顧客の55.3%が求める「周辺施設情報」で成約率を変える——選ばれる不動産仲介会社の提案術

物件のスペックだけでは、もう選ばれない時代になった。
不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」の最新調査によれば、物件を契約した顧客が「物件情報以外に必要だと思う情報」として挙げたものの中で、「周辺の施設情報」は55.3%と2番目に高い数値を記録した。1位の「周辺情報」(69.3%)に続き、顧客が物件選びで重視する要素として、周辺環境に関する情報提供の重要性が浮き彫りになっている。
賃貸の問い合わせ会社数が過去11年で最多を更新し、顧客が平均3.3社を比較検討する時代。他社との差別化を図るには、物件そのものの魅力だけでなく、「この街で暮らす価値」を伝える提案力が不可欠だ。本記事では、周辺施設情報を戦略的に活用し、物件価値を高める具体的な手法を解説する。
なぜ今、周辺施設情報が重要なのか
比較検討が当たり前になった顧客行動の変化
同調査では、物件を契約するまでに問い合わせた不動産会社数は全体で平均3.5社。賃貸に限れば平均3.3社と、2015年以降で最多となった。さらに、問い合わせた物件数も賃貸で平均5.8物件と増加傾向にある。
この数字が示すのは、顧客がより慎重に、より多くの選択肢を比較検討しているという事実だ。物件の間取りや設備、賃料といった基本情報は、大手不動産ポータルサイトで簡単に比較できる。だからこそ、顧客は「この物件ならでは」の付加価値を求めている。
周辺施設情報は、まさにその付加価値の核心をなす情報である。
物件情報だけでは伝わらない「暮らしの質」
物件契約時に顧客が気にするポイントを見ると、賃貸では「駅の利便性」や「建物・部屋の綺麗さ」が上位を占める一方で、売買では「省エネ性能」や「災害のリスクが少ない地域である」といったハザード情報が重視される傾向がある。
しかし、賃貸・売買を問わず共通して高い関心を集めているのが、周辺環境に関する情報だ。「地域の治安(安全さ)」は55.0%、「街の雰囲気・評判」は41.0%の顧客が必要な情報として挙げている。
つまり、顧客は物件そのものだけでなく、「その物件で暮らすとどんな日常が待っているのか」を具体的にイメージしたいと考えているのだ。
周辺施設情報を効果的に伝える7つの実践テクニック
1. ターゲット別の施設情報を整理する
すべての施設情報を羅列しても、顧客の心には響かない。重要なのは、ターゲットとなる顧客層に合わせた情報の取捨選択だ。
単身者向け物件の場合
- コンビニエンスストア(24時間営業の有無)
- スーパーマーケット(営業時間、深夜営業の有無)
- クリーニング店
- ジム・フィットネス施設
- 飲食店(テイクアウト対応店含む)
ファミリー向け物件の場合
- 小学校・中学校(学区情報と通学距離)
- 保育園・幼稚園(待機児童状況)
- 小児科・総合病院
- 公園・児童館
- 学習塾・習い事教室
シニア向け物件の場合
- 総合病院・クリニック
- 調剤薬局
- スーパーマーケット(配達サービスの有無)
- 銀行・郵便局
- 公共交通機関のバリアフリー状況
2. 「徒歩○分」に具体性を持たせる
物件情報でよく見かける「駅徒歩○分」「スーパー徒歩○分」という表記。これだけでは、顧客の判断材料としては不十分だ。
たとえば、「徒歩5分」と聞いても、その道のりが信号の多い大通り沿いなのか、静かな住宅街を抜ける道なのかで、体感時間は大きく異なる。また、坂道の有無やアーケードの有無(雨天時の利便性)といった要素も、実際の暮らしやすさに直結する。
物件案内時には、以下のような情報を補足することで、より具体的なイメージを提供できる。
- 「最寄りのスーパーまで徒歩4分。帰り道なので買い物がしやすいです」
- 「駅までの道は平坦で、信号は1つだけ。朝の通勤時でも混雑しません」
- 「商店街を通るルートなら、雨の日でもほぼ濡れずに駅まで行けます」
3. 「ないもの」より「あるもの」を起点に語る
周辺に大型商業施設がない、駅から遠いといったネガティブ要素は、伝え方次第でポジティブに転換できる。
「駅から徒歩15分で遠い」という事実は、「駅前の喧騒から離れた閑静な住宅街」と言い換えられる。「近くに大型スーパーがない」は、「個人商店が充実していて、新鮮な食材が手に入る」という魅力に変わる。
重要なのは、ネガティブ要素を隠すことではなく、その環境だからこそ得られるメリットを顧客に伝えることだ。顧客が求めているのは「完璧な物件」ではなく、「自分のライフスタイルに合った物件」である。
4. 季節・時間帯による変化を伝える
周辺施設の情報は、静的なものではない。季節や時間帯によって、その価値は大きく変わる。
たとえば、物件近くの公園。春には桜が咲き、夏には地域の盆踊りが開催され、秋には紅葉が楽しめる——こうした情報は、単に「公園徒歩2分」という表記だけでは伝わらない。
また、最寄りのスーパーが「平日夜10時まで営業」という情報は、残業が多い顧客にとっては決定的な価値となる。逆に、「日曜定休」という情報を伝え忘れれば、入居後のトラブルにつながりかねない。
時間帯による街の雰囲気の変化も、伝えるべき重要な情報だ。「夜は静かで落ち着いている」「朝は通学する子どもたちで賑わう」といった情報は、顧客が「この街で暮らす自分」をイメージする助けとなる。
5. 地図・写真を活用したビジュアル提案
言葉だけで周辺環境を伝えることには限界がある。顧客の理解を深めるには、視覚的な情報提供が効果的だ。
オリジナル周辺マップの作成 物件を中心とした周辺マップを作成し、主要施設をマーキングする。Googleマップのスクリーンショットに手書きで情報を加えるだけでも、オリジナリティのある資料になる。
マップには以下の情報を含めると効果的だ。
- 主要施設までの徒歩時間
- おすすめの買い物ルート
- 通勤・通学の動線
- 地元民おすすめのスポット
実際の街並み写真 物件周辺の街並みや施設の外観写真は、顧客が「暮らしのイメージ」を具体化する手助けとなる。特に遠方からの転居を検討している顧客にとって、写真は貴重な判断材料だ。
撮影のポイントとしては、晴れた日の昼間だけでなく、夜間の街灯の様子や、雨天時のアーケードの状況なども撮影しておくと、より実用的な情報を提供できる。
6. 「地元ならではの情報」で差をつける
大手不動産ポータルサイトには掲載されていない、地元ならではの情報こそが差別化のカギとなる。
同調査によれば、不動産会社の対応で満足だったこととして「物件や不動産に詳しかった」が34.0%を記録している。この「詳しさ」には、物件そのものの知識だけでなく、地域に精通しているかどうかも含まれる。
具体的には、以下のような情報が価値を持つ。
- 地元民に愛される隠れた名店
- 地域のイベントや祭りの情報
- 近隣住民の年齢層やコミュニティの雰囲気
- 過去の災害時の状況や対応
- 将来の再開発計画や街の変化予測
こうした情報は、インターネットで調べても簡単には出てこない。だからこそ、日頃から地域との接点を持ち、情報を蓄積しておくことが重要だ。
7. ハザード情報と絡めた安心提案
「地域の治安(安全さ)」を55.0%の顧客が必要な情報として挙げている。特に売買では、ハザード情報への関心が賃貸以上に高い傾向が見られる。
周辺施設情報とハザード情報を組み合わせることで、「安心して暮らせる街」という提案が可能になる。
- 「最寄りの避難所は○○小学校で、ここから徒歩5分です」
- 「この地域は過去30年間、浸水被害の記録がありません」
- 「交番が徒歩3分の場所にあり、夜間のパトロールも頻繁です」
こうした情報は、特にファミリー層や高齢者にとって、物件選びの決め手となることが多い。
周辺施設情報の収集・管理を効率化する仕組みづくり
情報収集の仕組み化
周辺施設情報は、一度調べて終わりではない。新規出店や閉店、営業時間の変更など、常に更新が必要だ。
効率的に情報を収集・管理するには、以下の仕組みを構築することをおすすめする。
定期的な現地調査のルーティン化 月に1回程度、担当エリアを歩いて回り、変化をチェックする習慣をつける。新しくオープンした店舗や、閉店した施設を記録し、データベースに反映させる。
地域コミュニティとの連携 地元の商店会や町内会との関係を構築し、地域の情報をいち早くキャッチする。不動産会社として地域に貢献する姿勢を見せることで、自然と情報が集まる環境を作る。
オーナーからの情報収集 物件オーナーは、その地域に長く住んでいることが多い。定期的なコミュニケーションの中で、地域の情報を教えてもらえる関係を築く。
データベース化による情報共有
収集した周辺施設情報は、個人の頭の中だけでなく、チーム全体で共有できる形で管理することが重要だ。
物件ごとに周辺施設情報をデータベース化し、誰でもアクセスできる状態にしておけば、担当者が不在でも質の高い情報提供が可能になる。また、新人スタッフの教育にも活用できる。
データベースに含める情報としては、以下が考えられる。
- 施設名・カテゴリー
- 住所・物件からの距離(徒歩時間)
- 営業時間・定休日
- 特徴・おすすめポイント
- 最終更新日
顧客満足度71.5%を実現する接客との連動
同調査によれば、不動産会社の対応で満足だったことの1位は「問合せに対するレスポンスが早かった」で71.5%。次いで「こちらの都合を配慮してくれた」が51.4%となっている。
周辺施設情報の提供も、この「レスポンスの早さ」と「顧客への配慮」と連動させることで、より高い効果を発揮する。
問い合わせ段階からの情報提供
顧客からの問い合わせに対して、物件情報だけでなく周辺施設情報も併せて提供することで、「この会社は詳しい」という印象を与えられる。
たとえば、ファミリー向け物件への問い合わせに対して、「最寄りの小学校は○○小学校で徒歩10分です。学区内には評判の良い小児科もあります」といった情報を添えるだけで、他社との差別化が図れる。
内見時の「街案内」
物件の内見時に、周辺を一緒に歩きながら街を案内する手法は、顧客の心を掴む効果的なアプローチだ。
「この道をまっすぐ行くと、地元で人気のパン屋さんがあります」 「あの角を曲がると、夜でも明るい通りに出ます」
こうした案内は、単なる物件紹介を超えた「暮らしの提案」となる。顧客は「この営業担当者は本当にこの街のことを知っている」と感じ、信頼度が高まる。
成約率向上につながる周辺施設情報の活用事例
事例1:スーパーの営業時間が決め手に
30代単身女性の顧客。残業が多く、帰宅が21時を過ぎることが多いという。複数の物件を検討していたが、「最寄りのスーパーが23時まで営業している」という情報が決め手となり、成約に至った。
物件スペックでは他社提案物件とほぼ同等だったが、「日常の買い物に困らない」という安心感が差を生んだ。
事例2:子育て環境の具体的な情報提供
40代夫婦と小学生の子ども2人のファミリー。他県からの転居で、土地勘がまったくない状態だった。
物件近くの小学校の雰囲気、通学路の安全性、地域の子ども会の活動状況などを詳しく説明。さらに、小児科や学習塾の情報も提供したことで、「ここなら安心して子育てできる」と判断され、成約となった。
事例3:シニア層への配慮が信頼に
60代のご夫婦。将来の健康面を考慮して、医療機関へのアクセスを重視していた。
最寄りの総合病院までのバスルート、調剤薬局の場所、さらには訪問診療に対応しているクリニックの情報まで提供。「ここまで調べてくれるとは思わなかった」と感謝され、成約に至った。
まとめ:周辺施設情報は「選ばれる理由」を作る
顧客が平均3.3社を比較検討する時代。物件のスペックだけで差別化することは、もはや難しい。
周辺施設情報は、顧客の55.3%が求める重要な情報でありながら、多くの不動産会社が十分に活用できていない領域だ。だからこそ、ここに注力することで、他社との明確な差別化が可能になる。
重要なのは、単に施設の一覧を伝えることではない。顧客のライフスタイルに合わせて情報を取捨選択し、「この物件で暮らすとどんな日常が待っているのか」を具体的にイメージさせること。それが、成約率向上につながる周辺施設情報の活用法だ。
地域に根差した情報収集と、それを効果的に伝える提案力。この2つを磨くことが、選ばれる不動産仲介会社への第一歩となる。
ハウスコムFCが提供する情報収集・提案力強化のサポート
周辺施設情報の収集や提案力の強化には、相応のリソースと仕組みが必要だ。単独での取り組みには限界を感じている事業者も多いのではないだろうか。
ハウスコムフランチャイズでは、約200店舗の直営店で培ったノウハウを加盟店に提供している。地域情報の収集方法から、顧客への効果的な提案手法まで、実践的な支援を行っている。
また、定期的に開催されるベンチマークセミナーでは、直営店のノウハウに加え、他の加盟店のリアルな成功事例を共有。周辺施設情報の活用で成約率を向上させた事例なども、加盟店同士で学び合える環境が整っている。
本部スタッフによる定期巡回では、各店舗が抱える課題に対して、豊富な「引き出し」から解決策を提案。情報収集の仕組みづくりや、提案力強化のための研修など、個別のニーズに応じたサポートを受けられる。
「ブランド力」「売上支援」「業務支援」「ノウハウ提供」——これらを組み合わせた総合的なサポート体制が、加盟店の成長を後押しする。
周辺施設情報を武器に、選ばれる不動産仲介会社を目指す。その第一歩として、ハウスコムフランチャイズへの加盟を検討してみてはいかがだろうか。
本記事で引用したデータは、不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)が2025年10月27日に発表した「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果に基づいています。

