見られていない写真に価値はない――成約率を左右する「物件写真の優先順位」を科学する

大手不動産ポータルサイトに何十枚もの写真を掲載しているのに、問い合わせが来ない。熱心に撮影した設備写真が、実は顧客の目に留まっていない――。そんな悩みを抱える仲介業者は少なくない。2024年最新の調査データが明かしたのは、顧客が本当に見ている写真と、業者が力を入れている写真との間に存在する「大きなギャップ」だった。成約に直結する写真の優先順位を、統計データと実践的手法から徹底解剖する。
77.7%が求める「最優先写真」の正体
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2024年に実施した利用者意識アンケート(有効回答数1,642人)は、業界に衝撃を与えるデータを示した。物件情報を探す際に「必要だと思う情報」として、実に**77.7%**もの顧客が挙げたのが「居室/リビングの写真」である。
この数字が意味するのは、10人中8人近くが居室写真を最重要視しているという事実だ。2位の「物件外観の写真」(58.0%)、3位の「キッチンの写真」(57.1%)を大きく引き離し、圧倒的な支持を集めている。
さらに注目すべきは、この傾向が単なる一時的なものではないという点だ。過去3年間のデータを見ても、居室/リビング写真は常にトップを維持し続けており、顧客ニーズの「不動の中心」であることが裏付けられている。
賃貸と売買で異なる「写真戦略」の最適解
興味深いことに、賃貸物件と売買物件では、顧客が重視する写真の優先順位に明確な違いが存在する。
賃貸物件の場合:
- 居室/リビングの写真(80.4%)
- バスの写真(59.1%)
- キッチンの写真(58.2%)
- トイレの写真(50.5%)
- 物件外観の写真(50.0%)
賃貸では、居室写真が8割超という圧倒的な支持を集める一方、水回り設備への関心が極めて高い。特にバス・キッチン・トイレといった「生活実感」に直結する設備写真が上位を占めている。これは、日常生活の快適性を最優先する賃貸ユーザーの心理を如実に反映している。
売買物件の場合:
- 居室/リビングの写真(73.6%)
- 物件外観の写真(71.2%)
- 物件の立地・交通・環境に関する周辺情報(59.2%)
- キッチンの写真(55.2%)
- バスの写真(46.4%)
売買では、居室写真に加えて物件外観(71.2%)や周辺環境情報(59.2%)が上位に入る。長期的な資産価値や近隣環境を重視する購入検討者の慎重な姿勢が表れており、「建物全体の印象」と「立地条件」が判断材料として重要視されていることが分かる。
「写真の点数」が仲介業者選びを左右する時代
調査データはもう一つ、重要な事実を浮き彫りにしている。顧客が不動産会社を選ぶ際のポイントとして、「写真の点数が多い」が72.1%でトップに躍り出たのだ。
前年の65.4%から6.7ポイント上昇したこの数値は、単に「写真が多ければ良い」という単純な話ではない。背景にあるのは、「問い合わせ前にできるだけ絞り込みたい」という消費者心理の変化だ。
実際、同調査では物件を契約した人が検討時に問い合わせた不動産会社数が平均2.3社、問い合わせた物件数が平均9.8物件と、いずれも直近10年で最少を記録している。つまり顧客は、豊富な写真情報から事前に徹底的に比較検討し、厳選した上で問い合わせをしているのだ。
この傾向は仲介業者にとって、写真掲載が「集客の入口」から「選別の基準」へと変化したことを意味する。写真点数が少ない物件は、問い合わせの対象から外される可能性が高まっている。
動画コンテンツの台頭――39.8%が求める「臨場感」
静止画だけではない。調査では「物件の室内の動画」を必要と考える人が39.8%に達し、前年から7ポイント以上増加した。特に売買物件では、「部屋の雰囲気が分かる動画が付いている」ことを不動産会社選びのポイントとする人が33.3%と、2年連続で増加傾向にある。
動画が支持される理由は明確だ。静止画では伝わりにくい「空間の広がり」「動線の滑らかさ」「光の入り方」といった要素を、動画なら直感的に把握できる。特にリモート内見への関心が高まる中、動画コンテンツは「現地に行かずとも物件を理解したい」というニーズに応える強力なツールとなっている。
実践:成約率を高める写真戦略5つのポイント
データから導き出される、実践的な写真掲載戦略は以下の通りだ。
1. 居室/リビング写真を最優先で充実させる 何よりもまず、居室・リビングの写真を複数枚、多角度から撮影すること。広角レンズを使い、部屋全体の広がりを表現する「引き」の写真と、インテリアイメージを喚起する「寄り」の写真を組み合わせる。
2. 賃貸は水回り、売買は外観・周辺環境を手厚く 賃貸ではバス・キッチン・トイレの写真を各3枚以上掲載し、清潔感と機能性を訴求する。売買では建物外観を複数アングルから撮影し、加えて最寄り駅、スーパー、公園など周辺環境の写真も積極的に掲載する。
3. 写真点数は「最低20枚以上」を目指す 競合他社との差別化を図るには、豊富な写真点数が不可欠だ。大手不動産ポータルサイトでは30~50枚の掲載が可能なケースも多い。特に反響が欲しい物件については、可能な限り多くの写真を用意すべきだ。
4. 撮影順序=掲載順序を意識する 最初に表示される写真が最も重要だ。1枚目は必ず居室/リビングの「ベストショット」を配置し、その後、優先順位の高い設備写真を順に並べる。顧客は最初の数枚で興味を持つか否かを判断するため、前半の写真構成が勝負を分ける。
5. 動画撮影を標準装備化する スマートフォンでも十分な品質の動画が撮影できる時代だ。30秒~1分程度の簡潔な室内動画を撮影し、歩きながら各部屋を紹介する形式が効果的。プロに依頼する余裕がなくても、スタッフが手持ちで撮影した「リアルな動画」は、むしろ親近感を生むこともある。
写真が問い合わせを生み、問い合わせが成約を生む
調査では、不動産会社の対応で「満足だったこと」の第1位が「問い合わせに対するレスポンスが早かった」(69.5%)である一方、「不満だったこと」の第2位に「問い合わせをしたら返答が遅かった」(17.4%)が挙がっている。
つまり、優れた写真によって問い合わせを獲得しても、その後の対応が遅ければ機会損失につながる。逆に言えば、写真戦略×迅速な対応という組み合わせこそが、成約への最短ルートなのだ。
デジタル時代の仲介業――システムと知見が競争力を決める
物件写真の最適化は、もはや「やったほうが良い施策」ではなく、「やらなければ淘汰される必須要件」となった。しかし、個人経営や小規模事業者にとって、撮影機材の購入、撮影スキルの習得、大量の写真管理、ポータルサイトへの効率的なアップロードといった業務負荷は決して軽くない。
ここで問われるのが、**仲介業者としての「システム基盤」と「ノウハウ蓄積」**だ。フランチャイズ本部が提供する撮影ガイドライン、画像管理システム、ポータルサイト連携ツール、そして何より「成約につながる写真戦略」の知見――これらを活用できるか否かが、今後の競争力を大きく左右する。
デジタルショールームとしての物件情報は、顧客との最初の接点である。その入口で選ばれるために、科学的根拠に基づく写真戦略を実践すること。そして、それを継続的に実行できる仕組みを持つこと。2025年以降の不動産仲介業において、この2点が生存条件となっていくだろう。
【編集部より】
本記事で紹介したデータと戦略は、変化し続ける顧客ニーズへの対応力が問われる時代において、仲介業者が持つべき「科学的アプローチ」の一例です。写真戦略をはじめとするデジタルマーケティングの最適化、そして本部からの継続的な支援体制について、より詳しく知りたい方は、ハウスコムFC加盟店募集サイトをご覧ください。