物件のマイナスポイントを正直に伝えて成約率を上げる話法|誠実さが武器になる時代の接客術

「この物件、日当たりがイマイチなんですよね…」

そんな一言を言えずに、内見時にモゴモゴしてしまう。あるいは、デメリットを隠したまま契約を進めて、後からクレームになった経験はないだろうか。

実は、物件のマイナスポイントを正直に伝えることで成約率が上がるという事実が、最新の調査データからも裏付けられている。2025年10月に発表された不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)のアンケート調査では、顧客が不動産会社に求めるもののトップが「礼儀・丁寧対応」であり、「正確な物件情報の提供」「物件に対する詳細説明」も上位にランクインした。

つまり、今の顧客は**「都合のいい話」ではなく「本当のこと」を求めている**のだ。

本記事では、物件のデメリットを誠実に伝えながらも成約につなげる具体的な話法を、現場で即使えるトーク例とともに解説する。


「正直に話す営業」が選ばれる3つの理由

1. 顧客の比較検討行動が過去最多を更新

RSCの調査によると、2025年は顧客が問い合わせる不動産会社数が賃貸で平均3.3社(過去11年で最多)、売買で3.8社に達した。さらに問い合わせ物件数も賃貸で5.6物件、売買で5.3物件と増加傾向にある。

これは何を意味するか。顧客は複数の会社の対応を比較しているということだ。

ある会社ではデメリットを隠され、別の会社では正直に説明された場合、顧客はどちらを信頼するだろうか。答えは明白だ。情報をオープンにする会社こそが、比較の中で選ばれる時代になっている。

2. 「情報に虚偽があった」は致命傷になる

同調査では、不動産会社の対応で不満だったこととして以下が挙げられている。

  • 「その物件はもう無い」と言われた:18.8%
  • 言葉遣いや対応が気に障った:18.1%
  • 問合せへの回答が的を射ていなかった:17.4%
  • 情報に虚偽があり信頼性に欠けた:9.0%

「情報に虚偽があった」という回答は一見少なく見えるが、これは顧客がその会社を完全に切り捨てるレベルの不満だ。一度失った信頼は二度と戻らない。逆に言えば、正直な対応はリピートや紹介につながる最大の武器になる。

3. 満足度71.5%を生み出す「誠実な対応」

調査では、不動産会社の対応で満足だったこととして「問合せに対するレスポンスが早かった」が71.5%でトップだが、注目すべきは「情報正確で誠実な対応だった」という項目が27.8%で上位に入っていることだ。

スピードだけでなく、誠実さが顧客満足度を高める重要な要素として認識されている。


マイナスポイントを伝える心理的障壁を乗り越える

多くの営業担当者が、物件のデメリットを伝えることに心理的な抵抗を感じている。

「言ったら断られるのでは?」

この恐怖心は自然なものだ。しかし、考えてみてほしい。

  • デメリットを隠して契約→入居後にクレーム→悪い口コミが広がる
  • デメリットを伝えて納得の上で契約→入居後も満足→良い口コミにつながる

短期的な成約を追うか、長期的な信頼を築くか。持続可能な不動産ビジネスを目指すなら、答えは後者だ。

「伝えないリスク」を可視化する

物件のマイナスポイントを伝えないことで発生するリスクを整理しよう。

リスク具体的な影響
入居後クレーム対応工数の増加、オーナーからの信頼低下
早期解約再募集コスト、空室期間の発生
悪評拡散SNS・口コミサイトでの評判悪化
訴訟リスク重要事項説明義務違反の可能性

特にSNS時代の今、ネガティブな体験は瞬時に拡散される。RSC調査でも、住まい探しに「SNS(YouTube、Instagram等)」を利用する人が増加しており、口コミの影響力は年々強まっている。


成約につなげる5つの「正直話法」

では、マイナスポイントをどう伝えれば成約につなげられるのか。現場で使える具体的な話法を5つ紹介する。

話法1:サンドイッチ法

構成:メリット → デメリット → メリット

デメリットをポジティブな情報で挟むことで、印象のバランスを取る手法だ。

例:日当たりが悪い物件の場合

「この物件、駅徒歩3分でこの家賃はかなりお得なんです。正直に申し上げると、北向きなので日中の日当たりは弱めです。ただ、その分夏場は涼しく光熱費が抑えられるというメリットもあります。また、室内干し派の方や、在宅ワークでモニターの映り込みが気になる方には逆に好評なんですよ」

ポイント

  • 最初と最後に良い印象を残す
  • デメリットを「別の視点からのメリット」に転換する
  • 具体的な顧客像を示して共感を生む

話法2:先手開示法

顧客が気づく前に自ら開示する

顧客が自分で欠点を発見すると「隠していたのか」という不信感につながる。先手を打って開示することで、むしろ信頼度が上がる。

例:築年数が古い物件の場合

「お伝えしておきたいことがあります。この物件、築25年でして、正直、見た目の古さは否めません。ただ、昨年フルリノベーションが完了していて、水回りは全て新品です。躯体もしっかりしていて、むしろ新築より壁が厚く防音性能が高いというメリットもあります」

ポイント

  • 「お伝えしておきたいことがあります」と前置きする
  • 欠点を認めた上で、対策や補完要素を提示する
  • 顧客の「発見」を先回りする

話法3:比較提示法

複数物件を比較しながら、それぞれの長短を明確にする

顧客は複数物件を比較検討している。その行動を逆手に取り、自ら比較材料を提供することで信頼を獲得する。

例:3件の物件を案内する場合

「本日は3件ご案内しますが、それぞれ特徴が違います。A物件は駅近だけど狭め、B物件は広いけど駅から12分、C物件はバランス型だけど1階で防犯面の工夫が必要です。すべて完璧な物件は存在しませんので、どこを優先されるかをご一緒に整理させてください」

ポイント

  • 「完璧な物件はない」と前提を共有する
  • 顧客の優先順位を引き出す質問につなげる
  • 営業ではなく「コンサルタント」の立場を取る

話法4:解決策セット法

デメリット+具体的な解決策をセットで提示する

問題を提示するだけでなく、解決策まで示すことで顧客の不安を軽減する。

例:収納が少ない物件の場合

「この物件、クローゼットが1つなので収納は少なめです。ただ、入居時に使える家具配置のアドバイスをお渡ししていまして、デッドスペースを活用した収納術をまとめています。また、近くに月額3,000円から使えるトランクルームもあるので、季節物はそちらに預ける方も多いですよ」

ポイント

  • 具体的な解決策を「すでに用意している」姿勢を見せる
  • 外部サービスの情報提供も信頼につながる
  • 「同じ条件で入居された方の声」があればさらに効果的

話法5:想定シナリオ法

入居後の生活をリアルに想像させながらデメリットを説明する

抽象的なデメリットは不安を煽るが、具体的な生活シーンに落とし込むと「対処可能」と感じやすくなる。

例:線路沿いの物件の場合

「電車の音についてですが、日中は正直聞こえます。ただ、終電が23時台なので深夜は静かです。実際に住んでいる方に聞くと、最初の1週間で慣れる方がほとんどだそうです。もしご心配でしたら、夜の時間帯にもう一度内見に来ていただくこともできますよ」

ポイント

  • 時間帯や頻度を具体的に伝える
  • 「慣れる」という実体験を紹介する
  • 追加内見の提案で誠実さをアピールする

実践トーク集:よくあるマイナスポイント別の対応例

ケース1:1階物件で防犯面が心配

「1階のデメリットとして防犯面を気にされる方は多いです。この物件の場合、モニター付きインターホンディンプルキーが標準装備です。また、人通りのある表通りに面しているので、むしろ死角が少ないという見方もできます。女性の一人暮らしでも安心してお住まいの方がいらっしゃいますよ」

ケース2:バス便のみでアクセスが不便

「確かに最寄り駅までバスで15分なので、電車派の方には不便かもしれません。ただ、バスの本数は1時間に8本ありますし、このエリアの家賃相場より1.5万円安いんです。在宅勤務が週3日以上の方や、車通勤の方には逆にコスパが良いとご好評いただいています」

ケース3:隣室との壁が薄そう

「防音性能についてご心配ですね。正直に申し上げると、築年数的に最新のマンションほどの遮音性はありません。ただ、隣室との間に収納スペースが配置されていて、一般的な木造アパートよりは音が伝わりにくい構造です。どうしても気になる場合は、防音カーテンや吸音パネルでかなり改善できます」

ケース4:近くにスーパーがない

「徒歩圏内に大型スーパーはありません。ただ、コンビニが2軒あり、ネットスーパーの配送エリア内です。最近は週末にまとめ買いして平日はネットスーパーという方も増えていて、むしろ無駄遣いが減ったという声もあります」


誠実な営業を「組織」で実現するために

個人の努力だけでは限界がある。正直な物件説明を組織として定着させるための仕組みづくりが重要だ。

1. 物件情報シートの「デメリット欄」を標準化

物件ごとに、メリットだけでなく考えられるデメリットと対応策を事前に整理しておく。これにより、誰が案内しても一貫した説明ができる。

記載例

  • デメリット:線路沿いで日中は電車の音あり
  • 対応策:終電後は静か/窓を閉めればテレビ音量は普通で視聴可能
  • 向いている顧客像:在宅時間が短い方、音に鈍感な方

2. ロールプレイング研修の実施

マイナスポイントの伝え方は練習が必要だ。ベテラン社員のトークを共有し、ロールプレイングで体得する機会を定期的に設ける。

3. 成功事例の共有

「正直に伝えたから成約できた」という成功体験を社内で共有する。これにより、「隠さなくていい」というマインドセットが組織に浸透する。


フランチャイズ加盟で「誠実な営業」を加速させる

こうした組織づくりを一から行うのは、特に中小規模の不動産会社にとって負担が大きい。

ハウスコムフランチャイズでは、加盟店向けに営業ノウハウの共有やベンチマークセミナーを定期的に開催している。直営約200店舗で培った接客手法や、他の加盟店の成功事例に触れることで、「誠実な営業」を効率的に組織に取り入れることができる。

また、物件情報の一元管理システムや業務支援ツールがロイヤリティに含まれており、物件ごとの詳細情報(デメリット含む)を社内で共有しやすい環境が整っている。

「正直な物件説明」で顧客の信頼を勝ち取り、持続可能なビジネスを構築したい方は、ぜひ一度ハウスコムフランチャイズの資料を請求してみてほしい。


まとめ:誠実さは「コスト」ではなく「投資」

物件のマイナスポイントを正直に伝えることは、短期的には成約率を下げるリスクがあるように感じるかもしれない。しかし、データが示すように、今の顧客は複数社を比較し、誠実な対応をする会社を選んでいる

正直に話すことで得られるもの:

  • 顧客からの信頼
  • クレームの減少
  • 良い口コミによる新規顧客の獲得
  • オーナーからの信頼向上

誠実さはコストではなく、長期的なリターンを生む投資だ。

今日から、物件のマイナスポイントを「隠すべきもの」ではなく「信頼を築くきっかけ」として捉えてみてほしい。その姿勢が、選ばれる不動産会社への第一歩になる。


    本記事は、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)「不動産情報サイト利用者意識アンケート調査(2025年10月発表)」のデータを参照しています。