【2026年最新】重要事項説明でトラブルを防ぐ7つのポイント|顧客満足度を高める「重説」実践テクニック

不動産取引において、契約後のトラブルの大半は「聞いていない」「説明されなかった」という認識のずれから発生する。重要事項説明(重説)は、こうしたリスクを未然に防ぐ最後の砦だ。しかし、形式的な読み上げに終始していないだろうか。

不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査によると、不動産会社への不満として「問合せへの回答が的を射ていなかった」「情報に虚偽があり信頼性に欠けた」といった説明不足に起因する項目が上位に挙がっている。一方で、IT重説の活用意向は調査開始以来最高の49.9%を記録し、オンライン契約への関心も3年連続で増加している。

本記事では、法的リスクを軽減しながら顧客満足度を高める重要事項説明の実践テクニックを、最新のトレンドデータとともに解説する。


重要事項説明の基本と、なぜ今「質」が問われるのか

重要事項説明が担う法的役割

重要事項説明は、宅地建物取引業法第35条に基づき、不動産の売買契約や賃貸借契約を締結する前に、宅地建物取引士が物件に関する重要な事項を書面で交付し、口頭で説明する義務を定めたものである。

この制度が設けられた背景には、不動産取引の特殊性がある。高額であること、権利関係が複雑であること、そして一般消費者は不動産に関する知識や経験が十分でないことが多い。そのため、契約締結の判断材料となる情報を事前に提供し、買主・借主を保護することが目的となっている。

説明を怠った場合や虚偽の説明を行った場合には、宅建業者および宅地建物取引士に対して指示処分や業務停止処分、さらには免許取消処分といった行政処分が下される可能性がある。加えて、民事上の損害賠償責任を問われるケースも少なくない。

顧客の期待値は年々上昇している

前述のRSC調査では、不動産会社に求めるものとして「正確な物件情報の提供」が全体の約7割、「物件に対する詳細説明」が約6割という高い数値を示した。特に売買契約者においては、「問合せに対する迅速対応」「購入・入居のフォロー」「最新の物件情報の提供」の3項目が前年比10ポイント以上の増加を記録しており、説明の「質」と「スピード」への期待が急速に高まっていることがわかる。

また、物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は、賃貸で平均3.3社と2015年以降で最多となった。顧客は複数の会社を比較検討しており、説明の丁寧さや正確性が選ばれる会社の条件になりつつある。


重要事項説明で発生しやすいトラブルパターン

パターン1:説明不足による認識のずれ

国土交通省の「不動産トラブル事例データベース」には、重要事項説明に関する紛争事例が多数登録されている。代表的なものとして、以下のケースが挙げられる。

周辺環境に関するトラブル

  • 隣地に建設予定の建物について説明がなかった
  • 騒音や悪臭を発生させる施設の存在を知らされなかった
  • 用途地域の境界付近で、隣接地との規制の違いが説明されなかった

物件状況に関するトラブル

  • 実際には土砂災害警戒区域内であったにもかかわらず、区域外と説明された
  • 過去に事故や自殺があった事実(心理的瑕疵)の告知がなかった
  • 設備の不具合や修繕履歴が共有されなかった

これらのトラブルに共通するのは、「法定の説明事項」だけでなく、「契約判断に影響を与える情報」の説明が不足していた点である。

パターン2:情報の鮮度・正確性の問題

RSC調査における不満項目で「その物件はもうないと言われた」が上位に挙がっている。賃貸契約者の24.7%がこの経験をしており、物件情報の更新が適切に行われていない実態が浮き彫りになった。

重要事項説明の段階で物件情報に誤りがあれば、契約後のトラブルに直結する。特に以下の項目は誤認が発生しやすい。

  • 設備の有無(エアコン、ガスコンロなど)
  • 駐車場・駐輪場の利用条件
  • 管理費・共益費の金額と内訳
  • 契約期間と更新条件

パターン3:告知義務違反

宅建業法では、物件に関する重要な事項について告知義務が課されている。特に注意が必要なのが心理的瑕疵の告知である。

2021年10月に国土交通省が公表した「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」では、告知すべきケースと告知不要なケースの判断基準が示された。しかし、このガイドラインの存在を知らない、あるいは正しく理解していない担当者も少なくない。

告知義務違反が発覚した場合、契約解除や損害賠償請求につながるだけでなく、会社の信用失墜にも直結する。


IT重説の活用で変わる顧客体験

非対面型サービスへのニーズは過去最高に

RSC調査によると、IT重説(リモートで重要事項説明を受ける)の活用意向は全体で49.9%と調査開始以来最高を記録した。賃貸検討者に限定すると56.7%にのぼり、過半数がIT重説の利用を希望している状況だ。

オンライン契約についても、賃貸検討者の51.0%が活用意向を示しており、3年連続で増加傾向にある。「積極的に活用したい」と回答した割合も31.1%と高く、非対面型サービスは差別化要因から「当たり前のサービス」へと変化しつつある。

IT重説がもたらす業務上のメリット

顧客側のメリット

  • 来店の手間と交通費の削減
  • 日程調整の柔軟性向上
  • 自宅でリラックスした状態で説明を受けられる
  • 遠方の物件でも契約手続きがスムーズ

不動産会社側のメリット

  • 営業効率の向上(移動時間の削減)
  • 商圏の拡大(遠方顧客への対応が容易に)
  • 録画によるトラブル防止(「言った・言わない」の回避)
  • 繁忙期の業務分散

特に録画機能は、説明内容の証拠として残せるため、後日のトラブル発生時に有効な防御材料となる。ただし、録画には双方の同意が必要であり、ガイドラインに沿った運用が求められる。

IT重説実施時の注意点

便利なIT重説だが、対面と比較してデメリットも存在する。

通信環境のリスク 映像や音声が途切れると説明が中断され、顧客の理解度にも影響する。事前の接続テストは必須であり、顧客にもWi-Fi環境での接続を推奨すべきである。

説明の伝わりにくさ 画面越しでは顧客の表情や反応が読み取りにくく、理解度の把握が困難になる。対面以上にこまめな確認と、理解しやすい説明の工夫が求められる。

書類確認の難しさ 宅地建物取引士が説明している資料と顧客の手元資料が同一であることの確認が、対面より難しい。事前に書類を郵送し、ページ番号を明示しながら説明を進める工夫が必要だ。


重要事項説明でトラブルを防ぐ7つの実践ポイント

ポイント1:事前調査の徹底と情報の鮮度管理

重要事項説明書の作成にあたっては、物件の現地調査、役所調査、登記情報の確認など、複数のソースからの情報収集が欠かせない。特に以下の項目は見落としやすいため、チェックリストを用いた確認が有効である。

現地調査で確認すべき事項

  • 隣地との境界の状況
  • 周辺の騒音・振動・臭気の有無
  • 日照・通風の状況
  • 嫌悪施設(工場、墓地、火葬場など)の有無

役所調査で確認すべき事項

  • 用途地域と建築制限
  • 道路の種類と接道状況
  • ハザードマップ(水害・土砂災害リスク)
  • 都市計画道路の予定

2020年8月からは水害ハザードマップの説明が義務化されており、説明漏れは法令違反となる。

ポイント2:顧客の理解度に合わせた説明手法

専門用語を多用した説明は、顧客の理解を妨げる最大の要因となる。以下の工夫により、わかりやすい説明を心がけたい。

用語の言い換え

  • 「瑕疵」→「隠れた欠陥や問題点」
  • 「善管注意義務」→「借りている間、大切に使う義務」
  • 「原状回復」→「退去時に元の状態に戻すこと」

視覚資料の活用

  • 図面やハザードマップを画面共有(IT重説の場合)
  • 重要な箇所にマーカーで印をつける
  • 写真や動画で現地の状況を補足説明

理解度の確認

  • 各項目の説明後に「ここまでご質問はありますか」と確認
  • 重要な契約条件については復唱を依頼
  • 説明終了後に全体を通しての質問時間を設ける

ポイント3:心理的瑕疵の適切な告知

告知義務の範囲は、物件の種類(賃貸か売買か)、事案の内容、経過年数などによって異なる。国土交通省のガイドラインに基づき、以下の基準を参考にされたい。

告知が必要なケース

  • 他殺、自殺、火災等による死亡が発生した場合
  • 賃貸では概ね3年を経過するまで
  • 売買では経過年数にかかわらず告知

告知不要とされるケース

  • 自然死や日常生活における不慮の死
  • ただし、長期間発見されず特殊清掃が必要となった場合は告知対象

判断に迷う場合は、告知する方向で検討するのが安全である。「知っていれば契約しなかった」という顧客の主張を防ぐには、情報開示の姿勢が重要だ。

ポイント4:設備・残置物の明確化

設備表の記載不備は、退去時のトラブルに直結する。以下の項目について、「有」「無」「撤去予定」を明確に記載し、説明時に確認を行う。

  • エアコン(台数と設置場所)
  • 照明器具
  • ガスコンロ
  • 給湯器
  • 温水洗浄便座
  • カーテンレール
  • 網戸

特に「有」と記載した設備が引渡し時に撤去されていたケースや、「無」の設備を顧客が「あるもの」と誤認していたケースは頻発している。口頭での確認だけでなく、書面への記載と署名を徹底したい。

ポイント5:特約事項の丁寧な説明

契約書の特約事項は、標準的な契約内容から逸脱する条件を定めたものであり、トラブルの温床になりやすい。以下の特約については、特に丁寧な説明が求められる。

退去時のクリーニング費用負担 原状回復ガイドラインでは、通常損耗は貸主負担が原則とされているが、特約で借主負担とするケースも多い。特約の有効性には要件があり、内容を十分に説明し理解を得ることが必要だ。

更新料の有無と金額 地域によって慣行が異なるため、契約時に明示しておかないと更新時のトラブルになる。

ペット飼育の条件 飼育可能な種類・頭数・サイズの制限、敷金の追加、退去時の消臭費用など、条件を具体的に説明する。

ポイント6:録画・議事録による記録の徹底

IT重説の普及により、説明内容を録画で記録することが一般的になりつつある。対面での説明においても、議事録の作成が有効なトラブル防止策となる。

記録すべき内容

  • 説明日時と場所
  • 説明担当者(宅地建物取引士)の氏名
  • 説明した主要項目の一覧
  • 顧客からの質問と回答内容
  • 特に念を押して説明した事項

記録は「説明した」という証拠になるだけでなく、説明の質を振り返り改善するための材料にもなる。

ポイント7:説明後のフォローアップ体制

重要事項説明は契約前の手続きであるが、説明後のフォローも顧客満足度に大きく影響する。

契約日までの対応

  • 説明内容について追加の質問がないか確認
  • 検討に必要な追加資料の提供
  • 契約に向けた準備事項の案内

入居後の対応

  • 設備の使用方法や注意点の案内
  • 緊急連絡先の周知
  • 近隣トラブル発生時の相談窓口の案内

RSC調査では、「物件の提案や追加の連絡をしてくれた」ことに満足した顧客が4割を超えている。契約後も顧客との接点を維持することが、リピートや紹介につながる。


フランチャイズ本部のサポートを活用する選択肢

重要事項説明の質を高めるには、最新の法改正情報の把握、説明スキルの向上、書式やチェックリストの整備など、継続的な取り組みが必要となる。しかし、中小規模の不動産会社がこれらをすべて自社で対応するのは容易ではない。

フランチャイズに加盟することで、本部が蓄積したノウハウや研修制度、業務支援システムを活用できるメリットがある。たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用し、顧客管理・契約管理を効率化する業務支援を提供している。また、定期的な加盟店会合を通じて、トラブル事例の共有やベストプラクティスの学習機会も設けられている。

自社単独では得られない「引き出し」を持つことで、重要事項説明の品質向上だけでなく、経営全般の安定化にもつながるだろう。


まとめ:重要事項説明は「リスク管理」と「信頼構築」の両輪

重要事項説明は、単なる法的義務の履行ではない。適切な説明を通じて顧客との信頼関係を構築し、トラブルを未然に防ぐ重要な業務プロセスである。

本記事で紹介した7つのポイントを実践することで、以下の効果が期待できる。

  • 契約後のトラブル発生率の低減
  • 顧客満足度の向上とリピート・紹介の増加
  • 行政処分リスクの回避
  • 従業員の業務品質の標準化

IT重説の活用意向が5割に迫る今、非対面でも質の高い説明ができる体制整備は急務である。顧客が複数の不動産会社を比較検討する時代において、「説明が丁寧だった」「信頼できる」という評価は、選ばれる会社になるための重要な差別化要因となる。

重要事項説明の質を高める取り組みは、今日から始められる。まずは自社の説明プロセスを振り返り、改善できるポイントを一つずつ実践していただきたい。


参考資料

  • 不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果(2025年10月)
  • 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月)
  • 国土交通省「不動産トラブル事例データベース」