最初の電話で何を話す?問合せ後のコールで必ず確認すべき5つのこと

成約率を左右する「最初の60分間」の真実
大手不動産ポータルサイトからの問合せメールが届いた。その後の最初の電話対応で、あなたは何を話しているだろうか。実は、この「最初の60分間」の対応が、成約につながるかどうかを大きく左右している。
不動産情報サイト事業者連絡協議会が実施した最新調査によれば、物件契約者が不動産会社の対応で最も満足したのは「問合せに対するレスポンスが早かった」こと。賃貸で69.5%、売買で74.7%と圧倒的な支持を集めた。一方で「問合せをしたら返答が遅かった」という不満も、賃貸で17.4%、売買で14.7%に上り、初動の遅れが機会損失を招いている実態が浮き彫りになった。
顧客の期待値が変化している
近年、物件検討者の行動は大きく変化している。同調査では、契約者が問合せた物件数は平均6.9物件と直近10年で最少を記録。あらかじめ候補を絞り込んでから問合せをする傾向が強まっている。つまり、問合せをしてきた時点で、顧客の購買意欲は相当に高まっているのだ。
この貴重な商機を逃さないために、最初の電話対応で何を確認し、どう対応すべきか。本記事では、内見率を劇的に向上させる初回電話対応の実践的なノウハウをスクリプト形式で紹介する。
なぜ「最初の60分」が重要なのか
問合せが入ってから最初の1時間は、顧客の熱量が最も高いゴールデンタイムだ。大手不動産ポータルサイトで物件を見つけ、わざわざ個人情報を入力して問合せをした直後——この瞬間、顧客の「その物件を見たい」という欲求はピークに達している。
しかし、このタイミングを逃すとどうなるか。顧客は他の不動産会社にも問合せをしている可能性が高い。レスポンスの早い競合他社が先に顧客との関係を構築し、あなたの会社は「後手」に回ることになる。
調査データが示す通り、レスポンスの速さは顧客満足度のトップ要因。同時に、返答の遅さは不満の主要因でもある。この事実は、初動の重要性を物語っている。
データが証明する「速さ」の価値
同調査では、契約者が訪問した不動産会社数も減少傾向にある。賃貸で平均2.1社(前年比0.3社減)、売買で2.7社(同0.4社減)。顧客は効率的に住まい探しを進めたいと考えており、最初に好印象を与えた会社を優先的に選ぶ傾向が強まっている。
つまり、初回対応の質が高ければ、他社と比較されることなく内見、そして成約へと進める可能性が高まる。逆に、初回対応で失望させてしまえば、二度目のチャンスは訪れない。
最初の電話で確認すべき5つのポイント
それでは、問合せ後の初回電話で何を確認すべきか。内見率と成約率を高めるための5つの必須確認事項を、実際の会話スクリプトとともに紹介する。
1. 希望条件の詳細確認と物件提案の準備
目的: 問合せ物件への関心度を測り、追加提案の可能性を探る
スクリプト例:
「この度は○○の物件にお問合せいただき、ありがとうございます。
担当の△△と申します。早速ですが、いくつかご確認させていただいてもよろしいでしょうか。
まず、こちらの物件を選ばれたポイントを教えていただけますか?
(顧客の回答を受けて)
なるほど、[エリア/間取り/設備]を重視されているのですね。
他に譲れない条件や、逆に多少の妥協が可能な点などはございますか?
(顧客の回答を受けて)
承知いたしました。実は、お問合せいただいた物件と似た条件で、
[具体的な差異点]の物件も現在ご案内可能です。
よろしければ、併せてご紹介させていただきたいのですが、いかがでしょうか。」
ポイント:
- 顧客が「なぜその物件を選んだのか」を聞くことで、真のニーズを把握できる
- 条件の優先順位を理解することで、追加提案の精度が高まる
- 調査では「問合せした物件よりいい物件を紹介してくれた」が満足要因として10.8%(賃貸)挙がっており、適切な追加提案は歓迎される
2. 物件の現況と正確な情報提供
目的: 「もう無い」という最悪の展開を回避し、信頼を構築する
スクリプト例:
「お問合せいただいた物件ですが、現在も募集中でございます。
ただし、人気物件のため、他のお客様もご検討中の状況です。
念のため、最新の空室状況を確認いたしますので、
少々お待ちいただけますでしょうか。
(確認後)
確認いたしました。現時点では確実にご案内可能です。
ただ、こういった好条件の物件は動きが早いため、
ご興味がおありでしたら、早めの内見をお勧めいたします。」
ポイント:
- 調査で最も多い不満が「その物件はもう無いと言われた」(22.2%)
- 問合せ前に必ず物件状況を確認する社内体制を整えることが重要
- 万が一、募集終了していた場合は、即座に代替物件を3件以上用意できる準備を
物件が募集終了していた場合のスクリプト:
「大変申し訳ございません。お問合せいただいた物件ですが、
つい先ほど申込が入りまして、現在募集を停止しております。
せっかくお問合せいただいたのに、本当に申し訳ございません。
ただ、同じエリアで条件が非常に近い物件を3件ご用意できます。
実は、こちらの物件の方が[具体的なメリット]で優れている点もございまして...
詳細をご説明させていただいてもよろしいでしょうか。」
3. 内見希望日時の具体的な設定
目的: 具体的なアポイントを取り、来店・内見を確実にする
スクリプト例:
「それでは、実際に物件をご覧いただきたいのですが、
ご都合はいかがでしょうか。
今週末、例えば土曜日の[午前/午後]や日曜日でしたら、
いくつかお時間を確保できるのですが。
(顧客の回答を受けて)
では、土曜日の14時からでいかがでしょうか。
当社の店舗で待ち合わせでも、現地で直接待ち合わせでも対応できます。
どちらがご都合よろしいですか?
(日時確定後)
承知いたしました。それでは、○月○日の14時に[場所]ですね。
当日は私、△△がご案内させていただきます。
携帯番号は[番号]です。念のため、前日にも確認のご連絡を差し上げますね。」
ポイント:
- 「いつ頃ご覧になりますか?」という曖昧な聞き方ではなく、具体的な日時を提案する
- 調査では「内見をさせてくれた」が満足要因の2位(賃貸53.9%、売買48.4%)
- 複数の選択肢を示すことで、顧客は選びやすくなる
- 待ち合わせ場所の選択肢を与えることで、顧客の利便性を高める
4. 連絡手段と連絡可能時間の確認
目的: 顧客の都合に配慮し、ストレスのないコミュニケーションを実現する
スクリプト例:
「今後のご連絡についてですが、どのような方法がご都合よろしいですか?
お電話、メール、LINEなど、お客様のご希望に合わせます。
(顧客の回答を受けて)
承知いたしました。それでは[希望の連絡手段]でご連絡させていただきます。
お電話の場合、つながりやすい時間帯などはございますか?
また、お仕事中などで出られない時間帯があれば教えてください。
(顧客の回答を受けて)
かしこまりました。では、平日は夕方18時以降にご連絡いたします。
万が一お急ぎの場合は、遠慮なくこちらからご連絡ください。」
ポイント:
- 調査で「深夜の連絡など、こちらの都合を考えてくれなかった」が不満要因として挙がっている(3.0%)
- 顧客のライフスタイルに合わせた連絡方法を選ぶことで、「こちらの都合を配慮してくれた」という満足度を高められる(賃貸41.3%)
- 複数の連絡手段を用意しておくことで、顧客の選択肢を広げる
5. 予算と初期費用に関する確認
目的: 資金面の不安を解消し、成約への障壁を取り除く
スクリプト例:
「失礼ですが、ご予算についてもお伺いしてよろしいでしょうか。
こちらの物件の家賃は○○円ですが、初期費用としては
敷金、礼金、仲介手数料などを含めまして、
概算で[具体的な金額]程度を見込んでいただく形になります。
詳細は内見の際にお見積書をご用意いたしますが、
大まかなご予算は問題ございませんでしょうか。
(顧客の回答を受けて)
承知いたしました。もし初期費用を抑えたいというご希望がございましたら、
敷金・礼金が少ない物件や、フリーレント付きの物件などもご紹介できますので、
お気軽にご相談ください。」
ポイント:
- 金銭的な不安を早期に解消することで、内見後の成約率が向上する
- 具体的な数字を示すことで、顧客は計画を立てやすくなる
- 予算が合わない場合の代替案を示すことで、機会損失を防ぐ
初回電話対応で避けるべき5つのNG行動
どれだけ丁寧に確認事項を押さえても、以下のNG行動をしてしまえば台無しになる。調査データが示す不満要因を基に、避けるべき行動を整理した。
NG1: 回答が的を射ていない
調査では14.4%(賃貸)、11.6%(売買)が不満として挙げている。顧客の質問に対して、曖昧な回答や見当違いの説明をすることは避けたい。
改善策:
- 質問の意図を正確に理解するため、必要に応じて聞き返す
- 即答できない場合は、「確認してすぐにご連絡します」と明確に伝える
- 業界用語を避け、わかりやすい言葉で説明する
NG2: 契約の意思決定を急かす
13.8%(賃貸)、15.8%(売買)が不満として挙げている。焦りから成約を急ぐあまり、顧客にプレッシャーをかけてしまうケースがある。
改善策:
- 「検討期間はどのくらいお考えですか?」と顧客のペースを尊重する質問をする
- 物件の人気度は伝えつつも、最終的な判断は顧客に委ねる姿勢を示す
- 調査では「契約の意思決定をこちらのペースに合わせてくれた」が満足要因(賃貸27.5%、売買21.1%)
NG3: 希望していない物件を必要以上に勧める
8.4%(賃貸)、7.4%(売買)が不満として挙げている。追加提案は重要だが、押し付けがましくなってはいけない。
改善策:
- 「もしよろしければ」「ご参考までに」という前置きを使う
- 顧客が明確に断った場合は、それ以上勧めない
- なぜその物件を勧めるのか、論理的な理由を説明する
NG4: 問合せ後の営業がしつこい
9.0%(賃貸)、13.7%(売買)が不満として挙げている。フォローアップは重要だが、頻度とタイミングを誤ると逆効果になる。
改善策:
- 連絡の頻度について、初回の電話で顧客の希望を確認する
- 「新着物件のご案内は週1回程度で送らせていただきますが、よろしいですか?」と許可を得る
- 顧客からの返信がない場合、一定期間後に「引き続きお探しですか?」と確認する
NG5: 言葉遣いや対応が不適切
13.2%(賃貸)、13.7%(売買)が不満として挙げている一方、「言葉遣いや対応が丁寧だった」は満足要因のトップ3(賃貸47.9%、売買42.1%)に入る。
改善策:
- 電話対応の基本マナーを社内で標準化する
- ロールプレイングを通じて、適切な言葉遣いを習得する
- 顧客のトーンに合わせて、硬すぎず軽すぎない対応を心がける
初回電話後のフォローアップ戦略
初回電話が終わった後も、内見までの期間に適切なフォローを行うことで、来店率を高めることができる。
電話終了後30分以内: 確認メールの送信
電話で決まった内容を文書化して送る。
件名: 内見のご予約確認【○月○日14時】
○○様
本日はお問合せいただき、ありがとうございました。
担当の△△です。
内見のご予約内容を確認させていただきます。
【内見予定】
日時: ○月○日(土)14:00~
物件: [物件名・住所]
待ち合わせ場所: [具体的な場所]
担当者: △△(携帯: XXX-XXXX-XXXX)
【ご案内予定の物件】
1. [問合せ物件の詳細]
2. [追加提案物件の詳細]
当日は物件の鍵をご用意してお待ちしております。
もし何かご不明点やご変更がございましたら、
お気軽にご連絡ください。
それでは、○月○日にお会いできることを楽しみにしております。
前日: リマインドの連絡
内見前日の夕方に、確認の連絡を入れる。
「○○様、お世話になっております。
明日14時からの内見につきまして、確認のご連絡をさせていただきました。
ご予定に変更はございませんでしょうか。
天候や駐車場の状況など、何かご心配な点があれば
お気軽にお申し付けください。
それでは、明日お会いできることを楽しみにしております。」
当日朝: 最終確認
当日の朝に、簡潔なメッセージを送る。
「おはようございます。本日14時からの内見、よろしくお願いいたします。
現地でお待ちしております。何かございましたらお電話ください。」
ハウスコムFC加盟店としての強み
ここまで紹介した初回対応のノウハウを実践するには、安定した業務環境とサポート体制が不可欠だ。ハウスコムFC加盟店には、以下のような強みがある。
充実した研修制度
電話対応のスクリプトや顧客対応のノウハウを体系的に学べる研修プログラムを提供。新人スタッフでも、高品質な対応が可能になる。
最新の物件情報システム
大手不動産ポータルサイトとの連携により、リアルタイムで物件情報を更新。「もう無い」という最悪の事態を回避できる。
集客力のあるブランド
ハウスコムのブランド力により、大手不動産ポータルサイトからの問合せ数が増加。より多くの商機を得られる。
業務効率化ツール
顧客管理システムやメール自動送信機能など、フォローアップを効率化するツールを利用可能。少人数でも高い成約率を実現できる。
実践のための3つのステップ
本記事で紹介したノウハウを実践するために、以下のステップで取り組んでほしい。
ステップ1: 電話対応スクリプトの作成
自社用にカスタマイズしたスクリプトを作成する。紹介した5つの確認事項をベースに、自社の強みや地域特性を反映させる。
ステップ2: ロールプレイングの実施
作成したスクリプトを使って、社内でロールプレイングを実施。実際の顧客対応で自然に使えるまで練習する。
ステップ3: 効果測定と改善
初回電話後の内見率、成約率を測定し、スクリプトの改善点を洗い出す。PDCAサイクルを回すことで、継続的に対応品質を向上させる。
まとめ: 最初の60分が未来を変える
大手不動産ポータルサイトからの問合せ後、最初の60分間の対応が成約の可否を左右する。顧客の熱量が最も高いこのゴールデンタイムに、いかに迅速かつ的確に対応できるかが、競合他社との差別化ポイントとなる。
調査データが示す通り、レスポンスの速さと対応の丁寧さは、顧客満足度を高める最重要要因だ。本記事で紹介した5つの確認事項とスクリプトを活用し、初回電話対応の質を高めてほしい。
物件検討者は、以前よりも絞り込んでから問合せをする傾向が強まっている。だからこそ、問合せをしてきた顧客一人ひとりに対して、最高の初回体験を提供することが、これまで以上に重要になっている。
最初の電話で何を話すか。その答えは、顧客のニーズを深く理解し、信頼関係を構築し、内見への確実な一歩を踏み出すための5つの確認事項の中にある。今日から、あなたの初回対応を変えてみてはどうだろうか。