賃貸仲介の成約率を左右する「築年数」と「設備」―顧客の本音から読み解く差別化戦略

契約を決める最後の一押しは「新しさ」と「設備充実度」にあった
賃貸物件を探す顧客が最終的に契約を決断する際、何を最も重視しているのか。家賃や立地が重要なのは言うまでもないが、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年に実施した調査結果は、仲介業者にとって見逃せない事実を浮き彫りにした。
「物件の新しさ(築年数)」を気にすると回答した賃貸検討者は23.5%。一見、それほど高い数字には見えないかもしれない。しかし、「建物のコンディション・設備状況」を重視する層が30.2%、「耐震性能」が19.6%と、これらを合わせると実に7割以上の顧客が物件の状態や設備面を契約判断の材料にしているのだ。
この数字が示すのは明確である。家賃交渉や立地条件で競合他社と横並びになった時、最後の決め手となるのは「この物件は新しくて快適そうだ」という顧客の実感なのである。
データが証明する築年数・設備へのこだわり―賃貸と売買で異なる重視度
2025年の調査では、契約時に「物件の新しさ(築年数)」を気にする層は、賃貸で23.5%だったのに対し、売買では31.7%と約8ポイント高い結果となった。売買では資産価値の観点から築年数がより重視される傾向にあるが、賃貸においても4人に1人近くが築年数を判断基準としているのは注目に値する。
さらに興味深いのは、「建物のコンディション・設備状況」の項目だ。賃貸では30.2%が気にすると回答し、これは「交通の利便性」(42.0%)、「広さ、間取り」(35.0%)に次ぐ第5位に位置する。築年数そのものよりも、実際の設備の充実度や状態を重視する層が一定数存在することがわかる。
この傾向は年々強まっている。大手不動産ポータルサイトでの物件検索において、「築年数指定」や「設備条件での絞り込み」機能の利用率は上昇傾向にある。コロナ禍を経て在宅時間が増えたことで、居住空間の快適性への意識が高まったことも背景にあるだろう。
なぜ今、築年数と設備が重視されるのか―3つの社会的背景
1. 情報の透明化による比較検討の深化
大手不動産ポータルサイトの普及により、顧客は契約前に平均5.9物件に問い合わせを行っている(2025年RSC調査・賃貸)。2024年の4.1物件から大幅に増加したこの数字は、顧客が複数物件を詳細に比較検討している実態を示す。
写真の掲載枚数、設備の詳細情報、築年数の明示―これらすべてが簡単に比較できる環境下では、わずかな差異が契約の決め手となる。「築15年」と「築10年」、「エアコン付き」と「エアコン・浴室乾燥機付き」といった違いが、顧客の選択を大きく左右する時代になっているのだ。
2. ライフスタイルの変化と設備への期待値上昇
在宅勤務の普及、EC利用の増加、健康志向の高まり―こうしたライフスタイルの変化は、賃貸物件に求められる設備水準を押し上げている。
宅配ボックス、高速インターネット対応、独立洗面台、浴室乾燥機といった設備は、かつては「あれば嬉しい」レベルだったが、今や「ないと困る」必須設備へと変化しつつある。特に若年層やファミリー層においてこの傾向は顕著で、築年数が古くても設備をリノベーションで更新した物件は、築浅物件と同等の人気を集めるケースも増えている。
3. 省エネ性能への関心の高まり
同調査によれば、住まいを選ぶ上で省エネ性能を「重要」または「どちらかというと重要」と考える層は全体の78.6%に達した。賃貸では74.9%と売買(83.9%)よりやや低いものの、前年から10.3ポイント増加しており、関心の高まりは明白である。
築年数の新しい物件は断熱性能が高く、光熱費を抑えられる可能性が高い。また、LED照明や節水型設備などが標準装備されているケースも多い。こうした経済的メリットが、築年数や設備を重視する動機の一つとなっている。
仲介業者が実践すべき「新しさ」と「設備」の効果的アピール法
ポイント1:築年数だけでなく「実質的な新しさ」を伝える
築年数が経過した物件であっても、リフォーム・リノベーション履歴があれば積極的にアピールすべきだ。
実践例:
- 「築25年ですが、2023年に水回りを全面リノベーション」
- 「外壁塗装・屋上防水工事を2024年に実施済み」
- 「エアコン・給湯器を昨年交換、メーカー保証付き」
こうした情報を物件資料や大手不動産ポータルサイトの備考欄に明記することで、築年数の数字だけでは伝わらない物件の価値を可視化できる。写真も「リノベーション後」の状態を中心に掲載し、清潔感と快適性を前面に打ち出すべきである。
ポイント2:設備情報は「生活シーンに紐付けて」提示する
単に「浴室乾燥機付き」と記載するだけでは不十分だ。顧客がその設備を使うシーンをイメージできるよう、具体的なメリットを添えることが重要である。
効果的な記載例:
- ❌「独立洗面台付き」
- ⭕「独立洗面台付き―朝の身支度もスムーズ、収納スペースも充実」
- ❌「宅配ボックス完備」
- ⭕「宅配ボックス完備―不在時も荷物を受け取れ、再配達の手間ゼロ」
- ❌「追い焚き機能付き」
- ⭕「追い焚き機能付き―帰宅時間が異なるご家族も、いつでも温かいお風呂に」
このように、設備がもたらす「暮らしやすさ」を具体的に伝えることで、顧客の共感を得やすくなる。
ポイント3:写真枚数と質で「安心感」を醸成する
RSC調査によれば、不動産会社を選ぶポイントとして「写真の点数が多い」が最多の67.9%(賃貸)を占めた。これは3年連続での上昇傾向であり、顧客が物件の詳細を視覚的に把握したいと強く望んでいることを示している。
写真掲載の黄金律:
- 最低20枚以上を目標に―玄関、各部屋、水回り、収納、建物外観、共用部など
- 設備のアップ写真を忘れずに―コンロ、浴室乾燥機、インターホン、宅配ボックスなど
- 明るい時間帯に撮影―自然光が入る状態で撮影し、清潔感を強調
- 同じアングルから撮影しない―多角的に部屋の広さや間取りを伝える
また、設備が新しいことをアピールできる場合は、写真のキャプションに「2024年交換」「新品」などと明記するとより効果的だ。
ポイント4:「耐震性能」「省エネ性能」を具体的数値で示す
調査では「災害のリスクが少ない地域である」ことを重視する層が賃貸で19.8%、売買では35.2%に上った。また省エネ性能への関心も高まっている。
これらのニーズに応えるには、抽象的な表現ではなく具体的なデータを提示することが重要だ。
具体例:
- 「新耐震基準適合(1981年以降建築)」
- 「住宅性能表示制度における耐震等級2取得」
- 「断熱等性能等級4適合―年間光熱費を約15%削減」
- 「LED照明全室採用―従来型照明と比べ電気代約80%カット」
こうした情報は、特に売買だけでなく長期居住を前提とした賃貸検討者(ファミリー層など)に有効である。
ポイント5:オーナー向け提案で物件価値を向上させる
仲介業者として差別化を図るには、顧客に物件を紹介するだけでなく、オーナーに対して「築年数の古さをカバーする設備投資」を提案する姿勢も重要だ。
オーナーへの提案例:
- 「宅配ボックスの設置で入居率10%向上の事例あり」
- 「ウォシュレット設置(1戸あたり3万円程度)で成約率アップ」
- 「インターネット無料化で家賃を月額2,000円上げられた実績」
- 「エアコン新品交換で入居者の満足度向上、長期入居につながる」
こうした提案により、管理物件の競争力を高め、結果として自社の仲介実績向上にもつながる。築古物件であっても、戦略的な設備投資で十分に戦える市場を作り出すことができるのだ。
「情報提供力」が仲介業者の評価を分ける
RSC調査で明らかになったもう一つの重要な事実がある。不動産会社に求めるものとして「丁寧・誠実な対応」がトップ(69.1%)だったのに次ぎ、「正確な物件情報の提供」が2位(59.3%)にランクインしたことだ。
顧客が物件を検討する際、担当者に求めているのは単なる案内役ではない。築年数や設備について質問された際、即座に正確な情報を提供できるか、その設備がどのようなメリットをもたらすかを説明できるか―こうした「情報提供力」が、成約率を大きく左右する。
例えば、「この物件は築15年ですが、大規模修繕を2年前に実施済みで、外壁や配管は新築同様です。また浴室は3年前にユニットバス交換済みで、浴室乾燥機も新しいので、洗濯物の室内干しも快適ですよ」といった説明ができれば、築年数への不安を払拭し、むしろ設備の新しさを強みに転換できる。
こうした対応を可能にするには、物件情報の事前把握はもちろん、建築・設備に関する基礎知識、さらにはライフスタイル提案力が求められる。これは個人の努力だけでは限界があり、組織としての教育体制やノウハウ共有の仕組みが不可欠となる。
ハウスコムFCが提供する「差別化のための武器」
ここまで見てきたように、築年数と設備を効果的にアピールするには、単なる物件紹介を超えた戦略と実行力が必要だ。そして、こうした高度な仲介業務を支えるのが、フランチャイズ本部が提供する各種サポートである。
ハウスコムFCに加盟することで得られるメリットは多岐にわたるが、特に「新しさ」と「設備」のアピールという観点では、以下の点が大きな強みとなる。
1. 充実した物件情報システムと写真・動画コンテンツ
大手不動産ポータルサイトへの物件掲載において、写真枚数の多さが成約率を左右することは前述の通りだ。ハウスコムFCでは、本部が蓄積してきた撮影ノウハウやテンプレートを加盟店に提供し、効果的な物件訴求を支援する。
また、設備の詳細情報を漏れなく記載するためのチェックリストや、顧客に響く表現方法のマニュアルも整備されており、経験の浅いスタッフでも高品質な物件情報を作成できる。
2. 研修・教育プログラムによる提案力向上
築年数や設備について顧客から質問された際、的確に答えられるかどうかは担当者の知識レベルに依存する。ハウスコムFCでは、定期的な研修を通じて、建築・設備に関する基礎知識、最新の設備トレンド、効果的な説明話法などを体系的に学ぶことができる。
例えば、「追い焚き機能と自動湯張り機能の違い」「都市ガスとプロパンガスのコスト差」「高速インターネット対応と光回線対応の違い」など、顧客が疑問に思いやすいポイントを事前に押さえておくことで、商談時の説得力が格段に高まる。
3. オーナー向け提案ツールとリノベーション事例集
築古物件の競争力を高めるには、オーナーへの設備投資提案が有効だが、個人店舗では説得材料が不足しがちだ。ハウスコムFCでは、全国の加盟店で蓄積された成功事例やROI(投資対効果)データを共有しており、オーナーへの提案時に活用できる。
「宅配ボックス設置で空室期間が平均30日短縮」「ウォシュレット追加で成約率15%向上」といった具体的なデータがあれば、オーナーも投資判断がしやすくなり、結果として自社の取扱物件の質向上につながる。
4. ブランド力による信頼性の向上
顧客が不動産会社を選ぶ際、「大手・有名企業である」ことを重視する層は一定数存在する。特に初めて賃貸物件を借りる若年層や、転勤で土地勘のないエリアに引っ越す層にとって、知名度のあるブランドは安心材料となる。
ハウスコムというブランドを掲げることで、個人店舗では得られない信頼感を獲得でき、初回接触から成約までのハードルを下げる効果が期待できる。
5. 最新の市場動向と顧客ニーズの共有
賃貸市場のトレンドは刻々と変化する。今日は築年数と設備が重視されているが、数年後には別の要素が重要になるかもしれない。ハウスコムFCでは、本部が市場調査や顧客アンケートを定期的に実施し、その結果を加盟店と共有する。
これにより、「今、顧客が何を求めているか」をタイムリーに把握でき、物件紹介の方法や営業トークを常に最適化できる。個人店舗が独自にこうした調査を行うのは困難だが、FC本部のリソースを活用することで、常に市場の一歩先を行く営業活動が可能になる。
まとめ―「新しさ」と「設備」を武器に変える時代へ
家賃や立地といった基本条件が横並びになりつつある今、契約の決め手となるのは「新しさ」と「設備充実度」である。顧客の23.5%が築年数を、30.2%が設備状況を重視している事実は、仲介業者にとって無視できない数字だ。
しかし、築年数が古い物件を扱う仲介業者にとって、これは決して不利な状況ではない。むしろ、リノベーション履歴や設備の更新状況を適切にアピールし、オーナーに戦略的な投資を提案することで、築古物件を「実質的に新しい物件」として市場に送り出すことができる。
そのために必要なのは、情報提供力、提案力、そして顧客の潜在ニーズを引き出す対話力である。これらを個人の力だけで磨き続けるのは容易ではないが、ハウスコムFCのような仕組みを活用すれば、組織的なノウハウと最新の市場情報を武器に、確実に成約率を高めていくことができる。
「築年数」と「設備」―この2つのキーワードを味方につけ、顧客に選ばれる仲介業者へと進化する。その第一歩を、今、踏み出してみてはいかがだろうか。


