だ。

つまり、今や顧客は「複数社を比較して当たり前」という意識で部屋探しに臨んでいる。大手不動産ポータルサイトの普及により、同じ物件を複数の会社が取り扱うケースも珍しくない。物件力だけでは差別化が難しい時代において、初回対応の質こそが成約を左右する決定的な要素となっている。

本記事では、最新の調査データをもとに、初回対応で競合他社と明確な差をつけるための7つの実践的な方法を解説する。


1. 「1時間以内」の即レスポンスが返信率を3倍に変える

スピードは最強の差別化要因

不動産業界向けサービスを提供する企業の調査によると、オンラインからの問い合わせに対し1時間以内に初回対応できた場合と、1時間以上かかった場合では、顧客からの返信率が約3倍異なるという結果が出ている。

RSC調査でも、不動産会社の対応で「満足だったこと」の第1位は**「問い合わせに対するレスポンスが早かった」(71.5%)であった。一方、「不満だったこと」には「問い合わせをしたら返答が遅かった」**がランクインしている。

実践のポイント

  • 自動返信メールの設定:問い合わせ直後に「受付完了」の自動返信を送信し、「○時間以内に担当者からご連絡いたします」と明記する
  • 営業時間外対応の仕組み化:夜間・休日の問い合わせには自動返信で翌営業日の対応時間を案内し、顧客の不安を軽減する
  • スマートフォン通知の活用:外出中でも問い合わせを見逃さない体制を構築する
  • テンプレートの準備:よくある質問への回答は事前にテンプレート化し、迅速かつ的確な返信を可能にする

即レスポンスは、顧客に「この会社は対応が早い=信頼できる」という第一印象を与える最も効果的な方法だ。


2. 「その物件はもうありません」を言わない──物件情報の鮮度管理

顧客の不満第1位は「募集終了物件」

RSC調査において、不動産会社への不満として最も多かったのは**「問い合わせをしたら『その物件はもうない』と言われた」(18.8%)**である。

顧客は時間をかけて物件を探し、比較検討した上で問い合わせている。その物件がすでに募集終了していた場合、落胆するだけでなく「この会社は情報管理がずさんだ」という印象を持たれてしまう。

実践のポイント

  • 日次での物件情報更新:募集状況を毎日確認し、成約済み物件は即座に非公開にする
  • リアルタイム空室確認システムの導入:管理会社との連携を強化し、空室情報をリアルタイムで把握できる体制を整える
  • 代替物件の即時提案:万が一募集終了していた場合は、類似条件の代替物件を3〜5件用意して提案する
  • 謝罪と誠実な説明:「申し訳ございません、つい先日成約となってしまいました。ただ、○○様のご条件に近い物件がございますのでご紹介させてください」と、誠意を持って対応する

物件情報の鮮度は、そのまま会社の信頼性を表す。「あるはずの物件がない」という失望体験を与えないことが、初回対応における最低限のマナーである。


3. 礼儀正しさは「当然」ではなく「差別化要因」

言葉遣いと態度が成約を左右する

RSC調査では、不動産会社への不満として**「言葉遣いや対応が気に障った」(18.1%)が上位にランクインしている。一方、満足だった点では「言葉遣いや対応が良かった」(44.4%)**が3位に入っている。

この数字が示すのは、多くの顧客が「礼儀正しい対応」を当然とは考えておらず、むしろ差別化ポイントとして評価しているという事実だ。

実践のポイント

  • 敬語の徹底:メールでも電話でも、正確な敬語を使用する。「了解しました」ではなく「承知いたしました」、「わかりました」ではなく「かしこまりました」を使う
  • クッション言葉の活用:「恐れ入りますが」「差し支えなければ」「お手数をおかけしますが」など、相手への配慮を示す表現を意識的に使用する
  • 相手の名前を呼ぶ:「お客様」ではなく「○○様」と名前で呼ぶことで、パーソナルな対応であることを印象づける
  • 否定的な表現を避ける:「それはできません」ではなく「○○という方法であれば対応可能です」と、代替案を提示する形で伝える

不動産取引は、顧客にとって人生の大きな決断を伴う。その相手として信頼に足るかどうかは、最初のやり取りにおける言葉遣いと態度で判断される。


4. 顧客都合を最優先する「柔軟対応力」

「都合を考慮してくれた」が満足度の鍵

RSC調査において、不動産会社への満足点の第2位は**「こちらの都合を考慮してくれた」(51.4%)**であった。半数以上の顧客が、自分の都合への配慮を評価している点は見逃せない。

顧客の多くは仕事を持ちながら部屋探しをしている。平日の日中に時間が取れない人、遠方から転居を検討している人など、事情は様々だ。

実践のポイント

  • 営業時間外の対応検討:可能な範囲で、夜間や休日の対応を行う。難しい場合は「○曜日であれば19時まで対応可能です」など、選択肢を提示する
  • オンライン対応の充実:IT重説の利用ニーズはRSC調査で56.7%(賃貸)に達しており、オンライン契約希望も42.2%と3年連続で増加している。来店不要のオンライン対応を積極的に提案する
  • スケジュールの柔軟な調整:「○○様のご都合に合わせて調整いたします」と伝え、顧客主導でスケジュールを決められるようにする
  • 連絡手段の選択肢提供:電話、メール、LINEなど、顧客が好む連絡手段を確認し、それに合わせる

顧客都合への配慮は、「この会社は自分のことを大切にしてくれる」という安心感を生む。この安心感が、複数社比較の中で選ばれる決定打となる。


5. 「的を射た回答」で信頼を勝ち取る

質問への的確な返答が求められている

RSC調査では、不動産会社への不満として**「問い合わせへの回答が的を射ていなかった」(17.4%)**が上位に入っている。

顧客が知りたいのは、自分の質問に対する正確かつ具体的な回答だ。関係のない物件を大量に紹介されたり、曖昧な返答をされたりすると、「この会社は自分のことを理解していない」と判断される。

実践のポイント

  • 問い合わせ内容の丁寧な確認:顧客の質問を復唱し、「○○というご質問でよろしいでしょうか」と確認してから回答する
  • 具体的な情報の提示:「駅から近いです」ではなく「最寄りの○○駅から徒歩5分です」のように、具体的な数字やデータで回答する
  • 分からないことは正直に伝える:即答できない質問には「確認してすぐにご回答いたします」と伝え、必ず期限内にフォローする
  • 追加質問の先回り:顧客が次に知りたいであろう情報を予測し、先に提供する。「なお、周辺にはスーパーが2軒、コンビニが3軒ございます」など

的確な回答は、担当者の専門性と誠実さを示す。この信頼感が、競合他社との差を生む。


6. 担当者の「顔」が見える対応で記憶に残る

「誰から買うか」が選択基準になる時代

不動産業界は「物件力」で語られることが多いが、同じ物件を複数社が扱う現状では、**「誰から借りるか」**が顧客の選択基準となっている。

問い合わせ時点で会社やスタッフのことを調べる顧客は多く、問い合わせ後も比較検討の材料として担当者の印象を重視している。

実践のポイント

  • 自己紹介の徹底:メールの署名には氏名、顔写真、簡単な自己紹介を入れる。「○○エリア担当5年目の山田です。この地域のことならお任せください」
  • 担当者プロフィールページの活用:自社サイトに担当者の紹介ページを設け、経歴や得意分野、趣味などを掲載する
  • パーソナルな一言を添える:定型文だけでなく、「○○をお探しとのこと、私も以前同じエリアに住んでおりましたので、地域の情報もお伝えできます」など、個人的なコメントを加える
  • SNSや口コミの活用:担当者個人のSNSアカウントで物件情報や地域情報を発信し、顧客との接点を増やす

顧客にとって、不動産会社は「会社」ではなく「担当者」として記憶される。その担当者の顔と人柄が見えることで、信頼関係の構築が加速する。


7. 口コミ・評判を戦略的に活用する

口コミ情報が不動産会社選びの決め手に

RSC調査によると、不動産会社を選ぶポイントとして**「不動産会社に対する口コミ情報」**が2位にランクインしている。特に重視するポイントとしても上位に入っており、口コミの影響力は年々高まっている。

また、物件情報の信頼性については**「インターネットの口コミ」**が情報源として挙げられており、顧客は公式情報だけでなく、他の利用者の声を重視していることがわかる。

実践のポイント

  • Googleビジネスプロフィールの最適化:店舗情報を最新に保ち、写真や営業時間を正確に掲載する
  • 口コミへの返信:良い口コミには感謝を、悪い口コミには誠実な謝罪と改善策を返信する。返信の姿勢そのものが、新規顧客への信頼材料となる
  • 成約後のフォローと口コミ依頼:入居後のフォロー連絡を行い、満足度が高い顧客には口コミ投稿をお願いする
  • 口コミを意識した接客:「口コミに書かれるかもしれない」という意識で接客することで、自然と対応の質が向上する

口コミは、顧客が比較検討する際の「第三者の声」として絶大な影響力を持つ。ポジティブな口コミを積み重ねることが、中長期的な集客力に直結する。


まとめ:初回対応は「投資」である

賃貸仲介における顧客の問い合わせ平均社数が3.3社に達した今、初回対応の質は単なる「業務」ではなく、**成約率を左右する「投資」**として捉えるべきだ。

本記事で紹介した7つの方法を振り返ろう。

No.方法ポイント
1即レスポンス1時間以内の対応で返信率3倍
2物件情報の鮮度管理「その物件はない」を言わない
3礼儀正しい対応言葉遣いと態度は差別化要因
4顧客都合の優先柔軟な対応が満足度の鍵
5的を射た回答具体的で正確な情報提供
6担当者の顔が見える対応「誰から借りるか」が選ばれる理由
7口コミの戦略的活用第三者の声を味方につける

これらはいずれも、特別なシステムや多額の投資を必要としない。日々の業務の中で意識を変え、小さな改善を積み重ねることで実現できる。

初回対応で良い印象を与えられれば、顧客は「この会社に任せたい」と思う。その瞬間に、競合他社との比較は終わり、あなたの会社が選ばれる。

複数社比較が当たり前の時代だからこそ、初回対応で圧倒的な差をつける。それが、これからの賃貸仲介ビジネスを勝ち抜く鍵である。


参考資料

  • 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2025年10月発表)