不動産賃貸仲介の電子契約、まだ導入していないのは”損”かもしれない──業務効率化とコスト削減を同時に叶える最前線レポート

「紙の契約書に追われる日々から、そろそろ卒業しませんか。」

不動産賃貸仲介の現場では、契約のたびに印刷、製本、押印、郵送、保管――膨大な紙業務が当たり前のように続いてきた。しかし2022年5月の宅建業法改正による電子契約の全面解禁から約3年が経過し、業界の風景は確実に変わり始めている。

2025年の調査では、賃貸仲介会社の電子契約利用率は80%を超え、エンドユーザーの約25%が電子契約の利用経験を持つまでに浸透した。一方で、全体の約4割の不動産会社がいまだ未導入という現実もある。「自社にはまだ早い」「取引先が対応していない」――そんな声も聞こえるが、果たして本当にそうだろうか。

本記事では、不動産賃貸仲介業者の目線から、電子契約の導入メリット・デメリット、法的要件、導入のステップ、そして業務効率化の具体的なヒントまでを余すところなくお伝えする。読み終えたとき、あなたの会社が次に踏み出すべき一歩が明確になるはずだ。


Table of Contents

不動産業界で電子契約が「全面解禁」された背景を押さえる

2022年5月、宅建業法改正で何が変わったのか

不動産取引の電子化が大きく動いたのは、2021年5月に可決されたデジタル改革関連法がきっかけだ。この法律の施行を受け、2022年5月に宅建業法と借地借家法が改正された。それまで紙での交付が義務付けられていた重要事項説明書、賃貸借契約書、媒介契約書などが電子データでの交付・保管が可能になった。

具体的には、次の書類が電子化の対象となっている。

  • 重要事項説明書(35条書面)
  • 賃貸借契約書(37条書面)
  • 媒介契約書
  • レインズ登録証明書

宅建士の記名・押印も不要となり、従来は対面で数時間かけていた契約手続きが、オンラインで完結できる道が開かれた。

IT重説の定着が電子契約普及の”下地”をつくった

実は、電子契約の全面解禁より前に布石は打たれていた。2017年から始まった「IT重説」(ITを活用した重要事項説明)の社会実験と本格運用だ。Zoomなどのオンライン会議ツールを用いた重要事項説明が定着したことで、不動産業者と顧客の双方が「非対面でも取引は進められる」という感覚を身につけた。この経験が、電子契約への移行をスムーズにする土壌となっている。


数字で見る、電子契約の普及リアル

賃貸仲介会社の導入率は急伸中

いえらぶGROUPが2025年5月に発表した調査(不動産会社214社、エンドユーザー1,192名対象)によれば、電子契約を「現在利用している」不動産会社は58.9%に達している。なかでも賃貸仲介会社の利用率は突出して高く、80%超という水準にある。

2023年の調査時点では不動産会社全体の利用経験が34.1%だったことを考えると、わずか2年で急速に浸透したことがわかる。

エンドユーザーの期待値は高い

同調査ではエンドユーザーの電子契約利用経験も24.8%に上昇。特に20代以下は前年比14.2ポイント増と、若年層を中心に「電子契約で当たり前」という認識が広がっている。40代でも利用率は約22%に達し、もはや一部のデジタルネイティブだけの話ではない。

注目すべきは、エンドユーザーの6割以上が「電子契約を使いたい」と回答している点だ。つまり、顧客側のニーズがすでに先行しているにもかかわらず、不動産会社側が追いつけていない構図がある。

中小事業者ほど導入が遅れるジレンマ

不動産流通推進センターの調査(2023年3月発表)では、従業員30人以上の企業で電子契約導入率が23.5%だった一方、従業員1〜4人の事業者では5%未満にとどまった。国土交通省の統計によれば、宅建業者約13万社のうち9割以上が従業員10人以下の小規模事業者だ。つまり、業界全体で見れば導入のポテンシャルはまだ膨大に残されている。


電子契約が不動産賃貸仲介にもたらす5つのメリット

メリット①:契約リードタイムの劇的短縮

紙の契約では、書類の印刷・製本から郵送、相手方の記入・押印、返送まで、最短でも数日から1週間を要するのが通常だ。電子契約ならPDFをクラウドにアップロードし、メールやSMSで署名依頼を送信するだけ。最短数時間で契約が完了する。

「申し込みから契約完了までのスピードが上がれば、キャンセル率は下がる」——現場の声は切実だ。特に繁忙期(1〜3月)の業務負荷を考えると、このスピード感は競争力そのものになる。

メリット②:印紙税ゼロ&コスト削減

電子契約にかかるコスト面のインパクトは大きい。紙の契約書には印紙税が課されるが、電子データでやりとりする契約書は課税対象外だ。賃貸借契約では印紙税は比較的少額だが、売買契約も手がける事業者であれば、契約金額によっては数万円〜数十万円の印紙税が1件ごとにかかる。

印紙税だけではない。用紙代、インク代、郵送費、封筒代、さらには書類保管のためのスペースコストまで含めると、1契約あたりの削減効果は想像以上に大きい。マネーフォワードが2025年5月に実施した調査(電子契約業務経験者1,563名対象)でも、「費用削減」(35.6%)と「工数削減」(34.4%)が電子契約のメリットとして最多回答だった。

メリット③:ペーパーレス化による保管リスクの軽減

コクヨの調査によれば、ビジネスパーソンは書類を探す作業に年間約80時間を費やしているという。Sansanの調査(2024年、800名対象)では、契約書を探すだけで一人あたり月10時間かかっている実態も明らかになった。

電子契約ならクラウド上に全契約データを集約でき、キーワード検索で瞬時に必要な書類にたどり着ける。紛失リスクもゼロに近い。さらに、災害時のBCP(事業継続計画)の観点でも、クラウド保管は紙に比べて圧倒的に優位だ。

いえらぶGROUPの調査でも、電子契約導入メリットの第1位は「ペーパーレス」(61.5%)。特に賃貸管理会社では75.0%がペーパーレスのメリットを実感しているという。

メリット④:顧客満足度と成約率の向上

来店不要で契約が完結するメリットは、顧客視点で見ると非常に大きい。平日は仕事で時間が取れない会社員、小さな子どもがいて外出が難しい方、転勤で遠方にいる方――これまで「契約のためだけに来店する」ことがハードルだった潜在顧客層を取り込める。

「いつでもどこでも契約できる」ことは、他社との差別化要因にもなる。電子契約に対応しているかどうかで、物件探しの段階から選ばれる不動産会社が変わる時代が来ている。

メリット⑤:働き方改革への貢献

電子契約の導入は、従業員の働き方を変える力もある。契約業務がオンラインで完結すれば、リモートワークとの親和性が高まる。繁忙期に深夜まで書類整理に追われるような状況を緩和し、スタッフの定着率向上やモチベーション維持にも寄与する。人手不足が慢性的な不動産業界にとって、これは見過ごせない効果だ。


見落としがちな注意点とデメリットにも目を向ける

取引先・オーナーとの調整が最大の壁

電子契約の導入障壁として最も多く挙がるのが「取引先との調整が大変」(37.7%)という声だ。電子契約はあくまで契約当事者全員の同意が前提となる。貸主であるオーナーや管理会社がデジタルに不慣れな場合、紙と電子の二重運用が発生し、かえって業務が煩雑になるリスクがある。

実務上は「新規契約は電子、オーナーが紙を希望する場合は紙」といったハイブリッド運用でスタートし、段階的に電子化比率を高めていく方法が現実的だ。

電子帳簿保存法への対応は”待ったなし”

電子契約を導入する以上、避けて通れないのが電子帳簿保存法への対応だ。2024年1月からは、電子データで受け取った取引書類は電子データのまま保存することが義務化されている(紙に印刷しての保存は原則禁止)。

保存にあたっては、以下の要件を満たす必要がある。

  • 真実性の確保:タイムスタンプの付与、または訂正・削除の履歴が残るシステムの利用
  • 可視性の確保:取引年月日、取引金額、取引先の3項目で検索できること
  • 速やかな出力:税務調査時に画面表示・書面出力ができること

「導入したはいいが、保存要件を満たしていなかった」というケースは意外と多い。電子契約サービスを選ぶ際は、電子帳簿保存法対応を明記しているサービスかどうかを必ず確認したい。

セキュリティとシステムコストの検討

電子契約サービスの利用には月額費用やライセンス料がかかる。初期費用(システム導入費、初期登録費用)とランニングコスト(月額利用料、サポート費用)を事前に見積もり、印紙税や郵送費などの削減額と比較検討することが重要だ。

また、サイバーセキュリティへの意識も欠かせない。電子署名のなりすまし防止のため、SMS認証やアクセスコードを活用できるサービスを選ぶことで、安全性を高められる。


電子契約を導入する具体的なステップ

Step 1:現行の契約業務フローを棚卸しする

まずは「いま何にどれだけ時間とコストがかかっているか」を可視化する。契約書の種類ごとに、作成→印刷→押印→郵送→返送→保管の各工程にかかる時間・費用を洗い出そう。これが導入後のROI(投資対効果)を測る基準になる。

Step 2:電子契約サービスを比較選定する

不動産業界向けの電子契約サービスは複数存在するが、選定時に重視すべきポイントは次の通りだ。

  • 宅建業法への準拠:国土交通省のガイドラインに対応しているか
  • 電子帳簿保存法への対応:タイムスタンプ機能、検索機能が備わっているか
  • 三者間契約への対応:仲介会社・貸主・借主の複雑なフローに対応できるか
  • 操作の簡便さ:ITリテラシーが高くないスタッフでも使えるか
  • SMS送信機能:メールだけでなくSMSで署名依頼を送れるか(なりすまし防止にも有効)
  • コストパフォーマンス:月額費用、1件あたりの送信コストが事業規模に見合うか

Step 3:社内ルールの整備と教育

電子契約の導入は「システムを入れて終わり」ではない。以下の準備が不可欠だ。

  • 事務処理規程の策定:電子帳簿保存法に対応した改ざん防止のルールを明文化
  • ファイル命名規則の統一:「日付_取引先名_金額」のような命名ルールを全社で共有
  • スタッフ向け研修:基本操作だけでなく、顧客への説明方法もロールプレイで練習

Step 4:スモールスタートで成功体験を積む

いきなり全契約を電子化するのではなく、まずは更新契約や社内の同意書類など、比較的シンプルな契約から電子化を始めるのが得策だ。成功体験を積み、社内の抵抗感を払拭してから新規賃貸借契約に拡大していくとスムーズだ。

Step 5:KPIを設定し、効果を定量的に検証する

「契約完了までの平均日数」「1契約あたりのコスト」「キャンセル率」など、定量的なKPIを設定して導入前後を比較する。数値で効果が見えれば、社内の合意形成も進みやすい。


知っておくと差がつく、電子契約の実務Tips

Tip 1:顧客への「承諾取得」を丁寧に

電子契約を行うためには、事前に顧客から「電子的方法で書面を交付してよい」という承諾を得る必要がある。承諾書そのものを電子契約で取得するという方法もあり、顧客に電子契約を体験してもらうことで不安を解消する効果もある。

Tip 2:高齢者やIT不慣れな顧客への配慮

「電子契約はハードルが高い」と感じる顧客には、店舗で一緒に画面を操作するサポート体制を用意すると安心感が生まれる。紙と電子の両方を選べる柔軟な体制を整えておくことが、顧客満足度を落とさないコツだ。

Tip 3:電子契約×IT重説のセット運用で最大効率

IT重説と電子契約を組み合わせれば、物件探しから契約完了まで、一度も来店することなく賃貸借契約を完結できる。遠方からの転勤者や海外在住者にとっては、これ以上ない利便性だ。

Tip 4:繁忙期こそ電子契約の”真価”が問われる

1月〜3月の繁忙期は契約件数が集中し、紙業務のボトルネックが顕在化しやすい。逆にいえば、電子契約の導入効果が最も実感できるタイミングでもある。繁忙期前の10〜12月に導入・テスト運用を完了させておくのが理想的なスケジュールだ。

Tip 5:電子契約データを経営に活かす

電子化された契約データはそのままデジタルアセットとなる。契約件数の推移、エリア別の傾向、契約完了までのリードタイム分析など、データ活用による経営判断の高度化にもつながる。


フランチャイズ加盟がDX推進のショートカットになる理由

“一社単独”でのDX推進には限界がある

電子契約の導入は、サービスの選定から社内教育、運用ルールの整備、トラブル対応まで、多岐にわたる準備が必要だ。特に従業員10名以下の中小事業者が独力でこれらをこなすのは、時間的にも人材的にもハードルが高い。

「導入したいが、何から始めればいいかわからない」「担当できる人材がいない」——このような声は、まさに業界の大多数を占める中小事業者のリアルだ。

ハウスコムFCなら業務システムがロイヤリティに含まれる

こうした課題に対するひとつの解が、フランチャイズへの加盟だ。たとえば、ハウスコムフランチャイズでは、大手不動産テック企業の基幹システム(コンバータ・顧客管理・契約管理の3点セット)をロイヤリティに含む形で提供している。つまり、加盟店は業務システムの選定・導入コストを別途負担することなく、電子契約を含むDX環境を整備できる。

さらに、ハウスコムは1998年の設立以来、約200店舗の直営店を展開してきた実績を持ち、そのノウハウが加盟店にも共有される。「何を」「どう使えば」効果的かという知見は、一社で試行錯誤するよりもはるかに効率的に吸収できる。

加盟店同士のネットワークで情報が集まる

ハウスコムFCでは定期的に加盟店が集う会合が開催されており、各加盟店の成功事例や運用上の工夫がリアルタイムで共有される。電子契約の運用で「こういうトラブルがあった」「こうしたら顧客の反応が良かった」といった生きた情報は、公開セミナーや書籍からは得られない貴重なものだ。

また、本部スタッフによる定期巡回(リアル・オンライン)で、導入時の不明点や運用上の課題に対しても伴走型のサポートが受けられる。

ブランド力が電子契約の導入交渉を後押し

電子契約の導入にあたっては、取引先であるオーナーや管理会社の同意が不可欠だ。「ハウスコム」という知名度とブランド力は、オーナーへの説明や交渉において大きなアドバンテージとなる。個人店の名前では動かなかったオーナーも、全国規模のブランドを背景にした提案であれば、前向きに検討してくれる可能性が高まる。


まとめ:電子契約は”やるかやらないか”ではなく”いつやるか”

不動産賃貸仲介における電子契約は、もはや「先進的な取り組み」ではなく「標準装備」になりつつある。法整備は完了し、顧客ニーズは先行し、導入企業の過半数がメリットを実感している。残された課題は「いつ、どうやって始めるか」に集約されている。

電子帳簿保存法への対応義務化が始まった今、「紙のままでいい」は現実的な選択肢とは言い難い。中小事業者ほど導入のハードルを感じやすいが、フランチャイズ加盟という選択肢を活用すれば、システム面・ノウハウ面・コスト面のすべてで導入障壁を下げることが可能だ。

契約業務の効率化は、単なるコスト削減にとどまらない。空いた時間で顧客対応を充実させ、成約率を高め、スタッフの働きやすさを向上させる——その好循環の起点が、電子契約にはある。

まずは自社の契約業務を棚卸しすることから始めてみてはいかがだろうか。その一歩が、貴社の経営を次のステージへ引き上げるきっかけになるはずだ。