反響率が変わる!賃貸物件写真の「掲載順序」と「構成」で内見数を増やす視線誘導テクニック

物件情報サイトで、同じ間取り・同じ家賃帯の物件が50件並んでいる画面を想像してほしい。ユーザーがその一覧から「詳細を見たい」とタップする物件と、スルーされる物件。その差を分けているのは、立地でも家賃でもなく、1枚目の写真だ。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に公表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」によれば、問合せや訪問を行う際に不動産会社を選ぶポイントとして、「写真の点数が多い」が選ぶポイント・特に重視するポイントの両方でトップに立ち、いずれも直近3年間で最多の数値を記録した。物件写真の量と質への要求は、年々高まっている。
しかし、撮影テクニックに関する情報は世に溢れていても、**「どの写真を、どの順番で並べるか」**という掲載順序の設計にまで踏み込んだ知見は、驚くほど少ない。写真の「撮り方」を磨くのは当然のこととして、本稿では一歩先――顧客の視線誘導を意識した写真掲載順序の設計法に焦点を当てる。日々の業務にすぐ活かせる実践的なフレームワークを、データと事例をもとに提示したい。
なぜ「写真の順番」が反響を左右するのか
物件探しは”3秒の勝負”で始まる
大手不動産ポータルサイトの検索結果一覧には、1ページあたり数十件の物件が表示される。ユーザーが各物件に費やす判断時間は、わずか数秒とされている。この極めて短い時間で「詳細を見てみよう」と思わせるために最初に目に入るのが、1枚目のサムネイル写真だ。
ここで注意すべきは、多くのポータルサイトにおいて、物件登録時に設定した写真の1枚目が一覧のサムネイルとして表示される仕組みになっている点である。つまり、1枚目に何を置くかが、そもそもクリックされるかどうかを決定づけているということだ。
“スクロール離脱”のメカニズム
仮にクリックされて詳細ページに遷移したとしても、安心はできない。スマートフォンでの物件探しが主流となった現在、ユーザーは画面をスワイプしながら写真を次々と閲覧する。その際、序盤の写真で興味を惹きつけられなければ、途中で離脱して次の物件へ移ってしまう。
ある仲介会社の分析では、物件詳細ページに掲載された写真のうち、平均的に閲覧されるのは前半の5〜7枚程度で、後半に配置された写真まで見るユーザーは全体の半数に満たないという。これは、後半に物件の強みとなる写真を置いている場合、その魅力が伝わらないまま離脱される可能性が高いことを意味している。
データが示す「写真重視」の加速
前述のRSCアンケート(2025年)では、不動産会社を選ぶポイントにおいて「写真の点数が多い」がトップであるだけでなく、「不動産会社に対する口コミ情報」が特に重視するポイントで2位にランクインした。一方、「店舗がアクセスしやすい場所にある」は2年連続で割合が減少しており、物件情報のビジュアル品質と口コミを重視する傾向が、店舗立地の重要性を上回りつつある。
加えて、同調査では物件を契約するまでに問合せた物件数が全体で平均5.5物件と前年から1.1物件増加し、賃貸では「5物件」「6物件以上」の割合が5割を超えた。多くの物件を比較検討する中で、写真の第一印象が問合せ先の選別に直結する構造が、ますます鮮明になっている。
写真掲載の「黄金構成」──7つのブロックで組み立てる
物件写真の掲載順序は、闇雲に並べるものではない。顧客が物件を内見する際の自然な動線を、オンライン上で疑似体験させるという発想で設計する。以下に、反響率の向上に実績のある「7ブロック構成」を紹介する。
ブロック1:リビング・居室のベストショット(1枚目)
1枚目は、検索結果一覧のサムネイルとして表示される「顔」の写真だ。ここにはリビングまたはメインの居室を、最も広く明るく見えるアングルで撮影した1枚を置く。
部屋の角から対角線方向を広角で撮影し、窓からの自然光を活かしたカットが理想的だ。物件情報を探す際に必要だと思う情報として、70%以上のユーザーが「居室・リビングの写真」を挙げているという調査結果がある。1枚目は、ユーザーが最も見たい空間で勝負する。
実践Tips: 短辺側を背にして撮影すると、奥行き感が強調され、実際よりも広く感じる写真が撮れる。晴れた日の午前10時〜午後2時が、自然光が最も美しく差し込む撮影のゴールデンタイムだ。
ブロック2:間取り図(2枚目)
リビングの写真で「この部屋、良さそう」と思ったユーザーが次に知りたいのは、部屋全体のレイアウトだ。間取り図を2枚目に配置することで、「この広い部屋は全体のどの位置にあるのか」「他の部屋との関係はどうなっているのか」をすぐに把握できる。
間取り図は、写真閲覧の”地図”の役割を果たす。ここで全体像を頭に入れたユーザーは、その後の個別の写真をより具体的なイメージを持ちながら見進めることができる。
実践Tips: 間取り図には方位を必ず入れること。「南向きリビング」「角部屋」といった条件が間取り図で視覚的に確認できると、テキスト情報との相乗効果が生まれる。
ブロック3:キッチン(3〜4枚目)
居室・リビングに次いでユーザーの関心が高いのが水回りだ。中でもキッチンは、日常の生活動線の中心であり、特に単身者・ファミリー問わず重視されるポイントとなる。
ここでは**「空間としてのキッチン」と「設備のアップ」の2枚構成**が効果的だ。1枚目でキッチン全体の広さや位置関係を見せ、2枚目でコンロの口数、シンクの広さ、収納量などのディテールを伝える。
実践Tips: キッチンの水栓レバーは同じ方向に揃えてから撮影すること。些細なことだが、整理整頓された印象を与え、清潔感が大きく向上する。
ブロック4:バス・トイレ・洗面所(5〜7枚目)
水回りの写真は、多くの仲介会社が「とりあえず撮っておく」程度の扱いにしがちだが、実はここにこそ差別化のチャンスがある。
バスルームは、入口から上方向にカメラを向けた俯瞰ショットが全体を把握しやすい。浴室乾燥機や追い焚き機能のパネルなど、スペック面のアピールポイントがあれば、それを個別に撮影して追加する。
トイレは正面からの撮影だと圧迫感が出やすい。少し斜め上から対角線を意識して撮ると、限られた空間でも情報量の多い1枚になる。温水洗浄便座やタオルハンガーの有無も見逃さず写し込もう。
実践Tips: 浴室のシャワーヘッドは上部に掛け、側面から撮影すると形状が分かりやすくなる。蛇口やレバー類は全て同じ方向に統一して撮影するのが、プロの仕上がりに近づくコツだ。
ブロック5:収納・玄関・その他の室内設備(8〜10枚目)
クローゼットや収納は、まず閉じた状態で部屋の雰囲気を見せ、次に開いた状態で容量を見せるという2段階の掲載が望ましい。クローゼットが開いた状態だけでは部屋の印象が変わってしまい、実際に住んだときのイメージと乖離する恐れがある。
玄関はシューズボックスの有無やスペースの広さが伝わるカットを。インターホンのモニター、宅配ボックス、室内物干しなどの設備も、このブロックでしっかり記録しておく。
実践Tips: 隣接する部屋がある場合は、ドアを開放して部屋同士のつながりが見える写真を加えると、生活動線のイメージが格段に伝わりやすくなる。
ブロック6:外観・エントランス(11〜13枚目)
外観写真は、建物と前面道路がバランスよく収まるように斜め45度のアングルから撮影するのが基本。空を9分割のうち2〜3ブロック分入れると、開放感のある仕上がりになる。
エントランスのオートロックやメールボックス、駐輪場の状態も、セキュリティ面や利便性を伝える重要な情報だ。
実践Tips: 外観撮影は季節によって印象が大きく変わる。植栽が映える春〜初夏に撮影した写真をストックしておくと、年間を通じて魅力的な外観写真を使用できる。
ブロック7:周辺環境(14枚目以降)
最寄り駅、コンビニ、スーパー、病院、学校など、ターゲット層に応じた周辺施設の写真を掲載する。物件情報以外に必要だと思う情報として、RSCの調査(2025年)では「周辺環境情報」が全体でトップとなり、直近3年で最も高い割合を記録した。
ファミリー向け物件なら公園や学校・保育施設、単身者向けなら飲食店やコンビニの写真を優先的に配置することで、ターゲットのライフスタイルに刺さる訴求ができる。
実践Tips: 周辺施設の写真には、物件からの距離や徒歩分数を注記として添えておくこと。具体的な数字があると、利便性の実感値が格段に上がる。
物件タイプ別:掲載順序カスタマイズの考え方
7ブロック構成は「標準形」であり、物件の特性やターゲットに応じてカスタマイズすることで、さらに反響率を高められる。
ワンルーム・1K(単身者向け)
限られた空間だからこそ、1枚目の居室写真の「広さの印象」が極めて重要だ。広角レンズを活用し、部屋の角から最大限の奥行きを見せる。キッチンと居室が一体の場合は、生活空間全体が1枚で把握できるカットを1枚目に持ってくると、「思ったより広い」というポジティブな第一印象を与えられる。
単身者はバス・トイレ別かどうかを重視する傾向が強いため、セパレートの物件ではその写真をキッチンの前(3枚目あたり)に繰り上げる変則配置も有効だ。
2LDK以上(ファミリー・カップル向け)
複数の居室がある物件では、リビングだけでなく各居室のバリエーションを序盤で見せることが効果的だ。1枚目にLDKのベストショット、2枚目に間取り図、3〜4枚目で各居室を見せ、「家族それぞれの部屋が確保できる」ことを早い段階で印象づける。
ファミリー層は収納量への関心も高いため、収納写真の優先度を上げ、ブロック4(バス・トイレの直後)に持ってくる構成も検討したい。
築古・リノベーション物件
築年数が古い物件は、外観写真を先に見せると「古そう」というネガティブな先入観を持たれるリスクがある。このタイプでは内装のリノベーション後の写真を1〜4枚目に集中させ、「中身の良さ」を先に体感させる戦略が奏功する。
外観はブロック6まで後ろに配置しつつ、内装の清潔感やデザイン性で十分に興味を引いた状態で見てもらうことで、築年数へのマイナス印象を最小限に抑えられる。
反響を生む掲載写真のチェックリスト
掲載前に、以下の10項目を確認することで、写真構成の品質を一定水準以上に保てる。
【構成・順序のチェック】
- 1枚目は居室・リビングのベストショットになっているか
- 2枚目に間取り図を配置しているか
- 前半5枚で物件の主要な魅力が伝わる構成になっているか
- 物件タイプ・ターゲットに応じた順序カスタマイズを行ったか
- 周辺環境の写真にターゲット層に刺さる施設を含めたか
【写真品質のチェック】
- 全ての写真で水平・垂直が保たれているか
- 自然光を活かした明るい写真になっているか(暗い写真はないか)
- 水栓レバーや蛇口の向きは統一されているか
- ゴミ・汚れ・私物の写り込みはないか
- ポータルサイトの掲載枚数上限まで写真を登録しているか
「写真の順番」を変えるだけで変わる、3つのメリット
メリット1:追加コストゼロで反響改善
写真の掲載順序の見直しは、新たな撮影や有料オプションを一切必要としない。既に手元にある写真を並べ替えるだけで実行できる、コストゼロの反響改善施策だ。繁忙期の前に全物件の写真順序を棚卸しするだけでも、一定の効果が見込める。
メリット2:内見時の期待値コントロール
写真の構成を「オンライン内見」として設計すると、実際の内見時に「写真で見た通りだ」「思った通り良い部屋だ」という納得感が生まれやすくなる。これは内見からの成約率向上に直結する。逆に、写真と実物のギャップが大きいと、内見後の離脱率が高まる要因になる。
メリット3:物件の差別化
同じ物件を複数の仲介会社が掲載しているケースでは、写真の順番と構成が唯一の差別化要因になることがある。同じ写真素材でも、見せ方の巧みさで「この会社は物件の紹介が丁寧だ」という信頼感を醸成できる。前述のRSC調査で「口コミ情報」の重視度が上昇していることとも無関係ではない。丁寧な情報提供の積み重ねが、結果として口コミ評価にも反映されていく。
まとめ:写真構成は「無言の営業トーク」
物件写真の掲載順序は、いわば**「無言の営業トーク」**だ。1枚目で興味を引き、間取り図で全体像を把握させ、キッチン・水回りで生活のイメージを膨らませ、外観・周辺環境で安心感を与える。この流れは、優秀な営業担当者が内見時に行う案内の動線と、本質的に同じ構造を持っている。
RSCの最新データが示す通り、物件探しの検討期間は長期化し、比較検討する物件数も増加の一途をたどっている。膨大な選択肢の中から自社の物件を「選んでもらう」ためには、写真の撮影品質を高めるだけでは不十分だ。どの写真を、どの順番で、どのような意図を持って配置するか。この設計思考こそが、デジタル時代の賃貸仲介に求められるビジュアル戦略の核心である。
明日からでも、まずは自社の掲載物件を1件開いて、写真の並び順を見直してみてほしい。その小さな一手が、反響数の変化として返ってくるはずだ。


