「即決」か「じっくり」か―20代と40代で大きく変わる物件探しの実態とは

変化する顧客ニーズ、あなたの店舗は対応できていますか?
不動産賃貸仲介の現場で、こんな経験はないだろうか。同じ物件を案内しても、20代の顧客はスマートフォンを操作しながら即座に判断し、40代の顧客はじっくりと細部まで確認する――。実は、この世代間の行動の違いは、単なる個人差ではない。2024年に実施された不動産情報サイト利用者意識アンケート(有効回答数1,642人)が示すデータからは、世代によって物件探しのスタイルが大きく異なることが明らかになっている。
問合せ数は直近10年で最少を記録し、顧客は「決断前の絞り込み」を徹底している。この変化の背景には、世代ごとの情報収集スタイルや価値観の違いが深く関わっている。本記事では、最新の調査データを基に、20代と40代の物件探しの特徴を徹底分析し、効果的なアプローチ法を提案する。
データが示す「決断型サーチャー」の台頭
問合せ件数の劇的な減少が意味するもの
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)の調査によれば、物件を契約した人が検討時に問合せた不動産会社数は平均2.7社で、前年比0.3社減少。問合せた物件数も平均6.8物件と、前年比1.5物件減少し、いずれも直近10年で最少を記録した。
特に注目すべきは、賃貸では「1社のみ」に問合せた割合が36.7%に達し、売買でも47.9%が1社のみという結果だ。これは、顧客が問合せ前の段階で徹底的に情報を収集し、候補を絞り込んでいることを示している。
この「決断型サーチャー」とも呼ぶべき顧客層の台頭は、世代によって異なる様相を見せている。
20代の物件探し―スピード重視のデジタルネイティブ
情報収集はスマホ完結、判断は「直感」
20代の物件探しは、まさにデジタルネイティブ世代ならではの特徴を持つ。彼らの多くは、通勤・通学の移動時間やちょっとした空き時間にスマートフォンで物件情報を閲覧し、気になる物件があれば即座に問合せを行う。
20代が重視する3つのポイント
- ビジュアル情報の充実度
調査では「写真の点数が多い」が物件選びの最重要ポイントとして72.1%が回答。20代はテキスト情報よりも、写真や動画といったビジュアルコンテンツで物件の雰囲気を瞬時に判断する傾向が強い。実際、「部屋の雰囲気が分かる動画」の需要も年々増加しており、静止画だけでは満足しない層が増えている。 - レスポンスの速さ
「問合せに対するレスポンスが早かった」が満足度の第1位(69.5%)。20代は待つことに慣れておらず、問合せ後24時間以内、できれば数時間以内の返信を期待している。逆に「問合せをしたら返答が遅かった」は不満の第2位(17.4%)にランクインしており、初動対応の遅れが機会損失に直結する。 - 効率性と利便性
IT重説やオンライン内見など、非対面型接客への抵抗感が低い。調査では賃貸検討者の中でIT重説への活用意向が最も高く、店舗に足を運ぶ時間を省きたいというニーズが明確だ。
20代へのアプローチ法
即時対応体制の構築
LINEやチャットツールを活用し、問合せから初回返信までを1時間以内に行う体制を整える。自動返信機能を使っても、「確認中です。〇時までに詳細をお送りします」といった具体的な時間を示すことで信頼感を醸成できる。
ビジュアルコンテンツの充実
大手不動産ポータルサイトへの物件掲載時には、写真枚数を最大限に増やし、可能であれば動画も追加する。室内だけでなく、共用部分や周辺環境の写真も充実させることで、現地に行く前の判断材料を提供する。
デジタル完結型サービスの提供
オンライン内見やIT重説など、非対面でも対応できる体制を整えることで、遠方からの問合せや急ぎの顧客にも対応可能になる。
40代の物件探し―慎重派の情報精査型
家族のライフプランを見据えた選択
40代の物件探しは、20代とは対照的に「慎重さ」が際立つ。多くが家族での住み替えを検討しており、単身向けの物件探しとは異なる複雑な要素を考慮する必要がある。
40代が重視する3つのポイント
- 詳細な物件情報と専門的な説明
「物件のウィークポイントも書かれている」ことを38.2%が評価。40代は良い面だけでなく、デメリットも含めた正確な情報提供を求めている。鉄塔が近い、大通りに面しているといったネガティブ情報も、事前に開示されることで信頼関係が構築される。 - 丁寧なコミュニケーションと専門性
「言葉遣いや対応が丁寧だった」が満足度で高評価(47.9%)。40代は不動産会社の専門性や信頼性を重視し、担当者の知識や経験を見極めている。物件周辺の学区情報、将来の資産価値、リフォームの可能性など、より深い相談を求める傾向が強い。 - 省エネ性能と長期的価値
調査では、住まいを選ぶ上で省エネ性能を「重要」とする回答が全体で77.3%に達し、特に売買検討者では83.5%と高い。光熱費の高騰や気候変動への関心が高まる中、40代は長期的なコスト削減を視野に入れた物件選びを行っている。
40代へのアプローチ法
包括的な情報提供
物件の基本情報だけでなく、周辺環境(学校、病院、商業施設)、管理状況、過去の修繕履歴など、判断材料となる情報を積極的に提供する。ネガティブ情報も隠さず伝えることで、「この担当者は信頼できる」という印象を与えることができる。
対面での丁寧な接客
非対面型サービスへの抵抗感は20代より強い。特に契約時には対面を希望する割合が高いため、じっくりと時間をかけた接客が重要だ。初回相談では1〜2時間程度の時間を確保し、顧客の要望や不安を丁寧にヒアリングする。
ライフプラン全体を見据えた提案
単なる物件紹介にとどまらず、子どもの成長、将来の住み替え、資産形成といったライフプラン全体を視野に入れた提案を行う。ファイナンシャルプランナーとの連携や、住宅ローンの詳細な説明なども評価される。
世代別戦略を成功に導く3つの共通要素
1. 最新かつ正確な物件情報の提供
全世代に共通して重視されているのが「最新の物件情報」だ。調査では、賃貸で前年比8ポイント増、売買でも9ポイント増と大幅に増加している。大手不動産ポータルサイトへの物件情報は毎日更新し、成約済み物件は即座に削除する運用が求められる。
「その物件はもう空いていない」という回答が不満の第1位(賃貸22.2%)である現実を重く受け止める必要がある。これは単なる情報更新の遅れではなく、顧客の貴重な時間を無駄にし、信頼を失う行為だ。
2. 顧客ペースに合わせた柔軟な対応
「契約の意思決定を急かされた」が不満の上位にランクインしている(賃貸13.8%、売買15.8%)。一方で「契約の意思決定をこちらのペースに合わせてくれた」は満足度で高評価(27.5%、21.1%)を得ている。
20代には迅速な提案を、40代には検討時間を十分に確保するという柔軟性が、顧客満足度の向上につながる。
3. 多様な接客スタイルの用意
非対面型接客の活用意向は全項目で3年連続増加している。ただし、世代や個人によって好みが分かれるため、対面・非対面の両方に対応できる体制が理想的だ。
「オンラインでも対応可能ですが、ご希望であれば店舗でじっくりご相談いただくことも可能です」という選択肢を提示することで、顧客の安心感が高まる。
ハウスコムFC加盟で実現する「全世代対応型」店舗運営
充実したサポート体制で世代別戦略を実装
世代ごとに異なるニーズに対応するには、個店の努力だけでは限界がある。ハウスコムFC加盟店になることで、以下のような支援を受けながら、効果的な世代別戦略を実装できる。
1. 最新のデジタルツールとシステム
大手不動産ポータルサイトとの連携システム、自動物件情報更新機能、顧客管理システムなど、20代の期待に応える迅速な対応を可能にするツールが提供される。IT重説やオンライン内見のノウハウも習得できる。
2. 研修・教育プログラム
世代別の接客ノウハウ、ニーズの引き出し方、クレーム対応など、実践的な研修プログラムが用意されている。40代顧客が求める専門性の高い提案力も、体系的に学ぶことができる。
3. ブランド力による集客効果
大手FC本部のブランド力により、幅広い年代層からの問合せが期待できる。特に、信頼性を重視する40代層からの問合せ増加が見込まれる。
4. 物件情報の充実とコンテンツ制作支援
写真撮影のノウハウ、動画作成の支援など、ビジュアルコンテンツの充実に必要なサポートが受けられる。20代が重視する「見た目」の部分で競合店との差別化が図れる。
まとめ―世代理解が競争優位を生む時代
物件を契約した顧客の問合せ社数・物件数が過去10年で最少となった今、顧客は「この店舗、この担当者なら信頼できる」と判断した上で、限られた選択肢に絞り込んでいる。
20代のスピード感と効率性を求める姿勢、40代の慎重さと専門性への期待――この両極端とも言える世代特性を理解し、それぞれに最適化された接客を提供できる店舗こそが、「選ばれる1社」になることができる。
世代別戦略は、単なるマーケティング手法ではない。顧客一人ひとりのライフステージと価値観に寄り添い、最適な住まい探しをサポートするという、不動産仲介の本質的な価値を体現するものだ。
デジタル化が進む一方で、対面での丁寧な接客も依然として重要視される現代において、両方のニーズに柔軟に対応できる体制づくりが、今後の不動産賃貸仲介業界で生き残るための鍵となる。
ハウスコムFC加盟という選択は、この世代別戦略を効率的に実装し、持続的な成長を実現するための有力な手段の一つと言えるだろう。変化する顧客ニーズに対応し、すべての世代から選ばれる店舗を目指してみてはいかがだろうか。