顧客が必要な情報トップ10。あなたの物件情報、足りていますか?

物件情報の「質」が成約率を左右する時代に
問い合わせ数は増えているのに、成約につながらない――。そんな悩みを抱える不動産賃貸仲介業者は少なくない。実は、顧客が物件を「絞り込む」段階で、あなたの物件が候補から外されている可能性がある。
2024年10月に発表された不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の最新調査によると、物件契約者が検討時に問い合わせた不動産会社数は平均2.3社と、直近10年で最少を記録した。さらに問い合わせた物件数も平均6.7物件と過去最低。顧客は問い合わせ前に、掲載情報だけで物件を厳選しているのだ。
この厳しい選別を勝ち抜くカギは、「顧客が本当に必要としている情報」を過不足なく提供できているかどうか。本記事では、1,642人の物件契約者が明かした「必要な情報トップ10」を徹底解説し、あなたの掲載情報を見直すためのチェックリストを提供する。
【最新調査】顧客が求める物件情報ランキングトップ10
不動産情報サイト事業者連絡協議会が実施した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」(2024年)によると、物件契約者が「物件情報を探す際に必要だと思う情報」は以下の通りだった。
全体ランキング(賃貸・売買含む)
- リビング/ダイニングの写真 (72.1%)
- 物件外観の写真 (38.2%)
- キッチンの写真 (35.1%)
- バスの写真 (34.8%)
- トイレの写真 (32.6%)
- 物件の設備・仕様・条件に関する情報 (24.8%)
- 物件の室内の動画 (24.1%)
- 洗面所の写真 (約20%)
- 窓の写真 (約18%)
- 物件の周辺に関する情報 (約17%)
この結果から読み取れるのは、顧客が「実際の生活をイメージできる情報」を強く求めているという事実だ。
賃貸と売買で異なる優先順位
調査結果を詳しく見ると、賃貸検討者と売買検討者では、求める情報に微妙な違いがある。
賃貸検討者の特徴
- 1位:リビング/ダイニングの写真 (73.2%)
- 2位:バスの写真 (38.7%)
- 3位:キッチンの写真 (38.1%)
賃貸では、日常生活に直結する水回りや生活空間の写真が重視される傾向が強い。また、「物件の周辺に関する情報」が前年圏外から10位にランクインしており、生活利便性への関心の高まりが見て取れる。
売買検討者の特徴
- 1位:物件外観の写真 (77.0%)
- 2位:リビング/ダイニングの写真 (70.4%)
- 3位:物件の設備・仕様・条件に関する情報 (38.4%)
売買では建物全体の資産価値を判断するため、外観や詳細な設備情報がより重視される。特筆すべきは「物件の室内の動画」が前年7位から6位に上昇し、3年連続で7ポイント以上増加している点だ。動画コンテンツへのニーズが急速に高まっている。
なぜ「写真」が圧倒的に重要なのか
トップ10のうち7項目が「写真」に関するものだった。これは偶然ではない。
物件選びにおいて、顧客は「この部屋で生活する自分」をイメージしながら判断する。テキスト情報だけでは伝わらない、空間の広さ、明るさ、清潔感といった要素を、写真は瞬時に伝えることができる。
特にリビング/ダイニングが7割超の支持を集めたのは、家族が最も長い時間を過ごす場所だからだ。この空間が魅力的に映らなければ、他にどれだけ優れた設備があっても、候補から外される可能性が高い。
写真掲載の実践ポイント
- 最低でも10枚以上: 調査では「写真の点数が多い」ことが不動産会社選びの最大のポイント(72.1%)となっている
- 明るい時間帯に撮影: 自然光が入る時間帯を選ぶことで、部屋の魅力が最大化される
- 広角レンズの活用: 空間の広がりを効果的に伝えられる
- 清掃後の撮影: 生活感を消し、新生活のイメージを喚起する
- 全室を網羅: リビング、キッチン、バス、トイレ、洗面所、各居室、収納など
動画コンテンツが「次の差別化要因」に
2024年の調査で注目すべきは、動画コンテンツへのニーズの高まりだ。
「物件の室内の動画」は全体で24.1%、売買に限れば28.8%が必要と回答している。また、不動産会社を選ぶポイントとして「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」項目は、全体で32.6%、売買では前年比5ポイント増の33.3%となった。
写真だけでは伝わらない「空間のつながり」「実際の動線」「窓からの眺望」などを動画は表現できる。スマートフォンで手軽に撮影できる今、動画掲載は大手不動産ポータルサイトとの差別化要因として、ますます重要になっていくだろう。
動画掲載の実践ポイント
- 60〜90秒程度: 長すぎず、要点を押さえた尺が理想的
- 玄関から各部屋への動線を意識: 実際に住んだときの生活動線をイメージさせる
- 手ブレを最小限に: スマホのスタビライザー機能を活用
- 窓からの眺望を含める: 周辺環境や日当たりの良さをアピール
- 音声解説を追加: 設備の特徴や周辺情報を説明すると説得力が増す
見落としがちな「周辺情報」の重要性
トップ10の10位にランクインした「物件の周辺に関する情報」。一見地味だが、実は成約を左右する重要な要素だ。
賃貸検討者では前年圏外から10位に浮上しており、生活利便性への関心の高さが見て取れる。売買検討者でも8位にランクインし、資産価値を判断する材料として注目されている。
周辺情報で盛り込むべき内容
- 徒歩○分圏内の施設: スーパー、コンビニ、ドラッグストア、病院、学校、保育園
- 最寄り駅までの実測時間: 「駅徒歩○分」だけでなく、複数駅がある場合は併記
- 周辺環境の写真: 商店街、公園、街並みなど、生活をイメージできる画像
- 地域の特性: 閑静な住宅街、商業地域、ファミリー層が多いなど
- 交通アクセス: 主要エリアへの所要時間、バス路線の情報
「設備・仕様・条件」情報の具体的な書き方
6位にランクインした「物件の設備・仕様・条件に関する情報」は、顧客の最終判断を左右する。特に売買検討者では3位(38.4%)と高い関心を集めている。
ただし、「エアコン付き」「インターネット対応」といった一般的な記載だけでは不十分だ。顧客が知りたいのは、もっと具体的な情報である。
設備情報の充実化チェックリスト
- [ ] 築年数と構造: RC造、木造、鉄骨造など明記
- [ ] 設備の詳細仕様: エアコンの設置箇所と台数、給湯器の種類(追い焚き機能の有無)
- [ ] 収納の具体的な容量: ウォークインクローゼット、シューズボックスの収納力
- [ ] インターネット環境: 光回線対応か、無料Wi-Fi完備かなど
- [ ] セキュリティ設備: オートロック、防犯カメラ、TVモニター付きインターホン
- [ ] 駐車場・駐輪場: 空き状況、月額料金、車種制限
- [ ] ペット飼育: 可否、条件、敷金への影響
- [ ] リフォーム・リノベーション歴: 実施時期と内容
- [ ] 省エネ性能: 断熱等級、設備の省エネ性能(2024年調査では住まい選びで省エネ性能を重要とする回答が7割超)
あなたの物件情報は満点ですか?実践チェックリスト
ここまでの内容を踏まえ、自社の物件掲載情報を今すぐチェックしよう。
【写真・動画編】
- [ ] リビング/ダイニングの写真を掲載している
- [ ] 物件外観の写真を掲載している
- [ ] キッチンの写真を掲載している
- [ ] バスの写真を掲載している
- [ ] トイレの写真を掲載している
- [ ] 洗面所の写真を掲載している
- [ ] 各居室の窓からの眺望写真を掲載している
- [ ] 写真は最低10枚以上ある
- [ ] 明るく、清潔感のある写真になっている
- [ ] 物件の室内動画を掲載している(または制作を検討している)
【情報編】
- [ ] 設備・仕様の情報が具体的に記載されている
- [ ] 周辺施設の情報(徒歩分数付き)が充実している
- [ ] 駅からの実測時間が明記されている
- [ ] 省エネ性能に関する情報を記載している
- [ ] ペット飼育、楽器演奏などの条件が明確になっている
- [ ] 更新頻度が高く、常に最新の情報になっている
【その他】
- [ ] 物件の良い点だけでなく、注意点(駅から坂道、線路沿いなど)も誠実に記載している
- [ ] 問い合わせへの返信が迅速(24時間以内)にできる体制がある
- [ ] 大手不動産ポータルサイトに加え、自社サイトでも詳細情報を公開している
情報充実が問い合わせ増につながる理由
「情報を充実させても、問い合わせが増えるとは限らない」という声もあるだろう。しかし、データは明確に反対の事実を示している。
2024年の調査で、物件契約者が不動産会社を選ぶポイントの1位は「写真の点数が多い」(72.1%)。また、不動産会社に求めるものの6位には「正確な物件情報の提供」(31.6%)、特に重要なものの1位は「正確な物件情報の提供」(39.8%)がランクインしている。
さらに注目すべきは、「最新の物件情報の提供」への期待が賃貸・売買ともに前年比10ポイント超増加している点だ。顧客は「情報の質と鮮度」に敏感になっており、それが不動産会社選びの決定要因となっている。
つまり、情報を充実させることは、問い合わせ数の増加だけでなく、「この会社なら信頼できる」という顧客の信頼獲得につながるのだ。
デジタルショールームの時代を勝ち抜く
かつて不動産仲介業は「店舗への来店」から始まった。しかし今や、大手不動産ポータルサイトが「デジタルショールーム」となり、顧客はそこで物件を厳選してから問い合わせる時代だ。
この変化に対応できない業者は、候補にすら入れてもらえない。逆に、顧客が求める情報を的確に提供できる業者は、問い合わせの質が向上し、成約率も高まる。
情報充実の投資効果は想像以上に大きい。1物件あたり30分の追加撮影と情報整理で、問い合わせ数が2倍になったという事例もある。あなたの物件情報、今すぐ見直してみてはいかがだろうか。
FC加盟で得られる「情報力」という武器
ここまで読んで「情報を充実させたいが、人手が足りない」「撮影のノウハウがない」と感じた方もいるだろう。
実は、多くの成功している不動産仲介業者は、フランチャイズ本部のサポートを活用して情報充実を実現している。特にデジタルマーケティングに強いFC本部は、以下のような支援体制を整えている。
- 物件撮影のマニュアルとトレーニング提供
- 動画制作のテンプレートとツール提供
- 効果的な物件説明文のライティングノウハウ
- 大手不動産ポータルサイトへの一括掲載システム
- 問い合わせ管理と迅速対応を支援するCRMツール
- 最新の不動産テックの導入サポート
一人で悩むより、実績あるノウハウを活用する。それが、デジタルショールーム時代を勝ち抜く最短ルートかもしれない。
まとめ:情報で「選ばれる店」になる
2024年のデータが示すのは、顧客の厳選化が加速しているという現実だ。問い合わせ前に候補を絞り込む顧客に選ばれるには、「必要な情報トップ10」を押さえることが最低条件となる。
今すぐできるアクション:
- 自社の全物件について、本記事のチェックリストで情報の過不足を確認する
- 写真が5枚未満の物件は、優先的に追加撮影を実施する
- リビング、キッチン、バスの写真が1枚もない物件をゼロにする
- 1物件だけでも室内動画を試験的に制作し、反応を測定する
- 周辺情報を具体的な施設名と徒歩分数で記載する
情報充実は、コストではなく投資だ。顧客が求める情報を的確に提供できれば、問い合わせの質が上がり、成約率が向上し、結果として収益が増加する。
あなたの物件情報は、顧客の期待に応えられているだろうか。今すぐチェックし、「選ばれる店」への第一歩を踏み出そう。