物件選びの決定打は「写真点数」―業界調査で明らかになった不動産仲介の新常識

51.4%が重視する「写真の多さ」。データが示す賃貸仲介の勝敗ライン
「この物件、写真が3枚しかないから別の物件を見よう」――。インターネットで物件を探すユーザーの多くが、こうした判断を日常的に下している。不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」は、不動産賃貸仲介業界に衝撃的な事実を突きつけた。
問合せや訪問を行う際に不動産会社を選ぶポイントとして、「写真の点数が多い」がトップに躍り出たのだ。その割合は51.4%に達し、直近3年間で最も高い数値を記録した。さらに注目すべきは、複数の選択肢の中から「特に重視するポイント」として写真の多さを挙げた回答者も18.8%と、こちらも首位を獲得している点である。
この結果が意味するものは明白だ。物件写真の枚数は、もはや「あれば便利」というレベルを超え、ユーザーが不動産会社を選択する際の最重要判断基準へと進化している。写真点数の多寡が、問合せ数、来店数、そして最終的な成約率を左右する時代が到来したと言えるだろう。
本記事では、このデータを起点に、不動産賃貸仲介業者が今すぐ実践すべき写真掲載戦略を徹底解説する。競合との差別化を図り、問合せ数を飛躍的に増加させるための具体的な手法を、業界最新のトレンドと共にお届けしたい。
なぜ今、写真点数が最重要ポイントになったのか
ユーザー行動の変化が示す3つのシグナル
同調査の結果を詳細に分析すると、写真点数重視の背景には明確な理由が浮かび上がる。
【シグナル1】検討期間の長期化と比較検討の激化
調査によれば、賃貸契約者の住まい探し期間は「1ヶ月以上」の割合が64.3%と前年より5.9ポイント増加。さらに問合せた不動産会社数は平均3.3社で、2015年以降で最多となった。ユーザーは時間をかけて慎重に物件を比較しており、その過程で写真の豊富さが重要な判断材料となっている。
【シグナル2】非対面サービスへの需要拡大
IT重説の活用意向は56.7%、オンライン契約の意向は42.2%と、いずれも過去最高値を更新。リモートでの物件確認が常態化する中、実際に内見する前の段階で「写真から得られる情報量」が物件選択の成否を分けている。
【シグナル3】情報の鮮度と正確性への厳しい視線
不動産会社の対応で不満だったことの上位に「その物件はもう無いと言われた」(17.0%)がランクイン。ユーザーは正確で詳細な物件情報を求めており、写真が少ない物件は「情報が不十分」「信頼性に欠ける」と判断される傾向にある。
大手不動産ポータルサイトが加速させる「写真点数競争」
大手不動産ポータルサイトでは、物件写真を30枚、40枚と大量に掲載できる仕様が標準化しつつある。こうした環境下で、写真が5枚、10枚程度しかない物件は、ユーザーの検索結果画面で埋もれてしまう運命にある。
実際、調査では物件を契約するまでに問合せた物件数が平均5.6物件と、前年比1.1物件増加。ユーザーは数多くの物件を比較検討しており、その第一関門が「写真による選別」なのである。
物件写真の「最適枚数」を科学する
20枚以上が新たなスタンダード
では、具体的に何枚の写真を掲載すべきなのか。不動産業界の実務者の間では、以下の基準が浸透しつつある。
【最低ライン】15~20枚
- 室内全体の雰囲気を伝えるために必要な最低枚数
- 玄関、リビング、キッチン、浴室、トイレ、各居室、収納、バルコニーなど主要箇所を網羅
【推奨ライン】25~35枚
- 競合物件との差別化が可能な枚数
- 設備の詳細(コンロ、洗面台、クローゼット内部等)や日当たり、眺望も含む
- ユーザーの問合せ意欲を高める効果が期待できる
【差別化ライン】40枚以上
- 圧倒的な情報量でユーザーの信頼を獲得
- 周辺環境(最寄り駅、スーパー、コンビニ等)まで撮影
- 内見前の不安を最小化し、成約率の向上に直結
写真枚数と成約率の相関関係
業界データでは、写真枚数と問合せ率には明確な相関関係がある。写真が10枚の物件と30枚の物件を比較した場合、問合せ率は平均で1.5倍から2倍の差が生じるという報告もある。
さらに重要なのは、写真が豊富な物件ほど「内見後の成約率」も高い傾向にあることだ。これは、写真で事前に物件の詳細を把握したユーザーは、内見時に「イメージとのギャップ」が少なく、成約への心理的ハードルが低いためと考えられる。
写真点数を増やすことで得られる5つのメリット
1. 大手不動産ポータルサイトでの露出増加
多くの大手不動産ポータルサイトでは、写真枚数が多い物件を検索結果の上位に表示するアルゴリズムを採用している。写真を充実させることで、自然検索での露出が増え、クリック率の向上につながる。
2. 問合せ前の「ふるい落とし効果」による業務効率化
写真が少ない物件では、ユーザーが不十分な情報のまま問合せをするため、内見後に「イメージと違った」とキャンセルされるケースが多い。一方、写真を充実させることで、真に興味のあるユーザーからの質の高い問合せが増え、成約率の向上と業務の効率化が同時に実現する。
3. オーナーとの信頼関係構築
写真撮影のために物件を丁寧に訪問し、細部まで撮影する姿勢は、オーナーに対して「真剣に募集活動をしている」という印象を与える。結果として、専任媒介契約の獲得や、他物件の紹介につながる可能性が高まる。
4. 競合他社との明確な差別化
同じ物件を複数の仲介会社が扱っている場合でも、写真の枚数と質で差別化が可能だ。ユーザーは写真が充実している仲介会社に問合せする傾向があり、結果として自社への問合せ集中を実現できる。
5. リピーター・紹介率の向上
写真を通じて正確な情報を提供する姿勢は、顧客満足度の向上に直結する。調査でも「情報正確で誠実な対応だった」が満足度の上位にランクインしており、こうした顧客が将来のリピーターや紹介元となる。
効果を最大化する写真掲載戦略【実践編】
戦略1:「物件タイプ別」撮影枚数の最適化
すべての物件に一律40枚の写真が必要なわけではない。物件特性に応じた戦略的な撮影が重要だ。
【ファミリー向け物件】35~40枚推奨
- 収納スペースの多さ、各部屋の広さ、キッチンの使い勝手など、生活イメージが湧く写真を重点的に
- 周辺環境(学校、公園、スーパー等)の写真も加える
【単身者向けワンルーム】25~30枚推奨
- コンパクトな間取りでも、設備の詳細(コンロ、収納内部、洗濯機置場等)を丁寧に撮影
- 駅からの道順や周辺コンビニなど、利便性を示す写真を含める
【高級物件・デザイナーズ物件】40枚以上推奨
- こだわりのデザイン、設備のグレード感を余すことなく表現
- 時間帯を変えた採光の様子、夜景など、付加価値を視覚的に訴求
戦略2:「撮影順序」で効率化を図る
写真撮影は計画的に行うことで、時間短縮と品質向上を両立できる。
【推奨撮影順序】
- 玄関・エントランス(第一印象を決める重要ポイント)
- リビング・居室(メインとなる生活空間)
- キッチン(水回り設備の状態確認)
- 浴室・トイレ・洗面所(清潔感の訴求)
- 収納スペース(クローゼット、下駄箱等の内部も)
- バルコニー・眺望(日当たりや景色の魅力)
- 共用部(エントランス、駐輪場、ゴミ置場等)
- 周辺環境(駅、スーパー、コンビニ等)
戦略3:「写真のクオリティ」で差をつける
枚数だけでなく、写真の質も重要だ。以下のポイントを押さえることで、プロ並みの写真が撮影できる。
【撮影のコツ】
- 明るい時間帯に撮影(午前10時~午後2時が理想)
- 室内は照明を全点灯
- 水平・垂直を意識した構図
- 広角レンズを活用して空間の広さを表現
- 余計なものは写り込まないよう整理整頓
【避けるべき失敗例】
- 暗くて雰囲気が伝わらない写真
- 手ブレやピンボケ
- 生活感のある私物が写り込んでいる
- 同じアングルの写真の重複
戦略4:「写真説明文」で検索性を向上
各写真に適切なキャプションを付けることで、大手不動産ポータルサイトの検索エンジンに評価され、露出が増加する。
【効果的なキャプション例】
- 「南向きバルコニーからの眺望(日当たり良好)」
- 「システムキッチン3口ガスコンロ・グリル付」
- 「ウォークインクローゼット(大容量収納)」
- 「最寄り駅まで徒歩5分・駅前商店街の様子」
ハウスコムFC加盟で実現する「写真戦略」の強化
ここまで解説した写真掲載戦略を、個人経営の不動産会社が単独で実践するには、相当な時間と労力が必要だ。しかし、ハウスコムFC加盟店であれば、本部の強力なバックアップにより、効率的に写真戦略を強化できる。
業務システムによる効率的な物件情報管理
ハウスコムFCでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用しており、物件写真の一括管理・一括掲載が可能だ。撮影した写真を効率的に複数の大手不動産ポータルサイトへ展開でき、掲載作業の時間を大幅に削減できる。利用料金はロイヤリティに含まれるため、追加コストの心配もない。
本部ノウハウの共有とベンチマークセミナー
ハウスコム直営店で培われた写真撮影のノウハウや、効果的な物件訴求の手法が、定期的なセミナーやオンラインツールを通じて加盟店に共有される。他店舗の成功事例を学び、自店舗の戦略に即座に反映できる環境が整っている。
ブランド力による集客効果の最大化
ハウスコムは関東・東海・近畿の三大都市圏で約200店舗を展開し、強固なブランド力を確立している。このブランド認知度により、同じ写真掲載数であっても、ユーザーからの問合せ率が向上する傾向がある。また、本部主体の業務提携により、反響送客などの追加集客支援も受けられる。
物件写真で失敗しないための3つの落とし穴
落とし穴1:写真は多いが「質」が伴わない
闇雲に枚数を増やしても、暗い写真や似たようなアングルの写真ばかりでは逆効果だ。ユーザーは「情報が多い」ではなく「有益な情報が多い」ことを求めている。1枚1枚の写真に意味を持たせることが重要だ。
落とし穴2:更新頻度が低く情報が古い
せっかく多くの写真を掲載しても、物件の現状と異なっていては意味がない。特に共用部の写真や周辺環境は変化しやすいため、定期的な更新が必要だ。調査でも「情報の鮮度」が重視されている点を忘れてはならない。
落とし穴3:スマートフォン表示を軽視
ユーザーの大半はスマートフォンで物件検索を行っている。PC向けには美しく見える写真でも、スマートフォンでは小さく見づらいケースがある。スマートフォン表示を確認し、見やすさを担保することが不可欠だ。
データが証明する「写真戦略」の投資対効果
投資コストとリターンの試算
写真戦略の強化に必要な投資を試算してみよう。
【初期投資】
- 広角レンズ対応カメラ:5~10万円
- 撮影スキル習得(セミナー受講等):2~5万円
- 合計:7~15万円
【月間運用コスト】
- 撮影時間(1物件あたり30分×月間10物件):5時間
- 編集・掲載時間:3時間
- 合計:8時間(人件費換算で約2~3万円)
【リターン試算】
- 問合せ率1.5倍向上により、月間問合せ数が20件→30件に増加
- 成約率が変わらなくても、成約件数が3件→4.5件に(1.5件増)
- 1件あたりの仲介手数料を15万円とすると、月間22.5万円の増収
- 年間270万円の増収効果
この試算からも明らかなように、写真戦略への投資は極めて高いリターンが期待できる。
写真点数で勝負が決まる時代の到来
不動産情報サイト事業者連絡協議会の調査が示したように、物件写真の点数は、もはや不動産仲介業の成否を分ける最重要ファクターとなった。ユーザーの51.4%が「写真の点数が多い」ことを不動産会社選びの基準とし、18.8%がそれを「特に重視する」と回答している事実は、業界全体が重く受け止めるべきデータである。
検討期間の長期化、比較検討する物件数の増加、非対面サービスへの需要拡大――。これらのトレンドは、今後さらに加速していくだろう。そうした環境下で生き残るためには、写真を中心としたビジュアル戦略の強化が不可欠だ。
20枚、30枚、40枚と写真を増やすことは、単なる情報量の増加ではない。それは「ユーザーの不安を減らし、信頼を獲得し、問合せへと導く」という、顧客体験の設計そのものである。本記事で紹介した戦略を実践し、写真点数で競合に差をつけることが、これからの不動産賃貸仲介業の勝ち筋となる。
そして、その実践をより効率的に、より確実に進めるための選択肢として、ハウスコムFC加盟という道がある。200店舗のネットワークと25年以上のノウハウ、最新の業務システム、そして本部の手厚いサポート――。これらを活用することで、写真戦略の強化だけでなく、経営全体の安定化と成長が実現できるはずだ。
写真点数が最重要ポイントとなった今、あなたの会社はどう対応するか。その選択が、明日の成約率を決定づける。
【参考データ】
- 不動産情報サイト事業者連絡協議会「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年調査
- 有効回答数:948人(過去1年のうちにインターネットで住まいを賃貸または購入するために物件情報を調べた人)
- 調査期間:2025年1月28日~5月30日


