賃貸顧客の意思決定プロセスを理解する――検討期間長期化と比較社数増加が示す「選ばれる仲介業者」の条件

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なぜ今、顧客は3.3社も比較するのか?過去11年で最多となった背景に迫る

賃貸仲介業界に激震が走っている。2025年の最新調査によれば、物件を契約するまでに問い合わせる不動産会社の数が、賃貸で平均3.3社と過去11年で最多を記録した。さらに、5社以上に問い合わせる顧客が全体の21.0%に達し、顧客の「慎重な比較検討」が常態化している。

この数字が物語るのは、もはや「物件を紹介すれば成約できる」時代の終焉だ。顧客は複数の仲介業者を巡り、情報を精査し、最も信頼できると判断した会社を選ぶ。その選定基準は何か。どのようなプロセスを経て成約に至るのか。本記事では、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が実施した948人を対象とした大規模調査データを基に、賃貸顧客の意思決定プロセスを徹底解剖する。

【検証データ】53.1%が1カ月以上検討――長期化する意思決定プロセスの実態

検討期間の延伸が示す顧客心理の変化

調査データが明確に示すのは、賃貸契約に至るまでの検討期間の長期化だ。1カ月以上の検討期間を要した顧客の割合は53.1%と、前年から9.8ポイント増加している。これは2021年(54.9%)に次ぐ高水準であり、直近5年間のトレンドとして検討期間の延伸が確認できる。

特筆すべきは、「3カ月以上」の超長期検討層が一定数存在することだ。この層は慎重な意思決定を重視し、複数の選択肢を徹底的に比較する傾向が強い。言い換えれば、顧客は「焦って決めない」姿勢を明確に持っている。

問い合わせ社数・物件数の増加が意味するもの

検討期間の長期化と連動するように、問い合わせ社数・物件数も増加傾向にある。

  • 問い合わせた不動産会社数:賃貸平均3.3社(前年比+0.9社、過去11年で最多)
  • 問い合わせた物件数:賃貸平均5.9物件(前年比+1.8物件、2019年以降で最多)
  • 5社以上に問い合わせ:21.0%(高水準を維持)

これらの数字から読み取れるのは、顧客が「情報収集の幅を広げている」という事実だ。大手不動産ポータルサイトの普及により、物件情報へのアクセスは容易になった。しかし、情報が溢れるがゆえに、顧客は「どの会社が信頼できるか」「どの物件が本当に良いか」を見極めるために、より多くの接点を持とうとしている。

【決定的瞬間】顧客が不動産会社を選ぶ5つの基準――写真点数と口コミが上位に

選定基準1位は「写真の点数が多い」――視覚情報への強いニーズ

不動産会社を選ぶポイントとして、「写真の点数が多い」が直近3年で最も高い割合を記録した。この傾向は、顧客が物件の詳細を視覚的に把握したいという強いニーズを持っていることを示している。

間取り図だけでは伝わらない、実際の室内の雰囲気、設備の状態、窓からの景色――これらを写真で確認できるかどうかが、問い合わせや訪問の判断材料となる。特に、遠方からの引っ越しや忙しい社会人にとって、事前に詳細な写真で物件を把握できることは、時間と労力の大幅な節約につながる。

選定基準2位は「不動産会社に対する口コミ情報」――評判管理の重要性

注目すべきは、「不動産会社に対する口コミ情報」が特に重視するポイントで2位にランクインし、前年比で増加傾向を示していることだ。

インターネットやSNSの普及により、顧客は事前に不動産会社の評判を調べることが当たり前になった。Googleマップのレビュー、口コミサイト、SNSでの評価――これらが会社選定の重要な判断材料となっている。

つまり、物件情報の充実度だけでなく、「この会社は信頼できるか」「対応は丁寧か」「トラブルはないか」といった点が、問い合わせ段階で既に精査されている。

物件情報だけでは不十分――「周辺情報」「ハザード情報」へのニーズ

物件情報以外に必要だと思う情報のトップは「周辺情報」(73.0%)だった。これに続くのが「ハザード情報」(56.3%)、「地域の治安(安全性)」(55.0%)である。

顧客が求めているのは、単なる物件のスペックではない。「そこで暮らす」という視点から、周辺環境の利便性や安全性、災害リスクまでを総合的に判断したいと考えている。特に近年は、自然災害への関心の高まりから、ハザードマップや地盤情報への問い合わせが増加している。

店舗立地よりも情報の質――変化する顧客の優先順位

興味深いのは、「店舗がアクセスしやすい場所にある」という項目が2年連続で減少していることだ。これは、顧客が店舗の立地条件よりも、提供される情報の質や量を重視する傾向が強まっていることを示している。

オンライン接客やIT重説の普及も背景にあるだろう。顧客は「物理的に近い会社」よりも「最も良い情報を提供してくれる会社」を選ぶようになっている。

【成約の分岐点】契約決定における重要ポイント――家賃・価格だけでは選ばれない

最重要は「家賃・価格」だが、それだけでは決まらない

物件を決める際に気にするポイント・特に重視するポイントのいずれにおいても「家賃・価格」がトップだった。これは予想通りの結果だが、重要なのは「それだけでは決まらない」という事実だ。

顧客が同時に重視しているのは以下の要素である。

  • 交通の利便性(74.3%が気にする)
  • 部屋数・間取り(67.4%)
  • 建物・設備の良さ(66.0%)
  • 周辺の利便性(59.0%)

つまり、価格が適正であることは前提条件であり、その上で「総合的な住み心地の良さ」を判断している。仲介業者に求められるのは、これらの要素を的確に説明し、顧客の優先順位に合った物件を提案する力だ。

賃貸特有の重視ポイント――「交通の利便性」「建物・設備の良さ」

賃貸契約者が特に重視するのは「交通の利便性」や「建物・設備の良さ」である。通勤・通学の利便性は日常生活に直結するため、多少家賃が高くても駅近物件を選ぶ傾向が強い。

また、設備面では、バス・トイレ別、独立洗面台、エアコン完備、セキュリティ設備などが重視される。特に単身者や若年層は、初期費用を抑えつつも快適な生活環境を求める傾向があり、「コストパフォーマンスの良さ」が判断基準となる。

【実践戦略】成約率を高めるための7つのアクションプラン

ここまで見てきた顧客の意思決定プロセスを踏まえ、賃貸仲介業者が今すぐ実践すべき戦略を7つ提示する。

戦略1:物件写真の質と量を徹底強化する

顧客が最も重視する「写真の点数が多い」という基準を満たすため、物件写真の充実は必須だ。以下のポイントを押さえる。

  • 最低15枚以上の写真を掲載:室内全体、各部屋、キッチン、バス・トイレ、収納、玄関、バルコニー、眺望など
  • 明るく高画質な写真:暗い写真や不鮮明な写真は逆効果
  • 生活をイメージできる構図:家具配置のイメージがわく角度で撮影
  • 周辺環境の写真も追加:最寄り駅、スーパー、コンビニなどの写真も効果的

戦略2:口コミ・評判管理を経営戦略の一部に組み込む

口コミ情報が選定基準の上位に来ている以上、評判管理は避けて通れない。

  • Googleマイビジネスの最適化:店舗情報を充実させ、定期的に更新
  • ポジティブな口コミへの返信:感謝の気持ちを伝え、信頼感を醸成
  • ネガティブな口コミへの誠実な対応:謝罪と改善策を示す
  • 顧客満足度向上の取り組みを発信:ブログやSNSで透明性を保つ

戦略3:レスポンスの速さを組織文化にする

調査データによれば、不動産会社の対応で満足だったこと1位は「問い合わせに対するレスポンスが早かった」(71.5%)だった。これは成約率に直結する重要要素だ。

  • 問い合わせから1時間以内の初回返信を目標に
  • 自動返信機能の活用:受付確認メールで安心感を与える
  • 夜間・休日対応の体制整備:働き方改革とのバランスを取りながら
  • レスポンス時間を計測し改善:KPIとして管理

戦略4:周辺情報・ハザード情報を積極的に提供する

顧客が求める情報は物件スペックだけではない。生活に関わる総合的な情報提供が差別化につながる。

  • 周辺施設マップの作成:スーパー、病院、学校、公園などを地図上に明示
  • ハザードマップの説明:浸水リスク、地盤の状態、避難場所などを丁寧に説明
  • 治安情報の共有:警察署の犯罪統計データなどを参考に
  • 実際の生活者の声:可能であれば、近隣住民の声や街の雰囲気を伝える

戦略5:顧客の都合を最優先した柔軟な対応

満足度2位は「こちらの都合を配慮してくれた」(51.4%)だった。顧客の時間を尊重する姿勢が信頼につながる。

  • 内見時間の柔軟な設定:平日夜間や休日対応
  • オンライン対応の充実:IT重説、オンライン内見、オンライン契約
  • 急な予定変更への対応:ペナルティなしでのリスケジュール
  • 複数物件の効率的な内見スケジュール提案

戦略6:丁寧で詳細な物件説明を徹底する

満足度3位は「言葉遣いや対応が丁寧だった」(44.4%)、4位は「内見をさせてくれた」(43.8%)だった。

  • 物件の長所だけでなく短所も正直に説明:信頼感が増す
  • 設備の使い方や注意点を丁寧に説明:入居後のトラブル防止
  • 契約条件を分かりやすく説明:専門用語を避け、図解も活用
  • 顧客の質問に的確に答える:知識不足は信頼を損なう

戦略7:「もう無い物件」を掲載しない――正確な物件情報の維持

不満だったこと1位は「その物件はもう無いと言われた」だった。これは最も避けるべき事態だ。

  • 物件情報の更新頻度を上げる:最低でも1日2回以上
  • 成約済み物件の即時削除:システム連携で自動化
  • 在庫確認の徹底:問い合わせ前に空室状況を必ず確認
  • 代替物件の迅速な提案:顧客を逃さない

【ハウスコムFC加盟の優位性】ブランド力と仕組みで顧客の信頼を獲得する

ここまで見てきた戦略を個人や小規模事業者が単独で実行するのは容易ではない。特に、ブランド力の構築、システム投資、情報インフラの整備には相当なコストと時間がかかる。

ハウスコムFC加盟は、これらの課題を一挙に解決する選択肢となる。

ブランド力による集客効果

ハウスコムは1998年の設立以来、賃貸仲介業をコア事業とし、約200店舗の直営店を展開している。特に三大都市圏(関東・東海・近畿)でのブランド認知度は高く、顧客からの信頼も厚い。

加盟店はこのブランド力を活用することで、以下のメリットを享受できる。

  • 大手不動産ポータルサイトからの反響送客
  • 口コミ評価の高いブランドイメージ
  • 物件仕入れや管理オーナーへの営業における優位性

業務システムの提供によるオペレーション効率化

ハウスコムFCでは、大手不動産テック企業の基幹システムを採用している。コンバータ(物件情報の一括管理・配信)、顧客管理、契約管理の3点セットがロイヤリティに含まれているため、追加コストなしで業務効率化が実現できる。

これにより、情報更新の手間が削減され、「もう無い物件」問題の解決にもつながる。

継続的なノウハウ提供とベンチマークセミナー

ハウスコムは25年以上にわたり蓄積してきた賃貸仲介のノウハウを加盟店に提供している。さらに、定期的なベンチマークセミナーでは、直営店のノウハウだけでなく、他の不動産業者のリアルな実態も共有される。

これにより、業界最新のトレンドや成功事例を学び、自店舗の運営に活かすことができる。

多様なビジネスパックによる売上支援とコスト削減

ハウスコムビジネスパックは、顧客向け販売商材やシステム支援商材を幅広く取り揃えている。これにより、売上の多角化とコスト削減が同時に実現できる。

また、法務・会計・労務といった士業支援も充実しており、経営面でのサポート体制も万全だ。

【結論】顧客の意思決定プロセスを理解し、選ばれる仲介業者になる

賃貸顧客の意思決定プロセスは、検討期間の長期化、比較社数・物件数の増加という形で明確に変化している。顧客は「慎重に、徹底的に比較する」姿勢を強めており、仲介業者には従来以上に高いレベルの情報提供、対応力、信頼性が求められている。

成約率を高めるためには、以下の3つの視点が不可欠だ。

  1. 情報の質と量:写真の充実、周辺情報・ハザード情報の提供、正確な物件情報の維持
  2. 対応のスピードと丁寧さ:迅速なレスポンス、顧客都合への配慮、詳細な説明
  3. 信頼と評判の構築:口コミ管理、誠実な対応、ブランド力の活用

これらを個人や小規模事業者が単独で実現するのは困難だが、ハウスコムFC加盟という選択肢により、ブランド力、システム、ノウハウ、ネットワークを一挙に獲得できる。

賃貸仲介業界の競争は激化している。しかし、顧客の意思決定プロセスを深く理解し、適切な戦略を実行すれば、必ず「選ばれる仲介業者」になれる。データに基づいた戦略的アプローチこそが、今後の成功の鍵となるだろう。


【本記事で引用したデータ出典】
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート」2025年調査結果(2025年10月27日発表)
調査期間:2025年1月28日~5月30日、有効回答数:948人