「問い合わせ平均3.3社」時代に勝ち残る──顧客の検討フェーズ別フォローアップ戦略|初期・中期・後期で変わる”選ばれる仲介会社”の条件

賃貸物件を探す顧客が、契約に至るまでに問い合わせる不動産会社の数が過去11年間で最多を記録した──。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した調査結果は、賃貸仲介の現場に突きつけられた新たな現実を如実に物語っている。検討期間の長期化と問い合わせ先の分散化が同時に進行するなか、従来の「反響が来たら即対応」だけでは、顧客の最終的な選択肢に残ることが難しくなっている。
本記事では、RSCの最新データを読み解きながら、顧客の住まい探しを「初期(情報収集段階)」「中期(比較検討段階)」「後期(意思決定段階)」の3つのフェーズに分類し、それぞれの段階に最適化されたフォローアップ戦略を具体的に提示する。賃貸仲介業に携わる経営者や店舗責任者が、明日からの実務に落とし込める実践的な知見を凝縮してお届けしたい。
なぜ今、「検討フェーズ別」のアプローチが不可欠なのか
数字が示す「顧客行動の変化」
RSCが2025年に実施した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」の結果は、賃貸仲介業者にとって見過ごせないトレンドを浮き彫りにしている。
まず、住まい探しを始めてから契約までにかかった期間について、賃貸では「1ヶ月以上」と回答した層の合計が43%に達し、前年から増加した。直近5年間では2021年に次ぐ高水準であり、検討期間の長期化傾向が鮮明になっている。
問い合わせ行動にも変化が見られる。賃貸物件の契約者が契約までに問い合わせた不動産会社数は平均3.3社と、2015年以降で最多を記録した。特に注目すべきは、「5社以上」に問い合わせたと回答した層が合計で21.0%に上っている点だ。5人に1人以上の顧客が、5社以上の不動産会社を比較検討している計算になる。
さらに、問い合わせた物件数も平均5件台(前年比で約1件増加)と増加傾向にあり、「6物件以上」を問い合わせた層が過半数を超えた。顧客は以前にも増して多くの情報源にアクセスし、時間をかけて吟味している。
「とりあえず問い合わせ」の顧客が増えた背景
この傾向を加速させた要因は複合的だ。大手不動産ポータルサイトの利便性向上により、顧客はスマートフォンひとつで複数の不動産会社に一括問い合わせができるようになった。物件情報へのアクセス障壁が下がった結果、「まずは情報収集」という軽い動機での問い合わせが増加している。
加えて、住宅価格の高止まりを受けて購入を先送りし賃貸に留まるファミリー層の増加や、都心部での家賃上昇を背景に条件の再検討を余儀なくされる単身層の存在も、検討期間の長期化に拍車をかけている。
こうした環境下では、全ての問い合わせ顧客に画一的な対応を行うことは、限られた営業リソースの浪費につながりかねない。顧客がどの検討段階にいるかを見極め、フェーズごとに最適なコミュニケーションを設計する──この発想が、成約率を左右する分水嶺となっている。
【初期フェーズ】情報収集段階のフォローアップ──「忘れられない存在」になる
初期フェーズの顧客像を正しく把握する
初期フェーズに位置する顧客の多くは、まだ引越しの時期や条件を明確に固めていない。「なんとなく今の部屋に不満がある」「半年後くらいに転勤があるかもしれない」「家賃が上がったので他も見てみたい」──このような漠然とした動機で大手不動産ポータルサイトを閲覧し、気になる物件に軽い気持ちで問い合わせを入れる。
RSCの調査で問い合わせ社数が増加している背景には、こうした「探索型」の顧客が増えている現実がある。彼らはまだ本腰を入れていないため、電話をかけても出ないことが多く、メールの返信率も低い。しかし、ここで「反応がないから脈なし」と判断して追客を止めてしまうことは、将来の成約機会を自ら手放す行為に等しい。
初期フェーズで効果的な5つのアプローチ
①反響後5分以内の初動対応を徹底する
問い合わせが入った瞬間こそ、顧客の関心が最も高い。業界の通説では、反響から5分以内に何らかの接触を図った場合と、1時間後に対応した場合とでは、来店率に大きな差が生じるとされている。自動返信メールの設定は最低限の対策であり、可能であれば具体的な物件提案を含むパーソナライズされた初回メッセージを迅速に送信したい。
CRM(顧客管理システム)を導入している店舗では、ポータルサイトからの反響を自動取り込みし、顧客の希望条件に合致する物件情報を即座にメール送信する仕組みを構築しているケースがある。こうした初動対応の自動化は、人手不足が深刻な中小規模の仲介店舗にとって特に有効だ。
②「売り込まない」情報提供に徹する
初期フェーズの顧客に対して、内見予約や来店を急かす対応は逆効果になりやすい。この段階では、「この会社は役に立つ情報をくれる」と感じてもらうことに注力すべきだ。
たとえば、顧客が問い合わせた物件のエリア情報(治安、買い物環境、通勤時間の実測データなど)をまとめた簡潔な資料を添付する、あるいは同エリアの家賃相場レンジを提示する、といった「物件そのもの以外の付加価値情報」の提供が効果的だ。
③LINE・SMSなど開封率の高い連絡手段を確保する
メールの開封率が年々低下するなか、LINEやSMSへの誘導は初期フェーズから意識したいポイントだ。CRMを活用した自動追客でLINE連携を導入した店舗では、来店率が従来の1.5倍以上に向上した事例も報告されている。初回の連絡時に「LINEでも物件情報をお送りできますがいかがですか?」と一言添えるだけで、登録率は大きく変わる。
④定期的な物件マッチングメールで接点を維持する
初期フェーズの顧客は、すぐには動かない。しかし、定期的に「あなたの条件に合った新着物件」を届け続けることで、「気になったときに最初に思い出す会社」のポジションを確保できる。週1回程度の頻度で、3~5件の物件を厳選して提案するのが、「しつこい」と感じさせないバランスとされている。
⑤顧客の温度感を可視化する仕組みを持つ
メールの開封状況、物件ページの閲覧回数、LINEメッセージの既読状況──これらのデータを追跡できる顧客管理の仕組みがあれば、初期フェーズの顧客がいつ「中期」に移行したかを察知しやすくなる。閲覧頻度が急に上がった顧客は、状況が変わった可能性が高い。そのタイミングで一歩踏み込んだ連絡を入れることで、来店への導線が生まれる。
【中期フェーズ】比較検討段階のフォローアップ──「信頼できるパートナー」になる
中期フェーズの顧客が求めるもの
RSCの調査で訪問した不動産会社数が平均2.0社(賃貸)と前年から増加している事実は、中期フェーズの顧客が「複数の会社を実際に訪問して比較する」行動を取っていることを裏付けている。
中期フェーズの顧客は、すでにおおよそのエリアや家賃帯を絞り込んでおり、「どの会社に任せるか」を品定めしている段階だ。彼らが不動産会社を選ぶ際のポイントとして、RSCの調査では「写真の点数が多い」「物件についての説明が詳しい」「問い合わせに対する対応が丁寧かつ親切」などの項目が上位に挙がっている。
つまり、この段階の顧客は「自分の要望をしっかり理解し、プロとしての提案力がある会社」を探している。価格の安さや物件数の多さだけではなく、「この営業担当者に任せたい」と思えるかどうかが勝敗を分ける。
中期フェーズで差がつく6つの実践手法
①ヒアリングの質を磨く──「条件」ではなく「暮らし方」を聞く
中期フェーズの顧客との接点(来店・オンライン面談・電話)では、「駅徒歩何分以内ですか?」「予算はいくらですか?」といった条件のヒアリングだけでは不十分だ。顧客が本当に求めているのは「条件に合った物件」ではなく「理想の暮らしを実現できる住まい」だからだ。
「休日はどのように過ごされることが多いですか?」「在宅勤務の頻度はどれくらいですか?」「ペットを飼う予定はありますか?」──こうした暮らし方に踏み込んだ質問を投げかけることで、条件表には表れない真のニーズを引き出せる。このヒアリングの深さが、後の物件提案の精度に直結する。
②「条件外」の物件をあえて提案する勇気を持つ
顧客の希望条件を100%満たす物件が見つかるケースは稀だ。むしろ、条件から少しはずれるが暮らし方にフィットする物件を「理由を添えて」提案できる営業担当者こそ、顧客の信頼を勝ち取る。
たとえば、「駅徒歩10分以内」を希望する顧客に、徒歩12分だが自転車置場が無料で通勤導線にスーパーがある物件を提案する場合、「駅までの距離は2分ほど超えますが、自転車を使えば5分です。帰り道にスーパーがあるので、毎日の買い物が格段に楽になります」と具体的な生活シーンを描いて伝える。こうした提案は、顧客に「この人は自分の暮らしを本気で考えてくれている」という印象を与える。
③内見時に「五感情報」を言語化する
図面や写真では伝わらない情報──日当たり、風通し、周辺の静けさ、共用部の管理状態──を内見時に的確に言語化できるかどうかは、仲介のプロとしての真価が問われる場面だ。「この部屋は南東向きなので、午前中に洗濯物を干すとよく乾きます」「隣がマンションの壁面なので、この方角からの騒音はほぼありません」といった具体的な説明は、顧客の意思決定を大きく後押しする。
④他社との比較を恐れず、自社の強みを明確に伝える
中期フェーズの顧客は、当然ながら他社とも接触している。ここで重要なのは、他社を否定することではなく、自社だからこそ提供できる価値を明確に言語化することだ。
「当店は地域密着で運営しているため、ポータルサイトには掲載されていないオーナー直接依頼の物件情報も保有しています」「契約後もLINEで困りごとを相談いただける体制を整えています」──こうした具体的な差別化ポイントの提示が、最終選考での優位性を生む。
⑤来店後72時間以内のフォロー連絡は「お礼+α」で
来店や内見後のフォロー連絡は、多くの仲介会社が実施している。しかし、単なるお礼メールでは印象に残らない。来店時のヒアリング内容を踏まえた「追加提案」や「内見した物件の周辺情報」を添えることで、「丁寧に対応してくれる会社」という記憶を強化できる。
⑥オンライン内見・IT重説を積極活用する
RSCの調査では、住まい探しで使ってみたい非対面サービスとして「IT重説」が賃貸・売買ともにトップに立ち、「オンライン契約」の利用ニーズも3年連続で増加している。中期フェーズの比較検討を効率化したい顧客にとって、オンライン内見やIT重説への対応可否は、不動産会社選びの重要な判断材料になりつつある。これらのサービスを導入・周知することは、テクノロジーに敏感な若年層の来店率向上に直結する。
【後期フェーズ】意思決定段階のフォローアップ──「最後のひと押し」を間違えない
後期フェーズの心理を読み解く
後期フェーズの顧客は、候補物件を2~3件に絞り込み、「どこに決めるか」を最終的に判断する段階にある。この時期の顧客心理には、2つの相反する感情が共存している。「早く決めたい」という焦りと、「本当にこの物件でいいのだろうか」という不安だ。
ここでの営業担当者の役割は、押し売りではなく「安心材料の提供」に尽きる。顧客の不安を丁寧に解消し、納得感のある意思決定をサポートすることが、成約とその後の顧客満足度の両方を高める。
後期フェーズで成約率を高める5つの技術
①「迷っている理由」を具体的に聞き出す
「まだ少し迷っています」と言う顧客に対して、「何かご不安な点はありますか?」と漠然と聞くだけでは、本音は出てこない。「家賃と初期費用のバランスについて気になる点はありますか?」「通勤時間に関して、もう少し確認したいことはありますか?」というように、具体的な論点を提示して質問することで、迷いの核心に迫れる。
②数字で裏付ける──比較表の活用
候補物件の比較検討を支援するツールとして、「物件比較表」は極めて有効だ。家賃、初期費用、広さ、築年数、設備、最寄駅からの距離といった基本情報に加え、通勤所要時間や周辺施設までの距離など、顧客の優先事項に合わせた項目を盛り込んだ比較表を作成し、客観的な判断材料として提供する。
この一手間が「プロに相談してよかった」という実感につながり、他社ではなく自社を通じて契約する動機を強化する。
③初期費用の透明性を担保する
後期フェーズで最も離脱が起きやすいのが、初期費用の提示時だ。「思ったより高かった」という理由で契約を見送るケースは少なくない。見積書には全ての費用項目を明記し、それぞれの費目について「なぜこの費用が発生するのか」を平易な言葉で説明する。交渉の余地がある項目(フリーレント、礼金の減額など)があれば、事前にオーナー側と調整しておくことで、顧客に選択肢を提示できる。
④「この物件に住んだ未来」を描かせる
意思決定の最終段階では、論理よりも感情が決め手になることが多い。「この部屋の窓からは朝日が入るので、休日の朝にコーヒーを飲むのが楽しみになりそうですね」「お子さんの通学路にある公園、ブランコが新しくなっていましたよ」──内見時の記憶や顧客のライフスタイルに基づいた一言が、「ここに住みたい」という感情を呼び起こす。
⑤決断を急かさず、期限を共有する
「他にも検討されている方がいるのでお早めに」という常套句は、顧客に不信感を与えかねない。代わりに、「この物件の募集がいつまで継続されるかはオーナー様の判断によりますが、現時点では○月○日までは確保できる見込みです」といった客観的な情報を共有する方が、顧客の信頼を損なわずに意思決定を促せる。
フェーズ別戦略を支える「仕組み」の構築
属人化を防ぐ──CRMとフォロー体制の整備
ここまで述べてきたフェーズ別アプローチを個々の営業担当者の力量に依存させていては、組織としての安定的な成果にはつながらない。重要なのは、「仕組み」としてフォロー体制を構築することだ。
顧客管理システム(CRM)を導入し、反響から成約までのプロセスをステータスで管理することで、どの顧客がどのフェーズにいるかが一目瞭然になる。「初期フェーズの顧客には週1回の自動物件提案」「中期フェーズの来店後72時間以内にフォロー」「後期フェーズの顧客には担当者から直接連絡」──こうしたルールを組織で共有し、追客漏れを防ぐ体制が求められる。
実際に、CRM導入後に来店率が1.6倍、成約率が2倍以上に向上した不動産会社の事例も業界内で報告されており、システム活用による追客の仕組み化は投資対効果の高い施策といえる。
分業体制で「接客に集中できる環境」を作る
賃貸仲介の現場では、反響対応専任者を配置する「分業体制」への移行が進んでいる。ポータルサイトからの反響取り込みと初動対応をインサイドセールス(内勤営業)が担い、来店後の接客と成約はフィールドセールス(外勤営業)が担当するという役割分担だ。
この分業により、営業スタッフは中期~後期フェーズの「対面接客」に集中でき、顧客一人ひとりに対するサービスの質が向上する。追客業務の一部をAIや自動化ツールに任せる動きも広がっており、限られた人員で最大の成果を出す体制づくりが業界全体のトレンドとなっている。
フランチャイズという選択──個店の課題を本部の力で解決する
仕組みの構築を「ゼロから」行う負担
ここまで紹介してきたフェーズ別フォロー戦略やCRM導入、分業体制の構築は、理屈としては理解できても、個店単独で実行に移すにはハードルが高いのが現実だ。システムの選定・導入コスト、スタッフの教育、ノウハウの蓄積──これらを自力で賄うには、相応の時間と資金が必要になる。
特に中小規模の賃貸仲介店舗にとって、日々の反響対応や契約業務に追われながら、こうした「仕組みづくり」に経営資源を割くことは容易ではない。
ハウスコムフランチャイズが提供する「経営基盤」
こうした課題に対するひとつの有力な解決策が、不動産フランチャイズへの加盟だ。なかでもハウスコムフランチャイズは、賃貸仲介を専業とする約200店舗超の直営店運営で培ったノウハウを、加盟店に対して体系的に提供している点が特徴的だ。
ハウスコムFCでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用しており、コンバータ・顧客管理・契約管理の3つの機能をパッケージとして利用できる。特筆すべきは、これらのシステム利用料がロイヤリティに含まれていることで、追加のシステム投資なしに、本記事で紹介したようなCRMを活用したフェーズ別追客の仕組みを導入できる環境が整っている。
また、本部主催のベンチマークセミナーでは、直営店の最新ノウハウに加え、他の不動産事業者のリアルな実態が共有される。検討期間の長期化に対応するための追客手法やオンライン接客の導入事例など、自社だけでは得にくい業界横断的な知見にアクセスできることは、フランチャイズ加盟ならではのメリットだ。
さらに、本部が多様な企業との業務提携を通じて実現する反響送客や法人営業支援は、初期フェーズの反響数そのものを底上げする役割を果たす。関東・東海・近畿の三大都市圏で展開するハウスコムのブランド力は、「聞いたことがある会社」という安心感を通じて、反響の質向上にも寄与している。
まとめ──「追客」の発想を「伴走」に変える
顧客の検討期間が長期化し、問い合わせ先が分散する時代において、賃貸仲介会社に求められるのは「追いかける」営業ではなく、「寄り添い、伴走する」姿勢だ。
初期フェーズでは「忘れられない存在」として情報を届け続け、中期フェーズでは「信頼できるパートナー」として暮らしの提案力を見せ、後期フェーズでは「最後の一押し」ではなく「安心の後押し」で意思決定をサポートする。この一貫した顧客体験の設計こそが、平均3.3社の中から「選ばれる1社」になるための最大の武器になる。
そして、こうした仕組みを個店の努力だけに頼るのではなく、フランチャイズ本部のシステム・ノウハウ・ブランド力を活用して構築する選択肢があることも、経営判断のひとつとして覚えておきたい。
検討期間の長期化は、見方を変えれば「顧客との関係を深める時間が増えた」ということでもある。その時間をどう活かすかが、これからの賃貸仲介業の勝敗を決める。
本記事は、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2025年10月発表)のデータを参照しています。

